第3色
第3色
ひたひたと舗装された道路を歩く、一人の影。紫の綺麗なドレスが、素足の異様さを際立たせてしまう。外皮だけを見るなら、舞踏会から逃げ出したシンデレラ。王子を待つ灰かぶりの美女だ。
だが、その胎の内は魔女のそれより黒い。身体の中で得体の知れない何かが蠢く。それによって、女の生気は徐々に削がれていく。
穢れていると自覚しているのに、それでも潔白でありたいと願う。それを赦す者も、裁く者も、今の彼女には存在しないのに。残酷な現実に、ありもしない何かを夢想する。そんな己に、どこか酔いしれていた。
耐えかねる吐き気と腹痛に、女は自分の身体を抱きながらくずおれる。
あぁ、怖い。
奥底から、深淵に染められていくのが。分かっていても、それは身を蝕む。抗えない醜欲が、心を充たしていく。大事なものが歪に成っていく。
怖い。怖い。怖い。
――――――怖いのに。
誰か、見知らぬ人が心配そうに声を掛けてきた。明日から仕事であろうに、進んで面倒事を背負い込むなんて、良い人だ。とても歩ける状態ではない女にとって、ありがたい手助けだった。
そう。本当に、有り難い。知らず、女は舌舐めずりをする。
自分の口腔内の湿り気にも、喉の渇きにも、気付いてすらいないまま。