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第22話 歓談、授与-1-


「嘉神!」

 茅峨がパッと顔を上げる。

 大部屋の入り口、白衣に黒眼鏡をかけた男がやや困惑気味に現れた。どうやら魔物は嘉神の魔法を発動させて倒したらしい。


「外に居ないからもしやと思ってな……しかし何をやっている?」

「カガミ……? え!? うそ、嘉神!?」

 茅峨の後ろで立ち上がったミナは、まるで飛び上がるように反応した。


「こんなとこで何してるの? 出張?」

 小走りにミナが嘉神に寄って首を傾げたので茅峨は目を丸くする。


「か、嘉神と知り合いなの?」

「…………まさかリディアか? ……久しぶりだな」

 それなりに時間をかけたあと、むむ、といったふうに嘉神が少女に答えた。しかし名前が違う……


「なんだその冒険者よろしくな格好は。何故ダンジョンにいる」

 リディア、という名前に茅峨は聞き覚えがあるようなないような、ミナと名乗っていた少女を見つめて記憶を振り返る。


「ううん? 最近聞いた気がするんだけど……?」

「おい」

 嘉神に対し不意に低音で声をかけたのはシルヴァで、眉間を顰めていて不機嫌そうだ。


「お前、以前から言っているのに態度を正そうとしないな。不敬だぞ」

「シルヴァか……だが以前にリディアがこれでいいと言ったんだ」

「シルヴァ、そうなると貴女もその喋り方はお客様に対して不敬にならない?」

「それは以前にこの男がこれでいいと言っ……言いましたので。そもそも貴女は身分に対して他人との距離感がおかしい」

「そんなことないでしょ! 父様だってこんな感じよ!」

「あ……!」

 茅峨は思い出した。前の町で嘉神とロアンが話していた、確か嘉神にぬいぐるみを贈ったのがリディーゼア殿下……愛称が……


「え!!? ミナがリディ……って、おっお姫様!?」

 自称ミナと名乗っていた少女……リディーゼアから茅峨が半ば仰け反ると、彼女は目を丸くした。


「なんでリディアのニックネームとリディーゼアと姫がリンクしてるのよ……もう! どうせ嘉神のせいでしょ! まぁ貴方が居たことが想定外なんだけど」

「俺のせいか? 大体なぜ茅峨はリディアと知り合いなんだ」

「えぇっと……」


「おい嘉神殿、手伝え」

「あ、敬称はつけるのね……」

 シルヴァは縛った盗賊団達と気を失っている魔物を寄せ集め、嘉神は男達が下手に起きないように上から催眠の魔法を掛けた。


 それを確認しながらリディーゼアはポケットから電子端末を取り出して操作する。

「あとは警士に引き取って貰うわ、連絡入れたから。とりあえず外に出ましょ」



 遺跡の外に出るともう夕日が沈みかけていた。


 暫くしてリディーゼアが呼んだ警士一団が到着し盗賊団達を輸送車へと引き渡して、茅峨達は一度先程の街へと戻ることにした。


「折角だし一緒に晩ご飯食べない? お話もしたいわ」

 彼女の提案にシルヴァは微妙に嫌そうだったが、リディーゼアが茅峨に「ね?」と何故か圧を放つので茅峨は戸惑いながら素直に頷いた。



.

.

.



 ――街の外れにある小料理屋。


 店内は仕切りがある半個室となっている。

 丁度空いていた奥の席に通してもらい、食事がてら四人はそれぞれの現状……というか身分を明かす話となった。


「ギルドの登録を教えてくれたお嬢様っていうのが、ミナ……えと、リディーゼア殿下だったんだ」

「ねぇ、今更堅苦しい本名で敬称なんていらないのだけど。リディアでいいわよ」

「えっでででもお姫様だし、確かシルヴァさんにはさん付けなのに私は呼び捨てなのみたいなことも言ってたし……」


 リディーゼア……リディアと茅峨が問答、おもにリディアが主張しているのだが、そのやり取りの横で嘉神は顔を上げる。


「そういえば王が、国内の治安視察を王宮より内密に派遣すると言っていたか。それがリディアというのも些か思い切った気がするが」


「リディア様はかつてから王都から出て冒険したいと仰ってましたので、政策に便乗したまでです。勿論リディア様以外にも国中に派遣されている官僚はいますよ」


 食事をしながら淡々と説明するシルヴァを見て、リディアと茅峨は(さっきと態度違うなぁ……)と思った。嘉神に対して冷静になったようだ。


「つまりね、本当は今日みたいな盗賊と遭遇しても、警士に情報を引き渡すだけで良かったの。けどあんな風に取り囲まれて煽られたら王家としてもやっつけないわけにはいかないでしょ?」

「……あんまり無茶をして欲しくはないんですけどね」


 リディアの行動は推奨されないようだが、先程の二人の立ち回りを見ていればその辺の悪党なんかはあっという間にお縄につきそうではある。


「じゃあ、えと、リディア……の受けたクエストもあの遺跡調査だったんだ」

「調査というか、私のは依頼主の遺跡に覚えのない宝物が置いてあって、その鑑定をしてくれというものだったの。ランクDだけど骨董品鑑定(アンティークジャッジ)の上位資格が必要で。単純な依頼だと思ったんだけど、芋蔓で盗賊を捕らえられたのは僥倖だったわ」

「ということは、あの遺跡にあった宝はあの盗賊達が集めたものだったんだ……」

 茅峨は東の遺跡にあったそれを思い出す。


「そう。西と東にそれぞれ隠してたみたい。しかもご丁寧に魔物まで添えて人を近づけさせないようにしてたの! あの盗賊達がマヌケなところは、あの遺跡が個人のものだって知らなかったことね」

「個人でしかも定期的に手入れをしている所有者であれば、魔物の存在に気付けば放置したくないですからね。だからギルドに調査依頼をしたのでしょう」


 つまりあの巨大なマイコニドやその発生源は盗賊達の手際だったらしい。

 嘉神が魚のムニエルを咀嚼し終えてから口を開く。


「……とすると、あの盗賊達は自称ではなく本当にキリオフィストの一味だったかもしれないな。あの黒い豹の魔物も使役していたんだろう?」

「そうだけど……どうしてそう思うのよ」


 リディアは率直に首を傾げる。

 キリオフィストの仲間にしては戦闘力が低いと感じていたからだ。


「魔物を使役するのがそもそも難しい。大体使役しようなどと普通は思わない。人の言うことを聞くわけがないからな。その辺の野盗が簡単に魔物を配下には出来ないだろう……だがキリオフィストは魔物も使って街を襲う事案を聞いたことがある」

 嘉神の隣で茅峨は目を丸くした。


「そうなの……?」

「使役の手段は分からないが、その派生で団員の端くれにも魔物を当てがっていた可能性はある」


「……あの団体には軍警も手を焼いています。トップの方は手練だそうですし……しかしここで下っ端に遭遇したとなると、王都よりもこちら側の地域に足を進めているのでは」

 シルヴァはちらりとリディアを伺うと、リディアは少し苦い顔をした。


「そりゃ全員捕まえてやりたいけど、私の実力じゃ……」

「いえリディア様に物理の力を奮えとは一言も言ってませんよ」

「な、なによそれ! じゃあ権限!? 権限を奮って軍警を総動員で派遣させれば……!?」

「けどそのキリオフィストが襲う場所が分からないと派遣出来ないんじゃ……」

「うっそれはそうだけど」

 茅峨のぽつりとした意見にリディアは口を尖らせる。


「リディアにはリディアの出来る事がこれからもあるだろう。焦る必要はない」

 そう嘉神に言われ、リディアは少し恥ずかしそうにそわそわと居住まいを正した。

 茅峨は相変わらず嘉神は落ち着いてるなぁと思ったし、シルヴァはまた微妙な顔をしていた。


「……コホン。改めてになりますが、わたくしはクレオリア国第一王女、リディーゼア・水葵(ミナズキ)・クレオリアです。内密の視察だからその都度身分を明かすわけじゃないの。内緒にしてね」


「う、うん……でも他の人だってリディアの顔見たらお姫様ってバレちゃうんじゃない?」

「お前は情報に疎い所にいたから知らないだろうが、王家はクレオリア王以外メディアに殆ど顔出ししていない。直接王宮でしか謁見出来ないだろう」

 茅峨はそうなんだ……と、ついまじまじと向かい合うリディアの顔を見る。


「あっあんまり見つめないでよね……!」

「ご、ごめん、見つめたつもりは……えとシルヴァさんはリディアのお付きの人なの?」


「私はリディア様の護衛ではありますが、執事や直属の部下ではありません。仕事として王から依頼をされました」


「父様とシルヴァのお父上が旧知なの。だからシルヴァは私の幼馴染で、昔みたいに普通に喋ってくれたっていいのに……」

「仕事とプライベートは分けたいのです。気が抜けますし」

「わ、私と素で話すと気が抜けるってこと……!?」


 茅峨はそれをいい意味なんじゃないかなぁと思ったが、リディアはどうも微妙な意味で受け取ったようだ。

「それで、茅峨と嘉神はなんで二人でいるの? 嘉神は仕事で来てるはずよね?」




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