42話 実技授業 武術の実技指導2
武術指導教員「では!武器構え!…素振り開始っ!」
説明を終えた教員の号令に従い装備していた太刀を抜き、ゆっくり真正面に構え、“スッ“振り上げ“ヒュッ“と振り下ろした、それを繰り返す。
スッ ヒュッ スッ ヒュッ スッ ヒュッ
今回の授業内容は今の所、選択授業での武術授業と大差ない内容なので、手慣れた感じで始める人達が数人いる。その他の初めて武器を持つ生徒が多くいた、その生徒達を教員が重点的に見て回る様だ、同じクラスで武術の選択授業を取っている生徒は僕の持っている武器を見慣れている、だが僕の武器が周辺国では見かけない“刀“を使っている事に驚き、横にいたクラスメイトがよそ見をしながら素振りをするので、教員に怒られてゲンコツを貰っていた。
(あ、痛そう)
教員はそのまま1番左側の列から縦に1人づつ声を掛けているので、僕の所まで来るのは少し時間がかかりそうだ、僕は太刀を振り精神集中をする。
スッ ヒュッ スッ ヒュッ スッ ヒュッ
(もっと、早く、鋭く、正確に)
スッ ヒュッ スッ ピッ スッ ピッ
(うん、これだ、“ピッ“っと、この感じ、音がほとんど鳴らない むしろ全然 音が鳴らないぐらい早い方が理想、もっと練習しなくちゃいけないな)
スッ ピッ スッ ピッ スッ ピッ
ひたすら自分の納得いく素振りをしていると。
見学している上級生達・・・
「おい、誰だよ、武術はできないなんて言ったの~」
「僕じゃ無いよ、言ったの君じゃん」
「魔法もできて、武術も出来るなんて反則じゃね?」
「その上 勉強もできるらしいよ彼・・・」
「あ~あ、甘やかされたて育った容姿だけがとりえの坊ちゃんだと思ってたのに、マジ何者なんだ?」
「これも神々の加護のおかげなんじゃないの?」
「いや、でも、あれはどう見ても日頃から訓練している人の動きだ」
「そうだな、それは流石に俺でもわかるぜ」
「僕は真似できないよ、あんな素振り」
とある役職に就く大人達・・・
「うむ、これは逸材だっ、魔法の腕だけではなく武術にも才能があるとは…、体感もしっかりしていて振り下ろす刀に一切のブレが無い、基礎体力もある、これはあの噂は真実だったようだな!」
「そうですね、団長これは神のご加護がなくても他国からの縁談や引き抜きが殺到するほどの逸材ですね!」
「確かに、彼を欲しがる者達が後を絶たなそうだな、我が騎士団に入ってもらいたい程だ、だが彼の意志を優先すると陛下がおっしゃっていたからな、う~む、難しいな・・・」
「な、なんだ⁉︎あの子供は⁉︎あれ程の魔法技術を披露しておきながら武術の腕前まであるとはっ、前代未聞の才能の塊ではないかっ!」
スッ ピッ スッ ピッ スッ ピッ
周りの反応など一々気にしていたらキリが無いので、ひたすら素振りに力を入れていると。
武術指導教員「・・・・・、うむ、いつも通り剣筋にブレが無い、いい素振りだデューキス、君はどこのクラスの生徒でも試合をしたら君には勝てんだろうな、よし、そのまま続けてくれ」
「有り難う御座います、エペ先生」
通常時の1年生の武術授業を受け持つ武術指導教員である、ダグラス・ノブル・エペ先生が僕に軽く声を掛け、右隣のソルの方に行くのを感じながら周りのクラスメイトの様子を伺うと。
(あらら、もうすでに体力が尽きてへばっている人もいるね、基礎体力不足かな?)
エペ先生の見回りも終盤に差し掛かっていると言うのに、すでに息を切らして膝をついたり、座り込んだりしている生徒が大半だった、それはクラスメイトだけではなく他のクラスの生徒も同様だ、今だ素振りをしているのは武術授業でも見かける生徒が多い、やはり日頃から鍛えているのが目に見えて差が分かる。
(うーん、体力無さすぎじゃない?)
天華『それは仕方ないですよ、アトリー、貴方の年頃で騎士を目指すような子供でなければそこまで鍛えません、嗜み程度で剣術の基礎を習得するくらいですよ、本人のやる気次第でもありますがね…』
(そっか、僕は体を動かすのが楽しかったから、つい夢中になって鍛えていたけど、運動が苦手な子は一定数いるもんね・・・)
前世ではあまりスポーツには興味がなかったけど、体力だけはあったから元気な甥姪の面倒を見て追いかけっこなどしょっちゅうしていた、子供の相手は意外と大変なのだ、急に走り出すし飛び込んできたりもする。そんなチビっ子を7人も相手にしていたと考えるとかなりの運動量だったはずだ、対して鍛えていない30代後半を超えてからの追いかけっこは中々の重労働だった、それをこなしていた前世での自分を褒めてやりたい。
それに甥っ子の突発的なダッシュに即追い付き、確保した僕を見て その甥っ子の母親、僕のすぐ下の妹が「お姉ちゃん早すぎじゃない?本当に30代後半?」などと言われるぐらい瞬発力はいい方だった。
(まぁ、なんにせよ今世も運動神経がいい方で良かった♪こうして楽しく運動できるからね、ふふっ)
天華『アトリーが楽しそうで何よりです。』
(うん♪凄く楽しい!)
今世は前世とは違いテレビやゲーム、漫画本など様々な室内でできる娯楽品が少ないため、必然的に外で遊ぶことが多くなる事で、体を動かす楽しさに目覚めたと言っても過言ではない、元アラサーオタクとしてはかなりの進化を遂げている、はず・・・多分・・・
エペ先生「よしっ!素振りやめーっ!今から少し休憩を挟んで次の段階に移るのでしっかり休憩するように!」
「「「「「は、はいっ!」」」」」
エペ先生の号令で素振りをしていた手を止めその場で座り込む生徒達周りのクラスでも次々実力確認が終わり休憩に入る様子が伺える、僕も手を止め刀を納刀し、隣にいるソルに声を掛け“無限収納“からタオルを取り出し軽くかいた汗を拭いた。
「「「「「おぉ」」」」」 「あれは“収納スキル“?」 「そんな物まで持っているとは・・・」 「ますます価値が…」 「やはり我が国に…」
初めて公衆の面前で大ぴらに“特殊スキルの無限収納“を使っただけでこの反応、もし他にも“特殊スキル“を持ってるのがバレたりしたら大変なことになりそうだと、密かに思いつつソルとゆっくり休憩した。
「ソル、この後どうなると思う?」
ソル「この後ですか?うーん、・・・このまま素振りをしつつ先生から一人一人細かい指摘が入るのでは?」
「そうだよね、そういう流れが一般的だよね、でもそれならこの舞台いらないよね?・・・」
ソル「・・・入りませんね・・・」
「ねぇ、嫌な予感しない?」
ソル「・・・、しますね、盛大に・・・」
「「・・・はぁ~~っ」」
ソルと顔を見合わせこの後の展開を予測し同じ考えに至った後、面倒ごとの予感に盛大にため息を吐いた。
エペ先生「よーし、次は同じぐらいの実力者同士で軽い“試合“をするぞーっ」
「「・・・やっぱり・・・」」
面倒ごとの予感は大当たりして2人で項垂れていると。
男子生徒レーグルス「先生!僕はデューキス君と“試合“がしたいです!」
(ほら、やっぱり来た)
通常の武術の授業で“試合“をする時もこうして、いつもレーグルス君が1番に僕を指名してくるのだ。
エペ先生「レーグルス、またか・・・いつも言うが君ではデューキスとの“試合“は成り立たないと、いい加減 何回言えば分かるんだ・・・」
(そうだよね~、最初は武術の授業取ってなかったくせに、途中から入ってきて僕に敵意をバンバン向けてきて“試合“をやらせろって言って、先生をいつも困らせる問題児、お陰で授業の進みが悪くなって周りの迷惑なんだよねぇ~)
男子生徒レーグルス「先生!こちらもいつも言いますがやって見なければわからないでは無いですか!」
(いつものと同じ文句の付け方だね)
男子生徒レーグルス「・・・それとも、デューキス君に怪我をさせないように庇ってらっしゃるんですか?デューキス君も先生に庇って貰ってばかりでなく、自分からも率先して“試合“をしてみたらどうだ?」
ニヤニヤと嫌な笑いをしながら僕達を見ているレーグルス君。
(大した腕前もないくせに口だけは達者なんだから、嫌な育ち方してるよね~あの子)
僕が“彼“と、と言うより“誰とも“試合をしないのは、僕が初めての武術の授業の日に軽くエペ先生と手合わせをして以来、僕とソルは他の生徒との“試合“をエペ先生から禁止されているのだ。
エペ先生「はぁ~っ、俺は君の為を思って言っているのであって、決してデューキスを庇って言ってるのではない」
女子生徒アーミラ「では、良いではないですか、お2人の“試合“、私も見て見たいですわ」
「私も拝見して見たいです!」
「僕も気になります!」
と、アーミラさんの言葉で次から次に賛成の声が上がり、最終的には観客席の人達からも“試合“をしろと声が上がり始めた。
エペ先生はそっと僕に目をやった後、観客席で様子見をしている国王陛下のサフィアス叔父様を見た、叔父様はエペ先生の視線を受けて軽く頷いた。それを見たエペ先生は軽く息を吐き、僕に向き直りこう問いかけた。
エペ先生「デューキス、君が承諾するなら生徒との“試合禁止“は解こう、レーグルスの“試合“の申し出は受けてやるか?」
「うーん」
(うーん、僕の気分次第ってやつですね?やっても良いけど僕にメリット無さ過ぎじゃない?)
男子生徒レーグルス「ふんっ!なんだ今更怖気付いたのか?」
女子生徒アーミラ「私、噂でデューキス君の剣の腕前が凄くお有りだとお聞きしましたの、だからとても見て見たかったんですが、ご自分に自信がないようでしたら無理なさらないでくださいね?」
少し考えていると、レーグルス君とアーミラさんがクスクス笑いながら僕を煽ってくる。
(はぁ~、あれで煽ってるつもりなのかねぇ?(*´Д`*)それにしても、やはりこの2人が結託して、この状況を作り出してきたか・・・)
ソル「アトリー様、どうなさいますか?」
「うーん、しても良いんだけど武器は学園の物を借りなきゃだね」
ソル「そうでしたね、では、僕が借りてきますね」
「うん、お願い」
そう言うとソルは走って、壁際で待機している他の教員から武器を借りるためにいなくなった。
エペ先生「受けるのか?デューキス」
「はい、エペ先生、でも武器は今ソルに頼んで学園の備品を借りてきて貰ってます」
エペ先生「そうか、その方が良いだろう、だが くれぐれも注意して使うんだぞ、いくら刃が潰してあるとは言え金属の塊だからな」
「はい、分かりました、この際だからどこまで“やれる“か試してみます」
(それにこの“刀達“は“精霊達“が宿ってるからうっかり魔力を込めたりすると、分かる人には分かっちゃうからな、普通の刀じゃない事がね、要心に越したことは無い)
エペ先生「うむ、そうだな良い機会かもしれないな、ちゃんと相手を見極めるように」
「はい!頑張ります!」
男子生徒レーグルス「おいっ!何の話をしているんだ!“試合“するのかっそれとも尻尾を巻いて逃げ出すのかはっきりしろ!」
再度、試合する意思を確かめにきたエペ先生と話していると、苛立ちを隠せない様子のレーグルス君。
「あぁ、そんなに怒鳴らなくても“試合“はしてあげるよ」
男子生徒レーグルス「ふんっ!なら最初から素直に頷けばいいものを!もったい付けていい気になるなよっ!僕の剣技を見て逃げ出すなよ!」
「うん、そうだね、頑張るよ(手加減を・・・)」
ニコニコと笑いながら答える僕に、舌打ちをしながら石造の舞台の上り口の階段の方に歩き去って行った、僕も彼が行った階段とは反対側にある舞台の上り口の階段に移動していると、クラスメイトのロシュ・アーディ君が心配そうに話しかけて来てくれた。
ロシュ君「ア、アメトリン様、だ、大丈夫ですか?」
「あぁロシュ君、大丈夫だよ、僕こう見えて強いから♪心配してくれて有り難う、ふふっ」
ロシュ君「!あ、・・・はい、あ、あの・・・頑張って下さい・・・」
どんどん俯きながら言った言葉は最後の方は聞こえなかったけど、応援されたようなのでそれに応えようと気合を一つ入れた。
ソル「アトリー様、落ち着いて下さい、気合を入れ過ぎないように、それとコチラをお借りして来ました」
「む、はぁい、有り難う、でもこの気合は手加減を頑張る気合だよ!」
戻って来たソルに釘を刺され、借りてきてもらった剣を渡された、今 装備している自分の武器は“無限収納“に収納し、借りた剣を装備しなおす、刀に宿っていた春雷達はオーリーに預けた、いつものカフスボタンに移動した。
ソル「それならば大いに頑張って下さい、では、ロシュ君、少し離れた場所から見学しましょう」
ロシュ君「ふぇ?、あ、はい・・・?」
「うん、よし、行ってくるね!」
ソル「お気を付けて」
ロシュ君「が、頑張って下さい!」
「うん、程々に頑張ってくる!」
魔法の実技演習の時と同じような事を言いつつ、階段を登り舞台の上にあがった、途中でいつも僕の周りに展開されている“神々の守護結界“を解き、何の守りもない状態でレーグルス君と相対した。
男子生徒レーグルス「ふっ、これで、君は“神の結界“頼りの戦法は使えないぞ」
(ふーん、僕が“舞台の上での試合“で結界が無いのを知ってたんだ・・・、でもそれは“使わないだけ”であって“使えない”訳ではないんだけどなぁ)
物凄く勝ち誇った顔で言われても・・・と思いつつソルが借りて来てくれた剣を抜き軽く素振りしてみた。
男子生徒レーグルス「⁉︎、何だそれは⁉︎」
「「それは」って言われても、剣だけど?」
男子生徒レーグルス「そんな事を聞いているのではないっ!先程まで使っていた剣はどうしたっ‼︎」
「それは“収納“したけど?」
男子生徒レーグルス「何故、先程の剣を使わない⁉︎」
「あぁ、あれは“危ない“からしまったんだ、エペ先生にも使わない方がいいと言われたので、学園の刃引きされた剣を借りたんだよ、僕は予備の“刀“は持ってなかったから」
男子生徒レーグルス「“危ない“?だと?貴様は僕を舐めているのか?・・・いつもそうだ、どこかで僕を下に見ているだろ⁉︎ライヒスル帝国の第3皇子であるこの僕を‼︎」
「いや?舐めてないよ?下にも見ていない、いつも言うけど第3皇子とか関係なしに僕は君に興味が無いだけ、君が何故僕に敵対するか分からないけど僕には君を相手にする理由がない、ただそれだけ、それを君が“下に見られた“と言い思うのも勝手な妄想、それも今回限りにして欲しいね」
男子生徒レーグルス「なっ、んだとぉ‼︎」
「ほら、素直に理由を話してもすぐ怒る、僕と話すと苛つくなら最初から話しかけないと良いのに・・・、僕はのんびり学園生活を送りたいだけ、君達の継承者争いに巻き込まないで欲しいな」
男子生徒レーグルス「くっ!、・・・よし分かった、その武器で負けても文句は言うなよっ!それと僕が勝ったら貴様は僕の部下になれ!「は?」いいな!審判!始めろ!」
(えぇ~僕はいいって一言も言ってないんだけど?)
審判役になったエペ先生が僕の顔を見てくるが、僕が呆れた顔で軽く頷いたのを見て。
エペ先生「では、始める前にルールを説明するっ、互いに魔法を使わず得意な武器で戦うこと!勝敗は相手が負けを認めるか気絶する事!そして、この舞台から落ちる事とする!文句なしの一本勝負だ!いいな!」
「「はいっ!」」
エペ先生「では!互いに向き合い 礼っ!・・・構えっ!・・・・一本勝負!初めっ!!」
エペ先生の掛け声と同時にレーグルス君は走り出し、間合いを詰めて来たと同時に構えたこしらえのいいロングソードを思いっきり振り上げて、僕の前で思いっきり振り下ろして来た。
(これ、殺す気満々じゃない?危ないなぁ~しかし脇は隙あり過ぎ~)
振り下ろされて来た剣の剣筋を見切り構えていた剣を少し斜めに傾け受け流した。
ギャリィンッ!
振り下ろした勢いで前のめりになったレーグルス君の脇腹を剣の柄の部分で軽く突く。
トスッ 「ぐっ!」 ズザァッ
突かれた脇腹を抑えながら何とか耐えたレーグルス君。
男子生徒レーグルス「くっ!あれをかわすだと⁉︎今の反撃は偶然か⁉︎」
「今のは軽過ぎた、かな?」
男子生徒レーグルス「何だと⁉︎今のはわざとだと言いたいのか⁉︎」
「ん?どうだろうね?」クスッ
男子生徒レーグルス「ふざけるな‼︎」
また勢い良く突進してくるレーグルス君、僕を剣で突こうとして来たので、少し右横に避けて彼が横を通り過ぎる際に背中を押してあげた。
トンッ 「わっ!」トトトトトッドサッ
「レーグルス君、君ちゃんと剣の訓練してる?動きが単調だよ?」
男子生徒レーグルス「っ、くそっ、何でだっ!僕は剣術の指南役からは筋が良いと誉められているんだぞっ!」
「そうは言ってもねぇ?でも訓練は毎日しなきゃ意味はないよ?」
男子生徒レーグルス「うるさいっ!黙れ!黙れ!」
その後も同じような事の繰り返しで、僕もそろそろ終わりにしようと初めてコチラから反撃をすることに。
「じゃあ、そろそろ終わらせようか」
また突っ込んできたレーグルス君の剣を自分の剣で左上に向けてはらい、はらった軌道から折り返して右上から彼の首元に剣を寸止めした。
「これで降参してくれないかな?」
男子生徒レーグルス「くっ!誰がするかっ!僕はまだ負けてないっ!」
ここまでされてまだ負けを認めないレーグルス君。
(はぁ~、諦めが悪いなぁ~…⁉︎)
バッ!
「っ!、何⁉︎、今のは⁉︎強い魔力?」
男子生徒レーグルス「⁉︎、何のことだ⁉︎それにどこを見ている⁉︎試合中によそ見をするな!」
不意に遠くの土地で強い魔力の高まりを感知した、魔力を感じた方角に視線をむけ“精霊視スキル“を発動させどこが発生源か探ろうとした。
(かなり遠い?国内ではないようだけど、この方角は“ズューウス王国“がある方角だけどさらに行くと“ヴェステ王国“、でも、そこまで奥ではない?ではやはり“ズューウス王国“?しかし何の魔法を使ったら、こんな魔力の高まりを感じるの?所謂“神級“魔法以上でもない限り、こんな魔力の高まりはないと思うけど・・・何か嫌な予感がする・・・)
ギリッ
男子生徒レーグルス「僕 を 無 視 す る な ぁ ー ‼︎‼︎」
急な魔力の高まりに気を取られて試合の最中だったことを忘れていた僕、対戦相手であるレーグルス君は僕がよそ見をしている隙を狙い、大きく剣を振り上げ打ち込んできた。
「「「キャァー!」」」「「「危ないっ!」」」「「「「「避けろーっ!」」」」」
屋外運動場全体から叫喚が響き渡った、相手は自前の真剣、いくら運動着に物理耐性の付与や舞台上にいる人間に、軽い防御魔法は掛けられているとは言え、真剣で切られたりすれば大怪我は免れない、それに今は神々の加護の結界は発動させていない。
背後から迫り来る相手の剣を前に僕はまだ魔力を感じた方角を見つめていた・・・