1章 14話
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#6 もう一つの校長室
なあなあ、知ってるか?
この学校、校長室に怪談があるんだぜ。
珍しいよな〜。
えっ!? もう知ってる、だと……?
そっか、俺って遅れてるやつだったんだな……。
ん? なんだよ、お前聞いてくれるのか?
へへっ、まあそんなに気になるなら教えてやらなくもないけどよ。
この『叡智を守護する剣』に知らぬことなど、ない!
いて、頭ぶつなよ。馬鹿になるだろ。
もう馬鹿だからこれ以上こじらせないし平気だと?
ひどっ! ちょ、お前、そりゃねえだろッ!?
……はあ。
俺が聞いたのは、『もう一つの校長室』って話だ。英語で言うと、アナザープリンシパルズオフィスだな。
イタイイタイ、悪かった。真面目に語るから。
だから頼む俺の鼻摘まむの止めて伸びる伸びる、ピノキオになる……。
……ふう、助かったぜ。
とにかくその怪談によると、この学校には隠されたもう一つの校長室があって、そこに迷い込むと……。
その間の記憶を失うんだ。
怖くね? 何起きたか、誰にもわかんねえんだぞ!?
そして、出てきた者は一様に、人が変わったかのように……。
リーゼントを恐れるんだ。
最近だと噂では、3年の先輩が被害にあって、一人で廊下をふらふら歩いてるのが保護されたそうだ。
身体には傷一つないのに、うわ言のように、虚ろな目でひたすら、リーゼントが、リーゼントが、って ブツブツ呟いてたらしい。
最初は皆、ただふざけてるんだろうと思ってたらしくて、クラスメイトが試しにリーゼントのヅラを被って会いにいったら半狂乱になって暴れ出したとかなんとか。
さらに悲劇はそれで終わらなかった。
悲惨なことに、その先輩は受験当日、試験会場に行く途中でリーゼントヘアの盗んだバイクで走りだしていた不良に運悪く遭遇。
噂によるとその不良は、この辺りで有名な不良グループ、嗟嘆蘇愛琉のメンバーらしい。
先輩は当然問題に手がつかずに第一志望校に落ちちまった。
……にしてもなんでリーゼントなんだろうな。
校長室にリーゼントっぽい物なんて置いてあったか?
どうでも良いし、あんたの中二病よりましって、おいおい。
そりゃあねえだろ……?
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「さて、そろそろ続けて良いかしらね。それでね、さっき言った通り、アナタには七不思議のどれかに身を寄せてもらいたいのよ」
どれも嫌なのだが、その選択肢は駄目だろうか?
目線でこっそり『嫌だな〜』と皐月様に主張してみると、即座にリーゼントの冷たい視線が私を抉った。
視線に質量があったら、私の顔面にクレーターの一つや二つできそうだ。
あ、はい、そうですよね、ダメですよね。ごめんなさい。
皐月様は私の死亡フラグを立てるのがそんなに楽しいのか、お顔がにやけていらっしゃる。
はあ。今思えば短い人生だった。
私は残業明けのサラリーマンのような哀愁を漂わせて、夕陽ならぬ朝日の方を見つめた。
ああ、目から伝ってくるこれは心の汗だろうか。
「おいお前、何か言え。皐月様がお言葉を下さっているのだぞ。その死んだ魚じみた目をどうにかしろ!」
うるさい、このリーゼント。
お前なんか常盤なんて立派な名前じゃなくて、リーゼントで充分だ。
私は人の不幸を楽しげに味わう皐月様と、ぎゃあぎゃあ喚いているリーゼントを尻目にげんなりしてしまう。
四面楚歌とはまさにこういうことなのだろう。
逃げ道はもう塞がれた。
こうなったら、覚悟を決めるしかない。
私が選んだ選択肢は___
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『七番目の何か』
七つ目のふしぎ は だれも しらない
だれにも しられては ならない
えいきゅうけつばん
しってしまったら つぎの七つ目のふしぎは
あなた
さて、ここでお知らせがあります。
詳しくは、作者の活動報告にて。




