第一世界〜光〜
渚の体の内に感じる何かの存在。
それはどんどん大きくなり、渚とゆう存在そのものを侵食しているような気がする。
「渚、大丈夫か?しっかりしろっ!」
「…ん、だい、じょーぶ……だよ。って、言いたいけど、…もう、無理……かなぁ……」
渚が泣いている。
俺も、涙が止まらない。
リアはローブ男がいた場所を睨んでいる。
「奏、最後に……もう一回言うね……私を、殺して」
「……ぁ…な、渚?渚っ!!!!」
渚は目を瞑った。
そして、渚の体からとてつもない衝撃波が発生する。
パアッッッン!!!
「くっ!」
吹き飛ばされ、リアの横に立つ。
「奏、もう限界よ。渚も、この世界も…辛いでしょうけど、彼女を殺さないと…世界が消える」
地響きがする、風も強くなってきた。
「アハハハハハッ!!!!」
甲高い声の笑い声が響き渡る。
渚の瞳は既に光を映していない。
焦点は合わず、虚空を見つめている。
なのに、ニンマリと微笑み笑っている。
全身を弾丸に撃たれたのに、体が人形のように起き上がる。
「……特異型・寄生マリオネットね」
「寄生マリオネット?」
「長い時間をかけて、この世界の人間を特異型に変えるの。あれは心とリンクしていて、もう渚の意思は残っていない。特異点が増えすぎると、抱えた歪みが大きくなり、弾ける。そうなった世界は……」
「消える、と」
リアは頷いた。
だから、目の前の敵を殺せと。
あれは渚の皮を被った化物だ。そう簡単に割り切れたらどれだけ楽だろう。
渚を、殺したら…俺は一生その事に囚われるだろう。
でも、これ以上……渚を苦しめたくない。
「リア、時間は稼ぐ。今じゃなければ、勝てるんだろ?それはつまり、ここじゃない場所に勝てる何かがある…違う?」
「合ってる、十五分……稼いで」
リアはそう言って館へ全力で走り出した。
「渚、行くぞ」
渚はこちらを向き、ただ笑っている。
拳を振り抜く。
ガァァアアァアアンッ!!!!
手応えはある。
でも、死んではいない。
「……っ!」
涙を堪えた。
渚は腕をクロスして防御姿勢を取っている。
腕の肉は吹き飛び、骨だけ……なはずだった。
そこには、形容しようのない化物の肉があった。
黒く蠢き、太い血管が絶えず脈打ち、強い鼓動を知らせる。
肉そのものが骨格を侵食し、渚の体は既に渚とゆう原型を留めてはいなかった。
そこにあるのは、化け物。
溢れる涙を拭い、決意を固める。
後十三分、耐えるぞ。
化け物が攻撃を開始した。
振られる腕は理不尽なまでに速く、重い。
「アハハハハハ!!!」
何とか回避に成功して、振り向くと……腕が当たった部分の壁が木っ端微塵になっている。
「…………リア、急げ」
五重の強化を施してもなお、渚の、速度には及ばない。早く、リア……早く!
「はぁ、はぁっ!あぁもうっ!何だって言うのよ」
悪態をつきながら走るのはリア。
これでも身体に二重の強化をかけて全力で走っている。一般人が見れば、そこらの車ほどの速度だ。
遥か後方で繰り広げられてる攻防はリアの目には視認すら難しい速度になっていた。
「って、見てる場合かっ!もっと速度を!!三重行けるはずーーっ!!」
全力疾走しながら身体強化をもう一度重ねがけしようとする。
独学の奏に出来ているのだ、私に出来ないはずが……ないっ!!
「……っ!?出来た!!」
更に速度を上げて突っ走るリア。
金髪ツインテールは地面とほぼ水平になびく。
ほとんど飛んでいるような速度なのに、これよりももっと速い攻防をしているのだと考えると、少しゾッとする。
無事に館に着き、双剣を取り出す。
「よし、待っててね……奏」
くそっ……。
五重の強化を以てしても、届かない。
防ぐことすらままならない圧倒的な力。
「アハハハハハッ!!!!」
……渚、泣いてる?
渚の心は既に消え去ったとリアは言っていたが、もしかしたらまだ……。
「かぁなぁでぇーーっ!!」
双剣が目の前に飛来し、突き立つ。
「それが、あんたに反応した剣よ……はぁはぁ」
白と黒の単純で簡素な造りの双剣。
白い方の刀身には紅い筋が走り、黒い方は青い筋が走っている。
惹かれた。それに、これがあれば渚の事を殺すことが出来る。
迷い無く剣を抜き、飛び出す