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プロローグ 転生


『『『それじゃあ良い人生を‼︎』』』


 と、神様達に明るく送り出された私は意識が薄れていった。



+・・・・・+・・・・・+・・・・・+


 とある大国の夜深く、煌々と輝く二つの月明かりに照らされた、とある貴族家の大きな屋敷の一室・・・



「⋯ぅ⋯ふ⋯ん⋯⋯もぅ⋯こし⋯す!次⋯痛みが⋯たら⋯もいっきり力⋯入れて下さい」


「はぁっ、~ぅはぃっ分かりぃっましたっ⋯⋯ぃうっ!」


(・・・何処からか知らない人の声が聞こえる)


 私は意識がハッキリしてきたと思ったら、突然激しい痛みに襲われた。


(痛ったっ~イィタタッ頭痛った!それに苦しいぃ~‼︎)


「今です!夫人!力を入れて下さい‼︎」


「~っはっうぅ~あ“〜〜っ‼︎」


「頭が出てきましたよ!後もう少しで身体も出てきますよ!」


「っはぁっ、はぁっ、ふぅ、ふぅっ、ふうぅーーっ‼︎」


 頭の痛みは無くなったけど全身を締め付けるような痛みにもがいた。


「っ、肩が出てきましたよ!後少しでもう片方の肩が出ますよ!」


「ぅっ!、っうぅっぅ~‼︎」


「!、夫人、出ました!少しずつ手を出してゆっくり引っ張りますよ、次の陣痛で同時に力を入れてください良いですか?いきますよ・・・・・、はい!今です‼︎」


「っあ“ぁぁーっ‼︎」


 私も、もう一度もがいた。


「‼︎っ、身体全部出ましたよ!…さぁ息をしましょうね」


と、顔を拭かれた感覚がきて、さっぱりしたと思ったら、反射的に思いっきり空気を吸い込んだ、その事にビックリした私は大声で泣いた。


「ひぃゅっ!、ふんぎゃぁ、ふぎゃーっ!うんぎゃーっ‼︎」


「夫人おめでとうございます、元気な男の子のお子様ですよ」


 その時、私は泣いていて重大な事に気付いていなかった。


 専属の医師は生まれたばかりの赤ん坊の臍の緒を切り、母親の処理を終えると、赤ん坊を柔らかな布にそっと包み母親に手渡した。


 母親の腕に抱かれた私は、表現出来ない安堵感から落ち着きを取り戻し、眠気に襲われてきた。


「はぁっ、えぇ、ありがとうございます、先生。可愛い私の子、生まれて来くれてありがとう・・・」


 母親は感無量とばかりに涙ぐみ、自身の腕の中の小さな命に慈しみと愛おしげな視線を注いで優しく頬を寄せた。


「「「奥様、おめでとうございます!」」」


 室内にいたメイド達が涙ぐみながら祝福してくれて、嬉しさと幸せに満ちた笑顔で礼を返した。


「皆んなも、ありがとう」


「奥様、私は旦那様方にお知らせして参ります」


「えぇ、ありがとう。よろしくね、リア」


 綺麗な一礼をして、ひとりのメイドが扉の向こう側に消えていった。


「夫人、今のうちに綺麗にいたしましょう、あら、泣き疲れてお休みになられた様ですね」


「ふすぅー⋯、ふすぅー⋯」


「あらまぁ、ふふっ寝顔もなんて可愛らしのかしら」


「本当にお可愛らしいですねぇ・・・はっ、こほんっ、ではお子様を先に綺麗にいたします、“クリーン“。

 次は夫人”ヒール“、“クリーン”。後は夫人、こちらの下級ポーションをお飲みになって下さい、疲労回復になりますので」


「ふふっ、今回もありがとうございます、ライラ先生」 ダ ダ ダ ダッ! 「?、何か騒がしいですね?」


 部屋の外からバタバタとこちらに向かって騒がしい音が大きくなって来て、部屋の扉の前で音が止まると同時に「バタンッ‼︎」と扉が勢い良く開いた。


「シトリス‼︎」と、一人の男性が慌てた様子で部屋に入って来た。


「ラトっ、今寝たところなの、だから落ち着いて」 “シトリス”と呼ばれた母親にやんわり注意される。


「!、あぁ、すまない、心配で…」 心配そうな顔をして注意された“ラト”と呼ばれた男性は小声で話し出す、その姿を見て少し笑いながら


「ふふっ心配してくれてありがとう、でも5度目なのよ?」 と、可愛く首を少し傾げる。


「何度目でも心配ものは心配なんだよ…、!、あぁ…、なんて可愛い子だ・・・」 


 彼女の顔から視線を下げ、腕の中にいる赤ん坊に気付き、心配そうな顔を崩して嬉しそうに微笑んだ。


「あっ!、そうだ、どっちだったのかな?女の子?男の子?」 と、楽しそうに聞いてくる。


 母親のシトリスはニコニコ笑いながら


「男の子よ」 と、告げる。


「男の子!3人目か、男の子かぁ~そうだ!、瞳の色はどうだった?」


「そうね、ちゃんと見てなかったわ、先生、少しこの子の目を開けて見せていただけますか?」


 父親のラトも同意の視線を専属医師に向ける、その視線を受けた専属医師は少し考えて。


「分かりました、少しだけですよ。あまり長く開けると目が乾燥してお子様が起きてしまわれますから」


 そう言って赤ん坊の瞼を指でゆっくり優しく開いて見せてくれた。


「「「‼︎」」」 


 少し開かれた瞼から瞳の色を視認した途端、若夫婦、専属医師が同時に固まった、とても珍しい瞳の色をしていたのだ。専属医師が先に我にかえり、瞼を開けるために添えていた指でそっと瞼を閉じた。


 瞼を閉じられた事で我にかえった若夫婦は、先ほど見た我が子の瞳の色に心当たりがあった。


「母上と同じだ!」「お義母様と同じですね!」


 2人は声を合わせて興奮し出した、若夫婦の発したその言葉に反応したのは、先ほど勢いよく部屋に入ったラトの後ろについて来て、そのまま気配を薄くし、今までこの若夫婦のやり取りを見守っていた、“リア”と呼ばれていた母親の専属メイドだ。彼女はそっと進み出て来て。


「旦那様、奥様、お話中失礼します」と綺麗な一礼し、「大旦那様方をお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」と、提案してきた。


「そうね、その方が良いわねお願いできるかしら?」


「あぁ、頼む」


「はい、かしこまりました、では、少々お待ち下さい」


 若夫婦の承諾を得て、メイドのリアは早速部屋を出て行き、目的の人物がいるであろう場所に足早に歩いて行った。


 メイドの後ろ姿を見送った若夫婦は、その後、我が子の名前をどうするか相談し始めた・・・


⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯数分後


コンコンッ


「どうぞ」 と、ノックの音にシトリスが返事を返す。


ガチャッ「失礼いたします、大旦那様方をお連れしました。」一礼をし、後ろに連れてきた人物の為に扉を押さえつつ道を譲った。


「失礼するよ」「お邪魔しますね」続いて入って来たのは、40代の気品あふれる男女2人、少し不安げな表情で若夫婦見ていた。


「急に呼び出してどうしたんだ?生まれた子がどうかしたのか?」と、40代の男性が不安げに尋ねる。斜め後ろについて来た女性の表情も同様だ。


 その発言と表情を見て、ラトは慌てて両手振り。


「違います!違います!子供について呼んだのは確かですが、子供に何か病気がある訳では無いですよ‼︎」


「ほっ、そうなのね、良かった。何か悪い知らせかと思ったわ。ではどうして呼んだのかしら?」先ほどの不安げな表情から一転、困惑気味な表情に変わった女性。


「あぁ、本当によかった、どこか悪い所もないんだな」と、安堵した。


「夜遅くにすみません、お義父様、お義母様。この子はどこも悪い所は無いのです。ただ相談がありまして、この子の名前に関してお義父様方にいいお知恵を頂けないかと」


 シトリスは腕の中の我が子を見せるように用件を告げる。


「まぁ、そうなのね、名前ねぇ…、それにしても可愛い子、シリー、貴女より白に近い綺麗な銀色ねぇ、良く寝ているわぁ」


 赤ん坊を見て2人にも笑顔が溢れる。


「あぁ、可愛いなぁ。だがいつもだったら2人で決めていたのではないか?」


「いつもならそうなですが・・・早く母上にこの子を見せたくて」


「ん?、私ではなくアリーにか?」「あら、私?」2人仲良く小首を傾げる


 そんな両親を見て(仲が良いなぁ)と、思いつつ専属医師に目で合図をしながら。


「えぇ、この子の瞳の色が母上と一緒だったので」その時、先ほどと同じ様に赤ん坊の目を専属医師が少し開く。


「おぉ…」「まぁ!」


「それで相談に乗ってもらおうと思って、何か良い案がないかな?父上、母上?」


 その後はそれぞれ名前を提案して意見出し合い少々揉めつつ話し合った。




+・・・・・+・・・・・+・・・・・+



「これで決定で良いな!」少し疲労感を漂わせた、ラトの父親が他の3人に向けて言った。


「えぇ、それしか無いかと」と、ラト。「そうね」と、アリー。「はい」と、シトリス。


「では、この子の名前は⋯アメトリン とする‼︎」 


 パチパチパチパチパチッと、その場にいた専属医師とメイド達から何故か拍手が鳴った。


 母親のシトリスは拍手の中、そっと我が子の頭を撫でながらこう呟いた。


「可愛い私の子、貴方の名前はアメトリンよ。あだ名はそうねアトリ…いえ、アトリーがいいわ、アトリー、貴方に神々の祝福が頂けますように」


 チュッ


 “アメトリン“と名付けられた赤子の額に口付けをしたシトリスは、愛おしそうに赤子の顔を覗き込んだあと、優しく抱え込み頬擦りをした。


「「「「「「「神々の祝福が有りますように」」」」」」」


 こうして生まれた初日に、本人の預かり知らぬ所でドタバタも有りつつ、“アメトリン“と言う立派な名前をもらい、その場の人達から祝福を受けながら、異世界に転生して第二の人生をスタートさせたのだった。












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