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86話 ダンジョンをご案な〜い♪2


 どうも、僕です、現在、非常~に気まずい雰囲気です!


 “カツオサハギン“を倒して手に入れた“カツオ出汁“のやり取りで、一時、感動の雰囲気が漂った後、再び気合を入れ直して波打ち際を探索していると・・・


 ザブゥーンッ!! ザパッ!ザパザパザパァーン!!


 と、次から次へとカツオ自身が魔物化した敵の“アッセンブリーフィッシュ“が海から出てきた、そいつらを倒すと魚のカツオ以外にも魔石やお金、鰹節や“カツオ出汁の小瓶(液体)“、プラス、“カツオ出汁の小瓶(粉末)“などが出てきた、それとは別にレアなドロップ品で“魚醤“が出てきてしまい、非常~に気まずい雰囲気なのです!


(うわぁ、僕が何も言わなくても凄く気まずい雰囲気になっちゃった・・・)


仁「・・・たくさん出たね・・・」


イネオス「ですね・・・」


仁「あ!でもこれで皆んなに1個ずつ分けれるよ!!」


(ポジティブ!!)


 そう言って、出てきた“カツオ出汁の小瓶“を1人1人に手渡した仁。


イネオス「あ、有り難う御座います」


仁「こういう、嬉しい事や楽しい事は皆んなで分け合うと、“皆んなを幸せにするんだよ“って、母さん、うちの母が言っていたんだ、それとは逆の悲しい事や辛い事も、皆んなで分け合えば悲しさや辛さが薄まる、ってね、1人じゃ抱えきれない感情は皆んなで共有するのが1番ってことさ」


 照れながら笑った仁の顔を見た僕は、(あぁ、小さい時から変わらない可愛い笑顔だ)と思った、仁の言葉を聞いたイネオス達は「良いお言葉ですね」って言って、嬉しそうに柔らかく笑った。


(それにしても姉さんにしてはポジティブな発言だね?まぁ、年を取って丸くなったのかな?ふふっ、前は結構厳しい所がある人だったからなぁ~)


仁「はい、アメトリン君も…」


 ボーッと考え事をしていた僕の手にもそっと“カツオ出汁の小瓶“を手渡してくれた。


「え?僕にも良いんですか?戦闘に参加してませんけど・・・、それに僕、これ持ってますし・・・」


仁「良いのっ!これも良い思い出になると思って!ねっ!」


「あ、有り難う御座います…ふふっ」


(良い子に育ったなぁ・・・、「良い思い出に」、か・・・)


「「「「「っ!!」」」」」


 嬉しくて、つい、ふにゃっと緩んだ顔で笑ってしまった僕の笑顔に、皆んなが固まってしまった。


(あ、やべ、気が緩んで魔力が漏れた?)


夜月『いいや、魔力は漏れてないぞ』


(ん?そうなの?なら大丈夫だね♪)


*仁達を含めた公爵家の関係者は皆んな、アトリーと長く過ごす事でアトリーの姿を見ても、そう簡単にフリーズしなくなってきている、要は見慣れて耐性ができているのだが、今回のような年相応の可愛い反応や表情をされると、どうしても、不意打ち気味に見惚れてフリーズしてしまう、そこにはアトリーの特殊な魔力や王家の特性などは関係ない、ただ、ただ、可愛いからしょうがないのであった・・・


「あ、そう言えば、“昆布出汁“の方も確保されるなら、ちょっと濡れますが岩場の方に“昆布出汁“を出す魔物がいますので、そこに行きますか?」


仁「は、あ、うん!“昆布出汁“!欲しいな、どこにその岩場はあるの?」


「はい、それはあちらの・・・・ーーー」


 僕の提案にすぐにフリーズから復活した仁が乗り、皆んなで岩場を目指してたどり着いた先には・・・




「あれ?兄様達もこちらに来ていたんですね」


ライ兄様「お、アトリー達も来たのか、あぁ適当に歩いていたらココに出てな、面白そうだったからココら辺を探索していたんだ」


「そうなんですね、僕達はここからちょっと行った先に用があって来ました」


カイ兄様「この先に?そうか…、それなら私達も一緒に行こうかな」


父様「それは良いが、サンや他の人達はどこに行ったんだい?」


カイ兄様「あぁ、それなんですが、この先に洞窟の入り口がありまして、そこにサンと叔父上達が先に調べてくると言って、入って行ってしまって、僕達はココで待つように言われたんです」


(あ、それで兄様達2人に公爵家の護衛騎士3人しか居なかったわけね…)


 兄様達のグループはカイ兄様、ライ兄様、サン兄様の他にニモス叔父様と両家の護衛騎士が、3人ずつついていたのだが、どうやら、危険かもしれない洞窟に公爵家の跡取りであるカイ兄様を連れていけないと思ったのか、先に中を確認してから連れて行こうとしたようで、今はサン兄様とニモス叔父様が自分の家の護衛騎士を連れて、洞窟の中を探索中のようだ。


(イヤイヤイヤ、侯爵家現当主とその跡取りが2人揃って、危険かもしれない洞窟に入っていくなよ!せめてサン兄様はここに残りなよ!!)


父様「はぁ~、全くもって・・・・」


 父様も僕と同じように思ったのか額に手を当てて唸っていた。


母様「あらあら、お兄様ったら相変わらずね、気になったことは自分の目で見てみないと気が済まないんですから、サンもそんなお兄様に似てしまったみたいね、ふふっ」


 と、母様は懐かしそうに笑っていた。


(あらら、そんな性分だったのねニモス叔父様・・・でもまぁ・・・)


「父様、その洞窟の事でしたら、今から僕達が行こうとしていた所なので、そんなに危険はないので大丈夫ですよ」


父様「そうなのかい?」


「はい、あそこは中の方がとっても広くて、綺麗な所なんです、そこに目的の物を出す魔物が出てくるだけなので、そんなに心配はいりません、海面に近づき過ぎないようにすれば怪我もしませんし」


父様「…そうか、じゃあ私達も言ってみるか・・・」


 そう決めて、岩場に空いた洞窟を目指し辿り着くと・・・


「うぁ!」


 中から若い男性の声が聞こえた。


「「「「「!!」」」」」


護衛騎士1「先行致しますので皆様は・・・」


「あ、多分、大丈夫ですよ、あの魔物は殺傷能力が低いし、1人だと危険だけど他の人がいるとすぐに倒せるので、なので皆んなで入りましょう、洞窟の入り口はそれなりに大きいですし」


 そう言うと、父様の指示で護衛騎士3人を先頭に、後ろに続くのは父様と兄様達、その後ろから僕達年少組と仁達、母様とカイルさんにリアさんはその後ろ、横2列ぐらいで並んで進んでいる僕達の周りを、残りの護衛騎士達が警戒しながら歩いている。


 薄暗い洞窟の中を10数メートル歩くと、明るく開けた場所に出た、そこには先に探索しに入っていたニモス叔父様やサン兄様、それと護衛騎士3人がずぶ濡れになって壁際で中央の湖を見ていた。


父様「大丈夫ですか⁉︎2人とも!」


ニモス叔父様「!、ラト⁉︎どうしてココに⁉︎はっ!皆!水面に近づくな!触手のような魔物に捕まるぞ!!」


 ザプッ!ズルズルッ・・・


父様「!あれがアトリーの言っていた魔物か⁉︎」


 父様達が会話している間に出てきたのは、このフロアの“エリアボス“に当たる“コードケルプ“、名前のまんまの紐状に長い昆布、普段は海中で大人しくしているが、外敵が近寄ってくると、その紐状の昆布の葉にあたる部分を使って外敵を捉え、溺死または衰弱させて自分の栄養分にする、と言う少し怖い魔物、だが所詮、昆布なので通常の昆布よりは頑丈だが動きはそんなに早くないし、捕まっても昆布は剣で切ろうと思えばすぐに切れる、なので1人の時に後ろから完全に不意打ちで捕まった場合のみ、ちょっと厄介な魔物、複数の人がいる場合は海面に近い人から襲われるので、その人が捕まっても他の人が本体を叩けば良い、本体は触手のような昆布の根本にある“根昆布“に当たる部分だ、なので捕まってもそこを狙って攻撃すればすぐに倒せる。


「ーー・・・と、言うことで、あの海水の湖はそんなに深くないです、ですから誰かが囮になって、触手の部分の気を惹きつけている間に、後ろから静かに近寄り本体を攻撃して倒せば、“エリアボス“討伐クリアですよ」


 と、簡単に説明すると。


「「「「「んんっ⁉︎⁉︎」」」」」


「どうしました?」


ニモス叔父様「ちょっと待ってくれ、アトリー「はい?」今、“エリアボス“って言ったかな?」


「言いましたね、この洞窟は“エリアボス“専用の住処なんで、戦い易いように結構広いみたいです」


父様「・・・アトリー、それは先に言って欲しかったかな・・・」


「?・・・あっ、はい、すみません、このダンジョンはフロアごとに、隠れた“エリアボス“が一体いるみたいです、そして区切りが良いフロア数だと“フロアボス“が出る扉が設置してあるみたいで、そこを通らないと次のフロアに移動できないらしいです」


(やばっ、ここの“エリアボス“がしょぼ過ぎて言うの忘れてた!)


父様「そ、そうか、このダンジョンは何フロアあるのかな?区切りがいいと言う事は10フロアごとなのかな?」


「えっと、このダンジョンは全部で20フロアあって、“フロアボス“は5フロア進むごとにあると聞いてます」


ニモス叔父様「20フロア、か、なら“中級ダンジョン“になるのか、それならそんなに危険はないね」


 ほっと胸を撫で下ろしている父様や叔父様達、それを見ていると念話でジュールが・・・


ジュール『このダンジョンはフロア数は少ないけど、1フロアづつが広いし、出てくる魔物も5フロアごとに変わるから、括りとしては“上級ダンジョン“になるよ~って、主神様が言ってる!!』


「・・・と、の事です・・・」


 そう伝えると、父様とニモス叔父様はガックリと肩を落とした。


父様・ニモス叔父様「「・・・そうか・・・」」


(あ、凹んじゃった・・・、まぁ仕方ないよね、“中級ダンジョン“と“上級ダンジョン“では難易度が全然違って、管理するにあたって色々と気をつけないといけないからなぁ)


 もし氾濫などが起こった場合、溢れ出てくる魔物の強さが変わってくるからだ、そう言う意味でも“中級ダンジョン“なら管理がしやすいと、言う事なのだろう。


「父様、ニモス叔父様、そろそろ、アレを倒して良いですか?」


 湖の中でウネウネ動いている“コードケルプ“を指差した。


父様「あぁ、ニモス義兄上、良いですか?」


ニモス叔父様「そうだな、アトリー達はこの魔物に用があったんだったな、私達は調査の為に入っただけだから気にしなくて良いよ、アトリー達が倒しているのを見学しているよ」


「わぁ、有り難う御座います♪」


 父様がニモス叔父様に確認をとってくれたので、早速、仁達と作戦会議をして“コードケルプ“の討伐を開始した。


 まず、イネオス達3人が連携して“コードケルプ“の気を惹きつけて、ソルと仁達が“コードケルプ“の根本の本体に攻撃をする、そして、あっさりと討伐完了。


(まぁ、“コードケルプ“の本体は地面に根付いていて、その場を動かないから意外と簡単に倒せるんだよな)


 倒された“コードケルプ“のいた湖の淵に宝箱が出現し、その中にお目当ての“昆布出汁“の(液体)(粉末)の両方と魔石、乾燥昆布も入っていた。


仁「わぁ、“エリアボス“だから宝箱なのかな?それにしても色々入ってる!」


彩ちゃん「本当ね、あら“乾燥昆布“も入ってるわ」


夢ちゃん「乾燥昆布!これ私欲しい!」


イネオス「?良いですけど…、この硬い板みたいなのどうするんですか?」


夢ちゃん「えっ⁉︎、“乾燥昆布“知らないの⁉︎」


へティ「“乾燥昆布“?ってなんですか?見た所、先程の“コードケルプ“みたいな“海藻“の葉を乾燥させた物のようですけど、何に使うですの?」


夢ちゃん「ええっ⁉︎この国、いや、この世界じゃ、昆布、“海藻“は食べないの⁉︎」


ベイサン「えっ⁉︎これ食べ物だったんですか⁉︎」


 そう、会話の通り、この世界、いや、この国では“海藻“は一般的には食べられていない、特に内陸に住んでいる人達は“海藻“が食べれることも知らない、この国でも“海藻“を食べるのは海辺に住んでいる貧しい人達が、飢えを紛らわすために仕方なく食べているものだ。


(この“海藻“のちゃんとした食べ方や利用法は、この世界じゃあまり伝わってないんだよねぇ~、でもこれからこのダンジョンで出てくる“昆布出汁“とかの影響で需要が高まると良いなぁ)


 なんて、考えていると、仁達が“海藻や昆布“などの利用方法を色々と説明していた。


ニモス叔父様「ほう、一度乾燥させて再び煮出すとは思っても見なかったな、それがこの“昆布出汁“と言うものになるとは、“出汁“と言う物も初めて知ったよ、海の厄介者の“海藻“にこんな使い方があるとは、仁君達がいた国はいろんな物を食材としているんだね、世界が違えば考え方が違う、なんとも面白い物だね」


父様「そうですね、今回の件で色々と新しい発見がありましたから、今後の漁業などにも良い刺激になりますね、それに、仁君達の国では“醤油“と言う調味料を生の魚につけて、そのまま食べたりするらしいですよ」


ニモス叔父様「何⁉︎生の魚をか⁉︎火を通さなくても大丈夫なのか?」


父様「えぇ、そうですね、腹を下す原因の小さな虫、“寄生虫“とやらを取り除いたら問題なく食べれるらしいです、それに元から“寄生虫“がいない魚もいるらしいので、食べる前に捌いた魚の切り身を良く見てみると、すぐに分かるそうですよ」


ニモス叔父様「ほお、それは良い事を聞いた、うちの料理人に試すように言ってみるか・・・ーーーー」


 仁達の説明を聞いて、“海藻“に興味を持って貰っただけでも嬉しかったが、生魚の切り身、刺身にも興味を持って貰えたのは行幸だ。


(ふっふっふっ、これで僕が自分で魚捌いて、刺身を食べてても怒られないね♪)


夜月『また食い気が出てるな』


(念願の刺身の前に何を言われようと効かないよ!!o(`ω´ )o)


 こうして、新たな食材の活用法の話に花を咲かせ、今後の領地の活性化に備える父様達。


(あぁ、ここで話すのは良いけど、このまま洞窟にいると“エリアボス“がリポップするんだけどなぁ~)


 と、思っている所で、“コードケルプ“がいた湖が淡く光、再び“コードケルプ“が出現した。


「「「「「わぁ!」」」」」


「“サンダーボール“」(安全の為に“フィールドバリア“で感電防止っと・・・)


 バチッン!!! ビビビビビッ!! シュワ~ッ コトンッ


「「「「「⁉︎⁉︎・・・・・・」」」」」


 襲いかかってくる“コードケルプ“に向かって、サッと前に出てサクッと雷魔法をぶち込んだ僕、“コードケルプ“は出現と同時に討伐され、再び宝箱を出した。


「父様達、このままでは再び“エリアボス“が出現しますので、お話は別の場所でなさった方がよろしいかと」


「「「「「・・・・・・っ」」」」」


 倒したのを確認して後ろを振り向いて、そう提案してみると、全員、目を見開き驚きの表情で固まっている。


「父様?」コテンッ?


 返答が返ってこないので首を傾げると。


父様「あ、あぁ、そうだね、この話は侯爵家の屋敷に戻ってからしよう・・・・」


ニモス叔父様「そ、そうだな、そろそろ良い時間だから、皆を集めて帰るか・・・・」


「そうですね、じゃあ洞窟の外に出て、ダンジョンの入り口まで皆さんを探しながら戻りますか?」


 ようやく、返答が返ってきたが、いつの間にか結構、時間が経っていた事に気づいたニモス叔父様が、帰ろうと言ってきたのでその提案に乗り、他の人達を回収するために帰りの道順を頭に描いた、すると・・・


母様「ふふっ、大丈夫ですよ、今の魔法で皆さん驚いて、こちらに来てると思うわ、それにしてもアトリー、また魔法の威力が上がったのではなくて?」


 と、言われて。


「?・・・あっ、そうですね、久しぶりに攻撃魔法を使ってみたら魔法の威力が上がってました、先程の魔法もなるべく魔力を込めないようにしたんですけど

、まだ調整ができてなくて、すみません、危なかったですよね…」


(やばい、今、威力がおかしいの忘れてた、それなのに、こんな狭い所で雷魔法使っちゃった・・・、一応、結界は発動してたけど、急にするのはダメだったかな・・・)


 やっと皆んなが驚きの表情で固まっていたのか気づいた、少ししょんぼりしていると。


母様「あらあら、アトリー落ち込まないで、別に怒っている訳では無いのよ?母様はアトリーの成長が嬉しいの♪ふふっ、威力の調整はまた今度頑張りましょうね?」


 母様が頭を撫でてくれた。


(あれ?怒ってない?褒められた?ふふっ、嬉しい♪)


「ふふっ、はい♪」


天華(ふむ、ここ最近の夏のバカンスのおかげか、欲しかった物や大好物が手に入ったおかげかは判断できかねますが、少し、精神にゆとりが出てきたように思えますね、いつもなら、とことん落ち込むのに、すぐに気持ちが持ち直しましたし、このまま、過剰な気遣いもなくなれば良いのですが・・・)

 

 なんとも微笑ましいやり取りをしている親子を見守りながら、そう願う天華だった・・・



















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