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露子と新太郎  作者: 風速健二
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第7話

 二人の絆が深まったのは良いが、困ったことが持ち上がった。飯島の家では露ちゃんを、萩原の家では新太郎を逢わせないように、その行動にチェックを入れ始めたのだ。

 特に酷いのが言わずもがな飯島の家で、露ちゃんの時間割を調べて、帰宅時間が遅くなると、いやらしく追求するのだ。それは本当に執拗だったと露ちゃんが言っていた。

 萩原の家でも毎日のように

「飯島の娘さんはとても綺麗でいい娘らしいが、なんせこちらは加害者の一族だ。本来逢ってはならない間柄だ。交際は自重するように」

 と言われていたらしい。大学で新太郎と会うと

「山本、参ってしまったよ。毎日毎日ああも言われたら、逆に何としてでも露ちゃんと一緒になると決意してしまうよ」

 かなり弱気になっている

「でも電話は毎日出来るのでしょう?」

「ああ、それはね……それまで出来なくなったら俺死んじゃうよ」

 冗談とは言い切れないことを言って新太郎は去って行った。

 新太郎の後ろ姿を見送りながら、わたしは何か良い案がないか考えていた。窓の外はもう新緑が鮮やかになっている季節だった。二人が出会ったのが四月だから、既に今月で三月近くになると思った。

 ふと、窓に写ってる自分の姿を見ていて、わたしは、ある考えが閃いた。成功するかは判らないがやって見る価値はあると思った。

 その晩早速露ちゃんに連絡をする。

「もし、もし、露ちゃん?」

「ああ、麗子さん。こうやって電話でお話するのもお久ぶりです。お元気でしたか?」

「うん、元気よ。露ちゃんは新太郎と逢えないので、辛いでしょう?」

 わたしが、水を向けると露ちゃんは新太郎への恋心を切々と話し始めた。

「電話でお話が出来るので、まだ良いと自分に言い聞かせているのですが、どうしても新太郎さんにお逢いしたくてたまりません。新太郎さんのことを想うと切なさで胸が張り裂けそうです」

 露ちゃんは切々とこんな風にわたしに訴えてた。そこでわたしは、あることを露ちゃんに提案した。

「ねえ露ちゃん、新太郎に逢えるなら少し冒険になるけどいい考えがあるのだけどな」

 わたしの提案に露ちゃんは乗って来た

「どんなことですか? 新太郎さんと逢えるなら、少し危ないことでもやります!」

 どうやら、逢えないことで露ちゃんの気持ちに火が点いてしまったみたいだ。

「ねえ、じゃあ二人で同じ髪型にしない? どう」

 そのわたしの言葉で露ちゃんはわたしが何を考えているのか理解したみたいだ。

「まさか……でも大胆ですねえ。麗子さんにそんなことまでさせてしまっては、申し訳ありません」

「露ちゃん、いいのよ。このまま、あなた方が逢えない関係になったら、わたしの方こそ寝覚めが悪いわ」

 こうして、わたしが考えた作戦は露ちゃんの知るところとなった。その作戦とは、露ちゃんとわたしが入れ替わるというものだった。

 今日、大学で窓に映った自分の姿を見て、同じ髪型にすれば似ていなくもないと思ったのだ。元々従姉妹だから似ていたことは事実だ。新太郎が最初にわたしと露ちゃんを見た時に姉妹と思ったほどだった。

 勿論、堂々と昼間から入れ替わってはいくらなんでもバレてしまう。成功するなら夜だと思った。露ちゃんと同じ髪型にして、同じ服を着て、同じような仕草をする。それならば短時間なら入れ替わっても判らないのではないかと考えたのだった。

 これを新太郎に伝えると、最初は全く取り合わなかったが、わたしと露ちゃんが真剣に考えていると判ると協力することになった。


 まずは「聖華」の制服を入手することから始めた。制服を着ていれば人間って案外間違え易くなるのだという。

 次に、普段露ちゃんが着ている服と同じものを入手することだが、これは入れ替わる時に同じ服なら問題ないので一着でも構わない。

 それから、化粧品だが基本的に露ちゃんは化粧しないので、肌に塗る乳液類を同じものにする。これはわたしが以前薦めたものを今でも使っていたので、問題なかった。そして、シャンプーや石鹸なども同じにした。これは、匂いが違って来る場合があると困るからだ。

 そして、露ちゃんの喋る癖や仕草を真似をすること。これが結構大事だ。基本的にわたしは歓迎されないとは言え、飯島家には入れるので、少しずつ露ちゃんの部屋に運び込んだ。そして向い合って仕草の練習をする。

 そんなことを何回もやってると、自分が飯島露子であるような錯覚を覚えることがあり、我ながら変な気分だった。

「麗子さん。こうして同じ格好をしていると本当の姉妹。まるで双子の様な感じだと思います。わたしは一人っ子でしたが、前から麗子さんが本当の姉妹だったらどんなに良いだろうかと思っていたので、とても嬉しいです」

 わたしもここまで似て来るとは思ってもいなかった。まるで鏡を見るようだと思う。

「でも、仕草がまだまだね。わたしの方が男っぽい部分があるからどうしても雑になってしまうわ。それに歳も二歳上だし……」

 この時、僅か二歳とは言え、露ちゃんが羨ましかった。

 

 わたし達が練習をしてる間、新太郎は「聖華」の制服を探して貰っていた。そうしたら、ネットのオークションで出されていたという。

 サイズの心配があったが、そんなに違いがなければリフォームすれば良いと思った。幸いいこれに関してはそのままで良かった。

「でも校章とクラス章が必要ね」

 わたしがそういうと露ちゃんが

「それは、わたしが学校で買って来ます。同じのが幾らでも買えますから」

 そうして、制服の問題も解決した。ただ困ったというか笑ってしまったのは、新太郎の家でオークションで落とした「聖華」の制服をサイズを調べる為にわたしが着したら、それを見た新太郎が一瞬だがわたしを露ちゃんと勘違いしたことだ。

「ちょっと、わたしよ。露ちゃんじゃないのよ」

 わたしに触れようとした新太郎は、ハッとなり

「ああ、悪い、あんまり雰囲気といい似ていたから、つい……」

「なんだ、やはり恋しくて堪らないのね。だからこんな作戦考えたのだけれどもね」

 最後はしんみりとしてしまった。案としては面白いがそれを実行するのは大変だということだと思った。

 シャンプーも石鹸も同じのを使うようにする。そうすると、新太郎は露ちゃんの香りだと言って嬉しそうな顔をするのだ。少し可愛そうになる。そんな時は練習代わりにわたしが露ちゃんの真似をするのだ。

「新太郎さん。もう少しでお逢いできます」

 そんな真似事をしてみせた時の新太郎の顔は見ものだった。さすがに、やり過ぎだったと反省をした。

 そんなことを繰り返して、わたしが露ちゃんに成り代わる作戦は着々と進行して行った。そして、とうとう、最初に実行する日がやって来た。

 その日は飯島家は美香しかおらず。景子も平吾も泊まりがけで出かけているから好都合だった。美香一人ぐらいなら簡単に騙せると思ったのだ。

 幸い、露ちゃんの部屋は一階にあり、その日は窓から潜り込み露ちゃんも窓から出て行く計画だった。

 いよいよと思うと体に緊張が走った。


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