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第1章:昭和100年の世界にようこそ!
「ネバー」という言葉がある。
英語の「never」。意味は「決して〜ない」。
日本語にすると、否定だ。強い否定。
「絶対にしない」
「一度もない」
「ありえない」
壁のように立ちはだかる言葉。
何かを拒絶し、何かを退ける言葉。
しかし、不思議なことに、この言葉は否定の中に「意志」を含んでいる。
「決して諦めない」
「決して忘れない」
「決して屈しない」
ネバーという言葉が否定しているのは、行動ではない。
降伏だ。
「セトル」という言葉がある。
英語の「settle」。意味は複数ある。
「落ち着く」
「定住する」
「解決する」
「決着をつける」
どれも、動きが止まることを指している。
嵐が去って海面が凪ぐように。
振り子が揺れを止めるように。
何かが「ここでいい」と定まること。
それがセトルだ。
セトルは、悪い言葉ではない。
人は、どこかに落ち着かなければ生きていけない。
根を張り、居場所を定め、繰り返しの中に安心を見つける。
それは人間として自然な営みだ。
ただ、一つだけ危険がある。
「ここでいい」が、いつの間にか「ここがいい」に変わり、やがて「ここしかない」になること。
落ち着いたつもりが、動けなくなっていること。
これは、動けなくなった場所の話だ。
そして、そこで生きることを選んだ人間たちの話だ。




