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105話 アトリーの逆鱗2 第三者 視点



 両親と話して、少し落ち着きを取り戻したアトリーを見て、カシミールは振り返り、イネオス達と兄弟達を見渡した。


カシミール「貴方達にこれだけは言っておくわ、今、貴方達が怪我もなくこうして無事なのは、アトリーが貴方達の事を“守るべき身内“と認識しているからよ、あの子が本格的に敵と認識したものには基本的に容赦はしないの、特にイネオス君達以外の人達は、自分がイネオス君達の兄弟だった事を幸運に思いなさい、アトリーは優しい子だから自分が疎まれていると分かっていても、友人の兄弟に敵意を向けたりはしない、むしろ、イネオス君達が悲しまないようにと気を使うわ、あの子が神殿であんな風に貴方達の事を言ったのだって、イネオス君達を安心させるため、そして私達が何の利益も求めない関係を続けているのは、ただ、アトリーが心から気が許せる友人がイネオス君達だったから、それだけよ・・・、勘違いしては駄目」


(彼らがアトリーを貶している訳ではないけれど、あの子のとった行動の真意だけは勘違いして欲しくはないわ、アトリーは優しいから自分からそんな事は絶対に言わないし、無意識にやっているでしょうから・・・)


 今さっきまでのやり取りを静かに見ていたカミィは、イネオス達の兄弟が自分達の立場を勘違いしないように釘を刺した。


「「「「「っ!・・・」」」」」


ジョナサン(っ!これは、あの方に嫉妬した俺達に言ってるんだな、確かに今俺が無事なのはイネオスの兄だからと言う点だけ、ただ、それだけで、この場までこれて、デューキス公爵家、マルキシオス侯爵家にお世話になっている、しかも普通なら到底あり得ない待遇で…、それなのに俺はあの方に分不相応な嫉妬心を持っていたなんて・・・、あんな事まで言わせてしまった・・・、まだ10歳なのに・・・・)


ーーーー「ーー皆んなのご兄弟が僕を怖がるのは仕方ないーー」ーーーー


シュリヒト(僕が勝手に対抗意識を持って、あの魔力量に嫉妬しても、あの方は僕達を“守るべき身内“として認識しているなんて・・・、神殿で感じたあの凄まじい魔力に恐怖するしかなかった僕達にーーーー「ーー言っちゃ悪いと思うけど僕は面倒くさがり屋だから、僕の事で怖がる人の為に、僕がいちいち何かしてまで仲良くなりたいなんて思わないんだーー」ーーーーとか言ってたのに守って下さるなんて・・・・)


エミリー(ヘティがいつもあの方を褒め称えているのは、“到底私達には理解出来ない力を持った人“だからだと思ってた、もしかしたら“人では無いかもしれない“と言ったこともある、だって、何もかもを見透かすような、あの恐ろしいほど美しい“アメトリンの瞳“で見られると、近寄りがたくて体が震えた、なのに、あの方は・・・・)


ーーーー「ーー僕みたいな異常な魔力量を持った子供が、いつ魔力暴走を起こすかなんて、考えただけでも恐ろしいのは普通だ。ーー」ーーーー


 アトリーの姉カシミールが直接、自分達に釘を刺してきたことで、どれだけ失礼な言動をしていたか気付かされた。


イネオス「はい、理解しています、カシミール様、僕達はアトリー様の友人として、1人の人間としてのアトリー様の良き友人でありたいです」


ベイサン「僕もアトリー様の友人として、肩を並べて切磋琢磨し、楽しい冒険がしたいと思っています」


ヘティ「私もアトリー様と楽しい思い出を共有し、気兼ねなく心許せる友人関係を保ちたいと思ってます」


カシミール「・・・・ごめんなさいね、本当はこんな事言いたくは無かったんだけど、アトリーが常日頃からありとあらゆ視線を受け、心の中で何を考えているか分からない人達と過ごしている中で、唯一、貴方達だけがあの子にとって心許せる友人だから、私達は心配だったのよ」


イネオス達「「「カシミール様・・・」」」


カシミール「それにもし、貴方達が何かしらの影響を受けて、アトリーの信頼を裏切る事になったりしたら、あの子が一生心を閉ざしてしまいそうで怖かったの…、でも、貴方達の言葉を聞いて少し安心したわ、これからもアトリーと仲良く遊んでちょうだいね♪」


クラリス(やはり、あの方は美しいだけじゃなかった、カシミール様が言うとおり、普通だったらただの下位貴族の子である私達は、お目通りすら難しい方と一緒にいれるだけでも奇跡に近いのに、私はあの方に自分勝手で分不相応な嫉妬して、不快な思いをさせてしまってた、あの方はあの方なりの悩みもあったのに…、自分が恥ずかしい・・・)


ーーーー「ーー生きていれば色んな人にたくさん会うでしょう?世の中には色んな考えを持った多種多様の人達がいる、その人達全員に僕の事好きになって貰えるなんて思わないよーー」ーーーー


キャロル(以前の私なら、カシミール様の言っている事を深く考えなかったかもしれない、あの方は誰にでも愛されているのにって、でも2日前の訓練の日に聞いたお話で少しだけ分かった、あの方はご自分の周りをいつも気にしなきゃならない、気の抜けない毎日を送ってらっしゃるから、その日常をご家族は心配なさっていただけなんだわ、あの方は特別な存在だから…、そしてあの方にとってご家族やヘティ達は、気を遣わず、ありのままのご自分を受け止めてくれる、かけがえの無い存在なのでしょうね…、あの方にとっての特別な存在、だから、先程の襲撃犯達にあの方があれほどまでに怒ってらっしゃった・・・)


ーーーー「ーー僕はね、色んな意味で特殊な僕の事をよく理解してくれて、それでも友達でいてくれる人が数人いれば良いと思ってる。ーー」ーーーー


 アトリーの心情やアトリーとイネオス達の関係をやっと理解出来たことで、深く反省した様子の2人、アトリーの言葉を心に刻んでいると、両親との話しが終わったアトリーが、ご機嫌な様子でこちらに戻って来た。


アトリー「皆んな大丈夫だった?怖くなかった?あ、マディラはご機嫌だね♪ふふっ」


ソル「僕達は平気ですよ、アトリー様の方こそお怪我はありませんか?」


アトリー「ふふっ、全然平気♪」


ヘリー「あら、アトリー、何やらご機嫌ね?」


アトリー「うん、あのね、最初は自分勝手に動いたから父様に怒られるかなぁー、って思ってたんだけど、主犯の海賊と依頼人の1人を捕まえて、皆んなも怪我なく無事だったから、“良くやった“って父様が褒めてくださったんだ♪、だから嬉しくて♫うふふっ♪」


「「「「「ぐふっ!!」」」」」


 ご機嫌で、浮かれMAX状態のアトリーの笑顔は、それはもう、破壊力が凄かった・・・、心臓へのダメージが入った者達が胸を押さえ、鼻へのダメージが入った者達は手で鼻を押さえた、両方にダメージが入った者は両方を押さえて、アトリーを直視できずにうずくまった、そのタイミングでアトリーは状況説明の為その場を離れた事で、それ以上の被害は出ずに済んだ・・・


ソル「ふふっ、あれはかなりご機嫌ですね、怒られて落ち込むと思ってましたが、それがないようで安心しました」


ヘティ「そうですね、良かったですわ、それにしても、ソルはいつも平然となさってますわね・・・」


 少し鼻にダメージが入ったヘティがハンカチで鼻を覆いながら聞いてきた。


ソル「?・・・あぁ、あのようにご機嫌のアトリー様を見るのは初めてではありませんし、慣れてしまえば心臓の鼓動の制御に鼻の粘膜を破らない方法もありますから・・・」


 何故か変な慣れ方をしていたソルドアは空に視線を投げたのだった・・・


(((((今まで何があったんだろうか・・・気になる!・・・)))))

(((((心臓の鼓動の制御ってなに⁉︎)))))

(((((鼻の粘膜を破らない方法って⁉︎)))))


 ソルとアトリーの今までの間に何が起きたのか、とても気になりはするが、それと同じぐらいソルの言う対処法が気になった面々、だが今、言及する場面ではないので誰もソルに詳細を聞かなかった・・・


エバン(いつも思うが、このソルドアって、イネオス達よりあの方と付き合いが長いからか、やたら、あの方の事を気にかけるよな、心情を読むのも上手いし、武術の腕もあの方に負けないぐらい強いし、今回の事もすぐにあの方が何で怒ってる事か気づいたし・・・)


エバン「なぁ、なんで、お前はあの方の側にいるんだ?」


 自分の中で湧き上がった疑問を素直に口に出して聞いた。


ソル「?、僕ですか?・・・僕はアトリー様の従者 兼 執事です、その前にアトリー様の幼馴染でもあります」


 その質問にごくごく当たり前の事を答えた。


エバン「それは知っている、そうじゃなくてだな、あの方が将来冒険者として独り立ちする時もお前は着いて行くんだろ?でもお前はソンブラ子爵家の跡取りだろ?なのにお前まで冒険者になってまであの方の側に居続けるのはなんでなんだ?ってことが聞きたいんだ、そこまでする理由はなんだ?」


ソル「・・・・それは、アトリー様と僕は切っても切れない繋がりがあります。・・・・ーーーそれに・・・ざざざざーっざざざーざざざーーっ・・・ーーー」


 途中でいつもの少年らしい幼い表情の上に、何かを固く決意したような切実な表情をした、見知らぬ大人の顔がダブったように見えた、そして続けて何か言っているように見えたがノイズが入ったように声が聞き取れなくなった。


エバン「え?切っても切れない?なんだそれ?それに後半何言ってるか聞こえなかったぞ?」


 エバンはソルの言葉を理解しようとしたが、途中からさっぱり声が聞こえなかったのでもう一度聞き返す


ソル「?後半とは?」


 ソルはなんのことか分からないと言った表情で返した。


「「??」」


 互いにハテナマークを浮かべて首を傾げた、そしてソルは少しの疑問を残し、改めて姿勢を正し、こう言った。


ソル「理由、でしたよね?・・・僕は幼い時にアトリー様に命を救われて以降、アトリー様のお役に立ちたいと思ってきました、ですがアトリー様はそんなことはお望みではありません、ただ、普通の友人として一緒に過ごしたいといつもおっしゃってくださいます。

 今回のようにご家族や僕達に危害や悪さをする人達には容赦をしないので、恐ろしい方と誤解されがちですが、アトリー様は誰よりもお優しく頑張り屋で、ご家族や僕達を凄く大事に思ってくださいます。

 なので、僕は少しでも負担を軽くしたい、誤解されがちなアトリー様の良き理解者でありたい、そして他の方を優先し、ご自分を大切になさらないアトリー様を何より、1人にさせたくない。

 その為に僕は、僕達はアトリー様に置いて行かれないように、一緒に横に立つために、いつも努力を惜しまず自分を鍛えているんです」


 ソルの言葉はとても10歳の子供が考えるような言葉ではなかった、だがその言葉に同意するようにイネオス、ベイサン、ヘティが真剣な目をして頷いた、これを聞いていた周りの人達は感心したり、驚いていたり、誇らしそうに微笑んでいた。


エバン「そうか、お前達はもうちゃんと自分の道を見つけてたんだな・・・・凄いな」ボソッ


 エバンは自分には無い高い志を持った弟達がすごく眩しく感じた、そして、自分にもこんな素晴らしい目標を持とうと心に決めたのだった。






    *イネオス達の家族構成紹介*



+ヴィカウタ子爵家+


 父:ブラーブ・ノブル・ヴィカウタ 子爵家当主


 母:クラジュール・ノービレ・ヴィカウタ 子爵夫人


 長男:カレジャス・ノブル・ヴィカウタ 19歳


 次男:ジョナサン・ノブル・ヴィカウタ 16歳


 長女:クラリス・ノービレ・ヴィカウタ 14歳


 三男:イネオス・ノブル・ヴィカウタ 10歳



+ダンロン男爵家+


 父:オネスト・ノブル・ダンロン 男爵家当主


 母:プルスア・ノービレ・ダンロン 男爵夫人


 長女:オードリー・ノービレ・ダンロン 18歳


 長男:シュリヒト・ノブル・ダンロン 15歳


 次男:エバン・ノブル・ダンロン 14歳


 次女:ニコーラ・ノービレ・ダンロン 12歳


 三男:ベイサン・ノブル・ダンロン 10歳



+バロネッカ准男爵家+


 父:ツァルト・ノブル・バロネッカ 准男爵家当主


 母:ジャンティナ・ノービレ・バロネッカ 准男爵夫人


 長女:テネリタス・ノービレ・バロネッカ 16歳


 次女:エミリー・ノービレ・バロネッカ 14歳


 三女:キャロル・ノービレ・バロネッカ 12歳


 四女:ヘンティル・ノービレ・バロネッカ 10歳



*参考までに記載しました、お役に立てましたら幸いです。(^人^)











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