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鉄爪で切り裂く度に血飛沫が上がる。


腕の筋肉の限界が近いのだろう。


心臓を抉る度に腕が震えるのが分かった。


時折ガリムの爪が体を掠め着ぐるみと共にその下の柔らかい肉を切り裂いていく。


…この着ぐるみ、使えなくなってしまうじゃない。


この状況に似つかわしくない事を考えながら尚もビアンカは目の前のガリムの喉元に鉄爪を突き刺した。


頸動脈を切り裂かれたガリムの体から赤黒い血が吹き出しビアンカの体を同色に染め上げていく。


あと何体いるのだろう。


あと何体殺せば終わるのだろう。


大量に詰め寄ってくるガリムの軍団を眺め自問自答の様に考えるが答えは出ない。


着ぐるみのお陰で内臓には届かなかったものの切り裂かれた腹部や太ももから血が流れているのが分かる。


けれど自分の後ろには行かせられない。


例え死んでも守り抜かねばならない。


それが自分の役目なのだから。


ジリジリと近寄ってくるガリム達の前に鉄爪を構えて立つビアンカの耳に案山子の緊張感のない声が届いた。


「うひゃーいっぱい来たよー!」


チラリと後ろに視線をやると山の斜面からもガリム達が降りてきているのが見えた。


ビアンカの口から乾いた笑いが零れる。


「…嘘でしょ?」


だが嘘ではない証拠にドロシーが小さく悲鳴を上げトトを抱き締めながら後ずさるのが見えた。


しかし後ずさった先は崖。


逃げ場はない。


「いっぱいだねー!」


案山子ののんびりとした声が響く。


「…そうね。」


この状況で案山子ののんびりとした発言は似つかわしくないかもしれないがビアンカは逆に冷静にさせてくれる気がした。


「…案山子、ネロの言葉覚えてるわよね?」


「ネロー?」


「木こりの事よ。」


「うん、覚えてるよー!

 ドロシーを守れば良いんでしょー?」


「そう、その通りよ。

 …抱き締めていなさい。

 何があっても手を離すんじゃないわよ。」


「うん?

 抱き締めてたら良いのー?」


そう言って案山子はドロシーを抱きしめる。


ビアンカは四方八方から攻めてくるガリムに視線を戻した。


もう時間がない。


「そうよ。

 絶対に何があっても離さないで。

 …もし離したりしたらあんたの藁全部引き摺り出して燃やしてやるんだから。」


「それは怖いねー。

 うん、僕絶対離さないよー!」


ビアンカはジリジリと後退しドロシーを抱き締めている案山子に近付いた。


そして案山子の襟首を掴む。


ドロシーは何かに気が付いたのか目を見開いた。


「待って!

 駄目だよライオンさん!!!」


「…大丈夫よ。

 絶対後で追い付くから。」


そう言って微笑むとビアンカは崖下の河を目掛けて案山子諸共ドロシーを放り投げる。


「やだよ!!

 ライオンさん!!!

 いやああああああ!!!!」


ドロシーの悲鳴が山に谺響する。


ビアンカは小さな水音を聞くと口角を上げた。


背中にガシャリと金属が当たる。


ネロの笑い混じりの声が聞こえた。


「…また2人ぼっちだねビアンカ。」


「…あなたも降りていいわよ?

 被害は少ない方が良いと思うのよね。」


じょーだんとネロが笑った。


「言ったでしょ?

 ずっと一緒にいたって。

 …天国でも地獄まででも一緒に行こうよ。」


「…そこまで一緒だと最早重たいわよ?」


「いいんだよ。

 守るべき主人公のお守りを他人に委ねて、共に死ねる位には君が大事だからね。」


「よく分からない関係なのに?」


それでもだよ、とネロは呟き長戦斧を奮った。


ビアンカも体を翻し鉄爪でガリムを切り裂いたのだった。


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