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138話 記念


 父様と母様、双子の兄弟と一緒に乗ったいつもよりチョイ広めな馬車の中で、両親に挟まれて座っている僕。窓際に座ってないので今がどこらへんかはわからないが、母様がずっとご機嫌で僕達兄弟を見て嬉しそうに微笑んでいる。父様も何やら嬉しそうだ・・・・(あ、ソルとロシュ君と仁達は別の馬車で一緒に来てるよ!)


父様「子供の成長は早いね、ライやヘリーの初めての歓迎パーティーの時を今でも思い出すよ、今のアトリーと同じぐらいの大きさだった2人が、今はこんなに大きくなって・・・・ふふっ立派に成長したね2人とも・・・」


母様「ふふっ、そうですね、こんな時でないと一緒に馬車に乗ることもなくなってしまって寂しかったですけど。それも2人が大人になった証拠ですわね」


(おぉ、僕のサイズと見比べて、兄様達の成長を実感してたのか、確かに最初に会った時より随分成長したもんねぇ兄様達、なんかエモいねぇ( ´∀`))


ライ兄様「い、いきなりなんですか、父上」


ヘリー姉様「もう、成長するのは当たり前ですわっ、成長してなかったらそれはそれで問題じゃないですか」


 父様達の言葉に照れて顔が真っ赤になりながらも言葉を返す2人。


(むふふっ、2人の照れた顔、かわよっ♪(*゜∀゜*))


 ここ最近じゃ珍しい2人の表情についニヤニヤして見てしまう僕。父様達も久しぶりの2人の表情に、より一層嬉しそうにニコニコ笑顔だ。


父様「ふふっ、そうだね、君達が立派に育ってくれて嬉しいよ、ふふっ」


母様「2人が素敵な大人になっているから、今日のパーティーで良い人が見つかると良いのですけどね、うふふっ」


双子「「うっ・・・」」


 母様は2人に早く良いお相手が見つかるのを期待しているようだ。


(早くお相手見つけなさいよってことか・・・頑張れ兄様達!٩( ᐛ )و)


天華『応援が軽いですねぇ・・・』


 ザ・他人事♪な感じで応援を送っていると、馬車は王城の大門前に到着したようだ。軽い検問が終わり門を通り抜け、王城の正面入り口のロータリーに馬車がゆっくり止まった。外にはまだ入城していないパーティー参加者達がいるようで、公爵家の馬車が止まったことで周囲が騒がしくなって来た。


「あれは、デューキス公爵家の紋章ですわ」「じゃあ、公爵家の皆様と“勇者候補“の方々がお越しになられたんですね」「まぁ、では聖獣様方もお越しになられるのでしょうか?」「あの噂の聖人様もお越しになられたんだろうか?」「聖人様?」「デューキス公爵家の1番末のお子様の事だよ」


 ざわざわっざわざわっ


(なぁ~んか変な噂が出ている気がする~)


天華『先日の教会での出来事のせいですね、多分・・・』


(マジで?あれだけで?)


夜月『そうだろうな・・・』


 変な噂やざわめきを聞きながら遠い目をしているといつの間にか馬車の扉は開かれ、ライ兄様が先に外に出た。


 キャーッ!「シーライ様が先に出てこられたわ」「今日はいつも以上に凛々しいお姿ですわ!」「素敵!」「やはり、叶わないな・・・」「先輩かっこいいです!」「こっちを向いて下さらないかしら・・・」


 大勢の女性の黄色い声と共にあちらこちらから今日の装い対して賞賛の声が上がる。ライ兄様が周りをぐるっと見渡した後に、馬車を振り返りヘリー姉様に手を差し伸べた。

 ライ兄様の差し伸べた手に静かに自分の手を置き、ゆっくり馬車を降りたヘリー姉様。


 おぉ~っ!「ヘリオラ様だ!」「今日もお美しい!」「今日のお姉様のドレス姿、素敵ですわ!」「生徒会長キレー!」「お二人が並ぶとより一層この場が華やかになりますわ♪」


 ヘリー姉様が降りると男性だけじゃなく女性からの賞賛の声が多く上がり、注目を集めている。その間に後ろの馬車からはロシュ君とソルが降りて来ていたようで、ライ兄様とヘリー姉様に合流してきた。


(うーん、やはり我が家の人達は顔がいいから人気が高いねぇ、なんかここの周囲にいる人達が、テレビ局の裏手でアイドルの出待ちしているファンの人達のように見えてきたよ・・・)


 その後も次々降りて行く両親や仁達に周囲の人達は、まるで有名俳優やアイドルなどが出て来た時のような反応で、絶えず歓声が聞こえてきた。実際、うちの兄弟にはファンクラブが出来ているらしい。

 そんな中ついに僕達の番になり、いつも通り夜月やジュール達が先に降りていくと・・・


「「「「「わぁっ!」」」」」ザワッ!!


「聖獣様だ!」「やはりお越しになられたんだ!」「じゃあ聖人様も?」「あぁ、いらっしゃるだろう」


春雷『大人気ですね・・・』


 今回のパーティーは学園の生徒以外も来ているので、僕がジュール達といつも一緒にいることを知らない人がままいるようだ。色んな意味で物凄く注目が集まる中、僕は早くもお家に帰りたい衝動に駆られていた・・・


雪花『出番ですよ、アトリー様』


(えぇ~、もう?なんでいつも僕は最後なんだろうか?注目を集めすぎて嫌なんだけど、もう帰りたい・・・はぁ、“隠密“発動していい?(´・Д・)」)


天華『ダメに決まってますよ!ほら、アトリー降りますよ!』


(やはりダメかぁ・・・仕方ない行くよ・・・(。-∀-))


 気配遮断と魔力完全制御のスキルをフルに使った“隠密行動“をしようと提案するも、速攻で却下されてしまった僕は諦めて馬車の入り口に立った、馬車のすぐ外には父様が手を差し出し待っていた、それをそっと取り転けないように背筋を伸ばしゆっくり馬車から降りる。


「「「「「・・・・・・・ほぅ・・・・」」」」」


(ひぇ~、全員こっち見てる~、そして固まった~(*´Д`*)それにしても結構な人数がいるな・・・)


 馬車から地面に降り立つ間に周囲の人達は完全に停止。詳しく言うと、この馬車降り場にいる人達全員がこちらを見て、頬を少し赤らめたまま停止している。そして先程までの賑やかさが嘘のように静まり返っていた。周囲の微動だにしないその状況を見て、さっきまでのアイドルのファンみたいな騒ぎは何だったんだろうか?と思った僕。


(ん?あれ、これってここに来るの早すぎたんじゃね?呼ばれるまでどこかで待機かな?)


 王城で行われるパーティーや夜会は会場に入る順番が決まっているもので、それは基本的に爵位の低い順番に入るとされている。なのでこの場合は公爵家は1番最後のはずなので、ここに来るのが早すぎたと思った僕は少し困った顔で父様と母様を見上げた。


「父様、母様・・・・」


父様「気にしなくていいよ、アトリー。今回のパーティーは入場の順番は決まってないから、このまま会場のダンスホールに行こう」


「はい♪」


 そう言って案内役の使用人をカイルさんに呼びに行かせた父様。ポカーンと固まっていた王城の使用人は慌てて父様の前に来ると、招待状の確認を済ませ僕達を案内し始めた。父様は母様をカッコよくエスコートして歩き出し、その後ろを僕がジュール達を連れて歩き、またそのすぐ後ろをソルとロシュ君とが並んでついて行く。さらにその後ろを仁を真ん中に“勇者候補“の3人が歩き出した、そしてまた、さらにその後ろをライ兄様がヘリー姉様をエスコートしてついて来る。


(おぉ~、いつも思うけど、なんで皆んな表情は固まったまま僕達を避けて行くんだろうね?( ̄∇ ̄)?)


春雷&雪花『『ですね?』』


 器用だなぁ、なんて思いながら父様達の後をついて行く。生きた銅像達の間を抜けて後ろを振り返り見てみると、僕のすぐ後ろにいるロシュ君は顔面蒼白でガッチガッチに緊張していた、それをソルが横で宥めているが、そんなに効果はないようだ。


「大丈夫?ロシュ君?」


ソル「あまり、よくは無さそうです」


ロシュ君「す、すみません、じ、自分が、お、王城にいると思うと、き、緊張して来て・・・」


(ダメそうな感じだね・・・)


 緊張のしすぎで口が回らなくなっているロシュ君。


「あー、ロシュ君は王城に来るのは初めてだもんね、あ、僕達も王城に来るのはまだ2回目だった・・・でも、そんなに緊張することないよ、滅多に来ることができないんだから、いっその事、記念に楽しんじゃったほうがいいよ♪」


ロシュ君「で、でも、僕、貴族の作法とか全然わかんないし、何か粗相したら捕まっちゃうんじゃ・・・」


 ど緊張しているロシュ君をリラックスさせようと、あえて軽い感じで話かけた。それでも国の中枢である王城内での作法を気にして、気が気でない様子だ。


「うーん、そんな事にはならないと思うよ。ロシュ君が貴族の作法に詳しくないのは王城に招待した陛下もわかってるよ、ロシュ君の他にも貴族の作法を知らない生徒はたくさんいるしね。それこそ自分から理由もなく喧嘩を仕掛けたりしなければ、誰もロシュ君のこと怒ったりしないよ」


ロシュ君「そ、そうでしょうか?」


(それに子供のする粗相で牢屋行きなんて事そうそうないと思うし・・・それこそ、どこぞの王族に喧嘩ふっかけて怪我させたぐらいの事やらかさないと、捕まったりしないよね?)


天華『まぁ、平民であるロシュ君が王族の服を汚したりしたらちょっと危ないでしょうけど。アトリーの側にいれば、そんな事も起きないでしょうから、そばを離れないように言っておけば大丈夫じゃないですか?』


(あー、そうだね、分かった、言っておく( ̄∇ ̄))


 子供の口喧嘩ぐらいだったらお目溢ししてくれるだろうと思っての発言だったが。天華の言葉で相手の洋服を汚した場合は賠償の問題も出てくるし、プライドの高い王族や貴族の場合は事を荒立てて、平気で平民であるロシュ君に罰を与えそうだと察した。それも僕の側にいれば大丈夫だろうという事なので、追加で注意事項を軽く話す。


「大丈夫、大丈夫、僕達の側にいれば変な人は近寄ってこれないから。喧嘩を仕掛けてこられても攻撃は通らないよ、だから心配しなくていいよ。会場に着いたらイネオス達と合流して、楽しくお喋りしながら食事をするだけだよ」


(僕が周りに結界を張っておけば済む話だもんね!)


ロシュ君「そ、そうなんですね、イネオス様達も来られるんでしたね、それに王城の食事・・・・楽しみです」


(あー、そっちに興味持っちゃったか・・・でも、緊張が解れたんならいいか)


 イネオス達の話が出て少し表情が和らぎ。その後の“お喋りしながら食事“と言った所で、“王城の食事“に興味を持って少し笑顔が戻ってきたのでよしとした。


夜月『“王城で食事“なんて一般市民にしてみれば夢のまた夢のような出来事だからだろう。だが、王城でのパーティーといった未知の世界に誰でも必要とする、“食事“といったキーワードが出て安心したんだろうな』


(そうだね、まぁ、食べ盛りの年齢だもんね、好きなだけ食べれれば幸せな思い出になるかな?せっかくここまで来たんだし、楽しい思い出になるようにしてあげたいな♪)


「ふふっ、そうだね、美味しい料理があるといいね、僕も楽しみだよ♪」


 そんな会話をしていると、ソルとロシュ君の後ろで仁達が「花より団子かぁ・・・」「この場合、“花“は女子生徒達かしら?」「どうだろう?王城の芸術美もあると思うよ?まぁ、私は断然お団子派だけどね!」「まぁ確かに僕も基本“団子派“だけど、綺麗な服を着た人達を見るのも楽しみになってきたな」「うーん、私もどっちも捨て難い・・・」とか話していたのを聞いて苦笑いしてしまった。


(ははは、この子達は呑気だな。まぁ、仁達に喧嘩ふっかけてくる奴なんていないだろうから、こんなに呑気にしてても大丈夫なんだろうけど・・・)


 ほんと困った子達だと思いながら城内を歩き、ついにダンスホールの入り口に到着した。


仁「わぁ~、前からズューウス王国の王城より大きいし豪華だなぁとか思ってたけど、ダンスホールの入り口でさえ向こうとは段違いだよ・・・」


彩ちゃん「内装の優雅さはこっちの方が断然上ね」


夢ちゃん「だねぇ~、あっちはただ豪華なだけだったし、後、全体的に一回り小さかったかな?」


 などと、以前いたズューウス王国の王城とこちらの王城を比べていた。


「?そうなんですね?僕は他のお城を見た事がないのでなんとも言えませんが。王城の装飾が美しいのは分かります」


仁「こっちの方が僕達的には控えめで優美な感じがして好感が持てるって事だよ、あ!そうだ!後で“スマホで写真“撮っていいかな?」


彩ちゃん「そうね、今日は皆んなでおめかししてるし、イネオス君達と合流したら記念に撮っておきたいわ!」


夢ちゃん「それいいね!記念に撮ってもいいですか?“アトリー君パパ“!」


父様「あ、うん、そうだね、いいよ、皆んなが揃ったら邪魔にならない場所で撮ろうか」


仁達「「「やった!」」」


 父様は一瞬自分が呼ばれたことにしっくりこなかった様子で返事を返した。

 その原因は仁達がこの世界に来て、僕達家族と過ごして行く中で名前の呼び方が他人行儀だった事を、つい昨日指摘し。そろそろ僕達の呼び方を変えてくれないかと僕が言ったのが始まりで、ようやく仁達は僕のことを“アトリーくん“と君付けではあるものの、あだ名で呼んでくれるようになった。その際に父様達の呼び方も堅苦しい“公爵様“からかなりフランクに“アトリー君パパ“にチェンジしたのだった。

 その要領で母様の事も“アトリー君ママ“になって、姉様達もあだ名で呼び合うことになった。その事に姉様達は喜び、父様は慣れない呼ばれ方に戸惑い、母様はこの呼ばれ方に新鮮さを覚え、終始楽しそうにしていた。


(“〇〇くんパパ“や“〇〇くんママ“って、向こうの世界では結構メジャーな呼び方なんだけど。こっちの貴族家庭じゃ“パパ・ママ“呼び自体が珍しいんだよねぇ。父様が戸惑うのも無理ないかぁ( ´∀`))


 さてはともあれ、仁達がこの世界に来たときに持っていた携帯電話・スマートフォンは、彼らが来て2日目には既に充電がなくなっていてもおかしくはなかったのだが。なんとも最近の子供達は用意がいいようで、太陽光での発電可能な充電バッテリーを完備していたそうだ。

 そのおかげで、電波はなくともスマホの機能は損なわれる事もなく、インターネットを必要としないアプリや、カメラの写真撮影や動画撮影になんら支障はないようで、仁達に出会ってから幾度となく写真撮影や動画撮影を一緒にして来ていた。

 そういう事なので、皆んな驚きもせず記念になるなら、と言ってノリノリで写真を撮ることになった。


(何なら、今回のパーティーの様子も動画で撮る事にしてるらしいからね・・・それに僕はもうここに来る前に足先から頭のてっぺんまで、舐めるようにプロ並みのアングルで動画撮影されたよ、彩ちゃんに・・・・ふぅ(。-∀-))


春雷『今も録画なさっているみたいですよ?』


 春雷の言葉で仁の胸ポケットからチラッと見えるカメラのレンズを見て、僕は軽く息を吐いた。


(そっかぁ、はぁ、じゃあ今はあそこから城内や僕達の後ろ姿を撮影してるんだろうねぇ( ´∀`))


 スマホが3人分あるので動画用2台と写真用1台で分けて、充電の容量を見ながら撮影する徹底さに僕は呆れたのだった。


天華『あそこがちょうどいい画角なんでしょうね・・・』


(まぁ、現代日本ではあり得ないシュチュエーションだからな、全て撮影したいと思う心は否定はせんが、本気度が半端ねぇんよ・・・(*´Д`*)、それになんか知らんが僕の成長記録的なのも撮影されてるんよね・・・)


雪花『ほぼ毎日ですもんね?』


夜月『仁の妹、アトリーにしてみたら前世での“姪・まどか“だったが、ゲーム内でのアトリーの大ファンだそうだからな、それでずっと撮影されてるんだろう?』


(そうなんだよねぇ、でも毎日撮る必要はないと思わん?)


ジュール『そう思ってても、アトリー断らないじゃん』


(う、・・・・可愛い元甥っ子に頼まれたら断れない・・・それに可愛い元姪っ子が僕の顔がゲーム内とはいえ好きだと言われれば、尚の事、断れない・・・僕は甥姪に甘い叔母さんなんだよ!(°▽°))


ジュール達『『『『『開き直った・・・』』』』』


 と、ツッコミを入れられながらも撮影は止めない僕だった・・・・

















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