美しく咲いていてほしいから
花はいずれ枯れる。誰でも知っている常識だ。花は美しく咲き、そして枯れる。それは人と同じ。人も美しく咲き、何かをきっかけに枯れる。きっかけは色々。仕事、友人関係、いじめなど。人も花も時期は違えどやっていることは同じである。
そして僕の目の前で花が枯れそうだ。
僕の幼馴染、美月鏡花はいじめられている。原因は鏡花への嫉妬。鏡花はクラスの男子からとても人気だった。綺麗で、博識で、そして優しいからだ。だからクラスの女子は彼女に嫉妬し、いじめていた。
意味が分からない。彼女は何もしていない。なのに彼女を勝手に敵視し、いじめている。理不尽にも程がある。彼女を助けたい、と思っている。
でも、僕は助けに行けなかった。理由は怖かったからだ。助けに行けば、今度は僕がいじめられると思ったからだ。
僕はただ心の中でごめんなさい、ごめんなさい、ということしかできなかった。
いじめが始まり、1ヶ月が過ぎた。
鏡花は何も喋らなくなった。目に光がなく、ずっとボーッとしている。彼女がどんな目にあっているか分からない。でも彼女は限界だ、と見ていて思った。
帰り道、鏡花を見た。いじめられていた。
暴言を吐かれ、暴力を振るわれ、鏡花は傷つく。
あぁ、枯れてしまう・・・・・目の前の花が枯れてしまう・・・・・。
助けたい。でも、いじめられたくないという気持ちがその思いを妨げる。
無力な僕は、このまま見て見ぬふりをして帰ろうとした。
しかし、
「・・・・・もう、やめて・・・・・助けて・・・・・」
鏡花の声がした。でも僕が知っている鏡花の声じゃなかった。弱々しく、今にも消えてしまいそうな声。鏡花のあんな声を初めて聞いた。
・・・・・僕は馬鹿だ。
僕は鏡花の所へ走って向かう。
目の前で花が枯れそうなのに、自分に被害が出るからと見捨てるなんて・・・・・。
自分のことなんてどうでもいいじゃないか。自分がどんな目にあったとしても、別にいいじゃないか。花が、鏡花が枯れることなく、美しく咲いてくれるのなら。
僕はいじめているヤツらの前に立つ。
ずっと助けに行けなくてごめんなさい。たとえ自分が犠牲になったとしても、君を守るから。だから・・・・・美しく咲いていてくれ。