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目が覚めた。
いや、覚めたのだろうか。
ずっと、どこか意識がぼやっとしている。
もう自分が長くない事は分かっている。一年、もって二年もすれば私も妻と同じ所に逝けるだろう。特に悔いもない。十分だ。
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――また、か。
夜になると、誰かが近づき自分の傍で聞こえる音。
誰かがいる。でもよく分からない。いつもその姿は、黒い影でしかもう私の目には映らない。
私の横で何かをぶつぶつと呟くその存在が、一体なんなのか。
そう言えば、気のせいだろうか。
この影が来るようになってから、私の身体は一気に――。