168話 “公開実技授業“当日〈武術実技授業の時間〉
今、物凄く憂鬱です。
・・・・数十分前・・・・
(さて、今日の僕の憂鬱な本番と行きますか・・・)
と、今回の1番の目的?と言うか、難所?に僕は気合いを一つ入れて歩き出した・・・・のは良いのだが、イネオス達と合流し屋外運動場に行く道すがらに、またもや家族を見つけ、いや、待ち伏せされて、またもや全員に頭を撫でられた・・・
(むぅ、前の時と同じ状況になってる・・・(-᷅_-᷄๑)確信犯か・・・)
天華『でしょうね』
ジュール『心配なんじゃない?』
(心配してくれるのは嬉しいんだけど、なんでこんな所で・・・)
今回は更衣室がある建物、“更衣棟“から屋外運動場に行く道の途中にある、中庭、ちょっとした池やベンチがある少し開けた中庭で、デューキス家とソンブラ家の家族全員とイネオス達3人の家族、それとロシュ君家族、結構な人数がそこで僕達が通るのを待っていた。
僕達が会話しながら歩いている所を、リアさんに呼び止められ、誘導されると、その中庭に皆んなの家族がいる事に驚いた、手招きされて近づいていくと、あっという間に家族に囲まれて、各々声をかけてくれた。その最中に絶対頭を撫でられているのが現在進行形で続いている・・・・
だが問題はそこではない、ここは、必ず“更衣棟“がある場所から屋外運動場まで、絶対に通る廊下がすぐ脇にあるそこからは、この中庭は丸見えだってことだ。廊下自体が屋根はあるが壁が殆どない、野外廊下みたいな通路なので、どうやっても中庭の様子は丸見えなのだ。
夜月『良いじゃないか、今度は一緒に撫でられているのがソルだけじゃなくて・・・』
(そうだけど・・・いや、よくはないんだけど・・・、なんと言うか・・・巻き込まれてる?(。-∀-)感じだな・・・でも、僕はなんか、慣れてきたなぁ~( ´ ▽ ` )撫でられて思考がとろけるぅ~、と言うか、眠たくなってくる~)
仁達も含め友人達全員が両親や上の兄弟達に、会話しながら頭を撫でられたり、肩を叩かれたり、とされている。
僕は家族全員に一通り頭を撫でられ。最後に僕の家族がソルや仁達に話しかけている間、僕は母様に抱きしめられながら頭を撫でられている状態が続いている、おかげでリラックスが効きすぎて、眠気が襲ってきている。
父様「ふふっ、シリー、そろそろ離してあげないと、アトリーが寝てしまいそうだ。・・・それに授業に間に合わなくなるよ、ふふっ」
母様「あらあら?もうそんな時間かしら?ふふっ、アトリー、大丈夫?」
最後に頬を軽く撫でられた。
「うっ、んぅ、は、はい、大丈夫です・・・ふぁ~、ぁんん・・・」
半分寝ていた思考を頑張って起こし、あくびをして目を擦った。まだ少しぼんやりしているがちゃんと目は開けた。
カミィ姉様「ふふっ、寝ぼけているアトリー可愛い♪」
彩ちゃん「ふふっですね♫」
夢ちゃん「ほんと可愛い~♬」
ヘリー姉様「ふふっ、ほら、アトリー、ちゃんとして、授業に遅れちゃうわよ」
「あふっ、ふぁ~い・・・」
母様「ふふっ、アトリー、授業頑張ってね、でも無理はしないでね?」
父様「アトリー、うまくいかなくても、気にしないで良いからね」
我が家の女性陣に何やら言われたが、最後に母様と父様が心配そうに声をかけてくれて、やっと眠気が取れて姿勢を正した。
「はい、ですが相手の真意が聞きたいのは僕の望みですので、父様達にはご心配をお掛けしますが、どうか見守っていてください」
父様「分かっているよ、アトリーは自分の決めたことは必ずやり遂げるって、でも、その過程で君が傷つく可能性あるのは確かだ、いくら君が強くてもね・・・」
母様「だから、アトリー、なるべく大怪我だけはしないようにね、貴方が大怪我したりしたら、母様は・・・母様は相手を許すことが出来ないかも知れません。だから、なるべく大怪我はしないようにね?」
「は、はい、気をつけます。・・・」
(母が過激な件・・・・(´・Д・)」)
夜月『アトリーは母君似だな・・・色々と・・・・』
天華『ですね・・・』
ジュール『だねぇ~♪』
母親の過激な一面を目の当たりにしつつ、家族からの激励を受けて、屋外運動場に向けて再び歩き出した。
・・・・ここまでは凄くほのぼのした雰囲気で気分も上がっていた、だが、それも屋外運動場の中に入るまでのことだった・・・
(・・・・はぁ~~~っ!マジうぜぇ!( *`ω´))
一気に気分は急降下、その原因は・・・
仁「僕でも分かるほど殺意を隠さないね・・・彼女・・・」
彩ちゃん「そう言えば、さっき、中庭にいる私達を見ていたわよ、その時からより一層人相が悪くなった感じ・・・」
夢ちゃん「それ私も見た、アトリー君が家族に頭撫でられてるのを凄く睨んでたよ。なんであんなにアトリー君を睨むことがあるのか分かんないよ・・・」
イネオス「そうですね・・・」
仁「ねぇ、彼女とは学園以外で会った事ないんだよね?」
ソル「はい、無いですね。以前も話しましたが、アトリー様は7歳までお屋敷からお出になられた事はないです。その後は同年代の方に会って話した方は何人かいましたが、その中にあの人はいませんでした」
仁「うーん、そうなると、“ヴェステの王女様“は誰かとアトリー君を勘違いしてるんじゃない?」
そう、僕の気分を急降下させた原因はクラスメートの例の王女様、“アーミラ・コーニング・ヴェステ第1王女“だ、僕達が屋外運動場に入るなり、無意識なのか、僕に向けて魔力威圧混じりの殺意の籠った視線でずっと睨みつけている。凄いヤバ目の人相で・・・
ベイサン「いやー、アトリー様を他人と見間違えるのは無理なんじゃ・・・」
ヘティ「そうですよ、アトリー様の神すらも虜にする美貌を、他の誰かと見間違えるなんてあり得ません!」
ロシュ君「そうですよ!アトリー様のような美しいお顔がその辺に転がってる事なんてないですよ!」
仁「う、うん、そ、そうだよね・・・」
彩ちゃん「仁、馬鹿ねぇ、アトリー君の美貌はこの世界で唯一無二なのよ?ドッペルゲンガーでさえ居ないの、分かった?」
仁「う、うん、分かった・・・」
夢ちゃん「そうなると、なんで、あの王女様があんなにアトリー君を恨んでるか、また分かんなくなったねぇ?アトリー君達に覚えがないとすれば逆恨み?」
彩ちゃん「うーんそうねぇ、その可能性が1番高いのだけど・・・会ったことのある人で、恨みを買ってそうな人と知り合いだった可能性があるわね。心当たりはない?アトリー君?」
皆んなの会話の中で僕の容姿を褒めるやり取り以外では、僕のことを心配して王女様の怨恨の元を真剣に探ろうとしてくれている。その間僕は表情は微笑みを湛えたまま無心で腕に抱えた夜月を撫でていた。そこに話を振ってきた彩ちゃん・・・
「んー、そうですねぇ、心当たりが多すぎてなんとも断定できかねますね」
「「「「「あー・・・・」」」」」
ここ数ヶ月、一緒に行動している彼らは、僕の返事に納得の声を上げる。
彩ちゃん「うん、愚問だったね・・・アトリー君が率先して恨みを買うようなことはしてないはずなのに、向こうが勝手に勘違いして突っかかって来て、逆恨みするパターン、そんな事例が何件もあるってことだよね・・・」
「はい、まぁ、概ねそんな感じのことが多いですね。まぁ、分かっている事と言えば、学園に入学する前にあった出来事のどれかに、関わる方の関係者だと思われます。7歳から10歳になるまでの期間ですかねぇ・・・」
(心当たりが多すぎるのはどうしたもんか・・・でも少し思い当たるのは、二年前ぐらい?だったかな?“ズューウス王国の第5王子“が関係してそう、あそこと彼女の国は交流が頻繁にあるって事だし、今回の“要請“の件も連名できたしね・・・・そう言えば、あの王子、今何してんだろうね?緩い禁固刑になったとは聞いてるけど、彼女と何か関係があったとかは聞いてないし、・・・それとも、別の貴族令嬢から告られたのを振った時の話?彼女のお友達だったとか?あ、貴族子息からもあったなぁ(*´Д`*)それか、去年参加したお茶会の件?・・・うーん分からん!)
今までにあった出来事を振り返っていると。
天華『本当、色々ありましたよねぇ・・・』
夜月『色々ありすぎだ、関係がありそうな王族や貴族だけで10人はいるぞ?』
ジュール『色々あって楽しかったよねぇ~(≧∇≦)』
(楽しかった・・・まぁ、退屈はしなかったけどね・・・(。-∀-)定期的に何かしら事件が起こってたから・・・)
第5王子の他にも母様の薦めで出たお茶会や出かけた先で起こったハプニングなどが、何かしらの関係はあると予想するが、色々ありすぎて王女様とどんな関係があったかまでは不明、どうやっても彼女の恨みにつながるような大事を起こした出来事はなく、子供の喧嘩程度であって殺意を持たせるほどではない。
「彼女と関係がありそうな同年代の王族含めた貴族と揉めたのは、10名ぐらいですかね、それも子供同士の喧嘩ぐらいの揉め事で・・・」
彩ちゃん「そんなにいるのね・・・でも子供の喧嘩なのね?何処かの集まりでアトリー君達が喧嘩した感じ?」
ソル「いえ、6名ほどが奥様、アトリー様のお母上の薦めで参加したお茶会での関係者ですね。あと4名のうち3名はアトリー様に自分を売り込むように言い寄ってきた、ご令嬢とご令息。最後の1名は直接、領地のお屋敷をご訪問された王族の方です。その他にも多数ありましたが、主にこの10名の件をアトリー様が対処なされたんです。我の強い方がこの中におられると、逆恨みしている可能性はありますね・・・」
思い当たるだけで10名、他にもあるが王女様と関わりが持てそうな身分の人との揉め事はそれだけあった、ソルもその事を把握しているので簡潔に説明してくれた。
夢ちゃん「あー、それで、お友達の王女様に復讐を頼んだ?って線?それにしては殺意高めじゃない?」
彩ちゃん「それには同意だけど、それより、ただのお茶会で6人と揉めるって、どう言う状況なの?」
(あー、やっぱそこ気になっちゃう?( ´ ▽ ` ))
「うーん、簡潔に言うと、お茶会での席順で揉めたというか・・・」
お茶会での6名の部分が気になってしまった彩ちゃんの質問にどう答えたものか、と言葉を選んでいると・・・
ヘティ「2つの派閥の方々がアトリー様を取り合って、喧嘩なさっていたのをアトリー様が鎮めたのですわ。アトリー様は王国の派閥関係に興味がないので、どちらの派閥の方々とも同席をご遠慮なさったんです。その時しつこくお誘いして来た方々が王族派3名に貴族派が3名で、合計6名ですわ」
と、次はヘティが簡潔に答えてくれた。ヘティ達もその時のお茶会に一緒に出ていたので、全て覚えていたみたいだ。
ベイサン「このお茶会は“未来を担う子供達が主役で交流を深める“、といった趣向だったので、貴族家の子供だけではなく、有名な教育家や商家など、幅広い人種の子供達がたくさん集まっていたんです。これは年に数回行われているんですが、アトリー様はその時初めてのご参加でしたので、注目を集めておいでだったんですよ。そこで派閥争いをしていた2組が自身の派閥の強化のためにアトリー様を取り合ったんです」
(あの時、僕はスッパリお断りして、イネオス達と別のテーブル席でお茶して帰ったんだけど。それが学園でヘティを虐めようとしていた人達との最初の出会いとは思いもよらなかったんだけどね・・・あの時もうちょっと考えてお断りすればよかったかなぁ?(。-∀-)そしたらヘティが虐められなかったかもって思っちゃうんだよね・・・)
天華『アトリー、あの時、あなたが別の断り方をしていても、彼女達はヘティさんを虐めていたでしょう、人の嫉妬とは際限なく湧き上がるものなんですから・・・』
(まぁ、それもそうか、結局、僕はイネオス達を優先して付き合うって決めたんだもんね。元々彼女達に興味もなかったし、彼女達の表情や言動には親からの命令、家の為、聖獣を有すると言う優越感、僕と言う神の愛し子を手に入れ私利私欲のままに操ろうと言う醜い願い、色んな物が透けて見えていたからね。それに付き合う気は毛頭なかったから、あれでよかったのかもね・・・(*´ー`*))
貴族らしい打算的な考えの同年代達とのやり取りを思いだし少しションもりしていると。
夢ちゃん「うわぁ~、子供の頃からそんな派閥争いとかするんだぁ、貴族社会ドロドロしてるなぁ~」
彩ちゃん「要は2つの派閥が、アトリー君をどうやったら自分の派閥の席に誘えるかで喧嘩して。それをアトリー君が真っ向から断って喧嘩自体を意味ないものにしたって事?」
夢ちゃんや彩ちゃんも子供達の貴族社会の縮図の闇を見て、嫌そうな顔しながら話す。
「まぁ、そう言う事です。僕は元々冒険者になるつもりでしたから、国内の派閥争いには興味がなかったんですよ。そんな事している暇があれば訓練で自分を鍛えて、どんな事態にでも対応できるようにしたいですからね。
それにそのお茶会、公爵家のヘルツォーク公爵家が主催でしてね。あそこの現当主は現在、王城の人事を任されたおいででですから。僕に将来の重役達の候補の見極めて欲しかったんじゃないですかね?趣向としては“子供達の交流を深めるため“となってますが、今の国内の勢力図の観察と将来有望そうな子供を見つけるのが主な目的でしょう。要は王国内の情勢把握と人材の“青田買い“ですよ」
その中に僕と言う、強大な力と権力を持った人間を入れてどう反応するか、子供達のその様子を観察していたのも僕は知っている。
(僕への態度で子供達の本性を探ろうって算段だったんだろうな、そこは見事成功していたし、僕の反応にも興味があったんだろうな。
母様的には僕があまりにも同年代と接していなかったから、イネオス達以外の同年代の人が、自分にどう接してくるか知って、どう対処するか学んで欲しかったんだろうけど。僕が意外とあっさり“どちらも相手をしない“と決めたから、様子を見ていた大人達は驚いただろうな。本当は僕が慌てふためく姿を予想してたんだろうけどね(*´Д`*)
媚び売ってくる子供にそう簡単に慌てたりしないよ、中身が親世代だからな僕は(*´ー`*)・・・)
同年代組「「「「アオタガイ?」」」」仁達「「「青田買い・・・・」」」
ソルやイネオス達同年代組は“青田買い“の意味がわからず頭にはてなを飛ばし。意味がわかってる仁達はちょい苦笑い気味だ。
彩ちゃん「アトリー君、言い方が擦れてる・・・怒ってるの?」
夢ちゃん「なんか、ぐれてる?」
仁「うーん、拗ねてる?」
「ハズレ、面倒くさがってます!僕を“試金石“扱いしたことで、今回の事に繋がったのなら、もう絶対!その様なお茶会やパーティーに出たりしません!それが母様達からのお薦めであったとしても!」
仁達の予測に答えを言ってプクッと膨れ、そっぽを向いた。
同年組&仁達((((((全部かぁ・・・しかし、膨れっ面も可愛い・・・))))))
なんて思われつつ宥められ、その後もわちゃわちゃと決定打にならない予測を立てながら会話を続けた・・・・・