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36話 冒険初日!13 帰宅就寝


 ギルドからジル叔父様の手配した馬車に乗り込み送ってもらうことに、馬車は少し遠回りしたものの順調に進み最初に着いたのはイネオス達が一緒に暮らしているヴィカウタ子爵邸に到着した。


イネオス父「わざわざ、送っていただき有り難う御座います、ジル様」


ジル叔父様「いやいや、気にしないでくれ俺も帰るついでだったからな、それにこの時間帯を子供達だけで返すのも大人として放って置けないしな」


ヘティ父「お気遣い、有り難う御座います、ほら皆んなお礼を言いなさい」


「「「ジル様、送って頂き有り難う御座います」」」


ジル叔父様「あぁ、どういたしまして、さて、そろそろアトリー達も送り届けねばなら無いから失礼するよ」


イネオス父「そうですね、アトリー様達も今日は有り難う御座いました」


「いいえ、僕達も一緒に冒険者活動ができて楽しかったですから、気にしないで下さい」


ベイサン父「ご迷惑で無ければまた誘ってやって下さい」


「はい♪、またお誘いしますね、じゃあ皆んな来週 学園でまた会おうね」


「「「はい♪」」」


 最後に軽く挨拶を交わし僕達を乗せた馬車はデューキス家に向かい走り出した。


ジル叔父様「学園は楽しいか?」


「はい、イネオス達とはクラスは別れますけど、ゆっくり過ごせる場所をヘリー姉様に教えて貰ってそこで皆んなと楽しく過ごしてます」


ジル叔父様「そうか、良かったな、今後は絡んでくる他国の王侯貴族もいなくなるだろから、もっと自由に学園を堪能すると良い」


「はい♪」


 そうして話している内に眠気が来て睡魔に負けて寝てしまっていた僕が次に目が覚めた時にはもう家の玄関先で父様に抱かれていたのだった。


「うっ、うーん、あれ?父様?・・・ジル叔父様は?」


(ソルも何処だろ?)


ジル叔父様「ここだ、目が覚めてしまったか?」


「あ、ジル叔父様、ん?、あれ?もう屋敷着いたんですか?・・・あ、父様、母様、ただ今帰りました…えっと、父様、降ろしていただけませんか?」


(あ、ソル、いた、あれ?たったまま寝てる?)


 ソルはセラスさんの横で目を擦りながら辛うじて立っていた。


父様「ふふっ、寝ぼけてるアトリーが可愛いから駄目だよ」


「ふぇ?駄目ですか?」


(なして?)


母様「ふふっ、まだまだ眠いわよね、ふふっ、本格的に寝てしまう前にジル叔父様にお礼とおやすみのご挨拶をしましょう、アトリー」


なで なで


(あ、そうかジル叔父様、帰っちゃうんだ、ちゃんとお礼、言わなきゃ・・・)


 母様に撫でられるとより眠気が増してきた。


「ふはぁ~、は い、母様、ジル叔父様、送って頂き、有り難う、御座います、・・・えっと、おやすみなさい・・・」


 こてっと頭を下げたら、もう頭が持ち上がらなくなってしまうくらいの睡魔に襲われた。


(ね、眠い・・・、おやすみなさい・・・)


ジル叔父様「ふふっ、あぁ、おやすみアトリー、今日はよく頑張ったな、明日はゆっくり休むんだぞ」


なで なで


「あ、い・・・・・すぅ、すぅ」


 眠気と戦いつつ、ジル叔父様にお礼と就寝の挨拶をやり切った僕は最後にジル叔父様にも優しく撫でられて父様に抱かれたまま寝落ちしてしまった。




>ーーーーー<>ーーーーー<>ーーーーー<


*アトリーが寝落ちした後の大人達のやり取りです


   王弟:ブルージル 視点


ラト「ふふっ、完全に寝てしまったね」


「あぁ、もう限界だったんだろう、馬車の中でも一生懸命起きてようとして頭が何度も落ちそうになっていたのが可愛かったが、結局2人して支え合いながら寝てしまっていたのも可愛かった、ふふっ」


ソンブラ夫人「ドゥーカ公爵様この度はうちのソルドアも送り届けて頂き有り難う御座いました」


「ソンブラ夫人、気にするな、ソルドアも甥っ子みたいで可愛がってるのは私なのだから、遠慮しないでくれ、ふふっ、それよりソルドアももう限界のようだ、早く寝かしつけてあげた方がいい」


 彼女の隣でほぼ立ったまま寝ているソルドアを見てつい微笑ましくなってしまった。


(起きている時はしっかりした子なのに寝顔は年相応の可愛い顔をしているな)


ソンブラ夫人「あら、まぁ、すいません、そうさせて頂きます、ソル、ご挨拶はできる?」


ソルドア「は、い、ジル様、今日は、お世話に、なりました、お休み、なさいませ・・・」


「お疲れさん、おやすみ、ソルドア」


ソルドア「は、い・・・」


ソンブラ夫人「今日は本当に有り難う御座いました」


 と、言ってソルドアを専属の執事に抱き上げさせて頭を下げていなくなった、それを見送った後まだアトリーを抱えているラトに向き直り声をかけた。


「ラト、話がある、少し時間を貰えるか?」


ラト「!、あぁ、大丈夫だ、シリー、すまないがアトリーを自室に連れて行って寝かせて貰ってくれ」


シトリス夫人「はい、分かりましたわ、カインお願いできるかしら?」


アトリーの専属執事「畏まりました、失礼します、旦那様」


ラト「あぁ、よろしく頼むよ」


シトリス夫人「では、ジル様、お先に失礼しますね」


 スッと出てきて手慣れた様子で寝ているアトリーをラトの腕から受けったアトリーの専属執事のカイン、その彼と一緒に上の階に上がっていった姿を見ていると違和感が・・・


「おや?聖獣様方は一緒に上がられないのですか?」


 アトリーの後を追って行ったのはジェムフェンリルのジュール様だけだった、他2人の聖獣様は俺達の近くにまだ居られたのだ。


ラト「どうなさったんですか?ヤヅキ様、テンカ様?」


?:『ふむ、今日の事で、そこの従兄弟殿は、信用できると確信したのでな、2人がちょうどいるから話をしてみようと思ったのだ』


?2:『それと、お父君と従兄弟殿に聞きたいことがありまして』


「⁉︎」


(ど、どこから声が⁉︎しかも2人⁉︎)


ラト「そうですか、分かりましたジルにはこの事を話してもいいと言う事ですね」


(ど、どう言う意味だ?まさかっ・・・でも、いや・・・)


 頭の中に響き渡る若い男女の声その声にラトは驚きもせず聖獣様方を見て話しかけていた。


?:『そうだ、説明は任せる』


(やはり、この声の主は・・・)


ラト「畏まりました、ジル、聞きたいことがあると思うが先に私の書斎に来てくれ、そこで話そう」


「あ、あぁ、分かった・・・」


 ラトに言われるまま、書斎に着きカイルが用意したお茶を一口飲み一息付いた。


ラト「さて、ジル、君の事だからもう察しているとは思うが先程 頭の中に聞こえた声はこちらに居る聖獣様方の声だ」


「やはり、そうだったか、ではアトリーだけに聖獣様方の聞こえると言うのは嘘か」


ラト「まぁ、そうなるな、でもそれは聖獣様方のご希望でそう言う事にしたんだ、答えが返ってくると分かればひっきりなしに声を掛けられるだろう?それがお望みではなかったんだよ」


?:『そうだ、元々私達はアトリーの為だけに存在するのだ、アトリーの親族以外の者に構ったりはしない』


?2:『初めましてと、言うのは可笑しいですが、私が“陽天竜ようてんりゅう天華てんか“です』


?:『私が“夜天虎やてんこ夜月やづき“だ』


テンカ様:『アトリーと接している従兄弟殿をこの3年間 観察させて頂いた結果、私達と会話をしても他にこの事を漏らしたりはしないだろうと確信したので、今回この機にジル殿、貴方を信用してこれからも交流を持てる様に話しかけたのです』


「そ、それは、信頼していただけて嬉しい限りです」


ヤヅキ様:『言っておくが、この事は城にいる王族は誰も知らない、其方の他の親族もだ、知っているのはこのデューキス家の家族とアトリーと仲のいい ソルの家族だけだ』


テンカ様:『あぁ、後、アトリーのお父君とお母君、お祖父様とお祖母様の専属の使用人の方々もですね』


「そうですか、兄や父も知らないのですね・・・」


ヤヅキ様:『そうだ、あの者達は立場によってアトリーより我々を優先してしまう可能性があるから今後もこの事を打ち明ける事はない』


(確かに、アトリーを通じずに聖獣様方に直接 話ができるとなると兄上や父上は聖獣様方を祭り上げてしまう可能性があるな)


「分かりました、私もこの事は誰にも話しません、たとえ我が兄弟や両親だとしても」


テンカ様:『その約束必ず守って下さい、神々は貴方の事も見守っておいでです』


「はい、絶対に守ると誓います」


ほぁ


 何処からともなく光の球が現れ私の胸に入り込んだ。


「「⁉︎」」


「えっ⁉︎」


テンカ様:『その光の球は貴方の誓いへの神々からの贈り物です、『うまく使いなさい』との事です』


「えっ、どう言う意味ですか?」


ヤヅキ様:『其方に“魔力視スキル“を神々が与えたと言うことだ、其方の仕事上、役に立つだろうとの事だ』


「「「えぇっ!」」」


 あまりにも唐突な出来事に困惑しつつ自分のステータスを開き見てみると。


「ほ、本当だ、確かに“魔力視スキル“がある・・・、神々よ、過分な贈り物をして頂き、有り難う御座います」


 床に膝をつき神々に感謝を伝え祈った。


ラス「良かったな、ジル」


「あぁ、信頼に応えなければな」


テンカ様:『これからも多々ジル殿に用があるときは話しかけると思いますがその時はお願いしますね』


「はい、自分が出来ることがあれば何なりと…」


テンカ様:『そうですか、丁度お二人にお聞きしたいことがあったのです』


「はい、どの様なことでしょう?」


ラス「私もですか?」


テンカ様:『ええ、お父君にもです、最近の邪教の動向を把握していますか?』


「えっ、邪教ですか?3年前に一斉摘発が行われた あの邪教の事ですか?」


テンカ様:『そうです、あの邪教“マルモーヴェ教“もしくは“マルヴァジタ教“の事です、ここ3年アトリーの身の回りでは見掛けてはいませんが今回アトリーに絡んできた冒険者が使用していた薬物になんとも形容し難い強い不快感を私達は感じました、この様な不快感はアトリーが7歳の時に王都の路上でナイフ持って襲ってきた貴族を見た時に似ているのです、あの薬物を使用していた冒険者もしくは薬物その物に邪教と関係があるかも知れません、ですからお二人の情報網で邪教の情報を掴んではいないか と思いお聞きしたのです』


「「「!」」」


ラス「そ、それは…、また、アトリーが邪教徒に狙われている、と、言う事ですか?」


ヤヅキ様:『“また“、狙われていると、言うより“今だ“に狙われていると言った方が良いかもしれないな』


ラス「そんな…、今日の朝方の人攫いの者達は関係ありますか?」


ヤヅキ様:『嫌、アイツらからは不快感は感じなかった、それにもし、アイツらが邪教徒の手先だとして以前の襲撃事件の顛末を知っていて襲って来たにしては手口が杜撰すぎる、多分黒幕は別だろう』


「ちょっと待て、ラス、朝方に人攫いとは?それに、あの子達がやたら絡まれ慣れているのは何故だ?」


ラス「あぁ、その事か、そうだな、今日の朝あの子達が貴族街を出た後からの話なんだが・・・・・ 」


 それからラスはアトリーが人攫いにあった経緯を順を追って話してくれた。


ラス「 ・・・・・、と言う感じで捕縛して今、尋問を受けているはずだ、

それとあの子達が絡まれるのに慣れているのは、ここ3年でアトリーが積極的にうちの領土内の街をイネオス達と一緒に散策するようになってね、街中を歩いていると、アトリーや聖獣様方の噂を聞いてやって来た奴らがアトリーや聖獣様方に直接話しかけて取り入ろうとして来るのを、アトリーが全て断ると難癖を付けられるんだ、だから毎回アトリーが返り討ちにしているから慣れてしまっているんだよ、

それにアトリーには悪意や邪な心持ちの者は近寄る事もできないからね、安全は確保できているから問題はないけどアトリーが悪意に晒されて心を痛めてないか心配だよ」


「そうか、そんな事が…、俺と会う時はいつも屋敷内だったからな知らなかったよ、でも今回は何も言い返している素振りはなかったが・・・」


ヤヅキ様:『それは、今朝出かける前に祖母殿に、絡んでくる者が来ても無視すると良いと言われて実践してみたそうだ、だが無視しても結局絡まれるのはどうすれば良いかと悩んでいたがな』


(そう言うことか、だがそんなに頻繁に絡まれるのは異常だと思うが・・・)


ラス「あぁ、確かに言ってましたね、しかし絡まれるのはどうやっても減りそうにないのはこちらも苦慮しているのですが・・・」


テンカ様:『それはしょうがないのです、アトリーは複数の神々からとても目を掛けられている存在なのです、容姿の事と私達の事を含めるとどうしても目立ってしまいますし、王家の血筋の特性とお母君の特殊な魔力を受け継いだアトリーの魔力が相性効果的に作用して人々を良くも悪くも惹きつけてしまうのですから』


「だから、邪教徒達も惹きつけてしまっていると?」


テンカ様:『そう言う事です』


「そうですか、アトリーが邪教徒を含めた人々を惹きつける“理由“は分かりましたが、アトリーが今だに邪教に“狙われている“と分かったのですか?それに聖獣様方の言う、不快感とはどのような物なのですか?」


ヤヅキ様:『そうだな、不快感と言ってはいるが凄く曖昧なものだアトリーに向けた何か執着のような悪意、とでも言えば良いのか、これはアトリーの為に生まれた我々だから感じる事ができる感覚だから説明は難しい』


テンカ様:『それと、何故アトリーが今だに邪教の信徒に狙われているのか分かるのかと言われると、今 説明した不快感も理由の1つですが絶対的な理由は、神々がアトリーが狙われていると仰ったからです、神々が仰る事以上の信頼できる理由はないと言う事です』


「そ、それは確かに・・・テンカ様教えて頂き有り難う御座います、おかげで絶対的な確信を得ました、実は自分は今日、ギルドからの調査依頼を済ませて来たのですがその依頼の内容がまさにテンカ様方が仰られていた、薬物の出所を探る物でした、この事は自分の国としての立場とギルドの冒険者の両方の仕事として動いていたのです」


ラス「良いのか?ジル、それは極秘事項じゃないのか?」


「良いんだラス、今から話す内容は聖獣様方のお耳にも入れていた方がいいと判断したんだ、それにラスにも関係が出て来るだろうしな」


ラス「ジル…、もしかして・・・」


「あぁ、アトリーに関することだ」


ラス「そうか・・・、聞かせてくれ」


「そうだな、ラスまず俺の管轄の領地がドゥーカ家の領地同様に特殊なのは知ってるよな」


ラス「あぁ、それは知っている」


「聖獣様方もいいですか?」


テンカ様:『大丈夫です、アトリーの勉強中に一緒に学びましたから』


「では、進めますね、我が領の1番の目玉は領都を中心に周りを囲んでいる3つの町それぞれに特徴が異なる大きな“迷宮ダンジョン“が必ず1つある事です、ですがそれとは切っても切れない存在が“ダンジョン“に挑む“冒険者“の存在です、国内では1番冒険者がいる土地だと思います、

昨今その冒険者達の中で流行り始めていると思われている物が件の“薬物“なのです、他領ではまだ見かけるのは少ないかもしれませんが“薬物“使用による冒険者の犯罪件数が他領より自領の冒険者の比率が高いことから発覚しました、

その事でこの国の冒険者ギルドを統括している王都のギルドマスターであるディーネー・ノービレ・シャリテ ギルドマスターの申し出でこの“薬物“に関する合同調査の指名依頼が来たのです、その依頼を受けて ここ数ヶ月国内の全ての領の冒険者ギルドを影騎士を使い、自分でも重要性がある都市に赴き調査をしていいました、そんな中、他国に接している領地から冒険者を介してその薬物が入って来てる事に気づき、最初は冒険者が使用する医薬品の“痛み止め薬“として入ってきていましたが、いつの間にか家庭用の医薬品の“頭痛止め薬“としても扱われ始めていたのです、そして大手の商会がいつの間にか販売していたので、仕入れ元の特定を急いでいますが今の所 正確な特定には至ってません」


ラス「それは、その“薬物“が他国の法律にもとづいて医薬品として認められていたと?」


「そう言うことだ」


ここで一息つく為にお茶を一口飲んだ


「他国で医薬品と認められていると言う事で、輸入の監査が甘くなって我が国への流入を許してしまっていたのだ、しかもあの“薬物“は“痛み止め薬“としての効果が高い上に安価な薬として評判も良く、1~3回の使用程度では“依存症状“が確認できないのが厄介で、それこそ冒険者として怪我をした者が治療院に通う金がなくて、安価な“自己治癒力を高める痛み止め薬“として怪我が治るまでの長期間、毎日服用することでやっと依存性の効果が現れるらしい、怪我が治っても“痛み止め薬“を手放せなくなって、服用回数がますと同時に理性が低下していって、禁断症状が出てくると周りにその苛立ちをぶつける、それで事件を起こして捕まった時はもう末期の薬物依存中毒者で、治すにはかなりの期間が要するだろうと言われている、よくて治療魔法の“解毒・アンチポイズン“を症状に合わせて重ねがけすれば、なんとか持ち直すらしいが完治とはならないようだ」


ラス「・・・そう簡単に依存症状が出ないのか、それに完治不可能とは、本当に厄介だな、それで、出どころは?“帝国“か?それとも“ズューウス王国“か?」


「・・・それが、両方なんだ」


ラス「はぁ⁉︎両方⁉︎」


「それどころか、イエロザーパト聖教国からも少ないが流れて来ていた…」


ラス「それは・・・我が国を取り囲む国々はすでにその“薬物“を医療目的の薬品として認可していると言うことか・・・、だが、そうなるとどこが製造の大元か判断できないな」


テンカ様:『そうですね、ですが変ですね3カ国が同時に流通したわけではないでしょう?実際にイエロザーパト聖教国からの“薬物“の流入は少ないと言うことは、多分 他の2カ国より後に認可が取れたのでしょう?その認可の遅れの誤差は何故生まれたのか詳しく調べれば、“薬物“の流通を促している存在にたどり着くかもしれませんよ』


「・・・確かに、そこをもっと重点的に調べてみます」


テンカ様:『場合によって私達の名前を出しても良いので、その“薬物“の流入を早めに止めて下さい、それに聖教国なら私達の要望だと言えば即座に対応してくれるでしょう、そこに邪教が関わっているとなると、より早く対応してくれると思いますよ』


「分かりました、まず“薬物“の流入を止めるように兄上、陛下に進言してきます、そこから聖教国の協力を仰げるように根回しして、徹底的に製造元を割り出して潰しますね」


ラト「それと、シニストラ共和国の方にも探りを入れて置いてくれ」


「分かっている、あの邪教、“マルモーヴェ教”の発祥地だからな、今回 何処まで関与しているかは分からないが・・・」


ラト「宜しく頼む、私は国内の“薬物”の徹底的な排除に動くよ」


「あぁ、そちらは任せた」


ヤヅキ様:『期待している、私達が動けばより早く解決できるかもしれないが、アトリーの側を離れる事は出来ないからな』


テンカ様:『そうですね、アトリーの害になる大元を叩きたい気持ちはあるのですが、それでアトリーの守りを手薄にする事は出来ませんから、何よりアトリーの安全と自由意志が最優先ですからね、あの“薬物“がアトリーのしたい事の妨げになる前に解決を急いで下さいね』


(それが、神々の望みと言う事か・・・、本当にアトリーは神々に愛されているな)


「「「畏まりました」」」


 そして、その後は急いで城に向かい聖獣様方との会話は濁して、例の“薬物“の輸入禁止と回収を陛下に取り付けて貰った、色々反発は出るだろうが長い目で見ると、国の為になると理解してくれた兄上には感謝をしている。

 次に聖教国に常駐している配下の影騎士の元に、援軍と新たな任務の指令書を送り、聖教国内の協力者を介し、聖教国の国の代表である大司教に聖獣様方の要望を伝えた。

 最初は本当に聖獣様方の要望なのかと疑って、あまり協力的ではなかった大司教が数日後、急に合同調査の協力が提案され、その際のちょっとした騒動をきっかけに各国の協力を得て、すぐに協定を結び、とんとん拍子で各国合同の調査を行う事が決まり、各国との情報をすり合わせ、目星をつけて徹底的に調査・摘発を繰り返し、最終的には周辺諸国の製造販売を根絶に成功。

 今回はシニストラ共和国と邪教の関与は今の所 否定できないが、周辺諸国の製造販売元は末端の末端だったようだ、何ともスッキリしない結果になってしまったが、これからも“薬物“の取り締まりに力を入れて、少しでも邪教の影が見え次第、積極的に聖教国と各国の合同調査をして行く事となった。


 聖教国だけ認可販売が遅れたのは、どうやらこの国の役人が全て治癒魔法を使えることが原因だったらしい、治癒魔法で解決できる症状をわざわざ薬で抑える必要がどこにあるのだと、通常、聖教国の怪我人や病人はその街や村にある教会で、お布施と言う名の代金を払い、神官達の治癒魔法で治すものなので、“痛み止め薬“は必要ないと言う事で、なんとも聖教国らしい理由だと思った、だがあの“薬物“が何故認可が通ったかと言うのは、聖教国お抱えの聖女の1人が、教会での治癒魔法も受ける事のできない貧しい民の為に、どうしても認可してほしいと懇願したからそうだ、その後、懇願した聖女がどうなったかは知らされてはいない。


 その間ラトは国内の“薬物“の販売中止と回収に尽力して、領内での“薬物“販売、購入、使用、全てを禁止として所有者にも罰を与える、“特定危険薬物禁止法“を制定公布した、同時に私の領地でも同じように“特定危険薬物禁止法“を制定公布し、ギルドの協力を得て反発する冒険者達を取り締まった。

 その様子を見て1週間で国としても私達の制定した“特定危険薬物禁止法“を元に、10ヶ国以上が協力参加して出来た“新 国際機関・危険薬物禁止指定委員会“の協力を得て、新たなる“特定危険薬物禁止法“を制定、今までの“薬物安全使用法“での取り締まりから逃れていた薬物を、新たな枠組みで禁止できるように改訂し、別の“危険薬物“が出ても随時追加できるような仕組みの法律として国内全てに公布した。  

 その法に従い、全ての領が従うのに そう時間は掛からなかった、裏で教会や各国の協力があったおかげだ、我が国が異例の速さで新しい法律を組み上げた事で、例の“薬物“の取り扱いに危機感を覚えたのは、“新 国際機関・危険薬物禁止指定委員会“の参加国でも、乗り気では無かった国々も新たな“薬物法“の改訂に次々乗り出したと、良い報告が聞けたのはアトリーが夏の長期休暇に入る少し前の事だった・・・・


*この年の春 各国を巻き込んだ、この世界初の薬物に関する法律の大々的な革新が行われた、その理由が自分の健康を気遣った神々の過保護のおかげだったとは、知るよしもなかったアトリー、

 そして、後日分かった事だがアトリーを誘拐しようとした男達と、ギルドで絡んできたソフトモヒカン冒険者ザインは、生活魔法と技術スキル以外のスキル全てが消えていた、それと誘拐の手引きをした女と冒険者パーティーのリーダーは、生活魔法以外の全スキルが消滅と言う神罰が降っていることが発覚、国としての処罰は、誘拐の件の関係者は鉱山奴隷として10年間労働のち解放、暴行を加えようとしたソフトモヒカン・ザインとパーティーリーダーは、冒険者ギルドからの除名処分に加え、ウェルセメンテ王国内で最も過酷とされる、ミヌフォール辺境伯領内の鉱山・カルボンにて鉱山奴隷として、ソフトモヒカン・ザインは恐喝と暴行未遂の罪で25年の労働、パーティーリーダーは恐喝と殺人未遂の罪で35年の労働、その後ライヒスル帝国に引き渡される事となった。
















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