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43話 実技授業 試合の行方と新たなる出会いの予感


「「「キャァー!」」」「「「危ないっ!」」」「「「「「避けろーっ!」」」」」


 屋外運動場全体から叫喚が響き渡った、相手は自前の真剣 いくら舞台上にいる人間に軽い防御魔法は掛けられているとは言え真剣で切られたりすれば大怪我は免れない。それに今は神々の加護の結界は発動させていない。


 背後から迫り来る相手の剣を前に僕はまだ魔力を感じた方角を見つめていた・・・


「!」


「「「「キャァー!もうダメェー!」」」」


 観客席にいる人の中で子供が剣で斬られる惨状を見ていられなくなり目を閉じた人達が聞いたのは…、


ガキッィン‼︎


と、響渡ったのは到底 生身の人間と金属の剣がぶつかり合うような音ではなかった、不思議に思いそっと目を開けて見てみれば斬りかかられた方の白銀の髪をした少年が斬り掛かった少し暗い金髪の少年の剣を先程と同じ様によそ見をしたまま左手で掴んでいたのだ。でもあの状況で金属同士がぶつかった様な音はどうして鳴ったのか不思議に思っていると、


ヒュッ‼︎ ピタッ!  グゥッン! ブンッ!バキッ‼︎ 「ぐはぁっ!」ブォッ!ビュッー!ドカッン‼︎ビシッ!「かはっ!」


 一瞬の出来事だった、剣を受け止めた白銀髪の少年が右手に持っていた剣を金髪の少年の首筋に叩き込もうとして、もう少しで首に当たると思った所で寸止めした、その後 何を思ったか白銀髪の少年は自分の剣を右に勢いよく引き戻し、その勢いを利用して重心を動かし左足を上げながらコマのように回ると同時に金髪の少年の剣を引き寄せるようにひっぱり体制を崩し、隙のできた脇腹を思いっきり蹴り飛ばした。金髪の少年は凄いスピードで真横に飛んでいき競技スペースを囲んでいた分厚い壁に背中からぶつかった、壁は蜘蛛の巣症にヒビが入り衝撃の凄まじさを物語っていた。


パラパラッ ズルッズルズルッ ドサッ


 ぶつかった衝撃で少し壁にめり込んでいた金髪の少年が瓦礫と共に地面にずり落ち、その場で動かなくなった・・・。



「ふぅーーっ、危ない、もう少しで首を折って殺しちゃう所だった・・・、あ、でも、今の蹴りも危ないかも⁉︎レーグルス君大丈夫⁉︎生きてる⁉︎」


カランカランッ


 慌てた僕は両手に持っていた剣を手放して急いで彼に駆け寄り、彼の生死を確認した。


「・・・・あ、良かった、少し脇腹の骨が折れてるみたいだけど息してる!これなら“ハイヒール“っと、・・・うん、大丈夫♪」


 彼の怪我の具合を見て回復魔法で治療を施し、他に問題は無い様なので一安心した。


(しかし感知能力を最大にしてある僕に斬り掛かってくるなんて得策とは言えないよ、条件反射で反撃しちゃったし、短気は損気ってね)


「「「「「はぁ⁉︎」」」」」


「今のは何が起こったんだ⁉︎」  「全然見えなかった!」


「いつの間に壁に叩きつけられていたんだ⁉︎」  「今何をしたの⁉︎」


「あの子斬られたんじゃなかったの⁉︎」  「あの時の金属音は何⁉︎」


「それより飛ばされた子の容体は⁉︎」 「どうしたら素手で剣を掴めるんだ⁉︎」


「相手の剣なんて見てなかったじゃねえか!」 「公爵子息は何でよそ見をしたの?」


「勝敗は結局どうなったんだ⁉︎」 「何だあの寸止め⁉︎」


 事態が一気に急変したことで見ていた全ての人が混乱していた、その中でソルと公爵家の家族だけが少し険しい顔をしていた。


(やばっ!後で怒られるかなぁ?)


 徐々に理解が追いつき今あった事が凄いことだと認識した人達は興奮冷めやらぬ状態になり話し声が大きくなり騒音となってきた、その時…


サフィアス叔父様「皆!静まれ!」


 貴賓席で立ち上がり威厳あるサフィアス叔父様の一喝が響き渡りすぐさま周りは静かになった。


サフィアス叔父様「審判、今の試合の勝敗は?」


エペ先生「!、は、はい、今の勝負アメトリン・ノブル・デューキスの勝ち‼︎」


「「「「「わぁ~~!」」」」 パチパチッパチパチッ


 レーグルス君を保健医の先生に引き渡し、剣を拾いに舞台に戻って来ていた僕の手を持ち勝利の宣言をされた。


サフィアス叔父様「うむ、良くやった」


「お褒め頂き有り難う御座います」


サフィアス叔父様「これでアメトリンの武術の実力は証明されたな、ヴェステ王国 第1王女、アメトリンはそなたの要望に応えた、これで満足したな?」


女子生徒アーミラ「っ!、・・・はい、私の要望に応えていただき感謝します…」


サフィアス叔父様「うむ、それでは急で申し訳ないが来賓の各国の使者殿達は迎賓館までお越しいただけるだろうか?後の生徒達はそのまま授業の続きをするように」


 サフィアス叔父様の言葉に各国の使者達が続々と席を立ち観客席からいなくなった、僕は借りた剣を拾い舞台脇で僕を待っていたジュール達を連れてソル達がいる場所に戻った。


「ただいま♪」


 ソル達がいる場所まで何故か生徒達が避けて花道のようになったが気にせず歩いて通りソルに話しかけた、良く見るとイネオス達もこちらに向かって来ていた。


ソル「アトリー様、お帰りなさいませ、お怪我がないようで何よりです、ですが、何故 先程の試合中によそ見をなさったんです?」


「ん?あれ?ソルは感じなかった?遠くでかなりの量の魔力を行使した気配を感知したんだけど」


ソル「それは・・・」


イネオス「お疲れ様です、アトリー様、お怪我はないですか?」


ヘティ「あら、何かお話し中でしたか?」


「あぁ、イネオス、大丈夫 怪我はないよ、ヘティ、今 話し出したところだよ」


ベイサン「ほっ、お怪我がなくて良かった…、それでお話というのは先程の試合の話ですか?」


「そうだよ ベイサン、僕がちょっとよそ見した時の話」


ベイサン「あぁ、あの時ですね」


ロシュ君「あ、あのっ、そ、それは僕が聞いてもいいお話なんでしょうか⁉︎」


「ロシュ君…、それは気にしなくていいよ、多分?あ、それより、君に紹介して無かったね、この3人はクラスは違うけど僕の友人だよ7歳の時から仲良く遊んでいた仲なんだ、それで皆んな、彼はクラスメイトのロシュ・アーディ君、一般入試枠での成績上位者で特待生なんだ、とても良い子だから仲良くしてあげて」


 ほぼ初対面の4人を紹介し、互いに挨拶を交わして貰い 話題を元に戻した。


「えーっと確か、試合でのよそ見していた話だっけ?」


ヘティ「はい、そうですがアトリー様はあの時、何故 他に意識を逸らしたのですか?」


「それがね、何の魔法かは分からなかったんだけど、あちらの方向から大量の魔力を行使した時に感じる魔力の高まりを急に感知したんだ、あの時は試合中で僕の感知系のスキルを全て最大にして動いていたから凄く遠い場所の魔力の高まりを感知できたんだよね」


ベイサン「へぇ~そうなんですか、僕には全然分かりませんでした」


イネオス「僕も気づきませんでした」


ヘティ「凄く遠く?とは どちらの方なんですか?」


「うーん、そうだね多分“ズューウス王国“方面だと思う、角度からいくと王都の方で何かあったのかも知れないね」


ロシュ君「す、凄いですね!“ズューウス王国“の王都の方まで魔力を感知できるなんて!」


イネオス達「「「いつもながら凄いですね!」」」


「ふふっ、そんな褒めて貰えるなんて、訓練頑張った甲斐があるよ、・・・・あ…」


 ロシュ君の言葉にイネオス達も頷いて同意して褒めてくれている少し照れていると少し離れた場所でアーミラさんが物凄い形相でコチラを睨みつけていたのを見てしまった。


(わぁ~、もうあれ やばい人じゃん(゜∀゜)、マジであんなに嫌われたかな?全く覚えがないんだけど・・・)


ソル「どうしました?アトリー様?・・・・、あぁ、あの方ですか、いつも以上にひどい表情をしてらっしゃいますね」


 僕の視線の先にいたアーミラさんを見て辛口なコメントをしたソル、イネオス達も僕達の視線を追って彼女を見た。


イネオス「あの方最近特にアトリー様を酷く睨んでますよね?アトリー様は面識はお有りでしたか?」


「いいや、今まで全く会った覚えが無いんだけど、入学して初めて会った時からやたら敵視されているんだよね…」


ベイサン「今まで会った事ないのにですか?」


「そう、ほら僕って7歳まで領地の屋敷から出た事ないって言ったよね、初めて屋敷を出た時も“洗礼と祝福“のために王都に来た時が最初だし“洗礼と祝福“が終わったその後も同年代の人と会って遊んだのもイネオス達ぐらいだし、よくて他の同年代の人に会ったって言っても“洗礼と祝福“と王城のパーティーの時ぐらいだけど、喋ったのもイネオス達以外であの迷惑な3人組の他は殆ど喋ってないんだけどなぁ」


ロシュ君「え!アトリー様はそんなにお屋敷の外に行かなかったんですか?」


ソル「それは仕方なかったんですよ、アトリー様は小さい時から この様に美しいご容姿をなさってらしたのでアトリー様のご家族の方がご心配なされたので不用意に外に連れて行って頂けなかったんです、その他にも色々とご事情も有りアトリー様はご領地のお屋敷で大切にされていらしたのであまり同年代の方の知り合いはいないんです、まぁそれは僕も同じですが…」


ロシュ君「ほぁ~、確かにアトリー様のご容姿でしたら誘拐とかされそうですね、それにしてもご家族にそんなに大切にされているなんて羨ましいです、僕の家は下にたくさん兄弟がいるのでいつもしっかりしなさいって言われてしまいますから」


「ロシュ君は長男だったよね、それでもご両親はちゃんとお声をかけてくれてるんだから十分 君も大切に思ってらっしゃるんだよ、僕は末っ子だから家族皆んなが心配して構ってくれてるだけだよ、大切にされてるのは皆んな同じさ、それより僕は逆にロシュ君が羨ましいな街の中とかたくさん行ったりできたんでしょう?僕は外を知らなすぎて世間知らずな所があるからね・・・」


 今までの暮らしに不満がある訳ではないが少し羨ましいとは思ってしまう。


ロシュ君「そ、それは・・・」


 ロシュ君は僕の言葉に気遣わしげな表情をする。


「まぁ、そんな感じで友達の少ない僕には彼女と会っていれば忘れはしないと思うんだけど、全然覚えが無いんだよね、もういっその事 彼女に直接理由を聞いた方がいいかな?もしかしたら僕が無意識に彼女の気に触る事をしてしまってるかも知れないしね」


ヘティ「私は直接聞くのはお勧めできませんわ、あの方が何に怒ってらっしゃるのか分からないうちはアトリー様が直接聞くのは気分を逆撫でしてしまいそうですし、今にでもアトリー様に襲いかかってきそうですもの…」


ソル「た、確かに・・・まだ、睨め付けていますね」


ヘティ「そ、そうですわね、淑女として、女性として、してはいけない顔になってきてますわ、・・・?、なんでしょう?何故か私達も睨まれていませんか?」


イネオス「?・・・うーん、そうかな?僕達もあの方にはお会いした事は無いはずだし」


ベイサン「あの方、顔怖いな・・・」


ロシュ君「ぼ、僕もでしょうか?」


ソル「どうだろう?ロシュ君少し離れて見てくれるかな?」


ロシュ君「う、うん、少し先生の方に行ってみます」


 そう言って離れたロシュ君をアーミラさんは軽く目で追った後すぐにこちらに視線を戻しを睨んできた。


「あれ?ロシュ君は関係ないのかな?じゃあ、彼女と関係あるのは僕達5人だけ?でも本当に会った事ないんだけどなぁ~、なんでだろう?・・・・・うん?空が暗くなってきた?」


ゴロゴロゴロゴロォーーーッ


 僕が不思議がっていると、急に空模様が悪くなり、あっと言う間に雨雲が稲光まといながら立ち込めてきた、ポツリポツリッと雨が降り出したので急いで屋根がある場所に皆んなで走った。


パタパタッザーーッ「「「キャァーッ雨だわ!」」」「「「濡れるぞ!校舎にもどれー!」」」


ピカッゴロゴロゴロゴローーーッ!「「「「わぁっ、光った!雷だ!」」」」「「「早く屋根のある所にいけー!」」」


 とうとう、本格的に降り始めた豪雨に春の訪れの春雷とは言い難い激しい雷まで鳴り始めた。


「わぁ~♪雷、綺麗♪」


 周りの人達が突然の激しい雷に驚き慄いている中で僕は呑気に1人で前世からの趣味の雷鑑賞をしていると。


ソル「アトリー様、危ないのでもう少しお下がりになって鑑賞なさって下さい」


「えー、そうすると雷が見にくくなっちゃうよ、それに僕にはちゃんと結界もあるから僕に雷は当たらないよ?」


ソル「それでもです、他の方々が真似するかも知れないので・・・」


(むー、ソルのケチー)


夜月『アトリー、この雷雨は主神様の怒りで鳴っているのだ、アトリーには絶対に当たらないだろうが用心はした方がいい、それに今はあの気配の事でアトリーの父君や叔父に知らせておかなかればならない事が出来た、だから早く父君を探そう』


(!、分かった、父様達を探せば良いんだね?でも、なんでティーナちゃんが怒ってるの?)


夜月『その事は父君と会った時に纏めて話す、それまで待ってくれ』


(・・・分かった、一度で済ました方がいいんだね?)


 夜月の今までに無い様子に僕は思考を切り替えすぐさま父様達の気配がする方に視線を向けた。


ソル「どうなさいましたか?アトリー様?」


「ソル、“今すぐ“に父様達に用事ができた、イネオス達 済まないけど先生方に僕は家の都合で席を外したと言っておいてくれないか?」


イネオス「⁉︎、は、はい、ちゃんと伝えておきます」


「ごめんね、頼んだ、ソル、父様達の所に最短距離で行くよ、ついて来て」


ソル「はい」


 僕の有無を言わさぬ雰囲気に気圧されつつも返事を返してくれたイネオス、隣にいたヘティとベイサン達は心配そうな表情で見ていたが僕が急いでいるのが分かって強く頷いて余計な会話はして来なかった、皆んなの気遣いを感じつつソルだけを連れて雷雨の中最短ルートで父様達の元に走り出した。


 僕はソルと夜月達を後ろに引き連れ自分達の周りに物理結界を展開させながら雷雨の中 爆走していた、父様達の気配は先程 昼食をとった学園内の迎賓館の方にあったので道にも迷わずすぐに辿りついた、だが迎賓館の周りには警備の為の騎士達が沢山いた。


「父様達はここにいる様だけど他にもサフィアス叔父様や他国の使者達もいるみたい、どうしようか、すんなり入口を通してくれるかな?・・・あ、そう言えば、シベラス叔父様 耳にあの魔道具はめてたよね?」


ソル「魔道具?・・・あぁ、あの通信の魔道具ですね、はい、確かにしておられました」


「なら、ここから通信して迎えに来て貰おう、そしたらすんなり入れるよね」


ソル「そうですね、もしくは旦那様方に知らせて頂けたら外に出てきて貰っても良いかもしれませんね」


「うん、入れないなら そうして貰おう、じゃあ早速・・・“テレフォン“・・・・」


 数分後・・・、無事シベラス叔父様と連絡が取れ、僕達は迎賓館に入る事ができた、なお 迎賓館内では各国の使者とサフィアス叔父様と国の重鎮達が今後の国交の為の協議がなされていたそうな、そんな中、今回の話題の中心と言える僕が緊急の用で急遽訪れたとして会議室内はざわめきが生じていた様だ。


「シベラス叔父様、お忙しい中 対応して頂き有り難う御座います。」


シベラス叔父様「良いんだよ、聞けば聖獣様方からの急ぎの用だと言うのだから」


 シベラス叔父様に迎賓館の外まで迎えにきて貰って今は迎賓館内を父様達がいる場所まで案内して貰っている最中だ。


「はい、どうやら今 外で起こっている嵐の事で夜月達から説明?もしくは伝言みたいなものがある様で、詳細は僕もまだ聞いてないのですが、ただ、神々と関係が有るのは確かな様です」


シベラス叔父様「!、そうか、それは一大事かも知れないね、なら尚の事早く兄上の所に行かねばね」


 その後は余計な会話もなく足速に迎賓関内を歩いた、少しすると護衛騎士が両側に佇む1つの扉の前に辿り着き、シベラス叔父様が護衛騎士と簡単なやり取りをした後すぐに扉を叩き到着を告げた。


コンコンッ


シベラス叔父様「シベラスです、アトリーを連れてきました、入室しても宜しいでしょうか?」


サフィアス叔父様「あぁ、いいぞ入ってくれ」


 中からした声はなぜかサフィアス叔父様の声だった。


(あれ?サフィアス叔父様は今、会議中だったんじゃ・・・)












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