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51話 のんびりとした日常


 どうも、僕です。実技授業のあったあの日から数日たち、僕とソルの10歳の誕生日を迎え、盛大に誕生日を祝って貰い、その数日後にはカイ兄様やカミィ姉様、お祖父様達など家族の半数が領地の屋敷に帰って行き、王都の屋敷が少し寂しく感じる今日この頃です。


(もう、そろそろ6月かー、月日が過ぎるのは早いねぇ~)


天華『そうですね、日々楽しい事があると言う良い事ですよ』


(だねぇ~)


 今日は5月の14日、日の日(日曜日)、前日の土の日はいつも通り冒険者活動をして、翌日の今日は体を休ませる為にのんびりとしている所だ。


 今僕はヘティから誕生日に貰ったプレゼントの、魔物図鑑を屋敷の庭園にあるガゼボでお茶をしながら読んでいる最中だ、ソルも僕の向かい側で誕生日にイネオスから貰った、プレゼントの有名な冒険者の冒険譚が載った本を読んでいる。


 お茶などの用意はオーリー達がしてくれているので、気兼ねなく2人で優雅な読書タイムを過ごしていると、空を見上げて僕がふと思った事を天華に聞いてみた。


(そう言えば、そろそろ6月で思い出したんだけど、この国は四季があるのに梅雨が無いのはどうして?)


天華『あぁ、その事ですか、この世界での四季という観念は基本無いに等しいのですよ、一応 地球世界で言う赤道付近の国々は1年中暖かい所はあります、この国は赤道のやや下辺りにあるにも関わらずしっかりとした四季があるのは、大昔に召喚された“勇者“がこの国の建国に手を貸した時にボソッと、「はぁ、日本みたいに四季があったら暮らしやすいのに、でも梅雨は嫌だなぁ~」と、呟いたのがきっかけでその時の精霊王が気を利かせて、この国に地球世界の日本のようのな四季を再現したのです』


(え!マジで⁉︎てかその言い方だと季節を決めているのは精霊って事⁉︎)


天華『そうです、この世界の、今私達がいるこの星はあちらの世界の地球のように、太陽から近くもなく、遠くもない、と言った好条件では無く、少し太陽から離れているので本来はかなり寒い星だったようです、ですが主神様がせっかく生命が誕生したこの星を見放すには惜しいと思われたので、この星を生命の生存に適した環境にする為に精霊という存在を生み出し、星の環境を保たせているのです』


(うわぁ~、マジですか・・・・、うん?そんな重要な存在の精霊が気を利かせて四季をこの国に再現させた大昔の“勇者“って、もしかして僕みたいに精霊に好かれていたの?)


夜月『そうだな、それなりに好かれていたようだ、だが精霊達が四季を再現した理由は“勇者“が邪竜を討伐したお礼に近かったようだぞ』


(あぁ~、邪竜討伐の“勇者様“だったんだね、邪竜のせいで精霊達も被害が出たのかな?)


ジュール『その時の邪竜ってそこにいるだけで環境が破壊されて、そのせいで自然がなくなって沢山の精霊達がいなくなっちゃったんだってー』


(あー、それで邪竜の討伐のお礼の四季だったんだねぇ、お礼の規模が壮大だねぇ、まぁでも、現在もそのお礼のおかげでこの国が豊かで過ごしやすいんだから“勇者様“に感謝だね♪)


天華『そうですね、他国では地域ごとに環境がガラッと変わる所もありますからね』


(へぇ~、ガラッとね、それは面白そうだね、そこまで環境が変わるって事は、その場所を特定の精霊が気に入ってるってこと?)


天華『はい、そんな感じですかね、まぁ場所によっては精霊が嫌がらせで、わざと人が住めない灼熱地獄にしている所なども有りますけどね』


(あらら、それは大変だね、何をしてそんなに精霊を怒らせたんだろうね?)


夜月『まぁ、大方、現地の人間が精霊が大事にしていた自然を破壊したとかじゃないか?』


(あー、確かに有りそう、しかし、この国の四季にこんな裏話があるなんてね、全然知らなかったよ)


 そうして、この世界の仕組みについて話していると、


ソル「アトリー、昼食はここで食べますか?それともお屋敷内で食べますか?」


 ソルが昼食の相談をしてきた。


「ん、そうだね、今日は父様達がいないから、ここで食べようか」


ソル「分かりました、オーリーさん達に伝えてきますね」


「うん、有り難うソル」


 あの時の喧嘩?の後から周りに誰もいなくなったら必ず僕を呼び捨てにするようになったソル、あれ以来より“感情共感“の共感度が上がり、互いの考えていることがかなり解るようになってきて、たまに冒険者活動中に“感情共感“が発動すると、息ぴったりの連携技を繰り出す事ができるようになった。


ソル「はい、では少しここを離れますね」


 と、いい屋敷の方に素早く走って行った。


「そんなに急がなくても良いのに」


天華『まだ少し貴方から離れるのが不安なんでしょうね、いつもアトリーが1人になった隙に色んな人に絡まれるから』


(やー、それはそうだけどさぁ~、あれはどうしようも無いよ、相手からして見れば僕が1人でいた方が好都合だと思うだろうからねー)


夜月『見た目からしたら、アトリーが“か弱そう“に見えるんだろうさ』


(そうなんだよね、でも、ここ最近はあの実技授業のおかげか学園内では絡まれる事も無くなったけど、まだ街中だと時たま絡まれちゃうよね・・・、あ、そう言えば、あの後レーグルス君は学園に来なくなったけど今どうしてるんだろうね?)


 と、今更思い出した僕に天華が。


天華『彼なら、すでに母国に強制送還されていますよ、それに神々から剣術のスキルを消されて落ち込んでいるようです』


(ありゃー、剣術の腕を自慢してたもんね、彼、でもそんなに上手くなかったでしょう?今更 剣術のスキル消しても意味ないんじゃ?)


夜月『アトリー、自分達を基準として考えてはいけないぞ、あれはあの年の子供にしてみたら十分上手い範囲に入っていたからな、それを急に奪われたんだ、落ち込みもするさ、だがいい罰になっただろうさ』


(へぇー、そうなんだ、まぁ、反省してくれるといいね、それに戦う術が欲しいなら剣術以外の武器を使えば良いだけだから、そんなに落ち込まなくて良いのにね?案外、今回の神罰は軽かったよね?)


天華『まぁ、できない事はないですけど、武術系のスキルはかなり鍛錬しないとそう簡単につきませんよ?』


(そうなの?でも彼はまだ若いんだから今からでも遅くはないよ、体に剣術の基礎は染み付いてるんだからさ)


夜月『・・・・う、いや・・・、まぁ、そうだな・・・』


 ここで天華達はこのアトリーとソルの訓練の内容が普通と違うのを思い出し、今 彼にどう説明しても多分理解できないと思い説明を諦めた・・・


 本人達の身体能力の高さもあるが、まずソルがしている訓練は密偵や暗殺者が行う隠密訓練をし、その上でアトリーと騎士達 数人を相手どった訓練もしている、普通の10歳は1人の指南役を設けて一対一の訓練するのが精一杯なのだが、アトリーに至っては自分の得意武器として刀で訓練する事が主だが、時と場合によってその場にあるすべての武器を取っ替え引っ替えしながら、複数の騎士達相手に一対多数の乱取り訓練している、素手で周りを囲まれた状態から始まり、相手の武器を奪いながら戦うなど変則的な訓練法をしているので、もう絶対に普通の10歳児ができる事ではないのは確かだ。


 そんなアトリーにはもう基礎の厳しさとは何か、など言えた話ではない、体を動かすのが楽しいと言っている彼に、もう自重と言う言葉は届かない状態だった。


 2人一緒に訓練する時はアトリーが持ち前の存在感を利用し、注目を集めつつ複数の相手を自前の速さを利用して翻弄し、その隙にソルは隠密の技術をいかし、相手に気づかせないように倒しアトリーを補助する、アトリーはアトリーでその派手な行動でソルの隠密行動を補助する、互いに補助し合う表裏一体の戦い方は彼らだけの戦闘スタイルだ、またジュール達との戦闘の連携も別にある。


(はぁー、しかし、クラスメイトで話しかけてくれるのはソルを除くとロシュ君だけになっちゃったなぁー、まぁ、元から彼以外とはあまり話したことはないけどねぇ~、でもあの時の“感情閉鎖モード“の表情のせいで皆んなに怖がられた見たいだからなぁ)


 あの日の翌日いつも通り登校すると、あの時あの場にいたクラスメイト達は僕を遠巻きに見て、視線が合うと目をそらされてしまう様になってしまった、以前は煩わしい程の視線が注がれていたのだが、最近はそれほどでも無い気がする。(自意識過剰じゃないからね!)


天華『ちょっと違うと思いますけどね・・・』ボソッ


(うん?何か言った?天華?)


天華『いいえ、何も?それより不躾な視線が減って良かったじゃないですか?』


(まぁ、そうなんだけどね、あんな事で視線が減るのはなんか違う気がする、僕を見慣れてきて視線が減っていくことの方が良いと思ってたんだけどね、なんか危険物扱いって感じは少し悲しいかな?皆んなが皆んな あの状態の僕を理解できるとは思ってないから、いつかあんな事が起こるとはある程度予想はしてたけど、思った以上に早かったのは誤算だよね、ま、しょうがないか・・・)


夜月『アトリー・・・、打算的な考えの者達が真にアトリーの存在の凄さを理解し畏れ敬った結果がアレなのだ、そんな奴らに対して負い目を感じる事は無い、そこは堂々としていればいい、アトリーは何ひとつ悪い事をした訳では無いのだから』


(うん、分かっているよ、夜月・・・、僕にはイネオス達やロシュ君がいるからね、何より“親友“のソルがいるから寂しくないよ!)


 ニパッと笑いややドヤ顔の僕は再び手に持っていた本に目を戻す。


「うん?あ、これ、いつも行ってる泉にいる水色の猫ちゃんだ」


 天華達と念話をしながら何気なくめくっていた本のページに、冒険者活動でいつもいく泉で会う猫の魔物が記載されていた。


天華『あぁ、確かにあの魔物ですね』


 いつもの様に身体を縮めた状態でテーブルの上で寛いでいた天華が近寄ってきて本を覗き込んだ。


「ファウンテンキャットだってあの子、人懐っこくて可愛いよね、いつも大人しく撫でさせてくれるし、あれ?でも警戒心が強いって書いてある、なんでだろう?」


ソル「それはアトリー様だけに人懐っこいだけですよ多分」


「あ、ソル、お帰り、僕だけ?・・・あぁ!天華達の称号のおかげだったね!ん、あれ、でも天華達が近くにいるからだっけ?うん?どっちだったかな?」


ソル「そのどちら共では無いですか?」


 昼食の用意をお願いしに行っていたソルが戻って来ていて話しに混ざって来た。


天華:『ソル君が正解です』


「あれ、そうだっけ?前は称号のおかげだとか言ってた気が・・・」


天華:『そうですね、もっと詳しく言いますと、以前に主神様から私達と称号どちらもあって起こった現象だと、後、称号だけでも十分効果はあった様ですが、その上でアトリーが動物や魔物を怖がらないからだと言ってましたね』


「へぇーそう何だ、確かに僕は動物も可愛い魔物も好きだからね♪・・・うーん?あれ?でも、ソルやイネオス達にも懐いていたよね?それはなんで?」


ソル「それは僕も不思議でした、アトリーが側にいるからなのかも知れませんが、他の動物達も僕達を避けないので・・・」


「そうだよねぇ?」


天華:『それはアトリーの魔力の特性のおかげでも有りますね、アトリーの魔力は種族問わず全ての生物を魅了する効果があると思われます、特に動物や魔物などは行動原理が単純で素直なので、悪意のある魅了のされ方では無く、単純にアトリーの魅了の魔力で警戒心が緩んだ状態で、魔物に忌避感が無い皆さんを自分達に害が無いものとして認識し、気を許しているのでしょう』


「あー、じゃあ僕がいないと動物達は近寄って来なくなるのかな?」


天華:『そうですねぇ、何度かあって皆さんを覚えていて懐いていた動物達なら、アトリーが居なくても近寄ってくるとは思いますよ?』


「そっか、なら安心だね♪急に避けられたりすると寂しくなっちゃうもん」


ソル「そうですね、ヘティがガッカリせずに済みますね」


「うん、そうだね、ヘティは泉の動物達にメロメロだったからねぇ~、・・・しかし、僕の魔力って魅了特化が過ぎる気がするんでけど・・・」


「なんで?」と、首を傾げて考えてみた。


天華:『それは以前にも言いましたが王家の血筋の特性とお母君の特殊な魔力、それにアトリーの容姿全てが合わさって相乗効果をもたらし変化しています、それが全ての生物を魅了する作用をもたらしているのです、その上 魔力量も多いのでどうあってもアトリーの魅了効果を防ぐ事はできないのでしょうね』


「量も関係してくるのかー」


(そら しょうがないか・・・、うん!どうにもならんって事がよく分かった!)


ソル「そう言えば前から気になってはいたのですが、王家の血筋の特性とは何ですか?」


「あー、それねぇ、なんて言って良いのかな?これは体質?と言っていいのか分からないんだけど、この国の王家の血が入ってる人は少なからず、人を惹きつける魅力があるんだよね、王家の長子には必ずと言って良いほど指導者としての力が備わっていて、この人とならずっと仕事をしていたいっ、て、思う魅力が出てきて、他にも、この人は自分が守らなきゃって思っちゃう様な庇護欲を掻き立てる感じの魅力とか、ズボラでほっとけないって思って世話を焼きたくなる様な感じの魅力?みたいな、様々な魅力が強調される特性って言うのかな?人が好意を抱くような惹きつける魅力の種類は人それぞれなんだけどね、

 それに加えて、王家の血筋の人にはどんな人の魔力でも自分の中に受け入れたり譲渡したりができる体質なんだ、僕とソルが3年前にした“忠誠の誓い“あれって王家の血筋の特性があってこそ成り立つ儀式なんだ、まぁ簡単に言うと王家の血筋の特性とは“人たらしの特性“なんだよ」


天華:『ア、アトリー、そ、そこはせめて“協調や同調、融和や調和に特化“した特性とか言いましょうよ・・・』


 僕のぶっちゃけた説明に天華がツッコミを入れている後ろでソルは少し考えて、


ソル「・・・と、言う事は僕がアトリー様をほっとけないって思うのは、その王家の血筋の特性によるものなんですか?」


天華:『え、えぇそれもあるでしょうが、そもそも、性格の相性が相当合う人でない限り、あなた方のような強い惹かれ方はしないのですよ、あなた方の場合、普通の特性の効果以上に惹かれ合い、2人が“感情共感“を出来るほど相性がいいのはそうそういませんからね?特にソル君の血筋の特性、王家の影としての特性も相まって強い繋がりが生じているんですよ」


ソル「アトリーだけではなく、僕の血筋にもアトリーをほっとけないっと思う要因があると・・・・・確かに・・・アトリーは今あげた“例の全て“に当てはまってしまいますから、僕とアトリーは相当 性格の相性がいいんでしょうね・・・」


(うん?聞き捨てならない部分があったぞ?)


「ねぇソル、僕ってズボラだった?」


 と聞いて見ると、


ソル「え⁉︎いいえ!決してそんなつもりで行ったわけではないですよ?せ、世話を焼きたくなると言う一文がですね 当てはまると言う事です!」


 焦った様子で早口で弁明した。


「そう、良かった、ズボラだって思われてたら・・・ちょっと傷ついちゃう所だったよ、僕、これでも綺麗好きだから・・・」


 ホッとしつつ、他に自分に至らない点はないか遠い目で考えた。


ソル「ア、アトリー、僕はいつも1人で何でもこなす貴方が無理をしていないか、少し心配で世話を焼きたくなるんですよ、だからアトリーに悪い所はないですからね」


「う、うん、分かった、でも僕に至らない所があるなら遠慮なく言ってねソル」


 自分では気づけない所もあると思ったのでそうお願いした。


ソル「はい、ちゃんと言います、でも、アトリーはもっと周りを頼ることを覚えてくださいね」


 と、逆にもっと頼るようにと真剣に言われてしまった。


「うー、・・・うん、分かった・・・」


 ソルの強い視線を受けて、了承の返事をしてしまった僕。


(くっ!視線の圧に負けてしまった!)


天華:『まぁ、ある意味ほっとけないのはよく分かります』


夜月:『うむ、私もよく分かるぞ』


ジュール:『アトリーはいつの間にかシレッと大変なことしてる時があるもんねぇー、ほっとけないの分かる~』


ソル「ですよね」


「くっ逃げ場がない!」


 ソルの意見にジュール達が同意してしまったので、どう言い訳しても敵わない状況になってしまい観念するしかなくなった・・・、こうして賑やかでのんびりとした日常が続いていた。












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