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32話 冒険初日!9 顔見知り


 依頼の物を全て集めて、ギルドに戻るために動物達と別れ、泉の森を出て南門まで来るとまだ午後4時前なので、王都へ入って行く人が列をなしていた。

 

「うん、予想通りの人の多さだね、じゃあ、予定通りあっちから入ろうか」


 指差した方向は貴族専用の審査通路だった、一般市民用の審査通路の列より短く、すぐに中に入れている様子から、それほど審査に時間は掛からないだろうと思われた、なので貴族専用の審査通路の列の最後尾に並び審査の順番を待った。


イネオス「やっぱり貴族専用の審査通路は馬車で通る人の方が多いですね」


「そうだね、徒歩の人もいるにはいるけど、同じ冒険者になった人かな?装備もつけてるし…、あ!」


 前方に見知った顔の人がいた。


「ジル叔父様っ!」


ジル叔父様「ん?・・・おっ!アトリーじゃないか、元気にしてたか?」


 少し前の方に並んでいたのは現国王の弟、ブルージル・ノブル・ドゥーカ公爵だった、後ろから呼ばれた彼は振り返り、呼んだ僕を見て爽やかに手を振り笑って、後ろの人に列を譲り僕達に近づいてきた。


「お久しぶりです、ジル叔父様♪僕は元気でしたよ、ジル叔父様もお元気でしたか?」


ジル叔父様「おう、俺も元気だったぞ、しかし、なんでここに?子供達と聖獣様方だけでいるんだ?あ、聖獣様方、お久しぶりです」


夜月『其方は相変わらず変わらないな』「がぅ」


 ジル叔父様の軽い挨拶に呆れながらも返事を返す夜月、ジル叔父様は僕のお披露目パーティー以降も、たまに会ったりして色々と楽しいお話を聞かせてくれていた、聖獣である夜月達に対して、会う度にこの気軽な挨拶をし、そこに全く嫌味がないので、夜月達もジル叔父様に気を許している。

 イネオス達も僕と一緒に数回会ったりもしていたが、今日は突然現れたジル叔父様に緊張しながら軽く挨拶した。


「ふふっ、ジル叔父様は相変わらず変わらないな、だって」


ジル叔父様「あはははっ、それはお褒め頂いてると取っときます」


 夜月はジル叔父様の発言に再度呆れながら頭を振った。


「それで、ジル叔父様はなぜ此方に?」


ジル叔父様「あぁ、今日は領地から王都まで依頼を受けながら来ていてな」


「えっ⁉︎歩いてですか?」


ジル叔父様「いや、さっきまで乗合の馬車に乗っていた、すぐそこで降ろして貰って、こっちに並んだんだ、それで、俺の事はいいとして、アトリー達はなんで外にいるんだ?」


「あ、僕達は先日冒険者登録をして、今日初めて依頼を受けて、今帰っている所です」


ジル叔父様「はぁ⁉︎本当か⁉︎ラト達はそれを許したのか⁉︎…いや、許したからここにいるのか・・・・・あぁ、周りもいるな…なら大丈夫か?」


 僕の言葉で驚いた後、少し考えてから後半はブツブツ呟いていた。


ジル叔父様「いや、まぁ、いいか、・・・そうか、よく俺の話を聞きたがっていたもんな…、それで、依頼は達成できそうか?」


 ニカッと笑って、聞いてきたジル叔父様に皆んなで顔を見合わせて。


「「「「「はいっ!」」」」」


 と、元気よく返事を返した。


ジル叔父様「はははっ、そうかっ達成できるかっ!よしっ、俺も依頼の報告でギルドに用があるから、一緒に行くか!」


「「「「「はい、行きます♪」」」」」


(いやー、偶然ってすごいね、ジル叔父様にここで会えるなんて思ってなかったよ、それにしてもさっきの周りにいるって発言、やっぱりジル叔父様には分かったんだね、僕達に影がついているの…、まぁ、叔父様にも数人ついてる見たいだし、分かって当然か・・・)


天華『まぁ、臣籍降下したと言っても、王家の血筋ですからね、それに彼はお役目としても影が必要でしょうからね』


(そうだねぇ~、影騎士を統括してたお祖父様の後任だしね)

 

 そう、ジル叔父様は、現在ドゥーカ公爵家の当主としての立場と、この国の諜報機関である影騎士達を取り纏める、影騎士団長を務めているのだ、表向きには存在しない事にはなっているが、各国からは恐れられている諜報機関で、この事は公然の秘密、知ってる人は知っている的な奴だ。


 それに、この騎士団は、現国王の最も信頼する兄弟が務める事になっているので、国王との結束が固く他国に付け入る隙を許さない、そして代々の団長が直々に騎士団員をスカウトして来るので、騎士団員の忠誠心も強い。

 大体が“王家の影“の血筋なので、一族同士連携が取れているから裏切り者は殆ど出ない、そして、もし騎士団員から裏切り者が出ると、その時の団長に“忠誠の誓い“をした“王家の影“が一族を使い、裏切り者を内々に処分するらしい、これは一族以外の騎士団員には秘密で、極力“王家の影“の一族の存在自体も秘密にしているそうだ。(怖いねー)


 まぁ、事実、我が家も我が家で、専属の影達がいる、その影達は元影騎士が大半だ、それは影騎士団の団長が代替わりする時に、元団長に忠誠を誓っている人達が自ら辞職し、元団長について来る場合と、元団長 自ら引き抜いて行くとこが毎回の通例になっているので、代替わりの度に騎士団員の顔ぶれがガラッと変わるのがこの機関の特徴なのだとか。なので他国はこの国の影騎士団員はそう簡単に把握できない、ある意味理にかなった組織構造になっている。


 と、7歳の“洗礼と祝福“が終わった後、領地に帰った数日後に父様達から教えて貰った。


 父様達的には、まだ教えるのは早いと思っていたそうだが、僕達の感知能力が高すぎて、影にすぐに気づいてしまったから話したそうだ。


(洗礼と祝福の儀の後に、うっかり公爵家所属の影を見つけてしまったからなぁ、それにソルが裏家業のサラブレッドだったなんて思いもしなかったよ…)


+ーーーーー+ーーーーー+ーーーーー+


 あの時、この説明と同時にソルの能力の高さの秘密が、3つの裏家業の血筋を継いでいると教えられ、ソル自身も初耳だったようで凄く驚いていた。

 そして父様達は、ソルに“王家の影“として僕と“忠誠の誓い“をするかと、真剣な顔で聞いた、ソルは即答で、「はい、します」と言った、僕はあまりの返事の早さに、一瞬 間が空き、つい大声を出してしまった。


「いやいやいや、返事早すぎでしょう⁉︎ソル!もっとじっくり考えて⁉︎それにわざわざ“忠誠の誓い“をしなくてもいいんだよ⁉︎今のままでも十分一緒に居られるし、僕はもっと対等な関係で居たい!だから、いやっ、むしろ僕は“忠誠の誓い“はしないっ!」


 こうして、珍しく駄々をこねた僕に大人総動員で説得を試み。


 それでも頑として首を縦に振らなかった僕に、ソルが綺麗な緑色の“クロムダイオプサイト“の瞳に涙をいっぱい溜めて。


ソル「僕の忠誠を受け取って下さらないのは、僕がお嫌いになったんですか?僕はアトリー様の為ならなんでもいたします・・・」


 と、最後には泣き始めてしまって、僕も久しぶりに強い“感情共感“をしてしまい2人で大号泣した、数十分後、気づいたら僕とソルは自分達の母親の膝の上に抱かれ、頭を撫でられていた、互いに少し落ち着いた頃に母様が…


母様「アトリー、貴方の気持ちも分かるけど、ソル君の気持ちも汲んであげなきゃ駄目よ?ソル君はアトリーと一緒に居るために色んな訓練を沢山したの、それに“忠誠の誓い“をしたからといって、今までの関係が変わる事はないのよ?」


「本当に?」


母様「えぇ、本当よ、多分 貴方達の場合は“忠誠の誓い“ではなく、“友好の証“になると思うわ」


「“友好の証“?それは“忠誠の誓い“とはどう違うのですか?」


 その後詳しく説明を受けた、僕は“魔力の共有“はいいが“スキルの共有“は危険ではないかと思った。

*“忠誠の誓い“に関しての細かい説明は“第1章・幼少期の15話に記載されています。


(僕の持っているスキルは、ティーナちゃんから貰った規格外の物がたくさんあるからなぁ~、それがバレるのは避けたい…)


 少し真剣に考え始めていると天華が。


天華『アトリー様、お母君の説明を聞いた限りでは、スキルは共有できるものは限られているそうですし、スキルの共有自体をコントロールしようと思えば、多分、私達で出来ますよ』


 と、まさに天からの助けであった。


(マジか!)


天華『はい、私達も実際アトリー様とは魔力で繋がっているわけですから、それを応用すればできない事はないと思います』


(確かにっ!教えてくれて有り難う天華!マジ 目から鱗が出そうっ!)


天華『それに、アトリー様は神々からの加護が有りますから、その“制約“事態が通らない可能性があると思いますし…』


(あ…、・・・忘れてた・・・うん、できなかった時は全力でソルを慰めよう・・・うん)


 あれだけ大騒ぎしておいて、やってみたら出来ませんでした!じゃ、ソルに申し訳なさ過ぎるので、魔力共有までは成功するといいなっ、と思いながら“友好の証“を受ける事となった・・・

 結果から言えば、できる事は出来た、ただ・・・、魔力の4分の1を共有…、いや、貸し出す事ができた、僕からソルに、それも一方的にしか出来なかったのだ、加護の影響か僕の方には何も受けとる事はできなかった、天華が言うには…


天華『アトリー様のために神々がお許しになられたのがこの結果でしょうね』


(あら~、そうなのね、まぁでも、“何も無し“よりはいいか?)


 この事をソルと家族に伝えると、神々の采配なら、それが1番良いと言う事なのだろうと納得してくれた、ソル的には僕との絆?みたいなものが出来ただけでも満足の様だった。


 後で聞いた話だが、ソルは裏家業3家の血筋の件は伏せられたまま、僕との一緒の訓練以外に、裏家業3家それぞれの特殊技能も僕といるために頑張って習得したそうだ。


(いやいや、いつの間に?どんだけハイスペックなん⁉︎この子!マジびっくりするわっ!)


 僕の転生チートに匹敵する、天然チートを目の当たりにして、自分のチートなんて所詮 貰い物なので、あまり期待されても困るというのが本音だ。


(まぁ、それはさておきソルはどうして僕に執着するんだろうか、小さい時から一緒だったからなのか?それとも魔力の相性がいいからなのか?僕には分からない、でも僕は僕で小さい時から一緒にいたから、今では僕の1番の理解者で親友だから、急に離れて行かれたりしたら盛大に落ち込むのは確定だしなぁ、結局、僕にもソルに対して甘えている所があって、互いに支え合っているからいいのかも)


 と、思ってたりする。


+ーーーーー+ーーーーー+ーーーーー+


 そして現在…、ソルは“親友“通り越して“おかん“になりつつある。


ソル「アトリー様、もう次で僕達の番ですよ」


「ん?、あぁ、本当だ教えてくれて有り難う、ソル」


ソル「考え事もいいですが、前に気をつけないと転けますよ」


(でた、“おかん“)


「うん、分かってる」


 こんな感じで、いつの間にかジョブチェンジして成長したソル、(いつもお世話になってますっ!(>人<;))て、感じだ。


 そう言ってる間に審査の順番が進んで、ジル叔父様と僕達の番が来た、一緒に審査を受けるために審査衛兵のもとに行くと。


審査衛兵「はい、では次の方、身分証のご提示をお願いいたします」


 テーブルで何か記入していて、下を向いている審査衛兵さんにそう言われて、ジル叔父様はギルドカードと、ドゥーカ公爵家の紋章の入った短剣をテーブル出した、僕達もギルドカードと、それぞれの家の紋章が入った品を取り出し待機した。


審査衛兵「はい、有り難うございます、少々お・・・・⁉︎…王弟殿下⁉︎」


ジル叔父様「…はぁ~、君はここに配属されるのは初めてか?」


審査衛兵「はっ、はいっ!」


 ジル叔父様に声を掛けられて、緊張でビシッと姿勢を整えて固まった。


ジル叔父様「あ~、まだちゃんと教えて貰ってないのか?俺は冒険者としても活動しているから、こうしてたまに歩きで門を通ったりする、だから一々騒いで畏まるな、分かったか?」


審査衛兵「は、はい…」


(結構、無理くりだね、ジル叔父様)


ジル叔父様「あぁ、それと今日からたまに、この子達も門を出入りするだろうから覚えとけ、この中の1人は俺の親戚で、甥っ子みたいなものだからな」


「いいな?」と脅し半分で審査衛兵さんを言い包め、サッサッと審査を済ませるように言ったジル叔父様。


審査衛兵「はっ、はいぃ、つ、次の方お願いしますっ」


(可哀想・・・)


「はい、確認お願いします」


 手元に用意していたギルドカードと、デューキス公爵家の紋章が入った懐中時計をテーブルの上に置いた。


審査衛兵「親戚って!、あのデューキス公爵家⁉︎・・・んぐっ、⁉︎・・・・・は、はい、か、確認しました、あ、有り難う御座います・・・」


 最初叫んだ時に、ジル叔父様から鋭い視線か飛び、審査衛兵さんは自分の口を自分の手で物理的に閉ざした、暫くフリーズし、何か飲み込み終わった後、再び声を震わしながら言葉を発した。


 その後、外に出る時と同じように魔道具に触れ、紋章の入った懐中時計を確認された後に、


「えっと、この子達も もう良いですか?」


 と、聞いた、王都を出るとき、一般市民用の審査通路では、後から来た上司の人が城からの通達を覚えていたので、すんなり通された聖獣のジュール達3人だが、どうやらこの人は通達を知らないようだ。


審査衛兵「え、・・・せ、聖獣様方ですよね・・・チラッ」


 審査衛兵さんの顔には、(この場合どうしたら正解なのだろうか?)と書いてあり、最後の方は視線でジル叔父様に助けを求めていた。


ジル叔父様「はぁ~~~っ、なんでこんな事も周知されてないんだっ、兄上めっ!だからもっと厳重に周知した方がいいって言ったのにっ!・・・・君っ!よく考えろっ、俺達ただの人間が、聖獣様方の行く道を遮る事が出来るとでも思っているのか?」


 盛大に自分の兄である国王陛下の不手際を愚痴った後に、審査衛兵さんに疑問を投げ掛けた。


審査衛兵「い、いいえっ!」


ジル叔父様「だろっ⁉︎それが答えだっ!」


審査衛兵「は、はいっ!どうぞお通り下さいっ!」


 と、あっけなく通行を許可されてしまった、同時にギルドカードと紋章入りの懐中時計を渡された。


(衛兵隊の中でも通達を知っている人と、知らない人のムラが激しいなぁ、もしくはこの人が人の話をよく聞いてないだけなのか?)


「あ、有り難う御座います」


 あまりの展開の速さに驚きつつジル叔父様に近づいた。


「ジル叔父様、有り難う御座います」


ジル叔父様「いい、気にするな、今度からはもっとすんなり通れるようにしといてやるから、冒険者活動、頑張れよ」


「はいっ♪」


 ポフッと頭に手を置かれ、優しく笑って応援してくれたジル叔父様に、満面の笑みで返事を返した。


ジル叔父様「っ!・・・アトリーをこのまま外に出して本当に大丈夫なのか、心配になって来た・・・」ボソッ


 ジル叔父様が何か言ったようだが、僕は気にせず皆んなの審査が終わるのを眺めた。


















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