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七の巻き

「今の……何なん?」

 全身が総毛立ち、小さく全身が震える。

「えらい怖かったわ……」

「今のが酒呑童子なのか?」

「どうかな、酒呑童子が美形って伝承は特に無いし、着物も着崩してたけど男の着物じゃなかった気がする」

「であれば、あれは茨木童子と言う事に成るな。確か、女の姿で自身の腕を取り戻しに来た逸話が有った筈だ」

 厦海さんの言葉で全員が、アノ鬼が“茨木童子”だと納得した。

 大江のお山の鬼の総領。

 酒呑童子が有名では有るが、この地に根差した伝承の根っこは茨木童子だ。

「速さはとびっきり、力も大型を同じ程度にはある筈だ。気を引き締めて、油断無くいこう。最も危険な鬼だ」

 今まで飄々と、危機感や緊張感を見せなかった祟目さんの目が、笑っていなかった。

 巨大幽体の時もまだ余裕が有った気がする。

 それだけ変遷(へんせん)を重ねた迷宮は脅威度が増しているのだと改めて認識する。

「少し休憩して、それからやね」

 祟目さんの醸し出す危機感にあたし達が悪い意味で飲まれそうだ、そう感じた所で混ぜっ返す事にした。

 全力を出す為にも、脚が萎縮したままでは戦えないから。


 それぞれが思い思いに地面に腰掛けて呼吸と、気持ちを落ち着かせに掛かる。

 兜を脱いで大きく溜息を吐いた。

 祟目さんが荷物から取り出した所謂“棒飯”と言われる携行食を湯煎で温めて全員に配る。

「あかん、緊張してる」

 配られる際に声に気が付くのに間が有ったらしく、緊張しているのだと自覚した。

 濃い味のはずなのに、味があまりよく分からない。

「初めての鬼のボスやもん。仕方があらへんよ」

 混ぜっ返す言葉を繰り返すけれど、脳裏に刻まれた鬼の様相が抜けてくれないでいる。

 何がそんなに怖いのかを考えるけれど答えが出ない。

「しっかし、鬼のくせに小首を傾げたり、美形で着物を着崩してるやら、人間臭いのがなぁ……」

 繚華ちゃんの言葉にハッと成った。

 そうか、あたしが怖いと感じているのは“茨木童子が人間臭くて、でも倒すべきモンスターでボスだと言うギャップ”なんだと気が付いた。

 後は、怖い位に整った顔立ちがモンスターのボスだと言う認識と乖離(かいり)し過ぎているのも有る気がする。

「綺麗な女の子ボスって、狡ない?」

 この胸に溜まった泥の様な抵抗感に思わず弱音が漏れる。

「綺麗な女の子以前にモンスターだからね、気にしたら負けだと思うよ?」

 ほぼノータイムで切り返される。

 全くもってその通りなのだけれど、なんでこの人はこんなに割り切りが早いのだろうか?

「なあ、奉。作戦は?」

 空気を換えるつもりか羽生さんが祟目さんに声を掛けた。

「取り敢えず、武器は持っていない様だし、二人には薙刀で牽制してもらうのは予定通り。僕と羽生は鬼の攻撃を体当たりで潰して崩す。厦海さんがそこで削るって展開が無難だとは思う」

 そう言いながら肩を動かしてショルダーチャージをアピールする。

「二人接近戦に成ったら牽制なんて出来ひんよ?」

 祟目さんのプランに無理がある事を指摘すると天井をあおいで考え込んでしまった。


 目を閉じてボスの動きを想像してみる。

 今までの鬼の動きとドローンを叩き落とした時の高速移動を頭の中で混ぜる。

「あかん、牽制するんも難しそうや……」

「そうだね、牽制するよりも如何に足を削るか、を考えた方が良さそうだね」

「それやったら、あたしと繚華ちゃんが左右に陣取って足を削って動きを鈍らせる事に専念、祟目さん達で支えて貰う感じ?」

 両手を動かして左右から挟む仕草をすると全員が頷いた。

「ああ、でも厦海さんは防御力の問題が有るから、真ん前は無しだな」

「そうだね。僕と羽生が釣瓶つるべの動きで交互に切り込んで意識を釘付けにする。厦海さんは後ろから斬り付けて集中力を分散させる。二人はアキレス腱を狙い続ける。が基本戦術に成るかな?」

「せやね、削って動きが鈍ればそないに怖い事も無い筈やし」

「ただ、相当にしぶといから持久戦は覚悟しよう」

「動きが鈍るまでは俺と奉は全開で攻め立てる感じか、疲れそうだな」

 真面目に念押しをする祟目さんと冗談めかして肩を落とす羽生さん。

「鈍ってきたら一息付けるし、ぼやかへんの」

「はいはい」

 不真面目な返事の仕方をする羽生さんだが、気負い過ぎない様に雰囲気をコントロールする意図が見え見えだ。

 その気遣いに乗っかって力を抜く事にする。

 若干一名、ジワジワと集中を高めている人が居るが、これはもう放って置くしかない。

 むしろその緊張感に引っ張られない様にしないといけない。


 食事を終えて三十分程を置いてあたし達は立ち上がり用意を始める。

 繚華ちゃんと互いの防具の具合を確かめる。

 愛用の大鎧がズレていないかを確認して気になる所は付け直す。

 軽くストレッチをして違和感が無いかも調べて頷き合う。

「あたし等はええよ」

 振り返ると三人も腕を回したり靴の感触を確かめたりと余念が無い。

 なんと言うのか、いい加減慣れてきていると思う。

 適度な緊張感と、気負い過ぎない余裕。

 食事等の準備も、全員が全力を出せる土台、環境が整っている。

 これなら行ける、あたし達なら行ける、毎回そう思わせられてしまう。

 準備を終えたあたし達は最深部の大部屋へと向かった。

 シャンシャンと鈴の音が耳に心地良く、そして戦闘の幕開けが近い事を知らせる。

 鬼退治、それも茨木童子の。

 少しだけワクワクしているのは、きっとこのメンバーの空気に毒され、流されてるから。

 微かに口角が上がっている自分を意識しながら思った。

 大部屋の入り口で立ち止まり深呼吸をする。

 一切の音が止んだ所で、あたし達は大部屋に飛び込んだ。

 ここで初めて、躍りかかった鬼を至近距離で目視した。

 百六十㎝程、女性としては背が高めだろうか?

 女優さんでもここまでの美人は見た事が無い、そんな美しさだった。

 腰に届く程の黒く艶やかな髪。

 象牙質で先端の鈍い二本の角。

 朱に染まる、二㎝程の鋭い爪。

 そんな美しい鬼、茨木童子は緋色の着物のえりくつろげて滑らかな肌を覗かせている。


 前の二人が怖い位整った、妖艶な鬼に向かって走り込む。あたしと繚華ちゃんが左右に陣取れる様に正面から足止めに掛かった。祟目さんが鈴の音と共に水晶刀・太刀を横薙ぎに振り抜いた。空気を斬る音と共に着物が裂け、肌に線が走る。祟目さんが飛び退くと羽生さんが切り込むと鬼の動きに齟齬が生まれる。右側に陣取ったあたしは祟目さんが退いたタイミングで水晶刀・薙刀でアキレス腱目掛けて一閃する。


 固い。

 僅かに肌を斬っただけで刀身が入って行かない。

 これは何度も何度も切り付けてようやく事を成せる、そう腹を括って周囲とタイミングを合わせて斬り付ける。

 祟目さんや羽生さんの斬撃もそこまで深く入っていない様な気がする。

 正面の二人の攻撃を潰す様に茨木童子が前に一歩踏み出すと背後から厦海さんが三鈷剣で背中を斬り付ける。

 振り返ろうとすると羽生さんが斬り付け、続いて祟目さんが斬り込む。

 クスッ。

 刃が走る度に小さな音が耳に飛び込んで来る。

 アキレス腱を斬り付けながら視野を広く見ていると、茨木童子が笑っていた。

 傷が増える度にクスクスと笑っているらしい。

 まるでくすぐったそうに、ダメージにすら成っていないと言う様に。


「手強いって言うんか、物凄く固いなぁ!」

「ダメージが出てるんか、分からへんね!」

 思わずぼやくと鬼を挟んで繚華ちゃんが応じた。

 それでも羽生さんと祟目さんの刃は通って入るらしく、多少のダメージは出ているとは思う。

 痛みで動きが鈍る人間とは違い、刃を恐れていない風の鬼に舌を巻く。

 何度も何度も、繰り返し繰り返し、あたし達は斬り付け続けた。

 同じ場所を斬り続けた事で漸く刃が入る様に成るが、それでも腱を切断するには至っていない。

 ただ、茨城童子の様子が少しづつ変わっては来ていた。

 くすぐったそうに笑っていたのが、吐息交じりに成ってきた。

 ボロボロになった着物とその漏れ出る色気を感じさせる吐息が場違い過ぎて反応に困る。

 困ると言うか、変な気分になる。

 艶やかな柄の着物から覗く胸元がなだらかに落ちていて、一つ気が付いた事がある。

「みんな! この鬼、男や!」

 そう。美形で、女着物を着崩して、斬られる度に婀娜あだっぽい吐息を漏らすこの鬼は男と言うか雄だった。

 小さく羽生さんが呻く声が聞こえる。

 うん、そのリアクションは正しいと思う。

 命懸けの戦闘の最中、正視するのも躊躇われる色香を放つ鬼が雄だったのだから当然だ。

 今更だけど、口走った事を後悔している。

 全員から戸惑いの気配を感じた。

 一人を除いて。

 祟目さんだけが意に介さずと全身で宣言する様に果敢に攻め立てている。


 戦闘を開始してから何分が経過しただろう?

 攻撃の手を緩める事無く攻め続けているが、未だに脚を削れていない。

 動きが鈍る兆候を見せない茨木童子。

 本当にどうした物だろうか?

 目に映るのは暗視装置越しの映像だから、傷口と流れる血がイマイチ良く分からない。

 皮膚はずたずたには成っているのに、未だに腱が断てない。

 しぶといと言うよりも、存在が強靭なのだろう。

 それでもあたし達は集中力を切らす事無く、攻撃を続けた。

 そしてようやく、刃が食い込んだと感じた所でブチンッと音を立て左のアキレス腱が切れた。

 茨木童子は踏鞴たたらを踏む様につんのめる。

 踏ん張りが利かない左足に苛立ったのか、茨木童子の標的があたしに切り替わった。

 咄嗟に後ろに飛び退くが、間に合わず、いや右脚を蹴るだけで物凄い勢いで間合いを詰められる。

 誰かの慌てた声が聞こえた気がする。

 その声と同時に茨木童子の鋭い爪が振るわれた。

 咄嗟に薙刀の柄で掌を受け止めたけど、勢いに負けて更に後方に弾かれた。

 他人と衝突した時の比じゃない力を感じ、地面を二転三転と転がされた。

 フフッ。


 笑い声?

 誰の?

 ぼんやりとした頭で顔を上げると美人が歩み寄って来ている。

「えっと……? っ!」

 今が戦闘中だと言う事、近付いてきている美人が鬼で有る事を思い出して呼吸が止まる。

 全身が痛くて体が起こせない。

 焦りで余計に手足がもつれる。

 バタバタと手足を動かして立ち上がろうとするけど、思う様にいかない。

 衝撃で頭がパニックに成って、どう動かせば立ち上がれるかが分からない。

 そして、片足で跳ねる様に美鬼びきが迫ってくる。

 迫ってくる気配に絶望感が溢れてくる。

「シッ!」

 美鬼の背後から厦海さんが躍りかかったのが見えた。

 あたし達の持つ武器の中で最も重量のある三鈷剣が茨城童子の左肩に叩き付けられる。

 少しだけ肌に食い込み、少しだけ肉を斬る。

 骨には至っていないのが見て取れる。

 茨木童子は意にかいす事も無く、その歩みは止まらない。

 胸の内に溢れる絶望感に、あたしはあたしの死を意識した。

「あっ……」

 絶望感と同時に、胸に小さく芽生える悔しさ。

 奥歯を噛み、美鬼を見つめる。

 眼前に黒い鎧が立ち塞がった。

 祟目さんが水晶刀・太刀を振るい茨木童子に斬り掛かる。

「赫里ちゃん! 大丈夫? 立って!」

 繚華ちゃんが駆け寄って来てあたしの腕を取った。

 ガクガクと足が震え、引き摺られる様にしてあたし等はその場から退いた。

 痛みを思い出したかの様に全身に鈍痛が走る。

いつっ……」

 肩も肘も膝も痛い。

 洞窟の硬い地面に叩き付けられて転がされたのだから当然だろうと思う。

「大丈夫? 骨折れとるんと違う?」

「分からへん、あちこち痛い……」

「良い? いざと成ったら直ぐに逃げられる様に、入り口側に居るんよ?」

 そう言って繚華ちゃんは戦線に戻っていった。

 その間も祟目さんが、羽生さんが、厦海さんが茨木童子と戦闘を続けていた。


 アマチュアボクシング経験者の厦海さんは素早い出入りで三鈷剣を振り続け、斬っては離れてを繰り返す羽生さん、斬る為に完全に足を止めている祟目さん。

 徐々に肌が切れ、血を滲ませる茨木童子。

 斬り付けられる度に甘い吐息を漏らしているのが異常だった。

 片足が不自由になった事で形勢はこちらに傾いてはいるものの、そこまで決定的な状況ではないのが見て取れる。

「タフやし、皮膚が堅過ぎやって……」

 そこに繚華ちゃんも加わってより激しく攻め立てる。

 ここまで来ても茨木童子の勢いは衰えてない。

 あたしは体を動かして、骨折や重大な怪我をしていないかを確かめる。

 幸い、相当痛いけど打撲で済んでいるらしい。

 四人の連携が取れ始めたのを確認して、どこかが崩れたら即座にフォローに入れる様に身構える。

 その瞬間は直ぐに訪れた。

 茨木童子が繚華ちゃんの水晶刀・薙刀の刃を掴んで振り回して繚華ちゃんが跳ね飛ばされた。

 繚華ちゃんの手から離れた薙刀を放り投げて、茨木童子は繚華ちゃんに歩み寄ろうとする。

 倒れ伏した繚華ちゃんを踏み付けようとすそを割って太腿を上げた。

「繚華ちゃん!」

 思わず叫んであたしは踏み出した。

 あたしと茨木童子とは少し距離が有る。

 間に合わない!

「みんな退いて!」

 皆の反応を確認する間も惜しんで、あたしは全力で薙刀を投擲した。

 高校時代に一度だけやった槍投げのフォームで。

 投擲するには近過ぎる距離。

 刺され、貫けと念じて投じ、あたしはそのまま地面に転ぶ。

 慌てて顔を上げるとあたしの投じた薙刀は茨木童子の胸元に真っ直ぐ立っている。

 やったか? と思うと茨木童子は投じられた薙刀の刃を右手で握り込む形で受け止めていた。

 全力で放った投擲が全く通用しなかった事に愕然となる。

「そんな……」

 そう呟いた瞬間に、茨木童子の手が下がった。

 横合いから祟目さんが刀身を握り込んでいるその手首を斬り付けていた。

 腕の高さは動く事無く、手だけが零れる様に落ちた。

 茨木童子は手首から先が無くなった自分の腕を、小首をかしげて眺めている。

 そして、いままでは微かに笑っていたと思う顔が、まるで華が咲いた様に綻んだ。

つな……綱……綱!」

 まるで愛しい恋人との再会に感情が爆発した乙女の様だ。

 蕩け切った声色を漏らしながら祟目さんに襲い掛かる。

 片足で跳ねながら間合いを詰め、表情とは裏腹に鋭く爪を振り回す。

 呻き声を漏らしながら必死に爪を捌きながら太刀が振るわれる。

 得物が手元に無い為に、ただ傍観者に成ってしまっていた。

 属性てんこ盛りのボスに戸惑っていたけれど、これは極め付けだ。

 鬼、美形、男の娘、傷で喘ぐ、そしてここに来て渡辺綱わたなべのつなの名を蕩け切った声で囁きながら祟目さんに襲い掛かっている。

 ちょっと、眩暈がしてきた。

 毒気が抜かれたと言うのか、毒気に当てられたと言うのかは分からないけど。


 爪の鋭さと相反して甘く囁く声。

 あれが茨木童子の本気の攻撃なのだろう。

 羽生さんも厦海さんも手が出せないでいる。

 その位激しい猛攻なのは事実だ。

 声の温度差があり過ぎて不気味なのだけれど。

「くっ!」

 祟目さんが短く呻くと脚を縺れさせて背中から転んだ。

 その勢いのまま茨木童子は祟目さんに圧し掛かる。

 絶体絶命な状況に思わず息を飲む。

 あたしは急いで薙刀を回収に向かった。

「綱……綱……」

 妖艶に笑う美鬼に押え付けられる祟目さん。

「んぐっ……、黙れ……、誰が渡辺綱か……」

 組み伏せられてしまうと刀身の長い太刀では抗う事も出来ない。

 華の様な笑顔で茨木童子は爪を振り下ろす。

 祟目さんは左腕を掲げてそれを防ぐ。

 強い呻き声にその腕をよく見ると爪が籠手を貫いている。

「綱……、やっと逢えた……綱……」

 そう囁くと手首の無い右腕で祟目さんの面頬を愛おしそうに撫でる。

「人違いだっ!」

 祟目さんがそう叫ぶと右腕が腰に走り、脇差が茨木童子の胸元に埋まった。

「綱……、やっと逢えた……綱……」

 動きを止めた茨木童子の首筋にあたしは薙刀の刃を走らせて、そしてねた。

 血を盛大に噴いて、そして茨木童子の体は力無く祟目さんの上に重なる。


 なんだろう。

 危険だったし、絶体絶命だったのに、微妙な空気の中で茨木童子討伐は終わった。

 それは同時に京都迷宮の鎮静化に成功した、と言う事だ。

 漸く。

 漸くあたし達は一つ目の迷宮を降したんだ。

 そう思うと疲れがドッと押し寄せてくる。

「繚華ちゃん、大丈夫?」

「うん、大丈夫やけど……、祟目さんの方が心配なんやけど……」

 繚華ちゃんの言葉で大ピンチだった祟目さんにあたし達は駆け寄った。

 あたしは地面に叩き付けられて全身打撲。

 繚華ちゃんも同じ様な感じ。

 祟目さんは防具を貫通して爪で左腕を抉られているし、食い殺されかけていた。

 絶体絶命だったのは間違いが無い。

 茨木童子を倒してしまった今となっては、コメントが浮かばない混沌とした状況だったと思う。

「ようやっと一つ目……」

 そう呟くと全員が盛大に溜息を漏らした。

 後六ケ所の迷宮を鎮静化させなければならない。

 あたし達の苦難は続くのだと、今から気が重い。

 それでも、地元の危機を未然に防げた事を喜ぶ気持ちは確かだった。

「終わったわ……」

 そう呟いて、京都迷宮は幕を閉じた。

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