15 特別
『転送』した場所は見知らぬ部屋。
誰にも知られていないメイジさんの個人的な隠れ家だそうだ。
隠すほどの胸も無いのは自覚しているが、さすがに寝巻き姿は恥ずかしい。
「すみません、とりあえずこれ羽織ってて」
着ていたジャケットを渡された。
以下は、メイジさんの説明。
とある王家の王様がぽっくり死んだ
原因は毒殺、あの医者から渡された薬を飲んだ直後
「黒井さん、身に覚えあります?」
メイジさんに説明、使用書通りに飲めば絶対に安全。
「ごめん黒井さん、もうどうしようもないみたいだ」
あの手の人たちは、絶対に自分たちの間違いを認めない
プライドのために戦争を起こすような連中だから、僕らみたいな個人はどうやったって勝てない
何か、どうでも良くなった。
『知識』を自分のやりたい事に使えば失敗ばかり。
自分の気持ちを殺して国のためにがんばっても、結局周りは自分を守ってはくれない。
「何か、どうでも良くなっちゃいました」
涙が、出てきた。
老婆が死んだ時も、
シルリが大怪我した時も、
出てこなかった涙が、何で今、出てくるの。
声も出せずに泣き続ける私を、メイジさんは優しく抱きしめてくれた。
「勝手にハグしちゃってごめんね」
ようやく泣き止んだ私に、メイジさんが照れたような顔で謝ってくれた。
「私、あなたがキライ」
「どうせ女の子には、みんなそういう風にするんでしょ」
「でも、ありがと」
「僕は確かに女の子大好きだけど、慕ってくれる娘以外とは絶対に深い仲にはなりませんって」
「それに、黒井さんはほら、僕にとって特別だから」
「特別?」