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119話 “日々の営み“


 ダンジョンにようこそ!いっぱい楽しんでね!ははっ!

 

 ・・・・・て、感じのテーマパークの入り口に似た風景に懐かしさを覚える今日この頃の僕です・・・


(まじ、某人気テーマパークの入場ゲート前の長蛇の列じゃん、これ・・・)


 ダンジョンの入り口を覆うように建設されている建物、“ダンジョン入場管理棟“の中に入った僕達は入ってすぐに、今言った風景を見ている、建物内の中央部分をテーマパークでよく見る入場ゲートのようなカウンターで仕切ってあり、そのゲートに冒険者達が長蛇の列をなして賑やかに待っている、 その風景に何とも微妙な懐かしさを感じつつ周りを観察した。


「・・・あの人達は何をしているんでしょうか?」


 室内の隅の方で短剣に胸当てと言った軽い装備をした、複数人の子供達が何かを待ち侘びるように、入場ゲートに並んでいない冒険者達を見ていた、それとは別に見た目からして冒険者ではない人達が、冒険者ギルドにも置いてあるクエストボードの周りで、何かを書いてある紙や木の板を持って、冒険者達に声を掛けている、よく見ると紙や木の板に何かの素材の名前と個数、そして金額が書いてあった。


「・・・あれは、何かの依頼内容を宣伝しているのですか?ギルドでは見なかった内容のようですが・・・・ここでも依頼は受けれたのでしょうか?」


ジル叔父様「いいや、ここではギルドの依頼の内容を確認はできるけど受ける事はできない、アレは冒険者ギルドで依頼を出しても規定に沿わないとして却下された依頼を、依頼人本人が直接冒険者に依頼をお願いしているんだ」


「?・・・冒険者ギルドを通さずに冒険者が個人的に依頼を受けてもいいのですか?」


(あれ?規定では禁止だったような・・・?(・・?))


ジル叔父様「うーん、基本的にはダメなんだけど、あーやってダンジョンに来てまで依頼を頼む人達は、ギルドに依頼を出したくても金銭的に問題があって出せない人達が大半だ、その上、緊急性が高くて切羽詰まった人が多い、だからああやって冒険者達に必死にお願いしているんだよ、ギルドの規定ではギルドを通さず依頼を受けるのは原則的に禁止なんだけど、冒険者自身が個人的に採取した物を“譲る“と言う事に関しては自己責任で…、もしそれで問題が発生してもギルドは関与しないとなっている」


(あぁ、やっぱりダメだよね、でも冒険者自身が自分で使うために採取した物や多く取り過ぎた物を融通する、もしくはそう言う事でって感じか、・・・ふむ、そうなると切羽詰まった依頼者達的には一か八かって感じだな、すぐに受けてくれるとは限らないし・・・)


 ギルド的にはして欲しくないんだろうが生活困窮者を見捨てる訳にはいかず、冒険者個人の判断でって事でお目溢し、見て見ぬふりで見逃してるんだろう思った。


「・・・それはまた、もどかしいですね、彼ら依頼者側にしてみると賭けみたいなものですか・・・、一般市民の生活困窮者には冒険者ギルドに依頼を出すのも難しい人がいるんですね、だから、わざわざダンジョンの入り口まで来て、なけなしのお金で冒険者に必死にお願いするなんて危険な真似をするしかないとは・・・、依頼者側に国からの補助金が出れば、そんな危ない橋を渡らずに済みそうなのに・・・」


 どの国でもスラム街は存在する、それこそ、こんな大きな都市にスラム街が存在しない訳はない、そうなるとお金がなければギルドに依頼もできない人も当然いる、そんな時こそ行政の出番ではなかろうか、と思うのは前世での知識からきた独り言。


ジル叔父様&父様&サブマス「「「・・・・補助金か・・・・」」」


 僕の独り言で何か考え始めた大人達、そんな大人達に気づかず僕は別のことが気になった。


「?あれ?でも、あっちの子供達はなんであそこでじっと動かずに待っているんですか?依頼をお願いしている様でもなですし、それに装備をつけているって事は冒険者ですか?」


ドラーゴサブマス「ん?あぁ、アレは駆け出しの冒険者達が小遣い稼ぎに、ダンジョンに潜るベテラン冒険者達の荷物持ちの指名を待ってるんだよ」


ベイサン「荷物持ちの指名?ですか?」


ドラーゴサブマス「そうだ、お前達は性能の良いマジックバッグを持ってるから必要ないかもしれないが、普通は依頼品を自分の鞄に入れたりして持ち歩くんだぞ?依頼の品が量が多かったりするとどうしても手が塞がったり、荷物の多さで動きが鈍くなったりする、それではダンジョン内で危機的状況に陥った時に致命的な欠点になる、それを防ぐために受けた依頼の品やその量に応じて、駆け出しの冒険者達を日雇いで連れて行く方が、戦闘に専念できて危険が少なくなる、荷物持ちをした駆け出しの冒険者達も小遣い稼ぎもできて良い勉強にもなって、互いに利益があるから、ああしてダンジョンに入る準備をしている冒険者達を見てるんだ」


ヘティ「・・・?見てるだけ?ですか?・・・・・売り込みはしないのですか?」


「うーん、多分、売り込みをするにしても勧誘をされるとしても、互いの利害が一致しない事には揉めるからかな?(報酬の取り分とかで…)周りの迷惑を考えたら先輩冒険者方から、見込みのありそうな駆け出しの冒険者に声をかけた方が効率がいいからじゃないかな?」


ドラーゴサブマス「まぁ、そう言う事だ、駆け出し冒険者の方は、連れて行ってほしいベテラン冒険者を熱心に見て、視線に気づいて貰えれば交渉可能としている、ベテランの方も視線に気付いても荷物持ちが必要じゃない場合は無視すればいい、それとベテラン側から交渉するのも可能だが、駆け出しの方に3回断られたらスッパリ諦めるように、と言い含めている、それとこの交渉は冒険者ギルドの職員の目の届くところで行うこと、これを破り問題を起こした者には厳しい処分がされる」


子供勢「「「「「へぇ~、そうなんですね」」」」」


(意外としっかり規定があるんだねぇ、これなら揉め事は起こりにくいだろうね)


 サブマスの説明を聞いて感心していると。


ドラーゴサブマス「だが、このやり方はこの国だけのやり方だからな、よその国では気をつけるんだぞ」


イネオス「・・・この国だけの不文律?みたいな物ですか?」


ドラーゴサブマス「そうだ、そんな感じだな!アナトリ王国や獣王国辺りだと交渉が殴り合いになったりする、帝国だと犯罪に巻き込まれる確率が高くなる、国によっては冒険者の師弟制度みたいな物を導入しているところもある、ベテランの冒険者、少なくともCランクの冒険者が駆け出しの冒険者を面倒見ることで、冒険者としての技術を身につけさせる感じだな」


(おぅ、他国はそんなにリスキーな感じなのか、師弟制度の所は一歩間違うと師匠が弟子をこき使う感じになったりしない?良い師匠に出会わなかったら地獄じゃないか・・・、この国に生まれてよかったー!(≧∇≦))


 他国のダンジョンに潜るときは気をつけようと思った子供組達だった・・・


 こうして雑談している間にも僕達はダンジョンの入場ゲートの列に並び、自分達の入る順番を待っていた、その間にもうっかり僕を見てしまった人がフリーズし動かなくなってしまうのを何人か見かけてしまったが、それに気付いた護衛騎士達が周りから僕達を隠すように移動した。


父様「ふふっ、ほら皆んな、そろそろ私達の順番だよ、ギルドカードを出さなくていいのかい?」


「あ!今用意します♪」


 自分達の入場の順番が迫っていることを父様に教えてもらい、僕達は慌てて自分のギルドカードを用意した。


  そして順番が回って来て、まずサブマスが入場ゲートのギルド職員に話しかけ、今回の父様のダンジョンでの視察の説明をし、自身も定期視察できたことを話して父様に入場手形のような木札を渡した、その次に僕達子供勢や護衛騎士達が冒険者ギルドカードを提示すると、ギルドカードをレジについているバーコードスキャナーみたいな魔道具にかざした、すると、魔道具上部にある魔石?もしくは色のついたガラス玉?が一瞬光り、それを確認した職員が笑顔でギルドカードを返してくれた。

(僕の時はカードを手渡す時、職員のおねーさんが数秒フリーズしたが、カードを返してくれる時は凄く丁寧に渡してくれた、この人は多分、魔力が多い人だったんだろう・・・笑顔が素敵なオレンジ色の瞳をしたおねーさんだった、相当な手だれなんだろうなぁー、ダンジョンの入り口を担当するぐらいだから・・・( ´ ▽ ` ))


 とか思っている間に全員がゲートを通り終えると、僕は不思議に思った。


(あれ?そう言えばなんで父様は当日に、護衛騎士やジル叔父様達の指名依頼を申し込んだんだろう?)


 いつもなら事前に書類を提出して抜かりなく用意するはずなのに・・・と考えていると。


ドラーゴサブマス「はぁ~、めんどくせ~、ここのダンジョン手応えなさすぎて面白くないんだよなぁ~」


 と、ぶつぶつ文句を言っているサブマスを見て・・・


(あ、この人を逃さないために指名依頼を当日させたんだ!(°▽°))


 と、一発で悟った。


 1人で黙って納得し小さく頷いていると。


父様「どうしたんだい、アトリー?」


「あ、いいえ何でもありません、父様、父様こそ何かありましたか?」


父様「あぁ、皆んなが装備の確認をしているから、アトリーもちゃんと不備がないか確かめるんだよ」


「はい♪」


 父様に促されて自分の装備を確認して、オーリーにも確認してもらい、いざ、ダンジョンへ!・・・と、思ったら、ダンジョンの入り口前に並ぶ石柱に見覚えがあった・・・


(あんれぇ~?この石柱どこかで見たような・・・・?どこだっけ?)


 マジマジとその石柱を見てると、石柱に刻まれている独特な模様にピンっときた。


(あ!これ、古代エジプトの神殿に建ってた石柱に似てる♪模様は微妙に違うけど雰囲気はそっくり♫・・・・ん?でも何で古代エジプトの石柱がここに?・・・あ、・・・そう言うことかぁ(*゜▽゜*))


 石柱が並ぶ先にエジプトにある神殿のような入り口が見えた、入り口の両脇には慈悲と豊穣の女神アナトフローラ様と、技能と工芸の神レゴンコシャル様を模したと思われる石像が2体鎮座していた、慈悲と豊穣の神であるアナトフローラ様がいる事で、このダンジョンがこの国に必要な資源が取れることを示し、技能と工芸の神であるレゴンコシャル様の石像は技術の向上を願って据えられたんだろう、と思った僕だった。


(要は文明の発展と繁栄を助けるためのダンジョンって事か・・・、しかし何故エジプト風?)


ジュール『主神様の趣味』


(・・・・・ティーナちゃんの趣味かぁ~( ´ ▽ ` )・・・・)


 それ以上は深く突っ込まないことにした僕は偉いと思う。


ドラーゴサブマス「じゃあ、予定通り進むぞ、気を引き締めろよ」


「「「「「はい!」」」」」


 皆んなの装備点検が終わりダンジョン入り口に向かう準備が整ったので、馬車であらかじめ決めたポジションに移動し、そのまま進み始めた、子供勢はいつもの様に陣形をとりその後ろに大人達が僕らを見守る形で着いてくる、入り口には人がどんどん入って行っているけど、僕達を見るとサッと避けて先に行かせてくれた、軽く会釈をして、そこまで大きくないダンジョンの入り口の中に入ると・・・


「わぁ~、階層型のダンジョンだとは聞いていたけど、遺跡と自然が混じり合った内部構造だったんだ」


 ダンジョンの入り口を潜り真っ先に目に入ったのは視界一杯に広がる森、その奥にエジプト風の遺跡が森の樹々や草花、蔦などに塗れた状態で鎮座していた、雰囲気はエジプトと言うより古代メキシコのアステカやマヤ文明の遺跡に似ている。


(うーん、緑豊かでマヤ文明の遺跡っぽい、でも、模様はエジプト風なんだよなぁ~、まぁ、古代エジプト文明が栄えていた時は、砂漠ではなくて緑豊かな場所だったかもしれないって都市伝説もあるから一概に砂漠イコール、エジプトってわけでもないんだよねぇ、そうなるとここは古代エジプトが砂漠にならなかった未来を模しているのかな?まぁ、どっちにしろ神秘的で素敵だからいいか・・・)


ベイサン「ここも、意外と広い野外型だね・・・」


イネオス「まぁ、完全な野外型とは言えないみたいだけどね、あそこの遺跡のような建造物は中に入れるのかな?」


ヘティ「あ、中から人が出てきているみたいだから、中には入れるみたいよ?」


ソル「だとしたら、遺跡内にも魔物が出てくるのか?」


「うーん、どうなんだろうね?安全地帯なのかもしれないし、・・・中に入ってみる?面白そうだし♪」


ソル「アトリー様はただ単に遺跡内の見物がしたいだけでしょう?」


「うん♫」


ヘティ「アトリー様正直ですね、ふふっ」


イネオス「ふふっ、じゃあ中に行ってみましょうか」


「「「「はーい♪」」」」


 ダンジョン内を楽しそうに和気あいあいと話しながら進んでいる様は、どうも緊張感に欠けるらしく周りで警戒しながら進んでいる人達は、僕達をみて怪訝そうな顔をしていた。


「おい、あれ、ここが何処か分かってやってんのか⁉︎」「何のためにサブマスとここに来てんだよ、これだからお貴族様は」「ピクニック感覚でダンジョンに来るんじゃねぇよ」「サブマスとジル様を護衛にダンジョン探索とかふざけてんのかしら?」「お綺麗な顔してもやっぱり貴族は貴族なのか」「貴族の子供の腕試しに来てるだけじゃねぇか?」


 ガサガサッ!「ギャッ!」「ギャッ!」


「「「「「!」」」」」 「しっ!」シュッ!「ウィンドエッジ!」ヒュッ!


「ん、2人ともお見事、ヘティ、魔法発動が早くなったね、今度、無詠唱に挑戦してみようか、イネオスも投げナイフがちゃんと額に当たってるから、身体強化がムラなく行えてるね、次からは武器に魔力を纏わせて切れ味と貫通力を上げていこうか、ベイサンもちゃんとすぐに防御の体制に入れているから、今度は攻撃の受け流し方を教えて貰おうね、ソルは伏兵の警戒ご苦労様、あともう少し探索範囲を広げて見たらいいかもね、そしたら人の声で集まってくる魔物も感知できるはずだよ」


「「「「はい♫」」」」


「じゃあ、先に進もうか」


 いろいろ周りから言われながらダンジョン内の森の小道を進んでいると、その小道の脇からゴブリンが2体棍棒を持って僕らを襲ってきた、それにすぐさま気付いた僕達、大人組は武器に手を置きすぐに参戦できる状態で見守る姿勢に入ったと同時に、イネオスが投げナイフを投げゴブリンの眉間に命中させ、ヘティは詠唱破棄で“ウィンドエッジ“を放ちゴブリンの首を切り裂いた、見事倒した2人と陣形を乱さずそれぞれの役割を果たしたソルとベイサンを褒めて、次回からの訓練のメニューの変更を検討した。


「えぇ⁉︎何だ今の!」「早くなかったか⁉︎」「あの歳で“詠唱破棄“って凄くない⁉︎」「てか、何で銀髪の子、何もしてないのにあんなに偉そうに指示してんだ?」「本当だね、周りに使役獣までいて守って貰ってるのに凄く偉そう」


 ドコンッ!「「「「「な、何⁉︎」」」」」


 少し離れた所から大きな音が聞こえた、それに驚いた人達がそちらに注目した隙に僕らは先に進み始めた。















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