17 黒白
メイジの秘密の隠れ家で、私はこれからどうしたいのか、ひとりで、じっくりと、考えた。
今の私にあるもの。
強くはないし貧相だけど、健康な身体。
『収納』の中には、老婆の遺産とストックしておいた秘密の薬がたくさん。
頭の中の『知識』には、今までの私の知識全部、もちろんヤバい薬の製法もてんこ盛り。
それから、忘れてしまいたいやらかしと、忘れたくない思い出もいっぱい。
決めた。
私、自由に生きたい。
この異世界を、好きに旅して、
作りたいもの作って、
会いたい人に……逢いに行く!
黙って出て行くと、メイジ、怒るかな。
いっか、別に。
どうせどこに行ったって、
ご自慢の『転送』で、すっ飛んでくるんでしょ。
それじゃ、行きますかって、さすがに寝巻きじゃまずいよ。
『収納』から、何か着るものって、これ何だ?
『外に出るときはコレ着て行ってね』
『結構強力な付与が掛かっているから遠出も大丈夫』
『それじゃまたね』
真っ黒いローブ。
なんか不思議な魔力を感じる。
私の『鑑定』で分かるかな。
『漆黒の白衣 (シッコクノハクイ)』
物理防御:中
魔法防御:特大
呪法防御:大
物理支援:小
魔法支援:特大
呪法支援:無
特記事項
着用者に敵意・害意を持つ者からの認識阻害効果:特大
着用者に好意を抱いてくれる他者の認識特定効果:特大
なんかよく分からないけど、敵から見つかりにくくなって、味方が見つけやすくなるローブってことかな。
それにしても何だよ、漆黒の白衣って、黒なのか白なのか、どっちなんだよ。
何だか、私っぽいな、それ。
……
ったく、なに勝手に人の『収納』にこんなの入れてんのさ。
って、どうやって入れたんだろ、本当。
メイジ、ありがと、ね。
そして私は、流浪の闇医者となった。




