1章 16話
本日は3話投稿しました。これは2話目です。
ご注意下さい。
#3 焼却炉前にて
今はもう使用されていない、大きな鉄でできた箱型の焼却炉の前。
かつて自分の身を焼いたというそれを、上半身の炭化したモノは、感情の窺えない炭になった顔で眺めていた。
もう使用されなくなって久しい炉には赤々と燃える火は灯っておらず、手を伸ばせば金属独特の冷たい感触が指に伝わる。
彼にはもう、確固とした自我などなかった。
長い時の流れの中で失われたのか、あるいは元から存在しないのか。
それすらも知れない。
ただ彼に残っているのは、探さなければならないという本能。
それだけのはずだった。
だが、今の彼には先程会った少女を刺激として、壊れた精神の片隅にほんの針先ほどの理性が蘇っていた。
彼自身、その変化には果たして気付いているのかいないのか……。
それを知るのは彼自身しかいない。
いずれにせよ、彼がせねばならないのは『探すこと』。
彼はその場を離れてまた、自分でも忘れてしまった何かを探し続ける。
#4 家庭科室の台所裏事情
ボクは久しぶりの来客に、まだ胸をどきどきさせていた。
ボクのクッキー、彼女は食べてくれたかな?
幸い、ここにいる限り材料には困らない。
いつの間にか冷蔵庫には材料が補充され、棚の中身も常に万全だ。
仕組みは知らないが、多分、ボクはそういう存在なんだと多くのヒトたちが信じているからなのだろう。
彼女は良い子みたいだったし、何よりもボク自身、一目見て気に入った。
ボクのお菓子を食べたヒトは、ボクと一緒にいてくれるようになる。
でもせっかく引き入れても、最初は優しかった子が段々、ここから出せ、とか言って暴れたり、もう嫌だ、と言って最終的におかしくなっちゃったり。
とても悲しいけど、そういう子はいつの間にかいなくなってる。
毎回新しいヒトを迎えるたび、今度こそはと思うけど、結局は繰り返し。
でも、彼女ならきっと大丈夫。
不思議とそう断言できる。
……根拠はないけど。
だけど、彼女を一目見た瞬間、ビビッと来たんだ。
この子はなにか違うって。
どこがどう違うのか聞かれたら困るんだけど、とにかく違う。
本能的にそう思った。
何て言うか、『あっち』よりも若干『こっち』寄りっていうか……。
まあそれは置いておくとして。
「彼女が、アレになってくれたら良いなぁ」
ボクは一人、家庭科室で呟いた。
想像するだけで顔がにやけてしまう。
こうしてはいられない。
さっきは急だったから作り置きしておいたクッキーしかあげられなかったけど、今度こそはきちんと彼女用に、トクベツなお菓子を贈ろう。
彼女は何が好きだろう。
チョコレート? カップケーキ? それともキャンディー?
女の子なんだし、甘いのが良いよね。
それともほろ苦い、キャラメリぜしたような大人の味とか、コーヒー風味のスイーツが好みかな。
色とりどりのお菓子と彼女の笑顔を想像しただけで、楽しくなってしまう。
「〜♪」
さあ、そうと決まれば早速とりかかろう。
まずはレシピを決めなくちゃ。
プレゼントするんだ。
彼女のためだけに作った、極上の御菓子を。
キャラクターのルート分岐投票をやってます。
詳しくは作者の活動報告にて!




