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朽名奇譚  作者: いちい
#2 理科準備室のホルマリン生首
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クリスマス3


久しぶりの瑞樹視点です。








 僕は机の上で、扉がきちんと閉まったのを確認してからほくそ笑みます。


 今日の彼女の反応は、実に興味深いものでした。


 ずっと思い出せずにいた探しものが何だったのか、彼女がとうとう思い出したのですから。

 あまりに進展がないのでそろそろ飽きがきていましたが、これは嬉しい誤算でした。


 探しものは、彼女の弟……稔と言いましたか。まさに、探し物というよりは探し者だったということですね。


 彼女は気付いていないようでしたが、彼女の弟の行動にもまた、謎が多い。


 まず一つ目。

 祭りは人が多いのは当然ですが、なぜ彼女が絡まれた時に都合良く現れることが可能だったのでしょう。……タイミングが良すぎるのですよ、聞いた限りでは。


 ヒーローでもあるまいに、不自然すぎやしませんか?

 その不良が日常的にそのような行為を繰り返していたため、警戒していたという可能性もなくはないですが、そんなことは彼女の話ぶりからないと推測されます。


 そして2つ目。

 なぜ逃亡先がここだったのでしょうか。

 学校に逃げる。

 この理由を彼女は、家に直接逃げる危険性と、誰かに助けを求めるという観点で説明していましたが、これは奇妙です。

 祭りの日なら、かき入れ時として営業している店も多い。あえて学校に行かずとも、適当な店にでも逃げ込めば良いのです。


 彼女の服装は浴衣だった。

 ならば、下駄を履いていて機動力の低い彼女を連れてここまで走るより、その方が遥かに容易です。


 気が動転していたのかもしれませんが、それにしても学校という選択肢がそうそう出てくるとも思えません。


 さらに付け加えるなら、彼女が侵入したあの日の行動も、異常です。

 管理人に見つからず効率よく校内を探すためと本人は言っていましたが、なぜそこで出てくるのが七不思議の現場だったのでしょうか。

 それに、あのヘン……いえいえ、校長(ヘンタイ)が彼女を僕たちに押し付けたというところも、納得できません。

 単細胞な秊は安全のためと言いくるめられたようですけれど、安全のために危険人物のもとに送りつけるってどういうことですか。

 支離滅裂すぎるでしょう。

 それにしたって、あの校長が何も考えずに手配したとも思えませんし。


 だから、僕にはある確信があります。


 おそらく、彼女の探し者は七不思議に関係があるのだという、確信が。


 まさか、探しているのがヒトだとは予想できませんでしたが、全てが予想通りでは味気がない。

 不確定要素は、人を玩具にする醍醐味ですから。


 この予測も、当分は黙っておきましょう。


「くく、謎は深まるばかり、ですねえ。それにしても、家族ですか……」


 僕には存在しないものなので理解しがたいものの一つです。

 ただ遺伝的に繋がりがあるというだけで、そうそう危険に飛び込めるものなのでしょうか。


 僕は噂から発生したためそんなものはいませんが、仮にそういうものだとしたら、いなくて良かったのかもしれません。


 僕は、いずれ消えてしまうのですから。


 あの花火のように。


 噂から生じたモノは、噂が消えれば消えるのが道理。


 執着するなど、愚かで無意味なことです。


 ……かつて一人だけ、家族と言えなくもないヒトがいました。

 あのヒトなら、また違った答えを用意できたのでしょうね。

 最近は彼女を見ているのが楽しすぎて、あまり思い出すこともありませんでしたが。


 以前は、彼女の探しものが滞って退屈したら、玩具(かのじょ)を殺そうと思っていました。

 もってせいぜい1ヶ月だと思ったんですが、随分もって驚いた記憶があります。


 彼女は想定以上に不可解で、非合理の塊だった。

 だからこそ、面白い。

 この愉快な見世物が、ずっと続けば良いのにとすら思います。


 だから、もうしばらくは僕を退屈させないでくださいよ?


「でなければ……ゲームオーバーにしてしまいますからね?」


 玩具(キミ)が壊れるとしたら、それは僕の手によって。




──これは……執着、なのでしょうか。







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