あなたも、私も、レビューをもらうには、この方法しかありません!【番外編】 ~レビューを書いてたら、こんないいことが起こるかもしれませんので~
「ジングルベル~ジングルベル~♪」
12月25日……。
何やら王都も浮足だっている。街にはお馴染みのクリスマスソングが流れている。何でも元々は『転移者』と呼ばれる人たちが広めた風習だったらしいが、今ではすっかり人々の間で定着してしまっている。
◆
「会長~!」
今日はせっかくの休日ということもあり、俺は王都の隠れ家でひとり優雅くつろいでいたというのに! 誰だ、ボッチなんて言うのは!
「ほれほれほれ……」
勝手に上がってくるなり、まとわりついてくるもふもふ尻尾。
「こら! いい加減にせんか!」
せっかくお気に入りのシングルモルトを常温の水で割りながら、大人っぽくキメていたというのに! この復刻版『近衛騎士団』今プレミアがついて、なかなか手に入らないんだからね!
「会長~。お腹がすいたっす~」
「お前、本当に食いしん坊だな! ウチのこと無料の食堂かなんかとでも勘違いしているんじゃないだろうな」
「その『食いしん坊』っていうセリフ、会長にだけは、言われたくはないっす」
「何~!」
「いやいや、単なるひとり言っす~」
こいつ、まさか俺の黒歴史のこと知ってるんじゃないだろうな?
そんな俺の危惧なんて素知らぬ風に、出してやったお団子ドーナツケーキを、両手でつかんでパクつくモルト。
もきゅ、もきゅ、もきゅ……
……ていうか、お前一体何の用なんだ? 今更だけど。
「何言ってんすか、王都でお腹がすいたら、何時でもここに来いって言ってたのは会長っすよ~!」
「そ、そうだったかな。でもお前、何でそんなにニヤついてんだ?」
「だって、今日はクリスマスっすよ! お世話になったあの人に贈り物をする日っしょ!」
「あ、あのなあ……」
それ、異世界の別の風習なんじゃ……。というか、レオンたちからプレゼント貰ったんじゃないのか?
「レオン様なんて知らないっす!」
そう言ってぷいっと横を向くモルト。何でもレオンは山籠もりの稽古中だとか。当然セリスもくっついていったという。
「もう、クラーチ家の執事なんて辞めたいっす!」
「しかも自分は、執事の身にして、レビューまで書くくらい働きづめっす!」
い、いつの間に?
*注)モルト君が執事として、もふもふ尻尾をふりふり頑張っている作品は『砂漠の国の歩き方』です。絶賛連載中ですので、みなさん読んでね~♪
「それに比べて、会長は夏休みに秋休みに明日から冬休みっすか! よくもこうだらだらしていられるもんすね! こんなんで恥ずかしくないんすか!」
うっ……。
は、はい……正直言って、ちょっぴり恥ずかしいです。しかもレビューどころか他の作品を読むことすら満足に出来ておりません。
で、でも……あ、あれ?。
「ちょっと待て、レビューエッセイのシリーズはとっくに終了してんぞ!」
「いいじゃないっすか、今日はクリスマスっすよ! そんなこと覚えている人なんていないっす!」
そ、そんなこと……。
こいつは言うに事欠いて、何て失礼なことを! そんな風に思うのは、俺の気のせいなのだろか……。
「そんなことより、はい♪」
そう言って俺の前でちょこんと座って、両手を差し出すモルト。
もふもふ尻尾が、もの欲しそうにゆっくり揺れています。あざとく小首を傾げてますが……。俺はそんなのになんて、ほだされないんだからね!
「無いぞ」
「……え?」
何やら新種の生き物でも発見したかのように、両目を大きく見開いて驚くモルト。
「し、信じられないっす! 自分は、これまでどれだけ尽くしてきたと思うんすか!」
「でも、プレゼントなんて用意してないぞ」
「主人の不始末は作者の責任っす! 作者の責任は会長の責任っす!」
「おいおい……」
「繰り返しますが、自分、執事の身にしてレビューまで書いてんすよ! 特にこのレビューなんて……」
「そこまで言うなら、お前の書いたレビューとやらを、見せてみろよ」
「よくぞ言ってくれたっす。会長! これを読んでも同じことが言えるっすか?」
◇◇◇
ありがとう、もふもふさん。
もふもふさん。ありがとうっす!
なんか、仲間の子どもが迷子になったみたいで、大変だったんすよ~。あの子のこと、もふもふさんが、見つけてくれてたんすね。おまけに、ごちそうまで頂いたそうじゃないっすか。
もふもふさん。改めて、ありがとうっす!
あの子のお母さん以外の自分の仲間も、みんな、もふもふさんに感謝してたっすよ。
それじゃ自分、そろそろ仕事の時間なんで失礼するっす。
また、休みの時にでも、お礼に行くんで。
トゥーカさんにもよろしく言っといてくださいっすよ~♪
作品タイトル:もふもふさんとこぎつねくん。
作者:糸
◇◇◇
「どおっすか? いいっしょ、いいっしょ?」
「……まあ、たしかにお前のレビューも悪くないんだが」
「な、何すか?」
「何か……単にお礼を言ってるだけだな」
「え……」
「はっきり言って、少しもすすめてないな」
「な、なんすか、なんすか! 自分まだ二件目なんすよ~!」
「……」
「下手で上等、下手でも送れなんて言ってたのはどこの誰っすか!」
「そ、そんなことも言ってたかな」
「会長の二件目のレビューだって、微妙だったじゃないっすか! いつか会長の初レビューも見せて欲しいっす!」
「お、おいおい……」
“コンコン”
「もう~。誰っすか、こっちは取り込み中なんすよ!」
涙目になりながらも、玄関に向かうモルト。お前この家のことを、自宅とでも思ってんじゃないだろうな!
「お届けものなら、間に合ってるっす!(コラ!)……つって、え、あ……。ええ~っ!」
固まるモルトの目の前には……。
「い、糸様~!」
「も、モルト……君?」
「どうして……」
「実は、七生ちゃ……いや会長に聞いたんだけど。モルト君の居場所が分からないなら、ここにおいでって」
「もしかして……」
「うん。モルト君、はい♡」
◆
「えへへへ~♪」
もふもふ尻尾をぶんぶん振るモルトの胸に大切に抱えられているのは……。
メリークリスマス♪
そうなのです! 皆様、レビューを書いてたら、こんないいことが起こるかもしれません。
もふもふ尻尾をふりふりしてご満悦のモルト君みたいにね!