第六話
「見張りの攻撃をしのいで、洞窟の入り口にたどり着いた冒険者は、灯りをかざす。」
ジョーは入り口を見上げ、誰もいないはずのそこに、冒険者の姿を幻視した。
「その先に複数の気配を感じながら地下へと続く坂道を下り、やがて洞窟の奥を目にする。坂道を降りたところで広い部屋のようになっていて、そこにはたむろしていたであろうゴブリン達が見張りの警告を聴いて迎撃態勢でまっていた。討伐対象を見つけた冒険者は、得物を構えて切り込む。」
ジョーは、一度、言葉を途切れさせ、勇躍する冒険者を想像した。そして・・・
「そこで足を滑らせて体勢をくずしたところを、待ち構えていたゴブリンが一斉に襲い掛かるという寸法か。」
嫌なものを見た、そんな風に顔をしかめた。
「そうだね、この坂は、小規模な集団どうしを想定した防衛戦のためのトラップなんだ。」
フリッツが確信を込めて頷く。
「えげつないなあ。」
そのジョーのつぶやきを、マスターは憮然として聞いていた。
コアがクスクスと笑いながら言う。
「しかし、たいした子供たちですね。」
「実に、末恐ろしいな。」
「マスターの浅知恵も、ことごとく看破されていますしね。」
「敵はすぐそばにいた!」
「にやり。」
「それにしても、これは本気でヤバいかもしれない・・・」
ジョーが決定的な宣言をしていた。
「でも、これでこの洞窟には何かあるってことは確信できたわけだ。」
「調べてみる価値はありそうだね。」
ジョーとフリッツ、二人はうなずき合う。
「ちなみに、この先はどうなってるのかわかる?」
聞かれたフリッツは、ランタンを掲げて入口とは反対の方向を指さす。
「そこの奥、いったん短い通路みたいになった先に、ここと同じような部屋がもうひとつあって、そこで行き止まりになっているはず。地図を書いたら、ひょうたんみたいな形になると思うよ。」
「なるほど、じゃあとりあえずこの部屋から調べていこうか。」
ジョーとフリッツはべスと手をつなぎ、安全確認も兼ねて、まずは足元の地面から調べ始めた。
そのとき、ジョーは、視線の端に動くものをとらえ――
「フリッツそこ、ランタンで照らして!」
ジョーは、実に侮りがたい身のこなしを見せた。
コアの悲鳴があがる。
「カナヘビさん!」