139話 伝統の正装
どうも、僕です!現在生きた彫刻の中を進行中です!
なぜ今そんな事になっているのかと言うと・・・・ーーー
ーーー・・・数分前・・・
ダンスホールの入り口前にて、仁達と写真撮影の話になり喋っている間にダンスホールへの入場手続きが済んだ。ダンスホールの中に入る時は入場者の名前が高らかに告げられる伝統があり、その為の準備に時間がかかっていたのだ。(なんせ一緒に来た人数が多いからね。でも、ジュール達は名前を呼んで欲しく無いそうなので、一括りに“聖獣様“呼びになったらしいよ)
そんなこんなでダンスホールの大扉がゆっくり開き、父様を先頭に優雅に歩き出した。中に入ると同時に“ネーム・コールマン“が高らかに公爵家と“勇者候補“の来場を次々告げ、ホール内の人達の注目を一斉に集めた。
そして、大きなざわめきの後のいつもの静寂。アッと言う間に見慣れた生きた彫刻の量産に見事成功した、僕達公爵家親子と友人2人に“勇者候補達“、ロシュ君以外の同行者は慣れた様子でホール内を歩きながら周りを見渡し、目的の人を探す事になったのだった・・・
天華『相変わらず、アトリーのご家族の方は自分達の“人を惹きつける特性“をうまく使いこなしてますねぇ・・・』(まぁ、大半が気を引き締めたアトリーの凛々しい姿に見惚れているだけでしょうが、あれは天然ですからねぇ・・・ご家族の“特性“の解放もあって相乗効果が抜群ですね・・・)
(へ?そうなんだ?・・・うわぁしかし、馬車乗り場でも思ったけど結構人多いなぁ~。イネオス達が何処にいるか全くわかんないや・・・よし、こうなったら“気配感知スキル“でイネオス達の気配探ったろ(*゜▽゜*))
そうしてすぐにイネオス達の気配を探り当てた。
「父様、母様、あちらにイネオス達がいるようです」
父様「ん?壁際かな?じゃあまず、イネオス君達と合流しようか」
そう言ってイネオス達がいる方向に進みだすと、いつものように前に佇んでいた人達が次々僕達を避けていく。そして出来上がった道を優雅に歩き目的のイネオス達を発見。向こうも僕達を見つけて一旦フリーズ、その間に目的地であるイネオス達の前に到着。父様が目の前に来てやっとフリーズが解けて挨拶を交わした。皆んな挨拶を交わし終わった後にすぐに子供達だけでワイワイと話し始めた。
「やぁ、イネオス、ベイサン、ヘティ、昨日ぶり。ヘティ今日も可愛い装いだね、ベイサンの瞳の色と同じネックレスが素敵だよ、とても似合ってる。ベイサンもヘティの瞳の色のカフスがいい差し色になってるね。イネオスは今日はなんかとても凛々しい仕上がりじゃなか、かっこいいね」
ヘティ「うふふっ、ありがとうございます。このネックレスとても気に言ってますの」
イネオス「お褒め頂きありがとうございます。今日はフリルから逃れましたからね」
ベイサン「僕も流石に王城でのパーティーで婚約者がいるからと父が止めてくださったおかげで、過度なレース袖から逃れられましたよ」
「ふふっ、それは惜しかったね」
ベイサン「笑い事じゃないんですよ、母上達は隙あらば僕達の服にフリルやレースを付け足そうとしてくるんですから」
イネオス「そうですよ、兄弟の中では僕は母上似だからとお揃いのレースを付けようとしてくるんですよ?」
ソル「それは災難だったな・・・」
どうやら夏の夜会以降も母親勢の息子に“乙女チックな服を着せるブーム“が冷めていないようだ。僕は常にフリルやレースが多い服装をしているのであまり抵抗がないのだが、やはりそこはお年頃の男子、母親の趣味全開の服装は恥ずかしいようだ。
「いいじゃない、お揃い、リボンぐらいだったらお揃いでも僕はいいと思うけどなぁ。・・・あ!そうだ!この前みたいに皆んなでお揃いしようよ♪」
(母親からの提案だと反抗心が出ちゃうけど、友達とのお揃いの提案ぐらいならハードルが低くなっていいんじゃないかな?皆んなとおそろコーデしたいし!)
イネオス「う、うーん、前みたいにあまり目立たないのでしたらなんとか・・・」
ベイサン「僕もアレぐらいなら・・・それに僕は明るい色は似合わないからなぁ・・・」
ソル「僕もなるべくなら暗い色の方がいいですが・・・」
ヘティ「ふふっ、私は何色でもいいので今度はお揃いに入れていただけると嬉しいです♪」
「ふふっ、じゃあ今度一緒にリボンを買いに行こうね♫」
(ふふふっ、これで皆んなの可愛いおそろコーデの足掛かりにしてやる!( ˊ̱˂˃ˋ̱ )いつか可愛いフリルをつけた服を着せよう)ニヤァ
ジュール『私もおそろがいい~!』
(よっしゃ!やったろ!)
春雷&雪花『『わぁ!楽しみです!』』
僕の裏のある提案に渋々ではあるが男子3人は了承し、ヘティと何故かジュール達まで凄く乗り気だ。なので僕はウキウキ気分で今度皆んなでお揃いコーデをすることを決めた。
ヘティ「・・・・それにしてもアトリー様とソル様の今日のお召し物は色合いが対象的で一段とお似合いですわ。特にアトリー様の“正装の伝統“である瞳の色に合わせられているストラが、今日の白いお召し物に映えて、とても素敵ですし、公爵家のご家族が正装を身に付けてお並びになられると、とても艶やかで見惚れてしまいましたわ」
「ふふっ、そう?僕はまだこの“正装“に着られている感じがして不安だったけど、ヘティにそう言われて安心したよ」
ヘティの言った“正装の伝統“とは、この国の王侯貴族特有のドレスコードのようなものだ。
まずこの国を立ち上げたのが元神職であることが起因し。王家とその血筋である公爵家には王城で開催されるようなパーティーや舞踏会では、神職だった頃の名残である証として神官服でも使われている、“ストラ“と呼ばれる幅約10センチ、全長約1メートル50センチ(*長さは着ける人の身長にもよる)ある帯のような布を利き腕とは逆の肩にかける。
これは本来の神職ならば首に掛けるもので、神官などの階級により色が変わるのだが。ウェルセメンテ王国の王族の血筋内では自身の瞳の色を使用するのが慣わしで伝統なのだ。
その他にも王家だけではなく貴族の男性の伝統は、爵位に応じて必ず着用するマントの長さが変わるというものだ。
騎士爵から子爵位の家の男性はウエストから腰の間までの長さ。伯爵から公爵位の家は腰から膝までの長さで。最後に王家の男性は自分の膝から足のくるぶしまでの長さのマントを着用するのがこの国の伝統のドレスコード。
逆に女性のドレスコードは他国とあまり変わらないもので、前世でのドレスコードともそう大きく変わらない。ただ1つ変わっているのが、婚約や婚姻して相手がいるならば、必ず相手の瞳の色を何処かに取り入れると言うのが決まり事と言うことぐらいで至極シンプルなものだ。
なので婚約者のいない僕の正装には基本色に選ばれた白が大半になっている。
(マントとストラがなかったら結婚式の新郎のような服装なんだよね・・・)
今日の僕の装いは上から下までのほとんどが白で統一されている。
まずジャケットは太ももの中間ほどの丈に、腰からスリットの入ったダブルの6つボタンで、裏地は濃い青紫色。襟や返し袖は金糸の刺繍で飾られ。それと服のボタンは全て装飾の凝った金ボタンだ。
次にインナーは淡い青紫色のシャツに、銀糸で刺繍の入った濃い青紫色のフリルの効いたクラヴァットをつけ、ベストは白色でこれは金糸と銀糸で煌びやかな刺繍が入っている。
そしてボトムは白のスラックスに白の革靴を履いている。今回は珍しく白の手袋までして、仕上げに“伝統の正装“として表が白地に公爵家の紋章入りで、裏地が濃い青紫の膝丈マントを着込み。
その上から真ん中部分で紫色と黄色で色分けされ、両端5センチぐらいの場所から斜めに配色を反転させた光沢のある布に、金糸と銀糸で綺麗な刺繍をされたストラを左肩にかけた。
まさにこの国の伝統的な、ザ・正装と言っていい装いだ。*ちゃんとソルとお揃いのデザインのアメトリンのブローチもしています。
ヘティ「それにお髪は見た事がない形ですのに正装に凄く合っていて素敵ですわ」
「そうなんだよ、僕も初めてでね、オーリー達が頑張って仕上げてくれていたよ」
そう、今回は髪型も独特で、髪を頭の中心から左右で分けて、自分を基準に右側を片編み込みのハーフアップにしてある。左側は横髪を少し残し、その他の髪を右側のハーフアップの終着点に向かって放射状に数本の編み込みして、それを全部まとめてお団子にし、右側のハーフアップの片編み込みの束の先を左側の髪で作ったお団子に巻いてある。真正面から見ると普通に左側のサイドだけ残したハーフアップに見えるが、左右の真横から見るをそれぞれお団子のついたハーフアップと、編み込みの凝ったアップスタイルのお団子ヘアに見え。真後ろからは左右でスタイルの違う髪型に見える変わった髪型だ。*今回の髪型は装飾控えめで、編み込みに艶のある黄色の紐に近いリボンを一緒に編み込んであるぐらいです。
(前世で気に入ってたビジュアル系バンドのボーカルが似た髪型してたなぁ( ̄∇ ̄)、あの人も中性的な容姿をしてて美人で、どの角度から見ても凄い決まってた。美人って何しても似合うんだなぁ~ってしみじみ思ったのを、今世の自分自身で実感するとは思わなんだ・・・( ´ ▽ ` ))
天華『とても似合ってますよ、その髪型』
(そう?でも、どこまでも白と自分の瞳の色で纏められた正装だから、なんか、“自分が1番好きです!“って感じの、ナルシストに見えないか不安だったけど。皆んなが似合うって言ってくれるから、今の所恥ずかしさに耐えられているんだよね・・・それに僕は髪色が白に近い銀髪だから、白飛びして印象がぼやけてないかが心配( ´∀`))
夜月『それはないな、むしろ白が多めの服だからアトリーの瞳の色の神秘的な雰囲気が引き立てられているぞ』
(うーむ、神秘的ねぇ?確かに?珍しい色合いではあるけど・・・やっぱり自分ではよう分からんなぁ~?(*´Д`*))
ジュール『いいじゃん、似合ってるんだからさ♪アトリー可愛いよ!』
雪花『はい!凄く可愛いです!』
春雷『今日のお召し物にとても似合ってます!』
(ん?ふふっ、有り難う、ちょっと照れるけど皆んなにそう言われると嬉しいな♪)
天華達と念話しつつも皆んなと会話したり写真を撮ったりしている内に、いつの間にか殆どの参加者が入場していたようで、今からは他国の要人達が次々入場して来るようだ。
(ん?なんか来賓が多いなぁ、結構遠くの国からも来てるっぽいし・・・あれ?今入って来た人達、先頭にいる人のあの服装は聖教国の大司教と聖女じゃないか?それにあの聖女の顔に見覚えが・・・あ、あの時のシスターちゃん⁉︎)
珍しい来賓達の中でこの国のリトス教代表である大司教が、これまた珍しく聖女を連れてこのパーティーに参加していた。だが僕にはその聖女の顔には見覚えがあったのだった。
天華『あぁ、この間会った彼女ですか・・・面倒なことにならないと良いのですが・・・』
(うへぇ、嫌な予感・・・)
そう言いながらそーっと父様の背中の影に入り込んだ。
父様「?アトリー?」
「父様、しーっ」
父様「ん???」
突然自分の後ろに隠れた僕を見て不思議そうに後ろを振り返った父様。僕が口元に人差し指を当てて静かにしてほしいとお願いする姿に、なおさら疑問を持った。
母様「ふふっ、貴方、そのままにしてあげてくださいな」チラッ
父様「あ、あぁ、私は構わないが・・・ん、あぁ、彼女のせいか・・・」
母様は僕がどうして“そう“したのかすぐに気づき、父様に視線でその原因を教えた。その視線の先にいた聖女を見て察した父様。
「そう言うことです、なので匿って下さい」
父様「ふふっ分かったよ、でもアチラから挨拶に来たらちゃんと挨拶を返すんだよ?」
「うー、分かってます、でも、極力会いたくはないです」
事情を察した父様は匿ってはくれるが、相手から見つかったら最低限の礼は尽くすように言ったので渋々頷いた。そんなやり取りをしていると、その様子を見ていた兄弟と友人達が何やら面白そうに会話していた。
仁「アトリー君でも苦手なものがあったんだねぇ」
ライ兄様「話は聞いていて思ったが、アトリーがあんな反応する理由も俺は理解できるぞ?ああ言った手合いの者が1番面倒なんだよな、話を聞かないから・・・」
ヘリー姉様「しつこいのは嫌われる1番の要素なのだけどねぇ」
彩ちゃん「そうですよね、距離が近い彼女に、アトリー君は結構キッパリ離れて欲しいって言っていたんですけどね。彼女には全然聞いてないと言うか、本気にしていないと言うか・・・」
夢ちゃん「モテるのも良いのか悪いのか、この場合は悪いのか?」
イネオス「本人が嫌なら悪い方なのでは?」
ベイサン「ですね、アトリー様は話を聞かない方はどうも苦手なようですし」
ヘティ「そもそも、アトリー様のお話を真面目に聞かないのはどうかと思いますし」
ソル「あれで、悪意がないから尚更面倒なんですよね、結界にも阻まれませんし・・・」
と、ソルとヘティ以外は苦笑い気味に楽しく話していた。
(聞こえてんぞ!そこ!o(`ω´ )o言い寄られる僕の身になってみろ!あんなのに迫られたら、うざったいの何者でもないんだからな!)
と、僕がぷんぷんと怒るのは先日起こったことが関係しているのであった・・・・
・・・新学期が始まる2日前の平民街での出来事・・・・・ーーーー