03
「開門っ!」
ギギギ…と、重い音をたてながら、三の郭の門が開いた。そこから一歩足を踏み出せば、そこはもう城下町だ。
ティンクスは身軽な旅支度の格好で愛馬を歩かせた。家の者には明日出立するよう言われたが、彼は今すぐにでも出かけるつもりだった。
「一日でも早く、やつを見つけ出して、そしてラリナ殿のもとへ戻るんだ」
ティンクスの胸にはただその想いだけがあった。
町の中で馬を走らすことができるのは緊急時だけである。ティンクスは競歩の速さで馬を歩かせた。
町は活気付いている。国の中心地であるこの町は、商売と職人の町である。それぞれの職人達が貴族の娘達が喜ぶ装飾品や、騎士が大事にしている剣などを作っては、商人がそれらを売る。こうしてこの町は成り立っている。
(あの髪留め……ラリナ殿に似合いそうだな)
ふと、目に留めた髪留めにティンクスは愛しの婚約者を思い出した。しかし、すぐに彼女のことを頭から追い出した。
(だめだ。まだ城から出たばかりだというのに、彼女のことを思い出していては……)
そうしなければ、きっとティンクスは四六時中、ラリナのことしか考えていないだろう。
一刻も早く、ティンクスは町から出ることにした。
(たしかこの間のあいつ探しの時は、クルドリネの町で見つけたんだったな…)
過去の記憶を思い返し、ティンクスは、最初の目的地をそこと決めた。
町を出るとそこには田園風景が広がっている。そのほとんどが小麦を栽培している。農夫達が額に汗水流して働いている。
「……のどかだなあ」
しばらくその風景を見ていたティンクスだが、やがて馬を走らした。
彼にはやることがある。
しかも、時間が迫っている(彼の気分では)。
「がんばろうか、ライよ」
愛馬の名前を呼んで、彼は手綱を強く握り締めた。
(20110918)