04 『知識』
それからの毎日、淡々と仕事するだけの日々。
老婆の指示で黙々と、まずは軽作業から。
ちゃんと段階を踏んで教えてくれているのだと分かると、ちょっと嬉しくなった。
材料、入手方、製法、保管法、製品化、売却取り引きのコツ。
とても、楽しい。
そして固有スキル『知識』の有用性に今更ながら気付いた。
一度得た知識は、絶対に忘れない。
過去の知識も必要な時に引き出せる。
驚いたのは、元の世界で学んだ医療知識にも適用出来たこと。
もちろんあちらの世界の薬も道具も無いけれど、
あの情報がこちらの世界で大変な価値を産むことだけは分かる。
何となく、老婆は私の秘密に気付いていたみたいだが、
いつも通りの無口なままで接してくれた。
感謝の気持ちは仕事で表した。
一緒に住んでいる少女。
少女の名はシルリ、口が聞けなかった。
身振り手振りでの意思疎通は、日が経つにつれてスムーズになった。
読み書きも出来るし、利発で素直な娘。
自分でもそれなりに家事は出来たが、ここに来てからは全てシルリに任せきり。
懐いてくれていた、と思う。
薬師として、それなりのことが出来るようになった頃、
生活が、一変する。