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31話 冒険初日!8 スライム


 僕達もイネオス達の受けた依頼のスライム捕獲を手伝うことにして、泉の周りに生えている背の高い草むらを掻き分けスライムを探している。


(確かこの世界のスライムって基本 人畜無害で人を襲わないで水と多少の有機物を摂取して生きているんだっけ?、ある意味益虫扱い、今回の依頼も新しく王都の地下水道の清掃用スライムの補充が目的だったよね、街の生活に色々と役に立っているスライムさんはどこにいるのかなぁ~)


 なんて考えている内に掻き分けた草の間にプルンッとした水饅頭のような拳大の小さなスライムを発見した。


「あ、スライム発見!こっちおいで~」


 手を出し呼び掛けて見るとスライムはおずおずとゆっくり近づいてきた。


「わぁ~、小ちゃくて可愛い!これで大人のサイズなのかな?」


 よく見るとスライムの半透明な体の中に核となる小指の爪先ぐらいの小さな青い魔石が見えた。


(おーアレが魔石か~)


 僕の手元に来ようと一生懸命近づいている小さなスライムをジーッと見つめていると。


イネオス「アトリー様!、スライム5匹捕獲完了しましたよー!」


 少し遠くからイネオスが捕獲完了を知らせてくれた、それと同時に小さいスライムが僕の手に到達してよじ登っている最中だった。


(あらら、あっちのが早く見つけられたのか、じゃあこの子は連れて行かなくてもいいかな?)


天華『アトリー、皆さんが呼んでますよ』


 僕が草むらにしゃがんでいるので天華が上空から僕を見つけに来たらしい。


「天華、僕もスライムを見つけたんだけど、もう必要無くなったみたいだからこの子はどうしようかと思ってね」


 立ち上がり手に持っているスライムを見せると。


天華『そうですね、どうしましょうか・・・!、アトリー、そのスライムは普通のスライムではありませんよ』


「え、そうなの?」


天華『そのスライムは希少種のスプリングスライムです、綺麗な水が湧き出る泉にしか生息しない貴重なスライムですよ、

そのスライムは自分の棲家を綺麗に保つために水源となっている場所を進んで掃除して水質を保つ修正がありますから、人間達には重宝されているスライムで高値で取引されているそうです、見分け方が難しく特徴としては通常のスライムより小さく核になる魔石の色が濃い事ぐらいですかね』


「おぉ、君はとても珍しいスライムだったんだね、僕はてっきりスライムの幼体だと思っていたよ」


 天華に言われて何処が違うのか分からずスライムが乗っている掌を自分の目線まで上げて“情報開示“を使いマジマジと観察していると。


ソル「アトリー様、どうしましたか?」


「ん、あぁ、珍しいスライムを見つけてね、観察していたんだ、そろそろ放してあげなきゃね」


ソル「?、そうなんですか?珍しいスライムでしたらギルドが買い取ってくれるかもしれませんよ?」


「うーん、依頼されたわけじゃないから、連れて行かなくてもいいかなって、それにこの子はここに居た方がいいと思うし」


ソル「そうですか、では放してあげたら少し休憩してから帰りましょう、へティが動物達と触れ合いたくてソワソワしながら待ってますよ」


「へティが?ふふっ、それじゃあ待たせるわけには行かないね、…さて、呼んでおいて悪いけど君はお家にお帰り」


 僕は屈んで手の上のスライムをそっと地面に下ろした。


「バイバイ、また会えたらいいね」


 スライムを放して草むらを出た僕はへティ達がいるキャンプ地点に戻った。


「ごめんね、遅くなって、向こうでスライム見つけたんだけど依頼のスライムとは別の種類だったから放してきてたんだ」


へティ「そうなんですね、スライムも色々種類がいるんですね」


イネオス「僕達が捕まえたスライムはちゃんと依頼のスライムでしょうか?」


 イネオス達は自分の捕獲したスライムがちゃんと依頼のスライムか心配になったようで捕まえたスライムが入っている籠を覗き込んだ。


「うーん、僕が“鑑定“で見た感じ全部普通のスライムだと思うよ?」

 

イネオス「ほっ、良かった、教えていただき有り難う御座います、アトリー様」


 自分達が捕まえたスライムが依頼にあったスライムか不安を感じていたイネオス達、僕は不安そうなイネオス達が捕まえたスライムの籠を覗き込んで“情報開示“でスライムのステータスを見てちゃんと普通のスライムだと断言した。僕に“鑑定スキル“があると思っているイネオス達は僕のお墨付きが出るとホッと安心して喜んだ。


「よしっ、これで全部の依頼の品は全部揃ったね、じゃあこの後は4時までここでゆっくりしてから帰ろうか」


「「「はい」」」」「はい♪」


 僕の提案に待ってましたと言わんばかりにへティは近くにいた動物達を触ろうと近づいた。


へティ「可愛いお猿さん、あ、あの、撫でてもよろしいですか?」


「ききっ?」


アトリー&へティ「「可愛いっ!」」


 へティが小さなお猿さんに声を掛けるとお猿さんは可愛く首を傾げた、その可愛い仕草に僕とへティはノックアウトしてしまった。


(ぐふっ、可愛すぎる!撫でまわしたい!でも今はへティの番だから我慢っ!)


夜月『いや、他にもいるんだから他の動物を撫で回せばいいだろう?』


(あ、そ、そうだね、で、でもヘティとお猿さんのコラボレーションも可愛いから、少し眺めてから他の動物達を撫で回すよ)


天華『先程の可愛いにはヘティ嬢の事も入ってたんですね・・・』


(う、バレたか・・・、だってダブルで可愛かっただもん、やっぱ可愛い女の子と可愛い動物とのコラボは見逃せないじゃん!)


天華『アトリー、可愛いのは分かりますが発言が変態チックですよ』


(うっ、可愛いは正義だ!)


天華『はいはい、そうですね』


 天華に軽く流されてしまったが目の前に広がる癒し空間をニマニマしながら見守り堪能した。その後はソルやイネオス達も動物達との交流に混ざり互いに気の合った動物と触れ合って遊んだ。


 僕も沢山の動物達にまみれながらモフモフを堪能した。



>ーーーーー<>ーーーーー<>ーーーーー<


 アトリー達が動物と遊んでいる間に薬草採取に来た冒険者の目撃証言



 冒険者 視点


 俺はしがないDランク冒険者、今日の午後に見た ありえない光景を目撃した。


 今日は朝から馴染みの精肉屋からの依頼で野ウサギを5匹狩る依頼を受けて王都近郊の南側の草原でウサギを探していた。


「ちっ、例のアーミーアントのせいでウサギどころか他の小動物もいねぇな」


 数日前から目撃証言があり討伐対象になっている はぐれのアーミーアントの存在がここ周辺の小動物に影響を及ぼしていた。


 何処かの群れの巣分けか、大移動かではぐれてたであろうソルジャーアーミーアントが通常群で狩りをし仕留める大きな獲物を単独で狩ろうとして失敗、空腹にたえきれず そこらへんの小動物を手当たり次第に襲い、そのせいで小動物達が姿を見せなくなった様だ。


(何処かに隠れているんだろうがそれにしては気配が無さすぎるな、仕方ない近くの森に行って見るか?、それでも見つかんねぇ時は薬草採取して今日の飯代を確保するか)


 今日中には依頼達成できないかもと判断し最低でも夕食の代金は確保しようと王都の南東にある小さな森に足を運んだ、すると、いつもなら数十人の若手冒険者達が薬草採取をしている場所から数人の子供の声しか聞こえてこなかった。


(うん?アーミーアントのせいでここに若手が来てないのか?でも子供の声は聞こえるな)


 森の道を抜け泉のある広場を除くと いつもは賑わっている広場はガランと空いていた。


(本当に人がいねぇな・・・ん?)


 野営地点のある右側に視線を向けると多種多様の動物達が数人の子供達と戯れているのを見つけた。


(おいおい、草原にいねぇと思った小動物達がなんでここにいんだ?・・・⁉︎しかもあれはここの泉の主のファウンテンキャットじゃねぇか⁉︎近づいただけでも水魔法で威嚇してくるあの警戒心の強い魔物がなんで子供になついてんだ⁉︎)


 亜麻色の髪に緑色の目をした短髪の貴族の子供と思わしき男児に懐いている水色の猫系統の魔物が見えて混乱していると、魔物が懐いていた子供の横で大きな熊がいるのを見つけたよく見ると熊の下から子供の足らしき物が見えた。


(!!⁉︎、熊が子供を襲っている⁉︎助けねぇと‼︎)


「お・・・ぐっ!」


 声を掛けようとした途端何処からか自分に向けて物凄い威圧が放たれた、声も出せないぐらいの威圧に足が震えその場を動けなくなり、どうにかして子供達に忠告をしなければと思いその場所で子供達を再度見た。


(ぐぅ、こんな威圧を放つ強い魔物が王都近辺にいるなんて聞いたことがねぇっ!子供達を早く逃さねぇとっ!!)


 子供達に威圧を放つ強い魔物がいると知らせたいのにできない、なんとかこちらに気づいて貰おうと考えていると、子供を襲っていた熊が動き下敷きにしていた子共の姿が見えるようになった。


(っ!間に合わなかったかっ!くそっ!!)


 子供が無惨な姿で出てくると思った俺は助ける事のできなかった自分に無力さを感じ悔しい思いを抱いた。


(せめて他の子供達だけでも・・・・?おかしいな?なんで他の子供はあそこから逃げないんだ?んん?)


 再度 他の子供達をよく見ると笑顔で会話をしているようだった。


(なんだ?笑ってやがる、仲間が襲われているんじゃねぇのか?)


子供の声「ふふっ、熊さん舐めすぎだって、もう、顔がベタベタだよぉ~!あ、髪がまた崩れちゃった」


(なっ⁉︎)


 襲われて死んでいたと思っていた子供が起き上がり、透き通った高い声で笑っていた。


(あれは人か・・・?)


 死んでいなかった事の安堵より先に 起き上がってきた子供の容姿に驚愕した、本当に人か疑うほどに綺麗な姿をしたその子供。


(女?いや服装は男?どちらにしてもあの子供はただの子供じゃねぇな、周りの子供達を見た感じ貴族の子供なのは間違いはないと思うが…しかし本当に人の子か?)


 起き上がった子供は嬉しそうに優しく微笑みながら周りにいた動物達を撫でている、夢を見ている様な幻想的なその姿は現世に降りてきた美の女神のようだった。


 男と女ともつかない中性的な顔立ちに纏めていたであろう長く綺麗な白銀の髪がサラリッと肩から落ちてきて広がると太陽の光に照らされ白く輝いて神々しかった、そして一際 目立つ左右の色が違う宝石のような瞳。


(あれは元女房に指輪を買うときに宝石店で見た珍しい宝石と一緒だ、どちらの瞳の色も同じ宝石で、確か名前は…)


「“アメトリン“」




*“アメトリン“とは・・・


 アメトリンは精神力を強化する意味と効果を持つと伝承されている石です。


 持ち主の力を増幅させると言われ水晶系の中で最も力ある石とされます、黄色い部分が“シトリン(黄水晶)“で、紫色部分が“アメジスト(紫水晶)“です。

 シトリンが男性を象徴し、アメジストが女性を象徴することから、陰陽の均衡が取れた守護石とも称されます。


 アメトリンは他にも物事の均衡を整える調和の力を持つと言われ、持ち主の心と魂を癒す効果があり常に持ち主の1番いい状態を保つのでストレスを抱えた人には最適です。


 陰陽の力の均衡の取れたアメトリンは攻防一体の効果があり、黄水晶部分には“創造力や行動力“を象徴し、紫水晶部分には“直感力や精神力“を象徴しているので重要な場面で成功させたい時に効果抜群です。


 色の偏りによって別の意味も持ちます。


※この説明は作者がネットで調べて引用した物です、気になる方はぜひご自身でもお調べになって見て下さい。




「美しい・・・」


 以前、宝石店で聞いた由来を体現したような神秘的な美しい姿をした子供だ、膝をつき視線がその子供に釘付けになり見惚れていると沢山の動物達の中から一頭の大型の黒い虎?の魔物?がゆっくり現れ俺を睨んで来た、いつの間にか無くなっていた強い威圧が再び俺を襲った。


「うっ、ぐっ!」


(っう!、さっきの威圧もあの虎が放ったのかっ!ぐぅっ!どんどん威圧が強くなってくるっ!)


 威圧を放ってくる黒い虎は子供達を庇うように子供達と俺との間を遮り立ち止まった。


(最初のは警告だったのかっ!ぐっ、息ができない、も、もう持たない…)


 先程の威圧の時に既に膝をついていたが次は気絶して倒れそうだった。


綺麗な子供の声「夜月、戻って来て」


黒い虎「がぅ」


綺麗な子供の声「いいよ、それにそろそろ時間だし」


 黒い虎を綺麗な子供が呼ぶと急に威圧が無くなり俺は前に倒れる形で四つん這いになり強い威圧から一気に解放されて大量の汗をかき、思いっきり深呼吸した。


「ふぅーーーっ、はぁーーっ!」


(っ、虎はあの子供の使役獣だったのか、ではあの虎は俺を主人を害する存在だと認定して威圧を放って追い返そうとしたって事か、ひどい誤解だな、いや、だがアレか、いい歳したおっさんが子供をジッと見つめるなんてヤバイ奴 認定されて当然か、今はあの子供が止めたからもう威圧はして来ないようだがあまり長居すると、次は攻撃を加えられそうだな・・・、仕方がない、今日は薬草採取は諦めるか)


 今日の夕飯が侘しくなるなと独りごちながら 振り返らずその場を離れ、元来た道を戻った。


 ちなみに帰り際に運よく目的のウサギに遭遇し依頼を達成できて豪華な夕食となった。


 後にこの冒険者はあの時出会った黒い虎が聖獣だと知り、子供の正体も判明「そら、警戒されるわな」っと、しみじみ納得した。




>ーーーーー<>ーーーーー<>ーーーーー<


  アトリー視点


(おや?誰か来たみたい?)


 常時発動させている魔力感知や気配感知に人の反応があり近づいているのを母熊さんのお腹に小猿のようにしがみついてモフモフを堪能している時に気づいた。


(ん?入り口で止まったけど泉に用があって来たんじゃないのかな?)


 入り口付近で止まった人の反応を不思議に思い母熊さんのお腹から手を離しボーッと考えていると僕の上にいた母熊さんに心配され顔を舐められた。


ベロンッ 


「ちょ、うっぶふっ、やめてぇ」


 やめてと頼むと上から退いてくれたでも最後にもう一回。


ベロンッと舐められた、寝転んでいるとまた舐められると思ったのですぐに起き上がった。


「ふふっ、熊さん舐めすぎだって、もう、顔がベタベタだよぉ~!あ、髪がまた崩れちゃった」


 ベタベタにされた顔に“クリーン“をかけ綺麗にして周りを見ると小さい動物達が近寄って心配そうに顔を見上げてきたのでその可愛さに負けご機嫌に1匹づつ撫でまわした。


「可愛いっ」 モフモフ、モフモフ、モフモフ、モフモフッ


(やっぱ!可愛いモフモフは正義だ!)


ソル「アトリー様、アレはどうなさるんです?」


「うん?アレ?」


ソル「あちらで気を失いそうになっている人です」


「ん、あぁ、忘れてた」


 僕はモフモフを堪能しているうちにいつの間にか忘れてしまっていた 人に夜月が威圧を放ち気絶させようとしていた。


「夜月、戻って来て」


夜月『いいのか?ジッとアトリーを見つめていたぞ?』「がぅ」


「いいよ、それにそろそろ時間だし」


(悪い気は感じなかったしね)


夜月『ふむ、確かにそんな気は感じなかったが…、まぁいい、アトリーが許すなら放っておこう』


(うん、許す、って言うか、少し見ていただけで威圧したりしたら可哀想でしょう?お仕事でここに来ただけかもしれないのに…)


夜月『むう、分かった次からはもう少し様子を見てから威圧するか決める』


(それでお願い)


 夜月は以前 領地で毎日 僕を遠目でジッと見つめて来る変態さんを見つけてから、僕を少し長く見つめてくる人に厳しい対応をするようになっていた。今回は悪意も害意もない人への威圧には慎重になって貰いたいと思ったので少し注意をして見た、素直に注意を聞いてくれた夜月を優しく撫でていると広場の入り口にいた人はいつの間にか居なくなっていた。(マジの変態さんは凄く気持ち悪かったけどね)


ソル「アトリー様、そろそろ予定の時間ですので御髪を整えたらギルドに戻りましょう」


「うん、分かった」


 今日の門限を鑑みて、なるべく早めにギルドへ依頼達成の報告に行くことにしていた。冒険者の活動時間としてはかなり早めに切り上げるがイネオス達的には意外と早く依頼の物が集まってしまった上に僕達に近寄ってきた動物達と遊ぶ事もできたのでとても満足そうに帰る準備をしている。


 僕はソルにまた髪を整えて貰い集まっていた動物や魔物達にまた来ると約束して泉の森を出て森の外に出た僕達は軽く走って街道に戻り、街道から王都の南門まではゆっくり歩きながら王都へ行く人達を眺めるのだった。


(今日はいっぱい可愛いモフモフの動物さん達に出会えて楽しかった♬)
















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