14 全力
それからの私は、新薬を生み出す機械として過ごす。
自分からは、新しいことは何もしない。
注文があった時だけ『知識』の全力を使って、注文主の要望以上の新薬を作った。
薬師、回復魔法、そして元いた世界の知識。
全てを統合し、『知識』を存分に駆使した私は、今までにあり得ないような新薬を次々と生み出していった。
もしかして、シルリを助けた時に口に含んだものすごい回復薬が、自分にも吸収されて生命力が溢れている状態だったのかも。
ものすごい回復薬だったから『エリクサー改』とでも名付けようか。
『知識』を考え無しに使っていた私に罰が当たるのは当然だったのだろう。
周囲の称賛の声などには全く興味は無かったが、
結局私は自分のせいで、またまたいろいろと失うことになる。
とある王家からの依頼。
王の不妊を何とかして欲しい。
もちろん、いつも通りに全力を出す。
最強の精力増進効果と一発必中の種付け力。
『完璧精力剤』と名付けた。
乱用すれば人が耐えられる限界を越えるが、用法・用量を正しく守ればもちろん問題無い。
今回も全力で良い仕事が出来た。
「黒井さんっ、起きてください」
目を覚ますと、ベッドのそばにメイジさんがいた。
寝る前に施錠は確認したのだが、いやメイジさんの『転送』の前には無意味か。
いちおう女の自覚はあったので、大声を出して暴れようかなどと考えていると、
「すみませんが緊急事態なのでこのまま行きますね」
避ける間もなく手を握られて、
『転送』させられた。