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55話 いじめ?


・~~~~~・~~~~~・~~~~~・


 時と場所は戻り、ここはウェルセメンテ王国内・オヌールユウェル王立学園、更衣室棟前・・・


>ーーーーー<>ーーーーー<>ーーーーー<


 アトリー 視点


「まぁ、確かにそうかもしれないけどね・・・、それにしても皆んな来るの遅くない?」


ソル「そうですね、いつもより遅いです、それに他の生徒達もほとんど出てきて無いですね」


「何かあったのかな?呼びに行ってみようか」


ソル「はい、行って見ましょう」


 そう決めると行動は早かった、僕は抱いていた天華を肩に乗せ建物内に入り、すぐにイネオス達の気配や魔力を感知して場所を特定する。


「うん?こっちは女子更衣室がある方だ・・・」


(なんで、イネオス達が女子更衣室前にいるんだろ?ヘティを迎えに行ったのかな?でもヘティの気配は女子更衣室内から移動していない、まだ出てきてないのを待っているのか?・・・しかし人の気配の位置がなんか変だな?ヘティに何かあったのか?)


 嫌な予感を覚えつつも2階にある女子更衣室に向かう階段に足をかけていると階段を降りてくるロシュ君の気配に気付き自分達も階段を急いで登った。


「ロシュ君」


 もう少しで互いが見える所でロシュ君に声をかけると、声の相手が僕と分かってすぐに近寄ってきた。


ロシュ君「アトリー様!ちょうど今呼びに行こうとしてた所なんです!ヘティ様が!」


「!、ヘティがどうしたの?」


ロシュ君「それがっ・・・、よ、よく分からないんです、ぼ、僕はイネオス様達がいつもヘティ様と合流しているって、言っていた場所で一緒に待っていたんです、数分してイネオス様がいつもより遅いって話しているその時に、ちょ、丁度2階から降りて来たイネオス様のクラスメイトの女子生徒がイネオス様に、“いつも一緒にいる彼女が大変っ“って言って来て、慌てて皆んなで2階の女子更衣室の手前まで行ったんです、けど、そこで更衣室の手前にいた専属の警備員にヘティ様を呼んでくださいって、頼んだんです、でも“自分はここを守っている警備員なので取次とかはしていない“って、言われて、直接 女子更衣室の扉をノックして扉の外から、ヘティ様を呼ぼうとしたら警備員が扉に近づかせてくれないし、他の女子生徒達が出てきたから中の様子を聞こうと声を掛けても逃げられるだけで、中の様子も分からないのでどうしようも無くなってアトリー様を呼んで来てくれって、ベイサン様に頼まれて今ここでお会いできた所なんです・・・」


 と、ロシュ君は戸惑った様子で経緯を話してくれた。


「ふむ、経緯は分かった、とりあえずイネオス達の所に合流しようか」


ロシュ君「は、はい、案内します」


「うん、お願い」


 そう言ってロシュ君を先頭にイネオス達がいる場所に行くと、イネオス達は長い廊下の先にある1番奥にある、大きめの扉の5メートル程 手前で女性の警備員と向かい合う様に立っていた。


「イネオス、状況はどう?」


イネオス「!、アトリー様!すみません御呼び立ててしまって、それがヘティが中にいるのは気配で分かるんですが、中の状況は全く分からないんです」


 話しかけるとイネオスはすぐに振り向き現状を話す。


「そう、中の様子が分からないんだね、僕の気配感知と魔力感知では、ヘティが怪我をしている様子は無いってぐらいしか分からないからね、・・・・イネオス、君を呼びに来た女子生徒はどこにいるんだい?」


イネオス「その生徒は僕達にヘティの事を知らせた後いなくなっていました、ここに着いた時にいなくなっていたのに気づいたので、どこに行ったかは分かりません」


「そう、か、それは仕方ないね」


(本来なら口止めさせていたんだろうけど、中の現状を心良く思ってなかった女子生徒のせめてもの心遣いか・・・)


イネオス「すみません」


「良いよ、仕方ないさ、それで、この状況でも警備員の方達は中の様子を見に行ってくれるつもりは無いんだね?」


警備員達「「っ!」」


警備員1「わ、私達は、ここでこの学園の女子生徒と専属のメイド以外がここを通らないようにする事が仕事なので、こ、更衣室の中に赴くことはできませんっ」


 僕の視線の圧に少し怯んだ警備員達だったが、しっかり自分の仕事ではないと言い切った。


「ふーん、警備の仕事には入ってないと、・・・今度サフィアス叔父様に警備の仕事内容を見直すように進言しておくか・・・・」


(融通が効かないにも程がある、賄賂を貰ってか、脅してかは知らないけど僕達を足止めするように言われたんだろうけど・・・)


「分かった、貴方達の仕事の邪魔はしないよ、・・・・・天華、ジュール、中の様子を見ていてくれるかい?」


警備員達「「えっ!」」


天華『分かりました』「キュキュゥー」


ジュール『良いよー』「わふっ」


「宜しくね」


警備員2「そ、それは・・・」


「何?天華とジュールは女の子だからここを通れるはずだよ?それに貴方達に聖獣である天華達を引き止める権限は無いはずだ、それでも邪魔する気なら僕にも考えがあるよ?」


警備員達「「うっ!」」


 2人の女性警備員は僕の言葉に反論できず、天華達が中に入るのを見送るしかなくなったのだった。


 ジュールの頭の上に天華が乗って女子更衣室の扉まで行き、天華が飛んで器用に扉を開くと、その開いた扉をジュールが前足で抑え天華が中に入るのを手伝った後にジュールも中に入って行った。


(じゃあ、中継宜しく!)


天華『了解です』


ジュール『りょうかーい♪』


 僕とジュール達は離れた場所からでも念話で会話できる事を活かし、女子更衣室の中の様子を知らせて貰うことにしたのだった。


「うん、感度良好」


ソル「アトリー様、こちらの椅子をお使い下さい」


 と、ソルが自分の“収納“から椅子を取り出し僕の後ろに置いた、僕が今からする事に気づいたソルの気遣いが嬉しい。


「有り難う、ソル」


 僕はソルが用意した椅子に座り目を閉じた、天華達と念話をしながら気配感知や魔力感知で人の位置を感知し、中の詳しい状況を把握する事に集中するため有り難く椅子に座った。


ジュール『アトリー、1個目の扉の中は二つ扉があるよー、真正面にある扉はメイドさん達の控え室ぽい感じー』


天華『もう一つの左側にある扉が着替え室の様ですね』


(ふーん、中が簡単に見えないように二重扉になってんだね)


天華『アトリー、2個目の扉をくぐりましたよ』


ジュール『中にいたメイドさんが開けてくれたー』


(そうみたいだね、優しい人で良かったね)


ジュール『うん♪』


 ジュールの言う通りジュール達の近くに人の気配があるのが分かった、ジュール達の気配が中に入っているのを認識していると。


天華『ふふっ、皆さん驚いている様ですよ』


(まぁ、天華達が急に中に入ってくれば、そりゃ驚くよね)


ジュール『あははっ、驚いた顔おもしろ~い』


天華『ほら、ジュール、キョロキョロしないで、ヘティちゃんはあっちですよ』


ジュール『はーい』


 天華に促されて、ジュール達の気配が更衣室の奥の方にあるヘティの気配の方に動き出した。


ジュール『なんか人がいっぱいいるね』


天華『やはり、かなりの人数に囲まれている様ですね、まだ私達が近づいているのに気づいてない様ですし、少し気配を消して様子を伺います』


(そうだね、その人達とヘティは何か話している?)


 最初ヘティの気配を感知している時に、ヘティの周りに沢山の気配がある事に気付き不信に思ったのだ。


天華『・・・ふむ、何やらヘティちゃんがアトリーや私達と一緒にいるのが気に食わないご令嬢がいる様ですね、それに便乗している方々が数人周りにいる感じですかね、後のほとんどは野次馬根性の方々でしょうか』


(へぇー、なんて言ってるの?)


ジュール『えーとね、「貴女みたいな、下級貴族の娘がデューキス公爵家にすり寄るなんて烏滸がましいのよ!」って』


天華『他にも、「聖獣様方の近くに居れるからって偉そうなのよっ、弱いくせに!」ですって』


(ぶふっ!ふふふふっ、それ言ったの獣人さんでしょう?ふふふふっ)


天華『正解ですね』


「ふっ、ふふふっ、弱いくせにかぁ、ふふっ、まだまだ だね、相手の力量を正しく見れないとは、ふふっ」


ソル「アトリー様?」


「あぁ、後で教えてあげる♪ふふっ」


 目を開けて人差し指を口に当て、首を傾げながらニンマリと笑った。


「「「「「っ!」」」」」


ソル「っ、そうですか」


 周りから息の飲む声が聞こえたが気にせず天華達との会話に再び目を閉じ集中する。


*この時アトリーの蠱惑的な笑顔に息を呑んだ人達の頭の中はショート寸前だった。


イネオス(っ!いつも以上に性別が分からなくなってしまった!!)


ベイサン(っ!ほんと!何でいつもこんな可愛い仕草をなさるんだろうかっ⁉︎)


ロシュ君(っ!アトリー様は男性!アトリー様は男性!アトリー様は男性っ!!)


警備員1(っ!いやーんっ何この子っ!可愛いっ!可愛いっ!この子、本当に男の子⁉︎)


警備員2(っ!可愛いっ!こんな小悪魔な笑い方するなんて反則でしょう⁉︎私達に偉そうに指示して来た女子生徒達より可愛いとかありえないんですけど⁉︎)


ソルドア(っ、相変わらず無自覚でらっしゃる、それにこれは何か悪い事を考えている時の顔ですね、変な事しでかさないと良いんですが・・・)


夜月(・・・・、いつもながら自覚が無さすぎか・・・)


 などと思っている・・・



 皆んなが黙ってしまったのを良い事に、僕は女子更衣室の中の様子を引き続き天華達に実況して貰っていた。


 どうやら、ヘティは言われた事に対し何か言い返しているわけでは無いようで、黙って聞いているだけみたいだ、俯いて黙っている彼女に次々と心無い言葉を吐き続けている女子生徒達、


「貴女、自分が本当にデューキス子息様に気に入られていると思ってないでしょうね⁉︎」、とか


「あんなに美しい方の隣に貴女なんてふさわしく無いのよ!」、とか


「貴女、弱いくせに冒険者になったデューキス子息様を真似して自分も冒険者になって、後を追いかけているんですってね、はしたない!」、とか


「もしかしてデューキス子息様の婚約者の席を狙ってるんじゃ無いでしょうね⁉︎」、とか


 その他にも僕達、男の子が多いグループの中に1人だけ女の子のヘティがいるのが“ふしだら“だとか、聖獣のジュールをよく撫でているのが図々しいとか、色々と言われている様だった、大半は先の通り僕に1番近しい事が気に入らない女子生徒の嫉妬から来る文句が多かった、ある程度 彼女達の言い分を聞いた僕は天華とジュールに、この状況に介入するように指示した。


(ヘティの前に出たら教えて、僕がそこに“声を届ける“よ)


天華『分かりました』


ジュール『任せて!』


 その後すぐに合図があり僕は“音魔法“の“ビサイドボイス“で対象者のすぐそばまで声を届ける魔法を発動させる。


*この“ビサイドボイス“とは同じ“音魔法“の“テレフォン“の劣化版で一方通行でしか声を届けることができない、“テレフォン“を開発している途中でできた魔法。


『「ヘティ、そろそろ授業が始まるよ、外に待っているから早く出ておいで、イネオス達も心配して待っているよ、その人達の言っている事なんて真面目に聞かなく良いからね、気にする事はないよ、僕も気にしてない、他が何を言おうとヘティが僕の大切な友達なのは変わらないんだから、あぁ、そうだ、この魔法は一方通行だから話しかけても意味ないから、でもこの中で起こっていた事は、聖獣のジュールや天華達を通して把握しているから無駄な言い訳はしないでね、じゃあ天華、ジュール、ヘティと一緒に出ておいで、授業に行くよ」』ブツッ


ソル「アトリー様、今のは?」


「ん、今からヘティ達が出てくるよ、それとさっきまでヘティは僕やジュール達聖獣といるのが気に食わない女子生徒達に、心無い言葉をかけられていた、主に僕と一緒に居るのが許せない女子生徒が多いみたいだ、僕の婚約者の座を狙ってるんじゃないかってさ」


イネオス・ベイサン・ソル「「「はぁ⁉︎それは無い!」」」


「だよねぇ、まぁ、はたから見たらそんな風に見えるのかもしれないけど、それはそれでヘティに文句言うのは間違っている気がするなぁ、僕に気があるくせに自分達から僕に声を掛けれて無い時点でお門違いだよね、それにヘティは“僕の婚約者じゃない“し・・・、あ、ヘティ、こっちだよー」


 話している最中に女子更衣室の扉が開き、ヘティとジュール、天華が出てきた、授業がもう少しで始まるからなのか、ヘティ達の後ろには間隔を空けてその他大勢の女子生徒もついて来ていてヘティを睨んでいる。


ロシュ君「あれ?“僕の婚約者じゃない“て、えっと、それは、どう言う事ですか?」


「ん?、あぁそれはね、ヘティにはもう婚約者がいるって事だよ」


「「「「「えぇっ!」」」」」


 ヘティの後ろから来ていた女子生徒達とロシュ君がとても驚いた声を上げた。


ロシュ君「え、じゃあ、アトリー様の婚約者の座を狙っていると勝手に勘違いした人達は、元々婚約者がいるヘティさんに絡んでいたんですか?」


「ふふっそう、だからヘティには気にする事ないよって言ったんだ、何言われてもヘティには落ち度がある訳じゃないんだから、それからヘティの婚約者はベイサンだからね、僕達と一緒にいて“ふしだら“とか言われても、婚約者とその幼馴染と共通の友人で話しているだけだから、“それがどうした?“って感じだし?」


ロシュ君「はぁ~、それは確かに、婚約者が常に一緒にいるんですから問題はないはずですよね?それに、僕達は友人として過ごしているだけですし・・・」


 ロシュ君のもっともな意見に、先程ヘティに僕の側が相応しくないとかイチャモンを付けていたらしき女子生徒が、後ろの方で気まずそうな表情をしていた、それとは別に聖獣の天華達に近づきすぎると文句を言っていた獣人族の女子生徒達は、気まずそうな表情になった女子生徒達を小馬鹿にするような表情をとる子達がいた。


「そう言う事、それにヘティは弱くないしね、僕達の冒険者活動について来れるくらい鍛えているからね、学園での武術の授業も一緒に受けてるし、ゴブリンぐらいなら10匹ぐらい倒せるよ?ね?ヘティ」


 警備員の横を通り抜けて僕達の側まで来たヘティに話を振った。


ヘティ「え、えぇ、そうですね、魔法を使ったら出来そうですが流石に剣術だけでは無理ですよ?多分・・・、それより大変、お待たせしました、皆様、テンカ様、ジュール様に至ってはわざわざお迎えに来ていただき有り難う御座います」


 申し訳なさそうに深々と頭を下げたヘティ、天華達は気にするなと言いたげに少し鳴いて僕の元に戻って来た、僕の問いに迷いなく答えたヘティのその姿を、意外そうな目で見た女性警備員2人に驚いた顔をした獣人族の女子生徒達、僕はベストなタイミングでヘティの誤解を解く事に成功したのを密かに喜び微笑んだ。


(正論の相槌をありがとうロシュ君、ふふっ)


「いいよ、君のせいじゃないんでしょう?」


ヘティ「ですが、私が律儀に皆様の“ご意見“を拝聴してしまったのが原因ですので・・・」


 あの状況はどうやらヘティ的には“皆様のご意見を聞く“と言う前向き?な行動の結果だったらしい。


(“ご意見“?・・・まぁ、何が気に食わないのか聞くことが1番早いんだろうけど・・・それにしてもあの言いがかりは流石に・・・)


「・・・まぁ、僕は心配はしたけど気にしてないよ、皆んなはどう?」


 僕的にはヘティがあんな言葉を投げ掛けられていても落ち込んだ様子がない様だし、怪我もないみたいで一安心できたのでこれと言って気にしてはいない、続いて。


ソル「僕もヘティが遅れた事は気にしてませんよ、その“ご意見“とやらが、アトリー様のお心を勝手に決めつけるような内容なのは許容できかねますが・・・」


 ソル的には僕の心中を勝手に決め付けて意見しているのが気に食わないらしい、僕達は今ヘティと合流して、運動場に急いで移動しながら話しているが、後ろには先程の女子生徒達もついて来ているので、ソルの発言が聞こえたのか顔色を悪くしている ご令嬢が数人いる。


イネオス「僕もヘティが平気なら気にません、もちろん心配はしましたが・・・」


ロシュ君「ぼ、僕も心配しましたが気にしてません」


 イネオスとロシュ君は心配はしたが遅れた事には気にしていないとの事、そしてヘティの婚約者のベイサンはと言うと、


ベイサン「ヘティ、とても心配したよ、皆んなを待たせている時は“意見を聞く“のは控えないと駄目だよ、一言 伝言を残してしなきゃ 皆んなも心配して騒ぎになっちゃうからね」


(んん?心配はしたけど“意見を聞く“のは良いんだ?伝言を残していれば良いって、・・・どゆこと?)


 ベイサンの発言に僕とソル、ロシュ君の3人は首を傾げた。


ヘティ「ごめんなさい、ベイサン、他のクラスの方からの“ご意見“は初めてだったから、つい伝言するのを忘れちゃったわ、次からは気をつけるわね」


ベイサン「うん、そうして」


 2人の会話から先程までのような状況は初めてではないようだ、それもベイサンはあの不愉快な言いがかりを黙って聞いているヘティを知っていて、わざと介入していないようだった。


「ねぇ、ベイサン、ヘティがあの“ご意見?“を聞くのは反対しないの?」


ベイサン「あぁ、それはですね、以前アトリー様達には話したと思いますが僕達が冒険者として活動するにあたって、それぞれの親から課題が出ていると言いましたよね」


「うん、それは聞いたけど・・・、もしかして・・・」


ヘティ「はい、そのもしかして、ですね、私の両親からの課題が“自分が他者からどう思われているかを理解する事“ですわ、私がアトリー様含め“お友達“としてお付き合いしている方々は皆さん男性ですから、その事で他の方が私をどう思っているか知って理解し、今後どう振る舞うべきか考える事なのです、私が皆様とごく普通の“お友達“としてお付き合いしているつもりでも、私達の関係を知らない方には先程のような穿った見方をする方がいると知っておかねば、後々アトリー様やソル様、イネオスの婚約者になる方ができた時に変な誤解を生まない為にこの“友人関係“を維持したままどう振るうのが正しいのか考えていたのです」


天華『あぁ、それで俯いていたのですね』


(それで“意見を聞いて“いたんだね)


「そうなんだ、また難しい課題を出されたね、・・・ん?それじゃあ他の2人も似たような課題が出てるの?」


ベイサン「えぇ、まぁ、僕達の課題はヘティより随分軽いですが・・・」


イネオス「そうですね、僕達の課題と言うかヘティもですけど、強くなる事は当然として、冒険者として申し分ない知識と技能を身につける事、貴族子息、子女としての勉強も怠らない事ですから」


「あぁ、だいぶ、基本的な事だね、でも冒険者と貴族子息の両立ね、でも、ヘティは追加でさっきの課題もあるのか・・・それはそれで大変そうだね」


 この会話を聞いていた女子生徒達は「そこまでしなければならないなんて!」と言った感じの表情で驚いていたが、その後の彼女達がどう思ったかは僕は知らないし、興味も無くなっていた。


ロシュ君「・・・・、あの、それはアトリー様はすでになさっているんじゃ・・・?」


 僕の発言にツッコミを入れたロシュ君に同意するように他4人も頷いていた。


「ん?・・・・確かに?じゃあ僕やソルも今 イネオス達と同じ課題をしている様なものかな?」


(・・・うん、現在進行形だった)


 普通なら冒険者か貴族子息、どちらかが自然と疎かになるものだが僕はいつの間にか、この二足の草鞋を履きこなしていたみたいだ、イネオス達が苦笑いしながら見ていた、イネオス達のご両親は僕の側にイネオス達がいても侮られない様にと、“僕“基準での課題を自分の子供達に出したようだ。


ソル「アトリー様、今頃気づいたのですか?・・・アトリー様の場合は課題ではなく、もう自然と日常になっているでしょう?普通は自然と両立できないからイネオス達は課題として出されているんですからね?分かってますか?」


「いや、うん、そうだね、日常だね?うん、あれ?でも僕の場合、学園ではあんまり貴族子息としての勉強はしてない気がするな・・・」


 今の不用意な発言でソルが・・・


ソル「そうですねっ、学園で習うはずの勉強を学園入学前に全て終わらせていればそうなりますよねっ、・・・アトリー様、貴方の学習能力を他の人と一緒にしてはいけません、と何回言わせれば良いのですか?大体ですね、あなたはいつもいつも・・・・・」


(やべっ!ソルが怒ってる・・・)


 自分の規格外の学習能力を僕自身がちゃんと認識していない事で、周りを置き去りにしていることが多々ある、(“瞬間記憶スキル“のおかげだが)そのとばっちりをよく食らうソルにいつも怒られてしまう僕だった、運動場に着いて武術の実技授業が始まってもソルからのお説教は止まらなかった。


(ヘルプ・ミー!_:(´ཀ`」 ∠):)


夜月『今回はアトリーが悪い、なので反省するように』


(オーマイ・ゴット!!( ゜д゜))


 その後、武術の実技授業が終わると同時にソルのお説教が終わり、凹んでいるとエペ先生から今後の魔法と武術の実技授業の予定の連絡事項が話された、どうやら前回の魔法と武術の実技授業の公開授業の噂を聞いた貴族家の保護者達から、自分達も子供達の授業風景を見てみたい、どうしたら見れるのかと学園側に問い合わせが殺到し、その対応に困った学園側が9月の一年生の魔法と武術の実技授業を、親子授業参観日にする事で保護者を納得させたそうだ、今後もこの授業参観を行うかは未定だが9月の授業参観の様子を見て検討することになったらしい。


(また、見せ物にならなきゃいけないの?めんどくさいなぁ)


 僕が嫌そうな顔をしていると、エペ先生が僕とソルの参加は自由だそうだ、それを聞いて僕は心の中で小躍りしたのだった。


 着替えを済ませ 教室での終わりの会を済ませた僕達は、いつも通りイネオス達と合流した後、僕はイネオス達に課題の件を謝罪した、するとイネオス達はこれは自分達も望んでやっているから気にしないでと言われ少し気持ちが楽になった。(ソルにもちゃんと謝ったよ!)


 そして、平和な日々を過ごし月日は進む、夏の暑い気候とともに吹く爽やかな風が新たなる出会いを運んでくるのだった。















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