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104話 アトリーの逆鱗 第三者 視点


*アトリーがマディラをニュネス夫人に預けて飛び出した後のお話・・・


>=====<>=====<>=====<


  第三者 視点


ソル「!、待ってください!アトリー様!」


 すでに飛び立ったアトリーを追うのはソルドアにはまだ難しく、飛んでいったアトリーを悔しそうに見送った。


ソル「っ、はぁー」


ヘティ「また、置いて行かれてしまいました・・・」


イネオス「そうだね、いつになったら一緒に行けるんだろうね、僕達は・・・」


ベイサン「もっと、頑張らないと、いつまでも置いていかれる」


ソル「あぁ、そうだ、もっと力をつけて、アトリー様に置いて行かれないようにならないと・・・」


イネオス達「「「あぁ、頑張ろう!「頑張りましょう!」」」


 互いに顔を見合わせ力強く頷いた。


ニュネス夫人(皆さん、アトリー様に追いつこうと必死なんですね・・・)


 子供達の強い決意に関心しているニュネス夫人とは別に、この光景に理解ができないと言った風の表情で見ていた彼らの兄弟達。


 普段はそんなに仲が悪いわけではないのに、アトリーの事となると、途端に理解ができない生物になる自分の妹や弟達に、困惑するしかなくなる自分達が情けないとここ最近よく分かってきた年長者達、少しでも相手を理解しようとヘティの3番目の姉、“キャロル“が積極的に話しかけた。


キャロル「ね、ねぇ、ヘティ、貴方達は何故、そんなにアメトリン様に追いつこうとしているの?」


ヘティ「キャロルお姉様、何故って、それはアトリー様が私達の大切なお友達だからですわ」


 それ以外、何の理由があるって言うの?と言いたげな表情で答えたヘティ、それに同意するように頷くソルドアやイネオス達。


キャロル「え、お友達だからって…、あの方に追いつくなんて無理でしょう?」


ヘティ「無理かどうかはやってみなければ分かりませんわ」


エミリー「ヘティ、無理なのよ、あの方の魔力は私達では到底追い付けるとか言う話のものではないのだから、あの方は全て属性の魔法を思いのままに操り、新たな魔法まで生み出す、そんなかけ離れた存在に追いつくなんて無謀よ」


 ヘティの2番目の姉“エミリー“は、アトリーと出会って今までの間で見てきた彼の凄さは、隔絶されたもので、自分達とは全く異なるものだと、自分が同じような存在にはなれないのだと、妹に言い聞かせた。


イネオス「アトリー様が言ってました、魔力は鍛えることができる、それに制限はないと、努力すれば王族並みの魔力は誰にでも手に入れることができると」


ジョナサン「イネオス、現実を見ろ!そんな事できはしない!生まれた時に持っていた魔力を鍛えたとしても、王族並みの魔力を得ることなんてできはしない!我が家で1番魔力を持って生まれたと言われた私でさえ、この16年間鍛えてもに王族に追いつく事はできないんだから!あの方にお前達が追いつくことは絶対にないんだ!それにあの方は魔法だけではなく武術の才も持ってらっしゃる、魔力だけでも到底敵わないのにお前達は現実が見えていない!」


 イネオスの2番目の兄“ジョナサン“は自分が家族の中で、1番強い魔力を持って生まれた事に誇りを持ち、自慢であった、だがアトリーという存在がその誇りを打ち砕いたのだった、そんな経験をした兄の言葉ではなく、兄を厳しい現実に叩き落とした張本人の無責任な言葉を信じるとはっ!、と、憤った。


ベイサン「ジョナス兄さん、それは言い過ぎだ、僕達はちゃんと分かっている、アトリー様が武術に魔力、勉学、どれをとっても優秀で素晴らしいかなんて

、僕達の兄弟の中で誰よりも分かってる、僕達はアトリー様の側でいつも見ていた、それでもアトリー様に追いつきたい気持ちは変わる事はない、・・・現実を見てないのは兄さん達だ、僕達はその現実を見て自分達のできる事をしているだけ、武術だって誰もが最初は初心者で、鍛えていけば自分に適した形を手に入れて、それを磨いていけば唯一無二の自分だけの強みとなるって、アトリー様はいっていた、だから僕達はどれも諦めたりしない!」


エバン「ベイサン!お前は「うっ!うわぁ!!か、体がっ!」な、なんだ⁉︎」


 ベイサンの2番目の兄“エバン“はベイサンに何か言おうとしたが・・・


ソル「アトリー様が怒っていらっしゃる」


ヘティ「先程、お仕置きしてくるといってらしたから、海賊のどなたかがアトリー様を怒らせたのではないでしょうか、私達からは見えませんが…」


 身長の低いソルやヘティ達はもちろん、大人達に周りを囲まれて保護されているイネオス達の兄弟すら、この囲いの外側で何が起きているか正確に把握できてはいない、だがソルやヘティ達はいつもアトリーと一緒にいただけに彼がやりそうな事に見当がついた。


ベイサン「お仕置きか…、また誰かを地中に埋めてるんじゃないかな?」


イネオス「いや、多分、氷魔法で体を凍らせてると思う」


仁「あー、この前、地中に埋めた時に衛兵隊の人が掘り出すのを見ながら、「街中で地中に埋めるのはご迷惑になるから、今度からはやめとこう」って、言ってたから、地中には埋めてないと思うよ?」(あれは、確かに大変そうだったし・・・)


 ソル達の側で話を聞いていた仁が、以前アトリーが呟いていた事を思い出して話した、この時仁達はこの世界に来てアトリーと過ごすうち、荒事に巻き込まれることに慣れてきて、大抵の事を苦笑いで済ませるようになっていて、このやり取りを聞いていた他の兄弟達は「そんな事まで?・・・」「やり過ぎなんじゃ・・・」と、言って若干引いていた。


ソル「アトリー様の氷の属性の魔力を感じるから、イネオスが正解、足元から徐々に氷ついているみたいだから、多分、“フリージング“を使ってお仕置きついでに尋問している、相手が先程、公爵夫人を襲おうとしたからな、その理由を聞き出したいのだろう」


ニコーラ「それって、拷問なんじゃ・・・・」ボソッ ベイサンの2番目の姉“ニコーラ“の、この小さな呟きは会話をしているイネオス達には届かなかった・・・


ベイサン「!、公爵夫人を⁉︎そうかそれでアトリー様が直接尋問なさってるんだな、お母君を狙われたんだ、相当お怒りだな」


ソル「あぁ、戻って来られてから、落ち込まないといいが・・・」


ヘティ「そうですわね・・・」


 仁達がそうだったようにソルやヘティ達も荒事に慣れきっていて、アトリーがしでかした後の方を心配するほどだった。


テネリタス「貴方達、こんな時に何を言ってるの、心配するのはまだ早いわよ!気を抜いてはダメ!伏兵がいるかもしれないのよ⁉︎」


 現状で襲撃を受け警戒態勢が解かれてない中、周りを警戒するそぶりもなく話し始めた自分の妹達に、ヘティの1番目の姉“テネリタス“は注意を促した、他の兄弟達も言葉には出さなかったが、(今、心配する所はそこじゃないだろう)と、言った表情でテネリタスの言葉に頷いていた。


夢香「うーん、多分、もう敵はいないと思うよ?」


テネリタス「っ、ユメカさん、何を根拠に・・・」


夢香「アメトリン君は皆んなの安全第一だから、そう簡単にここを離れたりしないと思うし、もし伏兵?がいたとしても、それは既に場所がわかっているか、誰にも怪我をさせないって確信があるから、悪い人の前に出ていたんだよ」


エバン「そ、それは憶測が過ぎるんじゃ・・・」


彩「と、言うか、アメトリン君が前に出て行った時点で、この状況は解決したといっても過言じゃないのよ、彼以上に強い人はここにはいないんだから、それに今この場で彼を害することなんてできる人は存在しないわ…、それより、さっきの話を聞いて、海底神殿の時からも思っていたけど、貴方達、アメトリン君の事を怖がったり嫉妬するばかりで、彼の行動の意味を少しも理解してないじゃない、彼の外見や能力を見ただけで彼自身の全てを知ったような気でいるのは傲慢だと思うわ、彼の内面をよく知りもしないで決めつけるのはやめたら?

 それに貴方が彼の能力の全てを知っている訳でもないでしょう?それこそ憶測が過ぎると思うわ」


夢香「だねぇ、海底神殿の時のアメトリン君の気遣いも全然わかってなさそうだしね、まぁ、本人は気にしてないみたいだけど、見ているこっちはイライラしちゃう」


「「「「「っ!」」」」」


 以前、海底神殿でのアトリーの発言は、自らが彼らを突き放す発言をすることで、彼らを罰するほどの事ではないと、アピールする意味もあったと、2人は気づいていた。

 そう言った意味を含んだ彩や夢香の発言には多大な棘も含まれて、その言葉に反論の余地もない事を自覚し、悔しそうにしている他の兄弟達、このやり取りをアトリーの兄弟達や親戚であるマルキシオス家の一家も静かに見守り、親達も自分の子供達の言動を見極めていた。


 ズンッ!


「「「「「うぐっ!」」」」」「「「「「くっ!」」」」」「「「「「っ!」」」」」


ソル「!、これは・・・アトリー様の魔力威圧、制御は・・・ほっ、できているようですね」


カレジャス「ぐっ!これで、制御できていると⁉︎」


 イネオスの1番目の兄“カレジャス“は歯を食いしばりながらあ、アトリーの魔力威圧の余波を耐えていた。


イネオス「カレジャス兄上、これはまだアトリー様の魔力威圧の余波ですよ?」


カレジャス「余波⁉︎これが⁉︎」


「く、苦しい・・・」「な、なんて、強力な威圧なの⁉︎」「ぼ、僕達の事なんて考えてないんじゃ・・・」


 自分や他の兄弟、それに家族ぐるみで仲のいい、ダンロン家とバロネッカ家の他の兄弟達も息苦しそうに顔を歪ませ、周りのいる自身の親達も眉間に皺を寄せているのに、デューキス家やマルキシオス家の家族、それに彼の従者兼執事を務めていると言う、ソルドアの母親は、その場から動かないが息苦しさを感じている様子もなく、ただ先ほどより目つきが鋭くなったように見えるだけだ、でもその中で三家の末っ子達とソルドア、仁達は平然と会話までしている。


*この時ソル達はマディラの心配をしていたが、なぜかマディラが何も感じていない事に気づき、ソルが“精霊視スキル“でマディラを見たところ、マディラには特殊な結界が張られていることが分かり、その結界を張った魔力の主がアトリーだと判明して、一安心したと会話しているのだった。


カレジャス(どう言う事だ⁉︎何故あそこの8人だけ平気そうな顔をしている⁉︎これがあの子達が行ってきた訓練のおかげだと言う事なのか⁉︎)


 そんな風にカレジャスは勘違いしたみたいだが、イネオス君達がこの魔力威圧の余波が平気な理由は、イネオス達と仁達が狙われた事から、無意識に彼らに負担がないように威圧を緩めている、それと彼らは常に一緒にいる時間が長いので、何回もアトリーの魔力威圧の経験しているので耐性ができていることもあり、これぐらいの魔力威圧は“慣れて“平気になっていた、もちろん、魔法操作スキルの訓練の効果も十分にあるのだが、やはり、1番の理由はアトリーが彼らの事をことさら大事に思っていると言うことだ。


 ゾワッ!「「「「っ!!」」」」


グアイピ「むぐっ!!ぐむぅーーっ!!!!うがぁーーーー!!」ドンガンッ!!ゴロゴロッ!バタバタッ!


「!、取り押さえろ!」「こら!暴れるな!」「大人しくしないか!」


 先程まであった魔力威圧がなくなったと思ったら、鳥肌が立つような殺気を感じた、次の瞬間捉えられていたグアイピがトチ狂ったように暴れ回っている様子が目に入った、アトリーのおかげで主犯格らしき人物が捉えられたので、護衛体制に入っていた騎士達や子供達を庇っていた大人達も警戒を解き、襲撃のせいで散乱した荷物などを片付けようと動き出した、そこでやっと周りの状況が視認できるようになった子供達にも、人々の間からその光景が見えたのだった。


「「「「「!」」」」」


ソル「アトリー様・・・」


 そこで見たアトリーはゾッとする程の軽蔑に侮蔑、そして怒りの感情がこもった冷たい眼差しで、地面で転げ回っている男を見ていた。


アトリー「そのまま、牢屋にでも入れておいて、怪我や病気ではないから暫くすれば大人しくなる、まぁその時まで、心が無事かはわからないけどね・・・」


「えっ、何、あの魔法、心が無事ってどういう意味?」「かなり苦しんでるな・・・」「あれも拷問なの?・・・」「何をしたのあれ・・・」


 もう、あの男にはなんの関心もないような声で言い放ったアトリーは、視線を逸らし、聖獣達を無言で撫で始めた、そんなアトリーに両親が駆け寄り抱き上げていた。


カシミール「ほっ、あの様子ならもう平気ね」


 両親と話して、少し落ち着きを取り戻したアトリーを見て、カシミールは振り返り、イネオス達と兄弟達を見渡した。


カシミール「貴方達にこれだけは言っておくわ、今、貴方達が怪我もなくこうして無事なのは、アトリーが貴方達の事を“守るべき身内“と認識しているからよ、あの子が本格的に敵と認識したものには基本的に容赦はしないの、特にイネオス君達以外の人達は、自分がイネオス君達の兄弟だった事を幸運に思いなさい、アトリーは優しい子だから自分が疎まれていると分かっていても、友人の兄弟に敵意を向けたりはしない、むしろ、イネオス君達が悲しまないようにと気を使うわ、あの子が神殿であんな風に貴方達の事を言ったのだって、イネオス君達を安心させるため、私達が何の利益も求めない関係を続けているのは、ただ、アトリーが心から気が許せる友人がイネオス君達だったから、それだけよ・・・、勘違いしては駄目」


(彼らがアトリーを貶している訳ではないけれど、あの子のとった行動の真意だけは勘違いして欲しくはないわ、アトリーは優しいから自分からそんな事は絶対に言わないでしょうけど・・・)


 今さっきまでのやり取りを静かに見ていたカミィは、イネオス達の兄弟が自分達の立場を勘違いしないように釘を刺した。


「「「「「っ!・・・」」」」」














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