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【詩集】Shangri-La

カレーライス

作者: 野鶴善明

 

 もうだめだわって君は

 ことりと包丁を置いた

 そんなにのぞきこんで

 切ったらだめだよ

 たまねぎが眼に染みるのは当り前さ

 君は涙をぬぐう

 

 ほら貸してごらん

 こうやって胸をそらせて

 玉ねぎの汁がなるべく

 飛んでこないようにするんだよ

 そうぐっと胸をそらせて

 僕のメガネをかけてあげる


 じゃがいもは

 小さめのほうがいいかな

 僕は大きいのが好きだけど

 女の子は食べやすいほうがいいから

 親指くらいの大きさに切っておこう

 君の口に合うように


  カレーライスの匂いは

  倖せの香り

  素敵な君と出逢って僕は

  生きることを選んだ



 初めてデートした時のことを

 君は覚えてるかな

 二人で登ったテレビ塔

 租界時代の瀟洒な洋館に

 大阪行きのフェリーが見えた

 春霞立つ黄埔江のほとり


 君の笑顔があんまりかわいいから

 僕はなんとなく

 そんな気がしてたんだ

 僕たちはいっしょに

 暮らすことになるだろうと

 なんとなく予感がしてたんだ

 おだやかな陽射しのなかで


 オリーブオイルをすこしたらして

 肉を炒めてしまおう

 いい香りが立ち上ってくるね

 玉ねぎを入れて

 すこしずつかきまぜよう

 透き通る色になるまで

 焦がさないように気をつけながら


  カレーライスの匂いは

  倖せの香り

  素敵な君と出逢って僕は

  生きることを選んだ



 お玉を取って僕に渡して

 鍋の端に浮いた灰汁をすくうから

 心のゴミもいっしょだね

 すこしずつ取ったほうがいい

 ささいなことでも僕に話して


 お玉のなかに割ったルーを入れて

 箸でかきまわして

 ゆっくり溶かすんだよ

 箱には五分でいいと書いてあるけど

 二十分くらいは煮込もうか

 愛情もじっくり煮込んで


  カレーライスの匂いは

  倖せの香り

  素敵な君と出逢って僕は

  生きることを選んだ


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― 新着の感想 ―
[一言] すごく好きな詩です。 ほっと落ち着ける…。 愛し合う2人が目に浮かびますね^_^
[一言] カレーライス大好きです、幸せな家庭の味ですね(^_^)ストレートなんだけど味のある詩で、素敵でした。何気ない物をサラッと読ませるのは凄いと思います。
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