恋花火
――空に咲く花は、今まで気付けなかったものに気付かせてくれた。
空に咲く大輪の花がそれを見上げる人々を照らしている。
それと少しの時間差でやってくる激しい音に、体が震えた。
「綺麗……」
俺と並んで空を見上げるこいつは、俺の幼馴染み。
普段はこいつに女らしさなんて感じないのに、藍色の浴衣に身を包んだだけでこうも違うのか。
派手だけどどこか儚い花に見とれるその姿に、不覚にも見とれてしまった。
いつも下ろしてる髪をあげてるせいで露になったうなじが何故か色っぽい。
「花火、綺麗だね!」
不意にこちらを向かれ、ばっちり合った目を慌てて反らす。
俺の心臓は不自然なほど激しく鳴り出した。
「どうしたの?」
俺の気持ちなんかこれっぽっちも分かってないこのバカは、ひょこっと俺の顔を覗き込んでくる。
「なんでもねぇよ」
真っ赤になってるだろう顔を見られたくなくて、ついぶっきらぼうになってしまう。
「ねぇ」
「なんだ……よ……」
肩を強く叩かれ、ガバッと顔を上げると、頬に感じた柔らかな感触。
驚く俺の目に移ったのは、頬を赤く染めた幼馴染みの笑顔。
その時打ち上がった花火と同時に、俺の恋も開花した。
【End】