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98話 ストーカー?


 ガタゴトガタゴトッ キィ カタンッ


オーリー「アトリー様、冒険者ギルドに着いたようです」


「ん、分かった」


 馬車の中でジュール達と会話している間に、次の目的地に着いたようだ、馬車の窓から見たギルドの建物はとても重厚で大きかった、王都の冒険者ギルドの建物よりは2回りほど小さいサイズだが、冒険者ギルドを示す看板はちゃんと付いていて、ここが冒険者ギルドだとハッキリ主張していた。


「王都の建物よりゴツい感じだね、凄い頑丈そう」


ソル「そうですね、王都のギルドはもっと華美な感じで、ここのギルドは要塞と言ってもおかしくない感じですね」


(んん~?なんかさっきから誰かに見られてる?・・・・観察されてる?・・・まぁ、悪意がなさそうだから良いか、周りから見られるのはいつもの事だし)


「だね、中はどんな感じかな?楽しみ♪」


 視線の事は気にせずソルと会話しながら馬車を降り、仁達が馬車から降り合流してギルドに入った、すると・・・・


夢ちゃん「ほわぁ~~、なんか港町って感じだね~」


彩ちゃん「内装がハワイアンリゾート風で、意外と親しみやすい感じだわ」


仁「確かに、ハワイアンぽい感じがするね」


(ふむ、確かに、爽やかな感じで居心地がいいな、でも中の設備の構造はやっぱり雛形があるみたいに、ほとんど同じだな)


 クエストボードや受付の場所など配置が同じで、何処に何があるかすぐ分かる様になっていて、その他の装飾でその街ごとの特色を出しているようだ。


「クエストボードの配置が同じですね、ここのギルドの依頼ってどんな物なのか気になります!見て見ましょう♪」


ソル「いいですね、僕も気になります、海辺の町の依頼はどんなのがあるでしょうね?」


仁「そうだね、僕も気になるよ、海の中に入ったりする依頼とかあるのかな?」


夢ちゃん「私も気になる~!」


 ワイワイ話しながらクエストボードにいくまで、かなり注目を集め周りの冒険者達からの視線が凄い。


(いつもなら、絡まれたりする所だけど、ここはそんなにがらが悪い感じはしないね、遠巻きで見てるだけだし、誰も絡んで来ないとか珍しいな・・・)


「なんだ?あの煌びやかな一行は、見た事ないな新規の登録者か?この国の貴族の子供達?それとも帝国の貴族か?」ヒソヒソ


「1番小さい子は遠目に見ても凄く可愛くない?でもなんか、何処かで見た?聞いた?感じがするわね、何処だったかしら?」


「冒険者にしては格好がなってねぇな、冒険者じゃねぇなら来る場所間違ったんじゃねぇか?」ヒソヒソ


 どうやら、各国から人が集まる港町のギルドらしく、新参者はしばらく様子見されている感じのようだ。


(新参者が何処かの国の強い冒険者だったりするかも知れないからね、それを知ってる人達は無闇矢鱈に突っかかってこないんだろう)


「従魔まで連れて来て、ここに何の用だろう?」


「騎士に囲まれてるって事は貴族の子供だろ、どうせ冷やかしに来ただけだろうさ」ヒソヒソ


 などと囁かれているが、こんな事いつもの事なので全く気にせず自分のやりたい事をする、それがアメトリン・クオリティ。


(まぁ、手出ししてきたら容赦しないけどね~(*゜▽゜)ノ)


 そんな事を思いながらクエストボードに近寄り、貼り出してある依頼書に目を通した。


「あ、ここにも常設依頼で薬草採取があるね、ゴブリンの討伐依頼もある、ゴブリンはどこの地域でも一定数生息しているから、何処の冒険者ギルドでも依頼が張り出されてるね」


彩ちゃん「本当ね、やっぱり何処でもいるのねゴブリンって」


夢ちゃん「うぇ~、ゴブリン嫌い~」


 嫌悪感を滲ませた声でそう言った彩ちゃん達、何故そんな嫌そうかと言うと、以前、薬草採取の依頼を皆んなで受けて、いつもの王都近くにある泉で薬草を探していた時、ヘティ、彩ちゃん、夢ちゃんの女性陣3人で楽しくおしゃべりしていると、泉の周りにある小さな森の中から1匹のはぐれゴブリンが出てきて、彼女達を襲ってきた事があったのだ、その時のゴブリンがニタニタと気持ち悪い笑いを浮かべながら、近寄って来たのがとても気持ち悪かったそうだ。


(うん、僕も見たけどあれはもう気持ち悪いとしか言いようがなかった!瞬殺したけど!ヘティが・・・)


「まぁ、仕方ないですよ、ゴブリンはそう言う魔物ですから・・・」


仁「あ、見てこれ、海賊の討伐依頼ってのがあるy・・・」


 バタバタッ バァンッ!! 「「「「「⁉︎」」」」」


(何事?・・・・・げぇ( ;´Д`))


?「!!、ここにいたっ!!!」


 突然大きな音を立ててギルドに入って来たのは、先程もコメルス商会で騒いでいた声のうるさい男だった。


(何でここにいるんだ?)


うるさい男「其方!探したぞ!」ドタドタドタッ


 そう言いなが僕達に近寄ってくる、うるさい男。


(えぇ~、僕達?僕達に何のようさ?)


うるさい男「其方に会いたくて、必死に探したのだ!先程の礼もしたいし、一緒に食事でもっ!・・・」


護衛騎士1「近寄らないでください」


 近寄ってくる男に対し、すぐさま警戒体制に入った護衛騎士達、ソルとオーリー、カインも僕や仁達を庇うように動いた。


うるさい男「な、何だ!お前らは!どけ!私は後ろの貴人に用があるのだ!」


従者1「シバイ様、その様に怒鳴られると、怖がられますよ、もっと、穏やかにお話になってください、それに手順を踏みませんとお話が進みませんよ」


うるさい男「うっ、わ、分かってる!っ~~~、・・・ふぅ、すまない、少し急ぎすぎた、私はドンチョク朝廷国のクアンシャン領を統治する第五品グアイピ・イェシン・リンチュの第五子、グアイピ・シバイ・ゼオと申す、この度は其方の“美しい銀髪“のような、白銀の鉱石の鉱脈が我が領地で見つかったため、最先端の採掘技術を有する貴国の技術を学ぶ目的で逗留しています、その際にこちらの国で使われている魔道具などの調査の為訪れた商会で、あのような出来事があり、其方の気遣いに助けられた、謝礼と言っては何ですが、良かったらこれから一緒に食事でも如何かでしょうか?他の者達も一緒でも構わないので」


(うん?さっきと違って意外と素直に従者の言う事に耳を傾けるだね、それにちゃんと自己紹介できるじゃん…、白銀の鉱石ねぇ“プラチナ“かな?しかし、その鉱脈の話は人の多い所で話して大丈夫?・・・まぁ、採掘技術が発展してるのは事実だし、この国に来たのは正解だね、でも誰口説いてんだよって感じ・・・・・ん?“美しい銀髪“?・・・・・・僕⁉︎僕の事⁉︎はぁ⁉︎僕は男だぞ!こいつ目ぇ腐ってんじゃねぇか⁉︎てか、最初探したとか言ってなかった⁉︎、えっ!こいつストーカーなの⁉︎きっもっ!マジきっもっ!)


天華『口が悪いですよアトリー』


 目ん玉が飛び出そうなほど驚き、心の中でこのうるさい男改め、勘違い男の事を罵倒した、天華に口の悪さを嗜められても、その衝撃から言葉が出なかった。


「「「「「はぁ~っ、やっぱり・・・」」」」」


 勘違い男の話を聞いている間に僕の周りにいたソルや仁達が、残念な人を見る目で男を見ながら深いため息をついた。


「あ、あのですね、・・・ぼ、ぼく」


勘違い男「そ、それと!お名前を教えてください!そ、そして!出来れば結婚を前提にお付き合いさせてくださいっ!!」


 この男の勘違いを正そうとオーリー達に前を退いて貰い話し出したら、それを遮るように告白されてしまった。


「「「「「は?・・・・・」」」」」


 周りの野次馬化した冒険者たちも一緒にギルド全体が凍りついた・・・


「嫌、無理です」スパッ(´・Д・)」


勘違い男「な、何故⁉︎何が嫌なんだ⁉︎」ダッ グィッドンッ バッ ギュッ「嫌な事があるなら何でも言ってくれ!すぐに直すから!それにまだ名前も聞いてない!」


「「「「「⁉︎」」」」」


 ついうっかり反射的に勘違い男の申し出をスッパリ断ったら、男はうちの護衛騎士を押し除け僕の前まで来て、僕の手を強引にとり握りしめた。


(えっ⁉︎この男、スッパリ断られても僕に悪感情を持ってないのか?本気で僕に惚れたと⁉︎)


 常に展開している月詠様の守護結界に阻まれず、僕の側まで来て尚且つ手を握っている、この勘違い男は本気で僕に惚れていて、気に入られようとしているだけで、完全なる好意と言うことが分かった。


オーリー「っ!馴れ馴れしいですよ!離れなさい!」グイッ!ドサッ!


 男が僕に触れていると言う予想外の展開に、呆気にとらわれていたオーリーがいち早く気づき、僕の手を握りしめている勘違い男を僕から引き剥がした。


ソル「大丈夫ですか!アトリー様!」ふきふきっ


 オーリーとほぼ同時に動いたソルがすぐさまハンカチを取り出し、勘違い男に握られた手を魔法で濡らしたハンカチで拭き取った。


カイン「アトリー様、もう少し後ろに・・・」


「ん…、あぁ、大丈夫、驚いただけ」


ソル「ほっ、良かった・・・あの男、断りもなしにアトリー様に近づくとは・・・」キッ!


 カインもすぐに前に出て僕達を隠し、ソルは苛立ちを隠す様子もなく勘違い男を睨みつけ、護衛騎士達は剣を抜き放った。


 ザワザワッ「おい!剣を抜いたぞ!」「こんな所で揉めるなよな!」「上に知らせろ!」ザワザワッ


 急な騒ぎに周りが騒ぎ始め、尻餅をついた勘違い男と護衛騎士達に注目が集まった。


勘違い男「な、何をする!無礼だぞ!」


 チャキッ


護衛騎士1「動くな!無礼なのはそちらだ!近寄るなと言った警告を無視したな!叩き切られても文句は言えないぞ!下がれ!」


 護衛騎士達が抜き放った剣を勘違い男の首に当てて警告した。


勘違い男「な、何だと⁉︎いくら“彼女“の騎士であろうと、その物言いは許さんぞ!」


従者1「そうです!こちらはドンチョク朝廷国の第五品の家柄ですよ!そちらのお方のご身分より上のはずです!」


カイン「はぁ、何を仰るかと思えば、主人はあなた方に名乗ってもいないのに、そちらの方の身分より我が主人の身分が低いと思える、あなた方の傲慢さに恐れ入るばかりです」


(おう、久しぶりにカインの毒舌を聞いたね、それほど怒っているってことだねぇ、んっ、・・・あぁ、あの視線はそう言う事、これは面倒な事になりそうだなぁ、はぁ・・・)


 心の中でため息を吐いた僕はこの事態を早く収拾させる必要性が出来た。


「カイン、オーリー、どいて」


カイン&オーリー「「はい」」


 スッと僕の両側に分かれた2人の間から僕と聖獣達は前に進み、ソルは僕の斜め後ろに続いた、護衛騎士達は剣を抜いた状態で男を警戒している。


「皆さん、まず、落ち着いてください」


勘違い男「!、あぁ、出て来てくれたんだな!それにしても先程も思ったが其方は美しく珍しい瞳をしているな!“瞳の色が左右で違い紫と黄色“とはとても神秘的で素晴らしい!やはり私の嫁になってはくれないだろうか!」


「「「「「‼︎」」」」」ガタガタッ


(まだ言うか!この勘違い男!)


 この状況でまだ僕を口説こうとしてくる勘違い男、それとは別に男の言葉の中にあった、瞳の色に関しての文言に反応した数人の冒険者達が立ち上がった。


「ん“んっ、先程も言いましたが、それは無理です「な、何故だ⁉︎」最後まで人の話を聞いてくださいっ」


 なおも話を遮る男を睨み威圧する。


勘違い男「わ、分かった」


「・・・ふぅ、貴方はとても大きな勘違いをなさってます、僕は男性なので貴方とお付き合い出来ませんし、お嫁さんにもなれません」


 勘違い男が静かになった所ですかさず話を進め、勘違いを正した。


「「「「「えっ⁉︎」」」」」


勘違い男「な、な、う、嘘だ!其方は女性ではないと⁉︎」


「はい、そうです」


勘違い男「男装した麗人ではなく⁉︎」


「正真正銘の男性です」


勘違い男「そ、そんな…、其方のように美しい容姿をしている者が男性・・・」ドサッ


従者達「「「シ、シバイ様!」」」


 ショックでガックリと肩を落とし、その場で膝をついた男に、さっきまで同じようにショックを受けていた従者達が駆け寄り励ましている、周りの護衛騎士達や冒険者達は「本当に気づいてなかったのかコイツら」って呆れた顔で、ドンチョク朝廷国から来た一行を見ていた。


(やっと理解したか・・・面倒くせぇ男だな、こいつ・・・でもこれでもっと面倒くさい状況は回避できたはず・・・)


天華『ア、アトリー、言葉遣い・・・・ふふっ悪いですよ・・・ふっ』


(・・・笑うなら、ちゃんと笑いなよ・・・・)


 さっきから、やたら静かだと思ったら、天華達は必死に笑いを堪えていたようだ、後ろにいる仁達は既に笑いを堪えられていないが・・・


天華『あ、あの男性、ふっ、本当にアトリーを女性だと思って、真剣に口説いてくるなんて、ぐっ、それで、“守護結界“まで通る事ができるなんてっ、ふふっ!なんて純粋な心の持ち主でしょう、ふふふっ』


夜月『ぐっ、天華、馬鹿と、くっ、純粋を一緒にしてやるな、くふっ』


ジュール『あははっあの人鈍すぎ~!でも、夢ちゃんの予想通りだったねぇ~あはははははっ』


(・・・むぅ、だって、男の物洋服着てる僕に本当に惚れるやつがいると思わないじゃん!)


 念話で天華達と話していると・・・・


勘違い男「くそ!この際!男でもいい!其方を私の愛人として国に連れて帰る!どうだ!光栄だろう!!」


「「「「「はぁ?」」」」」「「「「「えぇ⁉︎」」」」」『『『はぁ⁉︎』』』


(何でそうなった⁉︎)


 急に意味の分からないことを言い出した男に、周りの人達全員が呆気に囚われた。


勘違い男「其方のような美しい容姿の者を連れて帰れば、父上の目に留まり、そして献上できれば、私の後継者順位が上がると言うもの!父上は男女美しい者に目が無く若い者がお好きだ、それに其方も父上のお気に入りになれば一生遊んで生きていけるぞ!私を騙した代償としては破格の罰だ!」


 「どうだ!」良い提案をしたと言わんばかりの表情をし、自分の父親の愛人になれと言ってきた男に・・・


「あ“あ“ぁ⁉︎ふざけんなよ‼︎」


 とてもドスの聞いた声でメンチを切ったのは、さっきまで僕達の後ろで男を笑っていた仁だ、普段とは全く違った雰囲気を纏い前に進み出て、眉間に皺を寄せ眼光鋭く相手を睨んだ。


 ソルは自分の“収納“から長めのナイフを取り出し、今にも男に斬りかかりそうだったが驚きで動きを止めた。


夢ちゃん&彩ちゃん「「あ~あっ」」パチンッ「「南無っ」」


「「「「「えっ⁉︎仁様⁉︎」」」」」「『『『仁さん⁉︎』』』」「「「「「えっ⁉︎」」」」」


(おぉ、これは久しぶりに見たね、“沙樹崎家直伝のメンチ切り“!)


 仁の急変に驚き固まるデューキス家関係者達に周囲の冒険者達、さっきまで彩ちゃん達と一緒に騎士達に守られ、苦笑いしていた少し気弱そうな男の子が、急に雰囲気を変えて相手にドスの聞いたメンチ切りをお見舞いしたのだから・・・

















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