03 解決
ずいぶん歩いたけど、迷わずに着けた。
城下町のはずれにある林のそばの、小さな一軒家。
「ごめんください」
ノックしてしばらくすると扉が開いて、
目線を下げたら幼い少女。
「ギルドの依頼で来ました」
突然少女からぎゅっと手を握られて、導かれるままに家の中へ。
奥の部屋、乱雑に積まれたさまざまな品物の後ろ、
机に向かって作業している老婆がいた。
「ギルドの依頼で」
言いかけた言葉をさえぎるように、老婆が部屋の一点を指差した。
目を向けると、さまざまな色の小瓶が乱雑に入れられた木箱。
老婆を見ると、今度は壁の棚を指差す。
さまざまな色の小瓶が、仕分けされて置かれている棚。
「並べれば良いんですね」
老婆は小さくうなずくと、また机に向かった。
とりあえずやってみよう、駄目でも日銭くらいはもらえるかも。
重い木箱を引きずって棚のそばへ。
色分けされた小瓶を棚に並べるのは簡単だが、少し迷った。
木箱の中をよく見ると、同じ色でも小瓶の形が違っているものが混じっている。
棚の方の小瓶の形は一種類。
自分だったら、こう置きたいな。
棚の小瓶を左側手前に寄せる。
木箱の中の小瓶を色を合わせて、
同じ形の小瓶は、棚の左側奥へ。
違う形の小瓶は、棚の右側へ。
木箱が空になってようやく気付いた。
おぅ、思わず時間を忘れて熱中してしまった。
私の悪いくせだな。
終わりましたと老婆を見たら、無表情で手招きしてくる。
後をついて行くと、居間? かな。
老婆の手振りを見て、テーブル脇の小さな椅子に座る。
向かい合わせに座った老婆が手を打ち鳴らすと、
さっきの少女がお盆いっぱいに積まれたティーセットを運んできた。
それなりにてきぱきと準備した少女は、お茶を煎れ終えて席につく。
「通いか、住み込みか」
えらくスピーディーだなと思いながらも返答。
「住み込みで」
「お金はいくら欲しい」
「食事が出るならお金は要りません」
老婆は、床に置かれた手提げ袋を指差した。
「茶を飲んだらギルドへ行って、中に入っている巻き物を渡す」
「帰りにこの家の一番近くにある店に寄って、袋の中にある書きつけを見せる」
「いいか?」
有無を言わさぬ展開が、なぜか心地良かった。
「分かりました」
職と食と住、あっという間に解決した。