第一話
「マスター大変です、ダンジョンに侵入者です。」
深い森の中、そこだけ木々が避けたかのように、急に開けた場所がある。
さえぎられずに、日の光がそそぐ小さな草原は、そそり立つ岩肌の斜面に当たり途切れていた。
ただし、行き止まりではない。大人が並んで歩いたまま入れるほど大きな洞穴が地下へと続いている。
今、その洞窟の入り口に、日差しとともに三つの人影が伸びていく・・・
そして、それを密かに見つめる、小さな瞳があった。
洞窟の岩肌に張り付き、見上げる彼の小さな体に比べ、その影は大きく、とてつもなく恐ろしいものであったろう。
岩陰に隠れ、そっと気づかれないことを祈りながらも、それでもとどまり見張り続ける。
洞窟の最奥に住まう彼の主に、危急あるのを知らせなければならない。
ここはただの洞穴ではなかった。ダンジョンであり、彼もまた、ただの小さなトカゲではなかった。
彼の瞳に映るすべての物は、魔法の力によって、主の下に虚像となって届けられる。
はたして、彼の献身は正しく報われていた。彼の見つめる三つの人影の正体が、あやまたずに突き止められたことは、最奥で交わされたダンジョンマスター達の会話によって明らかとなったからだ。
「って、子供じゃないか。」
「はい、どうしましょうか・・・」