45話 神様がお怒りです
主神リトスティーナ 視点
(今思い出しても腹が立つ!)
あれが起こったのは本当に突然だった・・・・
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私達3柱の神々がアトリーちゃんの前世であった不可解な事を調べ始めて定期的に会って進捗具合を話し合っている時、今日はいつも通りの報告会をして最後の締めにその日のアトリーちゃんの様子を覗いていたら。
『今日のアトリーちゃんは珍しく、たくさんの魔法を使ってましたね』
『そうね、多分 他国の人達に口出されない様に牽制の意味を込めて多種多様な魔法を披露したんでしょうね、しかしなんであの他国の使者達が私達のアトリーちゃんの行動に一々口出しするのかしら⁉︎今でもアトリーちゃんの事をただの貴族の子供だって考えているお馬鹿さん達が多いのかしら?』
『そうなんだろうな、あの警告を教会の方から知らされているにも関わらず、事実と受け取らないで自分の都合の良い解釈でアトリーを自国の物にしようと考えているのだろうさ、今回のこの実技授業?だったかな?これを機にアトリーの実力が分かれば少しは大人しくなるだろうさ』
『そうだと良いけど・・・』
『それにしても、魔法に引き続き 武術でも実力を示せなんてとんだ言いがかりですね、アトリーちゃんは子供のする事だとして面倒には思っていても心底嫌ってないのが救いですかね?』
『だな、アトリーの精神年齢が高くなかったら今頃あの王族2人はスキル全てを剥奪されている所だろうさ』
『全くもってその通りよ!アトリーちゃんに感謝して良いくらいなんだから、あ、武術の授業が始まるみたいよ・・・』
アトリーちゃんの様子を見るために大きめの画面の出していたら昼食を食べ終わって着替えてきてたアトリーちゃんを映し出していた、授業の説明が終わりクラスごとに分かれて並び素振りを始めたアトリーちゃん。
『アトリーちゃんの素振りはいつもながら綺麗ですね、これも“あのスキル“のおかげでしょうか?』
天照ちゃんが今、言っているのはアトリーちゃんの転生時にサイコロで決めた“総合武術スキル“の事だ。
『うーんそれもあるかもだけど、何よりアトリーちゃんが私の忠告をちゃんと聴いて訓練を怠らなかったからだと思うわ、それに潜在的な才能もあったみたいよ、ご家族も運動神経がいいみたいだしね』
『遺伝もあったのですね、あ、また あの“逆恨み皇子“に絡まれていますね』
『あー、本当だわ、あの子かなりしつこいわよね~』
『結局こうなったな・・・』
画面内でアトリーちゃんがライヒスル帝国の第3皇子に試合を申し込まれている所だった。
『あの子、懲りないわね~、一度痛い目に遭った方が良いんじゃないかしら』
『まぁ、今日の試合で思い知るだろう』
月詠くんの言葉を聞きながら画面内を見ていると試合の為にアトリーちゃんと“逆恨み皇子“が相対して試合が始まった、試合の内容は“アトリーちゃんの独壇場“この一言に尽きる戦いぶりだった、アトリーちゃんは相手の未熟な剣捌きを上手く受け流したり、避けては軽く反撃したりと繰り返していると“逆恨み皇子“の動きに飽きたアトリーちゃんが少しやる気を出し、巧みに相手の攻撃をいなし首元に剣を添えて降参を促すが相手は諦めが悪く、まだ自分は負けてないと言い出したのを困った様子で見ているアトリーちゃん。
グゥワァンッ!
『『『何っ!』』』
急に次元が歪みを感じた、今いる重複神域は私が管理している世界“ジェムシード“と天照ちゃんや月詠くんが見守っている世界“アース“、この2つの世界のエネルギーを利用して結び構築された強固な神域なのだ、その神域に次元の歪みが出るとは異常としか言えなかった、こんな現象が起こし得る要因はただ1つ・・・
『『『“勇者召喚“⁉︎』』』
私達は予期せぬ“勇者召喚“に驚きつつも急いで召喚されている人達をこの神域に通す用意をした。
まず、流れている時間を引き延ばし少しでもこの場に留める様にする、次に先程まで見ていた画面を消し、今行われている“勇者召喚“の魔法に干渉して一旦この神域に避難させる通り道を作り出した、これで異次元を通過する事で受ける負荷の影響で身体が壊れる心配と何の力もなく異世界に放り出されるような危険は避けれる様になった、後は作り出した通り道から強制的に召喚されてしまった可哀想な人達が来るのを待つだけ・・・
『ふぅ、何とか間に合った、天照ちゃん達がいなかったら少し面倒なことになっていたわ・・・』
『ティーナ、今回は君も知らなかったのか?』
『えぇ、私は許可してない、多分 人間達が無断で行ったようね』
『無断で・・・それは容易に出来るものですか?』
『そんな簡単には出来ない、“勇者召喚“の出来る設備は限られているはずだし、もし設備を整える事が出来たとしても膨大なエネルギー、魔力がいるはず、だからウチの世界では私が指定した場所以外では“勇者召喚“の儀式はしない様に厳しく言い伝えてあるの、じゃないと私の方からアシストできないから』
2人と会話しながら“勇者召喚“を行った場所と理由を探っていると、
『ティーナちゃんが知らないと言う事は、指定された場所では行われていないと・・・では、今回の“勇者召喚“のエネルギーはどこからを持ってきたのですか?』
天照ちゃんがズバッと聞いてきた事に私は苦々しい思いでこう答えた。
『っ、・・・“沢山の生物“からよ・・・』
私の言葉で意味を理解した2人は顔を顰めた、そう、“沢山の生物“、それは沢山の魔力を保有した人間、つまり“生贄“だ・・・
この“勇者召喚”には膨大なエネルギー、魔力が必要でいくら魔力の多い人族がいたとしてもたった数百人程度ではとても賄いきれないのだ、それこそ強力な魔力量を誇るエルフ種や魔族種が数十人いたとしても、その魔力を全て使いさらに命を賭けるぐらいしないと時空を繋げる道の穴すら出来ない、それほどの大量のエネルギーの代償が必要な儀式であるから、私達 神の許可と指定された場所があるのだ。
(時空を繋ぐ上に他世界の生命体を連れて来る行為をそう簡単に出来てたまるものですか)
今、私の世界から罪も無い魔族種の人達の命が大量に消えて行くのが分かった、今回の“勇者召喚“を行った国の理由とされている人達だった、彼らには何の罪もなかった、なのにあの国の権力者達の欲望の為に彼らは無理やり“生贄“にされたのだ、魔族の住む土地の資源が欲しいがために、そして、そこに住んでいる魔族種の殲滅の戦力として召喚した勇者を“餌“にアトリーちゃんを巻き込もうとしている腐った考えをした一部の貴族達が今回の“勇者召喚“を主導していた。
『ティーナちゃん、すみません、無神経なことを聞いてしまいました』
と、謝ってくれた天照ちゃんに視線を向けながら私は“勇者召喚”を行った人間達に激しい怒りを覚えつつもこれから来るであろう“勇者候補達“の為に何とか平静を保つ。
『ううん、大丈夫、そろそろ来るわ、この“勇者召喚“途中で送り返すことが出来ないから、これから来る子達には悪いけど一旦こちらの世界に来てもらわなきゃね、詳しく説明してあげたいけど余計な事を教えちゃうと召喚された先で酷い目に遭うかも知れないから、そう簡単に害されない様に出来るだけ力を与えなきゃね・・・』
『そうだな、・・・・今回の“勇者召喚“された者は特にな・・・・』
『どういうこと?月詠くん?』
『もう来る、見たら解るだろう』
月詠くんの不可解な言葉に説明を求めていると作っておいた時空の道が光だし中から3人の男女が現れた・・・
『っ!』
通ってきた道の影響か少し眩しそうにして目を細める男女、その先頭にいる男の子に酷く覚えがある・・・
(あの子は・・・)
私は隣に立っている月詠くんを見た、彼は視線に気づいたのか深く頷き彼らに静かに目を向けた。
深呼吸をして気合を入れた私はまだ目が眩んで状況が掴めていない彼らに声を掛けた・・・
『ようこそ、私の世界に呼ばれた子供達よ・・・』
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その後は軽く世界の説明をし、各々に適性のある魔法とスキルを与えて私の世界に送り出した。
『ふぅ、結構 疑り深くて苦労したけど、どうにか納得して行ってくれたわ』
『良く頑張りましたね、ティーナちゃん、呼ばれた理由を上手く誤魔化して説明するのは疲れたでしょう?』
『えぇっ、とっても疲れたわ!あのクズどものせいで!まだ子供の3人を騙したまま この世界に送り出さなきゃならなくなったなんて‼︎あぁ!ほんっと!むかつくっ!』
『えぇい!あの国に城が壊れない程度の大嵐をぶつけてやるー!!』
世界の様子を見るために再び映像画面二つを出し、例の国とアトリーちゃんの様子を映し出した。
『・・・はぁ・・・、仕方ありませんね、見なかった事にしましょう、月詠、私達の創った神獣達からアトリーちゃんに説明を、・・・・いえ、アトリーちゃんの父親達に今回の事をリークして“勇者候補達“の保護を頼んでみましょう、今でしたら この国の王も近くにいますから上手くいけば国単位で動いてくれるでしょう』
『そうだな、アトリーにも理由を誤魔化しながら伝えねばならんがな』
例の国を映し出した画面の中では大嵐が王都を襲っていて、暴風雨で色々と酷い状態だ。
『そうね、お願い出来るかしら?アトリーちゃんに今回の“勇者召喚“の理由の1つにアトリーちゃんの力を取り入れたいがために“国際支援“と言う大義名分を得ることができる“勇者候補達“を召喚したなんて言えないもの、私はもう誤魔化すのは疲れたわ・・・』
『あぁ、お疲れ様、私と天照で上手く大人達には伝わるように伝言する』
『あっ♪、アトリーちゃんが雷を楽しんでくれてるわ♫ふふっ』
画面に映るアトリーちゃんは目をキラキラさせながら私が起こした大嵐の余波の雷に夢中になっていた、その顔が何とも言えない可愛さで荒んでいた私の心が癒された。
『喜んで貰えて良かったですね、ティーナちゃん、それにしても今回の件 腑に落ちませんね、いくら設備が整えられたからと言っても他国との戦争の戦力増強目的の為だけに、たった一国だけでここまで用意しますか?』
『あぁ、そこは私も思ったのよ?大体の”勇者召喚用”の設備だってそう簡単に用意できるものでは無いはずよ、もともと”勇者召喚用“の設備は私がアクセスしやすい土地を指定して、設備をこの世界のエネルギー管理システムに繋げれる様に調整したりして手間暇かけて作る様に指示してるんだから、エネルギーの供給元を変更できる様にするなんてかなりの研究解析を繰り返さないといけないはずなのに、この数年で魔族種だけから魔力を引き出せる様にするなんて、この国では不可能なはず・・・』
『え、では、そんな高度な技術があればわざわざ“勇者召喚“する必要もないはずですよね?魔族種にだけ効く兵器とか作ろうと思えば作れるはずですし・・・』
『えぇ、おかしいわ・・・、ちょっと待って調べてみる・・・・・』
すぐに今回の“勇者召喚“を率先して進めた人物を調べあげたすると、
『・・・・・“勇者召喚“の話を積極的に進めたのはさっきも言った“クズ貴族“だったけど、その話に乗ったのはあの国の王太子ね、でも、その王太子、何者かに薬品を使った思考誘導されている形跡があるわ、洗脳に近い・・・これは・・・前にも似たような事があったわよね?』
そう言って天照ちゃんを見ると、険しい表情をして考え込んでいる。
『ティーナちゃん、以前起こったアトリーちゃんの噂をばら撒いて自滅した貴族達が信仰していた宗教の教祖はまだ見つかってないんでしたよね?』
『えぇ、あの洞窟神殿での大量虐殺以降、全然 姿を見せてないわ・・・、でもこのやり口アイツらに似てるわね・・・また、アイツらなの?もしかして今回の“勇者召喚“は元々から“アトリーちゃんだけ”を狙って起こしたってこと?・・・でも今回 召喚された子達の中にいたあの男の子はやはり、偶然じゃない・・・やっぱり!アトリーちゃんの前世からちょっかいをかけていた神のせいなのね!!そいつが“勇者召喚“の設備を改変させたんだわ!!」
バチバチッ!怒りでつい電気を放電してしまった。
『ティーナちゃん、落ち着いて、そうなると、アトリーちゃんの身の安全を第一に考えて貰うように伝言しましょう』
『天照、それは大丈夫だ、今あちらも同じような考えにいたったようだ、アトリーの親族はあの邪教が今回の“勇者召喚“を裏で扇動しつつ、ズューウス国とノルテ魔王国の戦争での混乱を引き起こすための生贄にアトリーを求めていると思ったようだ、その事であわよくば自国を巻き込むためだとも警戒しているようだ、
なので私から『今、其方達が考えている事は大体当たるだろう、なので其方達に求めるのは大国の主人として、そして“大人として“、最大限できる事をするように』と、伝言しておいた』
『それは良いですね、意図はちゃんと伝わったでしょうか?』
『あ、アトリーちゃんは“勇者候補達“が未成年だからって思ったみたいね』
『まぁ、アトリーちゃんは自分が邪神教に今だに狙われていると知りませんからね』
画面内で国王が“勇者候補達“の保護を約束し、深く頭を下げている最中だった、それを見た私は、
『うん、これでどうだ!』
先程まで起こしていた大嵐を止め、雲の間から後光が射すようにアトリーちゃんを照らした、陽の光に照らされたアトリーちゃんはそれは綺麗で可愛く幻想的な雰囲気を醸し出させた。
『ここまですればアトリーちゃんの事を言っていると確信するでしょう!』フンスッ
アトリーちゃんは自分の姿が人の目にどう映っているかなんて全然気にせず楽しそうに神獣達を撫でている、その優しく微笑んだ光景がより自分の姿が相手に畏怖を与えるような美しさを演出しているのかさえ気づいてもいない、天然の人間たらしのアトリーちゃん・・・
『うーん、アトリーちゃんは自分の姿が人に多大な影響を与えている事の自覚が薄すぎでは?』
『あぁ、そうだな、それに今のアトリーは性別は男だったはずだ、この様子を見るとどう見ても“女神“のようにしか見えないのだが・・・』
『う、うん、そうね、ちょっとやり過ぎたかしら?・・・』
あまりにもアトリーちゃん愛が溢れた演出がアトリーちゃんを女神にまで押し上げてしまった、少し反省し その後の様子を伺っていると、アトリーちゃんは自分の教室に戻るためにその部屋を出て行ったがアトリーちゃんの父親とこの国の王がアトリーちゃんを守りつつ、どうやって“勇者候補達“を保護するかと相談していた。
それを見て私達はホッとしたのだった・・・・
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『はぁ、これでひと段落ついたけど、これからは重点的にズューウス王国方面を監視してみるわ、やっとあのムカつく神が尻尾を見せてきたんですから今度こそ取り逃さないわよっ!』
『そうですね、最近活動を活発化させているのでしょうね、例の“薬品“の事もありますし・・・』
『あぁ、アレには気を付けなければな、いまだこちらの世界では“薬物中毒の危険性“の認知度が低い様だからな』
『その事なら、さっき 神託でこの国の“危険薬物調査“に積極的に協力するようにと私の神託の聖女ちゃんに言っといたわ!』ドヤァ
『そうかそれなら、問題ないな、だが用心するのに越した事は無いからな、そうだ、ティーナ、保護された後の“勇者候補達“はどうするつもりだ?すぐに“アース“、こちらの世界に送り返すのか?』
『あぁー、それねー、ちょっとすぐには無理かなぁー、今回の“勇者召喚“の事で少しエネルギー使っちゃったから最低でも5ヶ月は待たないと送り返せないのよ、それに送り返す場所の整備もさせなきゃだし、ここ数百年使ってなかったからねぇ~』
『そうか、だが、エネルギーに関しては“こちらから“も融通するぞ?使用申請もちゃんと提出するし、今なら難しくは無いしな・・・』
『うーん、それは有り難いけど、彼らがいつ保護されるか分からないし、その間にどんな間違った知識を入れられているか分からないからなるべく誤解が解けてけてから送り返したいのよね、それに彼とアトリーちゃんとの事もあるし・・・』
『そうでしたね、アトリーちゃんは彼に会っても大丈夫でしょうか・・・』
『今の所、彼の事はアトリーには伝えていないが、まず、会って見てアトリーが彼に気付くかだな、まぁその時になって見ないと分からないだろう、アトリーに聞かれたら答えてやればいい、なるようにしかならん』
『そうですね・・・後はアトリーちゃんの気持ち次第ですしね』
『うん、静かに見守りましょう、こればかりは私達にできる事はないから、あぁ、そうだ今“勇者候補達“のあの子達は何してるのかしら?見て見ましょう』
少し沈んだ気分を変えるためにこちらの世界に召喚された子達の様子を伺う事にした・・・
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ズューウス王国:王城内
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第三者 視点
儀式の間の魔法陣の中心に眩しい光と共に現れた“勇者候補達“、最初は戸惑った様子を見せていた。
「ここが異世界の城?」
「本当に来ちゃったんだ・・・」
「ねぇ、なんかココ見覚えない?」
?「あぁ!!ようこそお越し下さいました!“勇者様“!我がズューウス王国を邪悪な魔族達の手からお守り下さい!」
光が収まり召喚した側が“勇者候補達“に掛けた言葉に、
「「・・・うっわぁ・・・」」
と、何故か女子2人が嫌そうな声をあげていたのだった・・・