End2
ん〜。前話との切り目、微妙ですね。
最近、これでも文字数の管理は上達してきたと思ったんですけど。
「瑞樹、一緒にいこう。外、行ってみたかったんでしょ?」
彼に手を差し伸べる。
「どうして君はこんなことを?」
瑞樹は困惑げに、私に尋ねた。
どうしてこんなことをするか?
それは、私が瑞樹を好きだからだ。
だが、このタイミングでそれを言ったら、瑞樹に恩にきせるようになってしまいそうで、何となく嫌。
少し考えてから、口を開く。
「さあ、どうしてだと思うの?」
卑怯だが、質問に質問を返した。
「僕には分かりません。ですが、本当に君は僕を連れて行って良いんですか?」
「え?」
「僕はここから出ても、身寄りは当然ありません。僕と一緒に行くとすると、多方面での支援をお願いすることになるでしょう。君は、負担を負うことになってしまいます」
眉間に皺が寄っていると思えば、何を考えているのやら。
「ずっとここから出たかったんでしょ? なに、そんなこと考えて躊躇ってたわけ?」
「簡単に言いますけれど、これは重大なことですよ」
「瑞樹とお別れしないで済むんだから、そんなの小さなことだよ」
言い終わってから、ストレートに言い過ぎたことに気づく。
慌てて付け足した。
「あ、それにほら。私が稔と会ってここから出られるのは、瑞樹の助けがあってだから!」
「……ありがとうございます」
彼を閉じ込めるホルマリンの容器は、もうない。
ほどなくして、12時ちょうどのこと。
黒い月の浮かぶ赤い空と校舎を背景に、門扉へと歩みを進める影が二つあった。
門の手前で立ち止まり、瑞樹に最終確認をする。
「瑞樹、一応確認しておくね。ここから出て100%無事でいられる保証はないよ。それでも行くんだよね?」
「はい」
瑞樹は頷く。
「あの、秊」
「なに? こんな状況で言うほど大事なこと?」
「大事かどうかは別として、言わずに万一消滅してしまったら大変後悔すると思われます」
「そう。それで何なの?」
「僕は君のこと、好きですよ」
「っ!」
顔が急速に火照っていくのがわかる。
瑞樹の顔を直視できなくて、私は目を背けた。
深呼吸する。
「なっ、なな、いきなり何言うの!?」
「いきなりというほどではないと思いますがね。それで、返事は?」
「えっ、今言うの?」
「当然です。ここで君の返事も待たずに外に出て、そのまま消滅してしまったら目も当てられないじゃないですか」
「うっ、それは、そうだけど」
重い音を立てて軋みながら、校門がひとりでに開いていく。
瑞樹は私を急かした。
「ほら、早くしてください。門が開くのは0時0分0秒から59秒までの間だけなんですから。ぐずぐずしていると機を逸しますよ?」
そんな急かされたって、もう顔は熱いし頭は茹だりそうなのだ。まともに考えられない。
「わ、私は、瑞樹のこと……嫌いじゃないよ」
やっと言えたのはそれだけだった。
瑞樹は溜め息をつく。
「はぁ。待ってあげたのに、それだけですか? まあ良いでしょう。赤点ぎりぎりではありますが、及第点としておきます。続きはここを出てからゆっくり聞かせてくださいね」
性格が悪いのを隠そうともしない黒い笑みを湛えた瑞樹は、私の手を引き、校門を潜る。
不思議と、瑞樹が消滅しないと確信できた。先行きへの不安なんて感じなかった。
この先も私はこんなふうに瑞樹にからかわれていくのだろうと思うと、自然と私の顔は笑みを描く。繋いだ手の感触が、瑞樹は確かな存在なのだと教えてくれる。
あやふやな、ただの噂ではないのだと。
前を見据え、これからのことを考える。
とりあえず、ここを出たら一番にやることは────どこか水場を探すことだろうか。
瑞樹の頭部はついさっきまでホルマリンに浸かっていたから、はっきり言って薬品くさいのだ。トイレで簡単に流したものの、時間が足りなくて臭いは落としきれなかった。
二つの影は、黄色い月が照らし出す闇の中に消えて行った。




