Another Line
別れがどこにあるか分からないけど、
もう僕らは会うことが出来ないんだ。
[言い訳の鼓動]
何を書いたらいいのだろう。どう表現したら、君を傷付けずにすむのだろう。
ひと夏の終わりに渡す、別れの手紙。
同じ景色を見られない僕の、最後の強がり。
何度も書き直して、考えて、だけど最善が見つからない。下書きを二重線で消しては、書きなぐった。
僕は君のことを好きなフリをしている……フリをした。
隣で笑って、だけど気付く程度に堅くして。
酷なことをしてるって分かってる。だけどそうしないと君は僕に依存したままでしょう?
程良い距離感を安定させてきた。背中合わせでも心地よく思えるくらいに。
だけど僕は君の気付かない間に背中を押さなきゃいけない。僕の寂しさが伝わる前に。
「大好きだったよ」
同じ景色を、同じ時を生きられない僕の、最後の我が侭。
ほんの少しだけでも抱き締められたらなあって。君の細い肩に頭を寄せて、目を閉じられたらな。
今度さり気なくやってみよう。
それがさよならの合図だから。
手紙は、君と僕が別れてから読んでね。そうじゃないと意味がない。
僕は君が想う間に居なくなる。それが双方にとって幸せな別れ方なんだ。
先の見えない不毛な恋を始めて、僕は徐々に君の存在が大きくなって。好きになってしまった、本当なら報われない恋だったのに。
だけど君も同じで、照れながら「私も」と笑ってくれたね。
交わらないはずの線が交わった瞬間だった。
だけど出会ってはいけなかった、交わってはいけない線だった。君とまた、別れてしまうのだから。
「ごめんね」を沢山言ってきた。最後まで謝るしかできない僕で、ごめん。
君のそばを離れる支度、もう殆ど終わった。
後は君と別れるだけ。
もう少しくらい笑顔を見て、愚痴を聞いていたかった。
偽物の愛が本物になる瞬間を味わいたかった。
それでも僕の手は、君の肩から滑り落ちる。手に持ったお揃いのマグカップは、重力を受けて下に落ちて、バラバラになる。
君の腕が支える前に、僕は遠ざかる。
何でもないように会って、笑って。
僕だけが「これで最後」を噛み締めて。
1日の最後に、用意した手紙を渡した。君は首を傾げながら受け取った。
それはそうだ、今の時代メールで、って思ってるんだから。でもこれは手紙じゃなきゃ果たせない役目。
その便箋と一緒にネックレスを入れておいた。置き土産、とっておいて。僕の思い出が詰まっているそれを。
「ありがとう」
そう言ってはにかんだ君の頭を撫でた。
震える手は頑張って隠した。
「じゃあね」
「うん。今日は楽しかった」
「僕も」
薄い言葉のやり取りで終わっていく。背を向けて、ちらと片手を上げれば最後。
君の背中を見ることなく、夏の線香花火のように儚く僕たちは終わりを迎える。
言い訳は言わない。だけど真実を伝えることは出来ない。
「ごめん」としか言いようがない。
さよならの在処は誰にも分からない。
僕はスーツケースを持ってその在処を探しに行く。
その在処に辿り着いたときは、君は別の世界で幸せになっていて欲しいな。
リハビリ用に。スランプ中なので中々上手く書けません。。。