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11 マグカップ
フナエさんは、私の手を握りしめて、泣いた。
心配掛けてしまったとフナエさんの肩に手を置く。
身を振るわせて私の手を払ったフナエさんがうめくように言った。
「シルリちゃんが……」
爆発した部屋の前に倒れていたシルリ。
そばにはティーポットと、割れたおそろいのマグカップ。
泣きじゃくっているフナエさんの代わりに、メイジさんが告げた。
シルリちゃんは外傷の方は大したことが無かったが
爆発で頭を壁に打ち付けられたようで、目覚めない
僕が呼んできた高位の回復魔法使いでも、駄目だった
出来るだけの事をしてきたが、今も、眠ったままだ
なぜ、私は、泣けない、のか。
きっと、私の頭の中には、人間らしい感情が、足りていないんだ。
代わりに、入っているのは、人並外れた、『知識』!
止めるふたりを振り解いて、実験室へと向かう。




