第一世界〜焔〜
双剣を持って走り出す。
瞬間、双剣が光を放ち…溶け消えた。
「……えっ!?リア!?」
「その武器はね、持ち主の最も扱い易い形に変化するの。奏にあった形に、その剣は変化するわ」
その言葉のとおり、双剣だったものは両腕にまとわりついた。左腕は黒い鎧が包む。右腕は白い焔が包む。
黒い鎧からは青い雷が漏れている。
動作に違和感は感じられない。
渚が腕を振るう。
それを左腕で受け止める。
スパークと共に腕を受け止めた後、右腕を渚の胸元に叩き込む。
腕に纏う白い焔が広がる。
渚を包み込んだ焔はその体を焼いてゆく。
「あぁああぁぁああああっ!!!!!」
渚が苦しんでいる。
思わずその体を抱きしめた。
もう原型を留めない化け物に変貌してしまったが、間違いなく渚だ。
「渚、これで……終わりだ」
「……うん、ありがとう…渚。ずっとね、ずーーっと、大好きだったよ」
「そんな事言うのは、ずるいよ」
「ん、だから…私の事は忘れて?忘れて新しい道を歩んでください!あなたの事が大好きな幼なじみより!じゃあね、奏」
渚の声が聞こえた。抱いていたのは化け物ではなく、渚で……渚の体は淡い光と共に、白焔に包まれて消えた。最後に見えた渚の顔は、笑っていた。
「…渚、」
「奏……今は口を挟む時じゃないって分かってるけど、言わなきゃいけないから言うね。私と一緒に、来てくれない?もうすぐこの世界の修正力がこの世界を閉じてしまう。そうなれば、次の世界に向かう事は出来なくなる」
リアが気遣うような優しい口調で言ってくる。
リアは、この世界からいなくなるようだ。正直、この世界を好きだと思った事は何回もあるけど、ずっといたいか?と言われたら首を横に振るだろう。今なら、なおさら。
「……リア、一緒にいけば…こんな思いをする人を減らせる?」
「そうね……減らせるわ」
なら、この世界とはお別れをしよう。
渚、俺は…言われた通りにこの力を使うよ。
誰かを護るために、この力を使う。
「うん、行くよ。リアと一緒に」
リアの笑顔を初めて見た。
とても美しく、月のような瞳は真っ直ぐで。
ひたすらに何かを護ろうとする強い意志が感じられた。