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第51話 クエスト:鉱脈洞窟(中)-2-


 霧の中を駆け足で奥へと進み、辿り着いたのは岩場に囲まれた開けた空間。

 踏み入った途端、強い熱風が茅峨達の間を駆け抜けていった。

「あっつ! なんだこれ!」

「術師の爆風ではないかしら、これくらいの高ランク規模なら霧も……」


 その熱風が霧を追いやったのか、広い空間の視界が開けていく。

「わ、先が見える! この霧すごく重かったのに……!」

「アレが居たのか? 霧の中からあんなの出てきたらそりゃ叫ぶわ」


 ……そこに陣取っていたのは(そび)えるほど超大型の透けたアンデットの魔物と、幾人かの冒険者達。

 更に魔物の後ろ、奥の方の岩壁をよく見ると何かがキラキラと青紫色に輝いている。


「あの奥にあるのってもしかして……?」

 茅峨と同様に他の冒険者達もスミレ石の存在に気が付いたようだ。


「あら、前に来た時と壁面の具合が違いますわね……あのアンデットが暴れて岩が剥がれ落ちたのかしら」


 宝石の母岩は発見したが、いかんせんこの巨大な……岩場の天井近く、四、五メートルはあるだろうか、そんな魔物が遮っている。

 白く半透明な、兎の骸骨のような……


「どう見ても幽霊(ゴースト)じゃん、俺相性悪いんだよなぁ」

 朋斗は渋い顔だが、肩に乗っているリィがやたら張り切っている。

「ハイハイ、大きい方が魔力も多いもんな」

 帯刀していた双剣を抜いて慣れたようにひと回しする。


 既に霧の中で巨大魔物と一悶着あった後らしく、怪我で座り込んでる冒険者も何人かおり、それを視界に入れた茅峨もロッドを弾いて伸長させる。


「……俺も行く、アンデットなら火が効くよね」

 アンデットタイプには、焚き上げて昇華させる派生で炎が有効である。

 聖属性も効く……とされているのだが、化学をベースとする術式に「祈り」などのカテゴライズは無い。


「ふっ……」

 と、何故かクリストファーが口角を上げ胸を張っている。


「わたくし、聖属性の魔法も使えますの! 任せて貰って構いませんことよ!」

 得意気である。


「そんじゃああんたはその辺で倒れてる奴らの介護してやって。有効属性持ってるなら攻撃が来てもある程度跳ね返せるだろ」

「クリストファー様、危ないから近寄らないでね……!」


 そう言って二人はとっとと走り出す。

「あ……! もうっ!」

 それを呆然と見送って、クリストファーは少し不満気ながらも倒れてる冒険者に駆け寄っていった。


「なに茅峨、こんなに相手デカいのに怖くねーの?」

「こ、ここまで大きいと当たり判定広いし、攻撃も大振りで避けやすいかなって……朋斗もいるし……!」

「いや俺は物理だからなーでも分析出来てえらいじゃん、ってちょっと待て」

 巨大ゴーストの近くに、見たことのある冒険者達を見つける。

 ゴーストの大きな骨の手が攻撃してくるのを必死で避けている彼らの横で、朋斗が立ち止まった。


「やっぱり、昨日のナンパの人じゃん」

「あ! 昨日のスカしたやつ!」

「と可愛い子!!」

「うっ……」

 朋斗のすぐ近くに茅峨は居たわけじゃないのに、目ざとく見つけられてしまった。

「あんたらランクAじゃなかったっけ? なにモタモタしてんだよ」

「うるせー! ゴーストは相性悪いんだよ!」

「まあ俺も剣だから分かる。斬れねーもんなシンプルに」


 骨の外郭が見えてるからいけなくもなさそうだけど……と朋斗が少し思案していると、また骨の手がこちらを押し潰そうと高く振り被る。

 モンスター全般の特に嫌なところは、こちら側の当たり判定は低いのに相手からのダメージは無対策だと普通に浴びるという点だ。

「うわわ!」

 避けるのが遅れた男を朋斗が抱えて飛び退くと、別の場所でも茅峨がもう一人の男を庇っていた。


「だっ……大丈夫!?」

「お、おれ守られちゃった……」

 なにやらキュンとしているが、そんなことより男達の動きが鈍い。彼らはそのままぼんやりと崩れ落ちていく。


(もしかして毒……!?)

「茅峨!」

 朋斗が駆け寄ってきて、ほぼ引き摺りながら抱えていた男を適当に放る。


「たぶんゴーストから毒が広がってる、その辺の冒険者もやられてるからきっと援護は無いわ。さっきの爆風出してくれた術師が立ってたら良かったんだけど無理そうだし……俺らで速攻するしかねえ」

 言いながら朋斗は男達の上で回復ポーションを割る。

「毒消しはいいの?」

「どうせすぐまた毒効果にやられるから。ゴーストを倒してから解毒した方がいい」

 茅峨はこくりと頷いて、もう一度ロッドを構え直した。

「わかった……!」


「じゃ、行くぞ……つっても、俺ゴースト系はイマイチだからメイン頼むわ!」

 そう口にして朋斗はその場から上に跳躍する。

 巨大な兎の骸、その頭上近くへ。


(じっ地面蹴っただけであれだけ跳べるの……!?)

 茅峨があわわと驚愕してる上で、朋斗はゴーストの首に双剣で二閃、そのまま回転して骸の中心を、光の如く(くだ)って一閃。


「ッあーやっぱ剣だけじゃダメか、半透明だわコイツ!」


 ゴーストはぐらりと大きく重心が傾いたが、あの朋斗の太刀筋でも致命傷どころかヒットポイントを削れたか怪しい。


「……空気、あんまり乾燥してないけど、それなら逆に……」


 ロッドで道筋を誘導する。

 石礫の接触からパチリと弾ける火種。霧の残りに連続呼応して水分を一気に蒸発させ、巨大な気化爆発を引き起こした。


「うおッ!!」

 半透明な巨大ゴーストの中に居た朋斗が吹っ飛ぶ。

 爆発で周囲の空気が急速に冷やされ、純粋な霧と結露が下方部、地面に発生する。

 すると結露の上層部……天井方面は一時的に乾燥状態になるので、そこにもう一度火種を呼応。


「おもいっきり、お願い!!」


 火炎が炸裂した。岩場の天井から兎の骸へ、巨大な火柱が落ちる。


「やっば、派手すぎだろ……!」

 それを見ながら朋斗は半笑いで呟いたが、すぐにゴーストの気配を察する。


「ッ茅峨、まだだ! 一旦避けろ!!」

 指示に反応して風の呼応と共に退がると、炎の中から骸の両手が突き出してくる。

「っ!!」


 もう一撃炎を出す……にしても、あの火力を立て続けに出すのは大丈夫なのだろうか。


「ミヨ、ダメですわよ!」

「えっ!」

 後ろから突然声が掛かった。


「あの火柱をまた出せば燃える為に空気を使われて、こっちの息が吸えなくなりますわ! 外ならまだしもここは空気の通りが悪いので!!」

 ビシッと扇子で指されてしまう。


「そ、そうなんだ!? 難しい……!!」

 ゴーストの魔物が炎しか効かない、というわけではないが、毒も蔓延しているので、効果が少ない戦い方で長引かせるのは得策では無い。


「ていうか朋斗、貴方ランクEXにしてはあまり役に立ってないようですけど!」

「あのなぁ、俺はほぼ数撃ってEXになったようなもんだから応用力とか無いんだって!」

 と言いつつ朋斗は自分の腰のポーチの中を探って、何かの瓶を取り出す。

 そして自分の双剣の上からその瓶を割ると、透明な液体が輝いて散った。


「つっても俺も場数だけはあるんでちゃんとやりますけど! ミヨ、クリストファー守っとけ」

「う、うん。その掛けたのって昨日買ったやつ……?」 

「そー、聖水。たぶん効くだろ、この人の錬金術が本物なら」


 そう告げて朋斗は飛び出した。


「しっ失礼ですわね、本物ですわよ!」


 朋斗の言葉に眉を上げるクリストファー目掛けて、ゴーストの毒霧が吹き出す。茅峨がそれを風のスフィアで逸らした。


「というか焚き付けといてなんですけど、あの子剣で大丈夫なんですの!?」

「朋斗ならきっと大丈夫……!」


 見上げると朋斗は一体どう移動したのか、ゴーストの頭上の天井にいた。

 腰を落とし踏みしめていた天井の岩を蹴り、兎の脳天目掛けて跳躍する。


 刀身以上に伸びる光の刃だが、茅峨が知っている光の色と違う。さっき割った聖水の効果なのだろうか。

 刃が骸の眉間に触れる、その瞬間先程は削れなかった髑髏(ドクロ)の内殻を、一瞬で斜め十字にふた太刀。

 顔面からその下、掲げられた両掌骨まで、朋斗が急降下で接触した部位は瞬く間に両断された。





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