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そんなビアンカの言葉にネロが溜息をついた。


「…あのねビアンカ。

 オズの魔法使いの物語思い出せるかい?」


「えっ?

 ドロシーがオズの国に行って冒険する話でしょ?」


「随分と端折ったね。

 まあ大体そんな感じだけど。

 そのオズの国に行く為には竜巻に巻き込まれなきゃいけないんだよ。」


「…あっそう言えば。」


そう言えばそんな話だった様な気がしなくもない。


ネロはドロシーを竜巻に巻き込まれさせる為にトトを捕獲していたようだ。


「でも物語ならトトは嵐を怖がってベッドの下に隠れたんじゃなかったっけ?

 わざわざ捕まえなくても勝手に逃げたんじゃないの?」


ビアンカがそう問い掛けるとネロは懐から1冊の紙の束を取り出した。


紙の束とは言ったがかなりのボロボロ、千切られ引き裂かれた紙片の残りカスと言うべきかもしれない。


「…なにこれ?」


「今残ってるオズの魔法使いの物語だよ。

 この中にトトがベッドの下に隠れてしまうシーンはないんだ。」


「…なるほど。」


ネロはトトを解放しドロシーに飛び付いたのを見届けるとビアンカに紙片の束を手渡した。


「今からしばらくは竜巻と共に小旅行だからね。

 それでも読んで流れだけでも把握しておくと良いよ。」


ビアンカは受け取った紙片の束をパラパラと捲る。


…バラバラ過ぎてほぼ読解不能だ。


これを元通りにって一体どうすると言うのだ。


ビアンカが恨めしげにネロに視線をやると彼は苦笑しながら紙片を指差した。


「見てご覧。

 物語が紡がれるから。」


促され紙片に視線を戻すと千切れていた筈の紙片が鈍い光と共に現れた。


その紙片に見えない黒いペンが走っているかの様にインクで文字が書かれて行く。


『トトは嵐の音に怯えてドロシーの腕から逃げ出し、ベッドの下へ隠れてしまいました。

ドロシーはトトを捕まえようと探しますが、酷く怯えたエムおばさんは床の落し扉を開けて小さな梯子を使って先に下に降りてしまいます。

ドロシーがやっとトトを捕まえ地下室に降りようと部屋の半ばまで歩いた所、風の呻き声が聞こえ家が酷く揺れた為ドロシーは足場を無くし床に座り込んでしまったのでした。』


新たに現れた文章を読んでいると小屋が大きく揺れた。


地下室に向かっていたドロシーも床にしがみついている。


ビアンカも背中の壁に張り付いた。


まるでコーヒーカップに乗っているかの様にグルグルと家が回転している。


遠心力で吹き飛ばされてしまいそうだ。


必死で壁にしがみつくビアンカを宥めるようにネロがビアンカの手を握り締める。


「…さあ、オズの国へ出発だよ。」

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