後日談1
いつもご愛読ありがとうございます。
説明文過多です。
二作で分かり辛かった部分が少しでも解消されてれば…と思います。
後日談1
あれからマスターと色んな事を話した。
//////但し!“言葉”だけじゃなくて、時間をたっぷりかけてしっかりと“身体”でも話し合いましたよっ!ええ!!///////
私が滅せられたのはマスターが寝ていた深夜。翌朝起きたマスターは私の結晶石がブレスレット毎消えていたので半狂乱になって探したそうだ。
「それで、茫然自失の僕の前にエルヴィーラ様が表れて、クララ、君に起きたことを見せられたんだ。……怖かっただろう?苦しかったろう?ごめん。謝って済むことじゃないけど本当にごめん」
そう言って私に頭を下げるマスター。
「僕は絶対神の裁きと共にあの世界を追い出されたんだ。気が付いたら異世界の赤子になっていて25歳まで生きたら死ぬというのを何度も繰り返した」
「もしかしてそれがさっきエルヴィーラ様に言っていた」
「うん。この世界が100回目。そして絶対神様立会いの下にエルヴィーラ様といくつかの規約をした僕は異世界でもこの世界でも自分の正体を隠さなければならなかったし、異性と心を通わすことも許されなかった。
絶対神のお導きのままに死んでは転生していたけど、どの世界でも僕は孤独だったよ。
25歳というのはね、僕が“君を失った年齢”って事なんだ」
「そんな!それじゃマスターは異世界でもたった一人きりで…」
「ふふ…でも殆どの世界が戦争の真っ只中だったからね。孤独なのはちっとも苦じゃなかったよ?」
戦争の真っ只中かぁ……。マスターはどこの世界でも“戦う”運命だったのね。
「こっちの世界でもこれが二回目かな?前は太平洋戦争だっけか?陸軍に所属してた僕はどこか南の島で青い目の兵士に撃たれて死んだと思った」
第二次世界大戦中に転生したのね。陸軍…そりゃあ、マスターの容姿なら国防服に戦闘帽も似合うでしょうよ?
って!この長い脚にゲートル巻いてたの?だって私のニーハイがこの人のソックスくらいだよ?大変だっただろうなぁ…。
「ん?キラ、何考えてる?」
「え?あ…マス…いや…佑太さんの国防服姿が素敵だっただろうなぁって…。それとゲートル巻くの大変そうだなって…」
「あはははは……相変わらずだね。君は」
「へ?」
「くくくく……発想が独特で面白いって事!」
あの世界でも笑い上戸だったこの人はこっちの世界でも笑い上戸らしい。
それにしても、バスローブ着て体を丸くして肩を揺らしいながら笑ってるのって変じゃない?…って、まぁ、その、私も“同じ格好”してるんだけどさ…
―――――そう言えばもう一人。私のよく知っている“笑い上戸”がいた―――――
マスターの笑いが収まるのを待ってから、私はずっと気になっていた事を質問した。
「あの……」
「ん?」
「聞いてもいいですか?」
「どうぞ?」
「あの……ご存知だったらで良いんですけど、アデラ…アデライードは…その…どうなったかって。あと、マスター・ミサオも…」
私がおずおずと質問をすると、突然マスターの様子が豹変した。
さっきまでお腹をかかえてひいひい言いながら笑っていたのにそれがピタリとやんだ。
いや。それだけでなく、表情も険しくなっている。
「その名前出して怖くない?」
マスターは私の瞳を覗き込みながらそう聞いて来た。
怒りの中に何か悲しいモノを含んだその瞳。
“あの二人”は確かに今世での私の極端な人嫌いの原因を作った者達だ。
でも、私は今マスターと再び出会え、彼に愛され、そして将来まで誓っている。
その上、優しくて美しい義姉と頼れる兄、優しい両親や博識で面倒見の良い使用人達に囲まれて何不自由なくここまで生きてこれているのだ。
私はマスターのその黒曜石のような瞳を見つめ返してはっきりと告げた。
「正直言うとまだ怖いです。でも、事の結末をやっぱり私は知りたいです。
何故マスター・ミサオがあのような行動を起こしたか…今の私ならわかるような気がするんです。
そして我が友アデライードも己のマスターの命には逆らえなかった…」
「クララ……」
マスターは再び私をきつく抱きしめた。
彼は、私の顔をご自分の胸に押し付け、私の髪をやさしくなでながら静かに語り始める。
「“君の友達”はこの世界に転生している」
「え?」
「“彼女”は“ここ”での君が良く知っている人物だ。ただ、ミサオは僕もまだ会ってない」
――――――――アデラがこの世界にいる?!
想定外の事実に、私の頭の中は飽和状態になってしまった。しかし、そんな状態の私に無常にもマスターは更に質問する。
「会いたいかい?」
「っ……!!」
どうしよう!まだ怖いっ!でもっ!でも本当に彼女が…アデラが“こっち”にいるなら………!
「会いたい……です」
私は震えつつもはっきりとそう告げた。
マスターは頷くと座っていたベッドから立ち上がって寝室から出て行った。
そして、携帯を片手に速攻で戻って来たかと思うとすぐさま操作し始めたのだ。
……どうやらどこかにメールを送っているらしい。
その数秒後、この世界でクラシックと言われている曲が流れだした。
……メール着信音が『ジュ・トゥ・ヴ』か。相変わらず可愛らしいご趣味をお持ちなのね…
届いたメールを確認すると、マスターは私の顔を見て…
「“彼女”に会いに行くよ。でもその前に着替えてご飯を食べようか」
ニッコリ笑いながらそう言ったのだった。
まだまだ続きます。