表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追いかけっこ  作者:
10/17

09

「よし、今日は隣町のガウルに行こう」

 すばやく身支度を整えたティンクスは、元気に言った。


「昨日とは別人のような活力だね、ティンクス」

「当たり前さ。ヤツがこの辺りにいそうな気配を感じたからな。俄然やる気が出るさ」

「そのやる気が見事実を結べばいいのにね」

 シュッダは意地悪く、そう言った。

 二人は足早に宿を後にした。

「でもさ、今日の分の宿代もはらっているんでしょう? もったいなくないの」

「ガウルの村は本当に小さな村だ。宿は確か無かったはず。一度この町に戻ってきたほうがいいのさ」

「なるほど」

 シュッダはあらためて、ティンクスの知識の広さに感心した。


 ティンクスは馬には乗らず手綱を引いてシュッダと並んで歩いた。

「ところで、お前が逃げている相手って、何者だ?」

「得体の知れないヤツだよ。急に現れて、とんちんかんなことを言ってきたんだ」

「ふ~ん、何を言われたのだ?」

「それは……、まあ、色々。でも、腕っ節は確かだよ」

「ほお」

「僕の父さんと兄さんたちは武術をたしなんでいて、そんじょそこらのやつが束になってもかなわないほどなんだ。けれど、そいつに負けたんだ。しかも、連続で戦って」

「連続って、兄君は何人いるんだ?」

「三人。一人は僕と一つしか違わないけどね」

「ということは、四人連続で戦って、その全てに勝ったのか」

「そうさ。無傷で、ってわけではいかなかったけどね。……今まで、僕の中では父さんがこの世で一番強い人だと思っていたけど、ヤツが一番になってしまった」

 シュッダは複雑な表情をした。

 認めたくない事実を、しかし、しっかりと認めなければいけないという心境の表れである。

「ヤツに捕まると、僕の一生はめちゃくちゃになる。だから逃げるんだ。僕の人生を僕自身で進むために」

 シュッダの瞳には決意が表れていた。

 ティンクスは微笑んで、ぽんぽんとシュッダの頭を軽く叩いた。

「がんばれよ。俺はお前を応援する。出来る限りお前を守ってやるからな」

「ありがとう。でも、無理しないでよ」

「前にも言っただろう、俺は強いから大丈夫だって」

 にかっと笑うティンクスを見て、シュッダも微笑んだ。

「どうかな? まあ、可愛い花嫁さんが待っているから、絶対に死なないとは思うけど」

「当たり前だ。死んでたまるか」

 真剣な顔をしてそう言うティンクスを見て、シュッダは腹を抱えて大笑いした。


(20111024)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ