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冷たくて静かな彼女

作者: 楓蘭 仁

俺の高校の1クラスは男女合わせて40人クラスだ。男女比のバランスもしっかりとれていたりする。


「12番、佐野大和さのやまと。」


「へーい。」


机に突っ伏しながら俺は手をヒラヒラさせた。


「13番………14番………」

と出席確認は続いていく。教師ってめんどいねー。毎朝こんなことやってんだから。










「34番、遠野美佳とおのみか。」




「………はい。」



と小さな返事。

うちのクラス1会話が無い女の子。通称みーたんこと遠野美佳。

女子との会話はよく見られるが、男子との会話はほとんど無い。男子が嫌いというわけではなさそうだが、苦手という部類には入るんだろうなー。と俺は思う。
















そんな男子たちはみーたんが大好きだ。どうにかして笑わそうと毎日試行錯誤しているのだ。。そんな事する暇があるなら勉強しなさい!というお母さんの気分がよくわかる。




そして、特に頭もいいわけでも無いし、スポーツが飛び抜けて出来るわけでも無い俺。そんな俺が男子連中に自慢出来る事がひとつだけある。
















俺はみーたんの笑顔を一番近くで見た事がある。
















ある日の放課後、空になった弁当箱を忘れて取りに行った。

その時、教室にいたのがみーたん一人だけ。

でも、別にチャンスともなんとも思わなかった。


「〜♪〜♪〜♪」

好きな曲を口ずさみながら本を読んでるみーたんの前を通り、自分の机の横にかけてある弁当箱を回収。

そして、もう一度みーたんの前を通りまっすぐ教室から出ようとした。




その時、なんとなく、なんとなくだが声をかけてみたくなった。









俺は教室の扉から顔だけ出して


「あ、みーたん。」




「………?」




お互い目が合ったところで






「じゃね。気をつけて帰ってねー。また明日。」


それだけ言うと




「!?」


一瞬、細めな目をいつもより開いて


「……うん」


と返事をしながら…笑顔をくれた。






「!!?」


今度は俺がびっくりして、なんか急に恥ずかしくなった。

走って帰った。




そんな放課後が一度あった。



















「大和!お前も来いって!」

と俺の腕を引っ張る友人。


「いいーっつの!俺は!」




このクラスの昼休み恒例であり全員が公認しているゲームがある。それは



(〜あの子の笑顔を取り戻せ〜ついでに愛を取り戻せ!!)




というゲームだ。







いや、別にみーたん笑顔失ったわけじゃないからね。

そんで愛は全く関係ないからね。




と、ツッコミ満載のゲームだが、これが意外と人気がある。他の女子からだけど。













「んでね、みーたん。俺言ってやったんだよ!………」















今一人の男子が挑戦中だ。




結果は明らかだけど。
















そして、周りから大爆笑が聞こえてきた。




だけど、みーたんは全く笑っていなかった。




「お、俺が、じゅ、17敗目だと…」


と笑いに自信があったらし男子がまた散った。




確か総合的にはみーたんは120勝目だ。

不敗神話だ。すごいよみーたん。






そして昼休みが終わる頃には、みーたんは132勝目まで勝ち進んでいた。

今日は挑戦者なかなか多かったなー。
















そして放課後、139勝目をマークしたみーたんは帰り支度をしていた。


俺は帰宅部なので帰り支度をする。
















帰り道。実は俺の下校ルートはみーたんと全体の三分の一くらいまで一緒だったりする。

帰るタイミングが一緒になる事が珍しいので今日はラッキーだ。


後ろ姿から容姿端麗っぽいのがわかる気がする。




背中に少しかかるくらいの長めの髪。ピシッとした背筋。スレンダーな体。…後ろからはわからないけど少し細くて吊り上がり気味の目。




ヤバい、俺、ストーカーに目覚めるかもしれない………。

はっ!!いかんいかん。



と勝手に妄想していたところで




「あれ?みーたん消えた?」




20メートルくらい先を歩いていたみーたんが消えた。




……なんかテンションが下がった。















「美佳ちゃんよぉ?こういう状況でも駄目かい?」


















不意に、聞こえてきた声。


気付いた時には俺は走っていた。
















男三人な詰め寄られているみーたん。

一番みーたんに詰め寄ってるでっかい人。

左右で腕を組んでる子分×2。

ちくしょう。漫画じゃあるまいし。




「こんなに言っても駄目かい?俺って駄目かい?やっぱり駄目かい?」


うんあれだ。でっかい人がうざい。




「……ごめん…なさい。」


目を合わせたくないのか、おどおどしてるのかわからないけど、うつむき加減のみーたん。なんか新鮮な反応だ。もうちと見てようかな………いや駄目だろ!




と、みーたんと野郎共の死角になるところで俺は葛藤していた。







作戦を練ってみる。



今周りにあって使えそうな物

・なんでか落ちてた軟球

・反対側には積み上げられた空き缶の山


よし……




軟球→空き缶の山に投げる。→音が鳴る。

野郎共→一瞬びびって空き缶の山を見る。

俺→その隙にでかい奴に不意打ちキック。

でかい奴→沈む。

子分×2→取り乱す。

みーたん→俺に助けられる。


そして、ハッピーエンド。
















……完璧だ……




よし、実行だ。



















早速、軟球をヒョイ、と持ち。


「うーし…、いけぇ!」

小さな掛け声と共に軟球を投げた。




ヒューン…

と山なりに弧を描き、













ガンッ!




「痛っ。誰だこらぁ!?」


でかい奴の頭に当たった。






作戦失敗。






「出てこいこらぁ!!そこにいんだろが!!」


でかい奴がどんどん近づいてくる。ピンチ、俺。




「うっさいわぁ!!静かにしろやガキがぁ!!」


ガラガラガッシャーン!!と空き缶を派手に崩しながらホームレスが出て来た。

すっげー状況だ。




全員がホームレスを見る。みーたんも見てる。いやそりゃびびるわ。






「うおるあぁぁぁ!!!」


と言いながら俺は駆け出し、当初の予定通り、でかい奴に不意打ちキックを決めた。

バゴオッ!!と音と共にわき腹にキックが直撃し、


「ぐほおぉっ!?」


と叫びながらでかい奴はすっころぶ。




「っとと…、うし!」

バランスよく着地しガッツポーズ。


そのままみーたんの手を無理やり掴み、


「みーたん!走るよ!後はハッピーエンドだけだから!」


「……え?」


しまった。つい口に出ちゃった。




「てめぇ!!よくも俺の子分の告白を台無しにしてくれたなぁ!!」


と子分(右)がキレだした。

いや、お前のほうがえらかったんかい。




「いって〜なこのやろー…」


まずい、でかい奴が立ち上がった。




俺は本格的に逃げる体制に入り、


「みーたん、ダッシュ!!マジで!本気と書かなくてもマジで!」


「…え?…うん。」




俺はみーたんとものすごいスピードで逃げ出した。






















とりあえず俺んちに最短ルートで逃げ込んだ。ベツニヤマシイコトナンテナインダカラー。






なんだかんだで俺の部屋に上げてしまった。冷静になって考えたらすげーことだ。ざまーみろ。クラスの男子。






「まー…、帰りは送ってくよ。しばらくはうちでゆっくりしてくれぃ。」

なんか思ったより言葉が自然に出た。俺は本番に強いのかもしれない。




「……ありがとう、大和くん。」




「あっ、い、いや…」

だめだ。帰宅部が本番に強いわけなかった。


てか、




な、名前読んでもらった。

異常に嬉しい。まさかのホームレスの介入があったことより嬉しい。

あ、そーだ。




「みーたんも大変だったと思うけど、今思い出すとありえないことの連続でちょっとおかしかったかもしんない。俺。」


少し、思い出して笑ってしまった。






「…ふふ。」

とみーたんも目を細めて、手を口に当てて笑った。












ん?笑った?






みーたんの不敗神話に傷を付けた男、俺。しかし公式な記録じゃないため、幻の一勝となる。ちくしょう。















「……みーたんの笑った顔俺二回目だけどさ、やっぱり、き、綺麗だし、すっげー、か、かわいいと思うよ…」


恥ずかしいけど思い切ってぶっちゃけてみた。大丈夫だ。今の俺のテンションなら何言われても傷つかない。










「とっても、とっても嬉しいよ、大和くん。」


にこり。と今までで(三回目だけど)一番俺が溶けそうな笑顔をくれた。

み、みーたん。ま、まぶしすぎる。





















ぽつり、ぽつりと話しているうちに結構暗くなった。そろそろ送るよ。と申し出ると、うん。と短い返事が返ってくる。



















とりあえずみーたんの家の前まで送ってあげた。

「…ありがとう大和くん。」


「い、いいってことよん。」

くそ、名前を何回か呼ばれても耐性ができない。



「また、明日。」

とみーたんが家に入って行こうとした、










んー…よし。










「みーたん。」


少し距離があるが呼びかけてみる。




「……?」


クルッ、と振り返り不意に目が合う。













「俺、みーたんの笑顔が大好きだ。」






言ってやったぜ………






「…私は、大和くんが好き。」






ぐはぁぁぁ!!


し、しかし一歩大人の対応で、






「……笑顔だけじゃなくて全部、大好きだよ。美佳。」




「や、やだ。大和くん…もぉ!」


そう言って、みーたんは家に入っていった。










みーたんは普段、冷たい。そしてとっても静かだ。それでも、心の底からあったかかった。


















この日、俺は恥ずかし過ぎて夜もなかなか眠れず、謎の腹痛に襲われた。
















次の日、前日にどんなことがあろろがなかろうが、朝はやってくる。


みーたんもみーたんで結構緊張してたが、特に昨日の事には触れずに昼休みをむかえた。















(あの子の笑顔を〜以下省略)






また始まった…






最悪なことに俺は今みーたんの目の前に座っている。

そう、俺が引っ張り出されて、俺がみーたんを笑わせるはめになった。




「あんなに嫌がってた大和が今みーたんの目の前に!!果たして笑顔は取り戻せるのかぁ!!」


俺を引っ張り出した張本人の小僧が周りを煽っている。後で覚えとけよこの野郎。













「えーと、…じゃあこんな話を…」


「おぉ!?大和はトークでいくみたいだー!!」


ちょっと黙っとけ、がきんちょが。






「…昨日の、帰り道での話だ。」


周囲がうんうんと頷く。

みーたんはじっと俺を見ている。




「…ある、結構、いやかなりかわいい女の子が男三人に詰め寄られていたんだ。」


みんなはそれでそれで!?と聞き入ってくれていた。




「女の子も嫌がってたみたいだった。だから俺は女の子を助けよう。って考えたんだ。」


おぉ〜!男だねぇ〜!とか聞こえる。




「詰め寄ってた一番でかい男に攻撃して、その隙に女の子と逃げるつもりだった。作戦としては、まぁ不意打ちだけど、隙を作るには十分だと思ったんだ。」


ふむふむ。それでそれで!?

なんてのりのいいクラスだ。




「…不意打ちは…成功した。わき腹に思いっきり飛び蹴りいれた。結局気絶はしなかったけど、逃げる時間は十分あった。」


大和かっけぇ!大和くんすごーい!

いやそれほどでも。




「そんで、女の子は守れた。……だけど、大きな代償があったんだ…」












教室がシン…と静まり返った。




























「……足、捻挫してた。」



















「ぷっ、あは、あはははは。」


とみーたんが笑うのを引き金に、


教室が笑いに包まれた。


そして、


「み、みーたんが笑ってる!!?」

とクラスメイトが気づき、どよめきが走った。


140戦139勝1敗


こんどこそ俺は不敗神話を終わらせた。

その日はみんながいい笑顔だった。





















次の日、俺は男子から殺気を浴びる存在となった。



















四日後、みーたんは5連敗を更新する。


俺はそんなみーたんに、連勝記念でその日に






告白した。



















Fin

ノリで書き上げた二作目です。お読みくださった皆様ありがとうございます。前作共々、ご感想をもらえればとっても嬉しいです。それでは、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  初めまして、coachと申します。  テンポの良い作品で、すらすら読むことができました。みーたん、可愛いです。ちょっと残念だったのが、行空けでしょうか。正式な文章作法でない上、読み進めるの…
[一言] 私の作品に目を通していただきありがとうございます☆お気に召したでしょうか?よろしければ評価・感想を是非お聞かせください!今後の作品にも期待しております。
[一言] ブログとして読む分にはおもしろいです。(理由:無駄に行間を取りすぎているため読みにくい。ブログ独特の書き方)原稿用紙の使い方にもっと忠実であるほうが小説らしくなると思います。リズム感があり、…
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