114話 ドゥーカ領に到着!
はい!どうも!こんにちは!僕です!今はコミス領を抜け、ドゥーカ領の領都に向けて森の中を馬車で移動している最中です!
「ほわぁ~、聞いていた通り、ずっと森の中の一本道なんですね」
父様「そうだよ、この道の先に街がもう1つあって、そのもっと奥にドゥーカ領の領都、“ペルペティアメソン“があるよ」
「へぇー、じゃあ領都は森の真ん中にあるんですか?」
父様「いいや、この森の中央にはそこそこ大きな泉があってね、その横に領都を築いているんだよ」
「泉があるんですね、綺麗なのかな?ダンジョン以外にも観光できる場所があるんですね、楽しみ♪・・・ん?あれ?じゃあ、ダンジョンはどこら辺にあるんですか?領地内に3つあるんですよね?」
(ダンジョンに囲まれた領都って売りだったはず・・・、だから、冒険者も多くて賑やかな領地だってジル叔父様が言ってたし、実際この森の入口にあった街にもたくさんの冒険者を見かけたから、ダンジョンに用がある人達なんだろう、でも、そこそこ大きな泉が隣にあるって事は、領都の近くにはないのかな?)
*ドゥーカ領は領地の大半が森となっていて、その中央にある泉の隣に領都を築いたことで、領都から隣接する領地に最短ルートで行ける道を三方向に作っり、どこから入っても領都を必ず経由できる道でとても利便性に富んでいる、そこに様々な資源が採取されるダンジョンが3つもある事で、冒険者を始め色々な業種の商人や職人達が集まったことでかなり栄えて、国としても重要な領地なのだ、なので、この領地の領主は王家の血を引く公爵家が代々治めている。
父様「あぁ、ダンジョンは領都から1日で行ける場所ばかりだよ、1番近いダンジョンはさっき言っていた泉のすぐそばにあるんだ、領都からも馬車で数十分の場所だよ、だから心配しなくても、ちゃんとダンジョンに連れて行ってあげるよ」
あ、そうそう、毎度、街から街への移動中は快適だったから忘れがちだけど、普通の馬車だったら倍以上の移動時間がかかるんだって、僕達貴族が乗っている馬車はやたらサスペンションが効いていて、魔道具とかも使って中に乗っている人に極力負担をかけない仕様になっている、前世の自動車並みの快適さだよ、この馬車はこの国が建国された時からかなり優秀で、建国に携わった勇者が心血注いで開発・製作したんだって、この国では一般市民でもそこそこ普及しているから気づかなかったけど、この国の馬車のクオリティは他国ではあり得ないほど高いので、輸出されていく馬車の数は世界1位らしい、それに他国と違い都市間の街道の整備基準が厳しく法律で定められていて、国内の街道の殆どはボコボコしてない、それも移動時間の短縮に一役買っているそうな。
あと、言い忘れてたけど、ここに来るまで動物やおとなしい魔物達との交流はいつも通りだった・・・
(建国時の勇者は多分、自動車の構造とかに詳しい人だったんじゃないかな?あ、でも、この国の上下水道の仕組みや汚水の浄化魔道具とかもその勇者が作ったってきいたし、一概に自動車に詳しいだけではないのか?まぁ、物知りな人だったんだろうね・・・)
「そこは心配してませんけど、ダンジョンからそんなに近い場所に領都があって大丈夫なのですか?」
父様「それは大丈夫、領都の城壁は頑強だし、領都内には屈強な冒険者達がたくさんいるからね、それに、ドゥーカ領のダンジョンは常に冒険者達が入っているから氾濫する事はない、だから何の心配もいらないよ」
(そうだよね、冒険者達がたくさんいる事で有名な街なんだから、氾濫が起こってもすぐに対処は可能か、そもそも氾濫を起こすほど長くダンジョンが放置されることもないか・・・)
父様の話を聞いて、領都からダンジョンまでの距離があまりにも近いので少し心配したが、父様が心配いらないといった理由がもっともだったので、無用な心配だったなと納得した。
「なら良かったです、うーん、じゃあ今回はその領都の近くにあるダンジョンに行くことになるんですね?」
父様「そうだね、そこは初心者でも踏破するのは難しくないダンジョンだから、アトリー達には少し物足りないかもしれないけど、出てくるアイテムが豊富で飽きが来ないらしいよ」
「色んなアイテムが出てくるんですか?」
母様「アトリーが喜びそうな物も出ると聞いてます、確か、様々な色の染料を落とす魔物がいるそうですよ、他にも珍しい布地の材料が出るとか・・・」
(染料か確かに“色折り紙“作るのに欲しかったけど、布地の素材まで出てくるのかぁ)
ここ数年の間に、色々とやりたい事を自重なく進めてきた僕に母様は、僕が以前、頭を悩ませていた折り紙の色付けに使えるかもしれないと、染料の話をしてくれたようだ。
「染料に布地・・・“服飾関連“の素材が出てくるダンジョンなのですか?」
父様「それだけではなくてね、家具や食器などに適した素材も出てくるんだよ、たまに素材じゃなくて、布や食器そのものが出て来たりするらしいけど、数は少ないね」
「?・・・・“日常生活“に必要な素材や物が出てくるんですか?じゃあ食材も?」
父様「うん、出てくるよ」
(・・・・・このダンジョンがあればいつでも生活できる♪“新生活応援“ダンジョン!一度は来てみてね!・・・・・ぶふっWWW(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎))
天華『このコンセプトのダンジョンはどの国にも必ず1つはあるそうですよ』
電化製品のテレビのCMみたいに言ってみて、自分で吹き出してしまった僕に天華が冷静に情報を投げてきた。
(マジか・・・それって本当にその国の住民となった人達の生活の安定に役立てろって事?)
天華『まぁ、多分そう言う意図はあったのでしょうね』
(おう、住民への気遣いが半端ないダンジョンだったか・・・)
神々に指示されて創ったかはわからないけど、精霊達がダンジョンを創っている事はマルキシオス領で判明しているので、今回行くダンジョンを創った精霊達は、国ごとに必要なものを生み出せるダンジョンを生み出したのだろう、そう思うと精霊達はとても僕達人間を気遣ってくれているのが良く分かって、凄く嬉しく思った僕だった。
「凄いですね、そのダンジョンで魔物を倒せば、ある程度生活に必要なものが手に入るなんて、そうなるとあと2つのダンジョンはどんな物が出てくるダンジョンなのか気になりますね、場所的には領都から1日以内にあるとの事でしたけど、滞在中には行けない場所ですか?」
父様「うーん、連れて行ってあげたいけど、領都から通うのは難しいかな?今日これから泊まる街が、ドゥーカ領にあるダンジョンの内1つの最寄りの街になっているよ、そこからも少し距離があるからね、立ち寄るのは無理かな、・・・あ、あそこに見える大きな岩山の北側の先端、その真下にダンジョンの入り口があるよ、あの岩山が見えて来たって事は街まで後半分ぐらいかな?」
そう言って父様が馬車の外を指差した、それを目で追って馬車の外の風景を見た、そこに見えて来たのは遠目ではあるがそこそこ大きな岩山で、僕達の進行方向の北側に角のように尖った形をしている岩山だ、その麓にダンジョンがあるとの事だが、ぱっと見では近いように見えて遠い、次の宿泊地まで約半分の距離と言うから、見た目以上にあの岩山は大きいのだろう、そうなると最寄りの町のさらに奥にある領都からはそのダンジョンはかなり遠い、どう考えてもダンジョンから領都を行き来するだけで1日が終了しそうだ。
「そうですか・・・、次の機会があったら行ってみたいです・・・」
(ぬぅ、一旦ダンジョンの入り口まで行ければ、領都からでも僕の魔法の“テレポート“で一瞬で着くのに・・・)
母様「まぁまぁ、アトリー、そうガッカリしないで、ダンジョンはここにあるだけではないわ、国内にはもっと色んな場所にあるから、学園を卒業したら国内のダンジョンを巡ってみるのはどう?その時のお楽しみにとっておきましょう、ね?」
母様がもう一つのダンジョンに行けないと知って、ガッカリしている僕に学園を卒業した後の目標を提案してくれた。
「!、それいいですね♪僕、学園を卒業したら国内のダンジョン全てに行ってみます!できたら全部のダンジョンの最下層まで行って、ダンジョンを完全攻略してみたいです!」
(元々、学園卒業後は国内を冒険者活動しながら旅する予定だったし、そこにもう1つ目的が加わってもいいよね!目指せ!ダンジョン完全クリア!)
母様「ふふっ、まぁ、凄い目標ができましたね、無理のない範囲で楽しんでねアトリー」
父様「ははっ、これはまた壮大な目標だね、国内には確認されているだけでも、10個以上のダンジョンがあるのに、その全ての完全攻略をするとなると、凄い時間がかかるよ?・・・うーん、アトリーにとったらそう難しい事ではないかも知れないだろうけどね・・・、まぁ、父様はその目標はいいと思うよ、応援するから楽しみながら頑張りなさい」
「はい♫」
学園卒業後の予定に新たな目標も加わり、ウキウキご機嫌で次の街までの道のりを過ごした僕でした・・・ーーー
ーーーー・・・二日後・・・・
(おす!おら、アメトリン!今日は朝早くから元気いっぺぇだぞっ!)
はい、どうも!朝からふざけるほどご機嫌な僕です!
先日の午後にドゥーカ領の領都“ペルペティアメソン“に入り、ドゥーカ公爵家のお屋敷に着き、ジル叔父様に歓迎されて一晩たった、そして今日!前々から父様と約束していた“新生活応援ダンジョン“、いや正式には“日々の営みダンジョン“へ行く日となりました!
(ワクワク、どんな魔物がいるのかな?そして、その魔物を倒したらどんなアイテムが出てくるかな?)
こんな感じで心の中は落ち着きはなく、ジル叔父様のお屋敷の応接室でイネオス達のお出かけ準備が終わるのを待っています。
ついでに言うと、ジル叔父様のお屋敷は凄く堅牢そうな城塞みたいな外観で、もの凄く広いです、ですが、この屋敷の主人はいつもどこかにフラッといなくなるジル叔父様なので、宝の持ち腐れ感が凄くします、でもここのお屋敷、いや城塞で働いている人達はジル叔父様のことをとても尊敬していて、来客の僕達にも最高のおもてなしをしてくれる、優しい人達なので、ジル叔父様が留守がちでもこの城塞は常にベストな状態を保っているんだとか。
(まぁ、半数以上が当代の影騎士団の団員達だろうから、スパイとかは入り込む隙なんてないんだろうねぇ・・・)
それに今回は部屋が余っていると言う理由で、子供達は1人一部屋ずつ泊まることになったよ!イネオス達と同じフロアの部屋でお隣さん同士だった、希望者は親と同室になれるけど、僕達は速攻で1人部屋の個室を借りたよ、少し母様達が心配そうにしてたけど、ここ最近ずっと同じ部屋で寝起きしてたので、流石に今回ばかりは我儘を言って1人部屋にしてもらった。
滞在中はイネオス達とダンジョンに潜る予定なので、夜は僕の部屋で翌日の予定の相談をする約束もして、夜遅くなりすぎると月詠様の加護の影響で僕が急に寝落ちしたら解散っていう、申し訳ない解散の仕方になるのは今の悩みどころだ・・・
そんなこんなで、今は朝食を父様達ととって、ダンジョンにいく用意を早々に終わらせて、ソルと2人で準備万端で皆んなを待っている次第です、はい。(あ、もちろん天華達も一緒に待ってるよ!)
ソル「アトリー様、今日はとてもご機嫌ですね」
「うん!早くダンジョンに行って、たくさん冒険したいんだ♪ソルもダンジョン楽しみでしょ?」
ソル「僕も凄く楽しみです♪今日1日でどれだけダンジョンを進めるのか試してみたいです!」
「だよね!どんな構造のダンジョンなんただろう?昨日は父様にあえてダンジョンの中の構造は聞かなかったから、早く行って中を探索してみたいよ!それに滞在期間中にダンジョンのボスを倒して完全攻略できるか試してみたいよね♫」
こんな感じでソルと2人でダンジョンの話をしていると、イネオス達が準備を終わらせて応接室に入ってきた、そこに冒険者風の装備を纏ったジル叔父様と父様が合流した。
「わぁ、父様も一緒にダンジョンに入るんですか?」
連れて行ってくれると言っても、ダンジョンの前まで見送りに来てくれる感じだと思っていた僕。
父様「そうだよ、ちゃんと連れて行ってあげるって約束しただろう?」
「はい、約束してくれましたけど、僕は父様が冒険者ギルドに入ってたなんて知りませんでしたから、てっきりダンジョンの前までお見送りしてくれるものと思ってました・・・」
父様「いいや、私は冒険者ギルドに登録はしていないよ、貴族の領主としての“視察“と言う形でアトリー達に着いていくんだよ、ジルを護衛として雇ってね♪」
パチッンと爽やかにウィンクして笑った父様にイネオス達は驚いている横で、僕は“ほぉー“っと感心した。
(“視察“・・・冒険者登録しなくてもダンジョンに入れるなんて、そんな、抜け道があったんだねぇ、それに、ジル叔父様まで雇ってこき使う気満々だ・・・(。-∀-))
今回入るダンジョンは、冒険者ギルドがちゃんと管理していて、入り口で冒険者ギルド職員がギルドカードの確認作業を実施しているので、冒険者以外の人は気軽にダンジョン内に入ることはできない、なので、冒険者登録していない他の家族や兄弟達はダンジョンに行く事ができないのだ、それで父様は領主としての視察と言う形でダンジョン内に入れる事になった、そこで少し問題になったのが父様の護衛はどうするかと言うことだが、それもすぐに解決した、それは実に単純なことだった、元々冒険者登録をしていたジル叔父様とデューキス公爵家の護衛騎士達数人を、指名依頼として雇い一緒に入ることで万事解決した。
ジル叔父様「アトリー、君の父親は俺をこき使う気満々だよ、ひどいと思わないか?はぁーっ」
(あ、すでに分かってるんだね、こき使われるの・・・南無!)
「えーっと、僕達は経験豊富なジル叔父様が一緒に行ってくれると、とても頼もしいと思いますよ?」
大袈裟に深いため息を吐いたジル叔父様に苦笑いしつつ、ダンジョンに向かうため城塞のエントランスホールに移動した、エントランスホールでは母様や他の兄弟達が来ていて、にぎやかに見送ってくれた、僕達は大きめの馬車に全員で乗り込み、冒険者スタイルの護衛騎士達が馬に乗って護衛体制に入ったら発車した、外にまで見送りに出てきていた家族に手を振っていると、馬車は速度を上げ城塞の門を潜った。
(やっぱり大きいなぁ~、これ、もう他所の小国の王城並みに大きいよね・・・、まぁ、万が一ダンジョンが氾濫した時のための市民達の避難場所だろうから、ここまで大きくなったんだろうけど、しかしでかいわぁ~)
領都に入る前も同じことを思っていた僕、この城塞は最終防衛ラインであって、他にこの街を守るものは存在する、この領都には王都の城壁並みに高く頑丈そうな壁が二重になって建ててある、1番外側の壁はどこの領地の壁より高く厚さがあり、余程のことがない限り破られることはないんだとか、そこまで大きな城壁を建てたのは、やはりダンジョンがほど近い場所にあるからだろうと思っていたが、これが一度もそのダンジョンが氾濫を起こしていないので、役に立っているのかは微妙だ・・・(まぁ、ダンジョンの外にも魔物はいるから役には立っているはず・・・多分・・・)
そんな事を思いながら街中を走る馬車の窓から外を眺めていると、まだ街の中だと言うのに馬車が第一城壁と第二城壁との中間にある冒険者ギルドの前で停まった。
「?冒険者ギルド?」
(うん?何か用だったかな?ダンジョン内で採取できる依頼でも受けるのか?)
ジル叔父様「ちょっと、ここでする事があるからな、その間アトリー達も何か依頼を見てみるといいぞ、ダンジョン内での簡単な素材採取の依頼とかが大半だから、君達でも問題ないはずだ」
「「「「「はーい!」」」」
皆んなで顔を見合わせ頷いて元気いっぱいに返事をした。
(依頼を多くこなせばランクも早く上がるから、簡単な素材採取の依頼ぐらい受けとく方がいいか)
父様「ふふっ、さぁ皆んな、気をつけて降りるんだよ」
皆んなワクワクした顔で馬車を降り、ドゥーカ領で1番大きいと言われる冒険者ギルドに入って行った。